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プロトタイプ 1 mm ピッチ両面ストリップ CdTe

ドキュメント内 master thesis ishikawa (ページ 56-60)

第 6 章 Al/CdTe/Pt 両面ストリップ検出器の開 発と性能評価発と性能評価

6.2 プロトタイプ 1 mm ピッチ両面ストリップ CdTe

6.2.1 1 mm ピッチ CdTe ストリップ素子

CdTe による両面ストリップ検出器のコンセプトを実証するため、プロトタイプとしてスト リップピッチ1 mm の両面ストリップ CdTe 検出器を製作した。素子の大きさは20.15 mm × 20.15 mm、厚さは0.75 mm である。電極構造はAl/CdTe/Ptであり、両面の電極はそれぞれ18 ストリップずつの読み出し電極と幅1 mmのガードリング電極に分割されている。この検出器の 写真を図6.2に示す。写真の表側が陰極である Pt電極である。

6.2.2 各ストリップのスペクトル性能

プロトタイプ1 mm ピッチ両面ストリップ CdTe検出器に対して、まず1 ch ずつ信号を読み 込み、スペクトル性能を評価した。CSA には12 ch 前置増幅器ユニットCP 5011を、整形増幅 器には ORTEC 571を用い、マルチチャンネルアナライザ Amptek MCA 8000A により読み出 しを行った。バイアス電圧は陽極側にCP 6641を用いて、CP 5011を経由して印加した。図6.3 に、陰極、陽極読み出しそれぞれによる

241Am のスペクトルを示す。それぞれ中央付近の1スト リップのスペクトルである。測定温度は0 C とし、整形時定数は陰極読み出しで2 µs、陽極読 み出しで1µs とした。

エネルギー分解能はガードリング素子やパッド素子の場合に比べて倍程度とやや悪いが、両面 から正常な信号を読み出し、スペクトルを作成することに成功した。エネルギー分解能劣化の原 因は、ストリップ電極1つあたりの面積が17 mm2 であり、ガードリング検出器の読み出し電極

Al Anode

Pt Cathode γ

+HV

CdTe

6.1: CdTe両面ストリップ検出器の概念図。両面をストリップ分割し、両面読み出しを行

うことにより2次元の位置分解能を持つ。

6.2: プロトタイプ1 mmピッチ両面ストリップAl/CdTe/Pt検出器の写真。素子の大き さ20.15 mm×20.15 mm0.75 mm 厚。ストリップピッチ1 mm の両面各18ストリップ、

両面とも幅1 mmのガードリング電極がストリップ電極を囲んでいる。表側が陰極であるPt 電極。

6.2. プロトタイプ1 mmピッチ両面ストリップ CdTe 51

6.3: 線源

241Amに対する、1 mm ピッチ両面ストリップCdTe検出器の陰極、陽極読み 出しそれぞれのスペクトル。()陰極読み出し。()陽極読み出し。それぞれ、中央付近の 1ストリップのスペクトル。測定温度0 C、整形時定数は陰極読み出しで2µs、陽極読み出 しで1 µs

の4 mm2、パッド検出器のパッド電極1つの1.8 mm2 より大きく、容量及びリーク電流が増大 しているためであると考えられる。

測定は、両面の検出器中央の4ストリップずつについて行った。その結果、得られたエネルギー 分解能は陰極読み出しで2.42.52.42.3 keV、陽極読み出しで2.52.32.42.7 keV(FWHM

@60 keV)であり、それぞれの電極ごとにそろった性能を示し、また両面での性能はほぼ同等で

あった。陽極読み出しの方が平均の分解能はやや悪かったが、4 ストリップずつのみの測定であ るため、この差が有意であるか明確に述べることはできない。陰極と陽極からの読み出しで分解 能が異なる原因としては、電子とホールのµτ 積の違いの他、読み出しの際の増幅器の特性が極 性により若干異なることなどが考えられる。

6.2.3 両面同時読み出し

次に、両面からの信号を同時に読み出し、各光子に対して2次元の位置情報を取得可能である かどうかを検証した。検出器両面の、中央付近の3ストリップずつをそれぞれ選んで読み出しを 行った。CSA および整形増幅器は1 chずつ読み出しを行った場合と同じく CP 5011ORTEC 571を用いた。ORTEC 571の出力は単極パルスと双極パルスがあり、双極パルスの方が立ち上 がりの時定数が短いことを利用して、双極パルスからトリガー生成を行った。陰極3ストリップ のうちいずれかの電極からの信号があるスレショルドレベルを超えたときにトリガーを生成し、

単極パルスの信号を用いて全6 chの読み出しを行った。読み出しにはVME デジタル I/Oボー ドCP 2610 VME ADC ボード CP 1113を利用した。

測定の結果、陰極、陽極読み出しにおいて同期をとることに成功し、陰極読み出し、陽極読み 出しとも図6.3と同様のスペクトルを取得することができた。以降の解析は、取得したデータか らペデスタルを差し引いて行った。取得したデータの中から、陰極のある1ストリップおよび陽 極のある1ストリップのみで信号が発生しており他のchからは信号が発生していない場合(陰極 1ヒットかつ陽極1ヒット)に注目し、解析を行った。

6.4: 線源

241Amに対する、1 mmピッチ両面ストリップCdTe 検出器の両面の信号を足

したスペクトル。対象としたストリップは図6.3でデータを取得したのと同じchである。測 定温度0C、整形時定数2µs

エネルギー分解能を向上させるため、陰極、陽極それぞれからの信号を平均することにより、

陰極1ヒットかつ陽極1ヒットイベントのスペクトルを作成した。陰極の信号による入射光子の エネルギーの推定値をECathode、陰極の信号による推定値をEAnodeとすると、

E = ECathode+EAnode

2 (6.1)

を各光子のエネルギーの推定値とし、スペクトル作成を行った。結果を図6.4に示す。測定温度 は0 Cとし、整形時定数は全てのch 2 µs とした。

スペクトル性能は、陰極のみの読み出しの場合や陽極のみの読み出し、すなわちECathodeのみ

またはEAnodeのみから作成したスペクトルである6.3と比べて向上した。これは、陰極及び陽極

による信号の真値からのゆらぎがそれぞれ独立した事象であり、両面の信号を利用することによ り推定値を2回得ることができるためであると考えられる。DSSD においても同様の性能向上が 報告されている[49。このように、両面の読み出しで同等の性能を達成することができれば、両 面から読み出すことによりスペクトル性能を向上させることができるようになる。

6 chの測定の結果、両面の組み合わせ3×3の中に入射したと考えられる光子に対して、陰極 1ヒットかつ陽極1ヒットが70%以上存在することを確認した。また、ストリップの各組み合わ せに対する陰極1ヒットかつ陽極1ヒットイベントの数は4%以内のばらつきに収まった。このこ とにより、入射光子の2次元の位置情報を知ることができることを示すことができたため、撮像 が可能であることが実証された。

6.3 400 µm ピッチ CdTe 両面ストリップ素子

前節のプロトタイプ CdTeストリップ検出器により、CdTeの両面ストリップ検出器が実現可 能であり、撮像分光を行うことができることが実証された。そこで、両面ストリップCdTe検出 器の実用化を目指し、次にストリップピッチ400µmAl/CdTe/Pt両面ストリップ検出器の製 作を行った。素子の大きさは28.9 mm ×28.9 mmであり、厚さはプロトタイプよりも性能を向

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