• 検索結果がありません。

取締役会

ドキュメント内 インド会社設立手続き (ページ 84-89)

第 2 章 会社

第 3 節 会社の機関

2 取締役会

に、株主総会特別決議による承認を得る必要がある(309 条 4 項、7 項)。 一方、非公開会社では、これらの取締役に対する報酬の上限規制は課され ない(同条第9項)。この規制の趣旨は、公開会社について、経営に実質的 に関与しない取締役に対する過大な報酬の支払いを防止する点にある。

公開会社におけるマネージング・ディレクターおよび常勤取締役の報酬 は、毎月定額払いもしくは当期純利益の一定割合、またはそれらの併用に より支払われる(309条3項)。ただし、「当期純利益の一定割合」という報 酬の定め方をする場合、当該割合はマネージング・ディレクターまたは常 勤取締役である取締役1人あたり当期純利益の5%を超える数字であっては ならず、かつ取締役全員の合計で10%を超えてはならない。

一方、公開会社におけるマネージング・ディレクターおよび常勤取締役 以外の取締役に対する報酬は、取締役会ごとの支払いか、月額定額方式に よる支払いかのいずれかの方法で支払われる(309条2項)

なお、公開会社がいったん定めた取締役報酬を増加させる場合、インド 中央政府の認可が必要となる(310 条)。また、同じく公開会社において、

取締役の再任または取締役のマネージング・ディレクターもしくは常勤取 締役への就任に際して、その報酬を増加させる場合、インド中央政府の認 可が必要となる(第311条)。

2 取締役会

(1) 定義

インド会社法上、取締役会(Board of directors)は「会社の取締役の総称」

として定義されており、日本の会社法のように「取締役とは別個独立の会 社の機関(個々の取締役は取締役会の構成員にすぎない)」とはされていな い(252条 3項)。そのため、個々の取締役は、取締役会の構成員であると 同時に、独自の対外的な会社代表権限および業務執行権限も有している(上 記1、(4)参照)。

上記定義から、インド会社法上、「取締役会非設置会社」という概念は存 在しない。非設置会社の制度が存在しないのではなく、そもそもの「取締 役会」の概念が異なるため、公開会社であれ非公開会社であれ、取締役が 複数いる会社は、必ず取締役会(Board of directors)を持つということにな る。

(2) 人数および定足数

取締役の最低数が、公開会社においては 3 人以上とされており、非公開 会社においては 2 人以上とされていること、および上限数が公開会社、非 公開会社のいずれについても原則として 12 人とされていることから(252 条、259 条。上記 1、(1)参照)、取締役会の構成員の数も、原則この範囲に 収まる。

取締役会の定足数は、取締役全員の数の3分の1(端数が出る場合、切り 上げ)または2 人のいずれか多い方と定められている(287条)。なお、定 足数について、議題に関して利益相反が生じる取締役については、定足数 にはカウントされず、その結果議論や議決のための投票に加わることがで きない。なお、予定されていた取締役会の日時に定足数が揃わなかった場 合、取締役会は自動的に1週間後の同じ曜日、同じ時刻に延期される(288 条)。また、後述の書面決議を行う場合、決議時点でインド国外にいる取締 役は定足数にカウントされない。

(3) 取締役会の召集と開催

インド会社法上、取締役会は原則として 3 ヶ月に 1 回以上かつ 1 年に 4 回以上開催しなければならないとされている(285 条)。この開催は会合形 式で行われなければならず、書面決議(289条)を持ってこれに換えること はできない(取締役会の書面決議については、下記(5)参照)。

いずれの取締役も、いつでも取締役会を招集することができる。取締役 会の召集通知は書面で行われる必要があり、召集手続の省略は認められて いない(286条 1項)。インド会社法上、召集通知の発送時期について明文 規定はないが、判例上、たとえば数時間前の招集通知など、取締役が当該 通知を受け取った後、取締役会に出席するのに十分な時間が与えられない 場合には、召集通知は無効となると解されている。召集通知が無効となっ た場合、それに続いて開催された取締役会も無効となるため、招集通知は 十分な余裕をもって取締役に送達される必要がある。

召集通知は、インド国内にいる取締役については方法を問わず渡せばよ く、インド国外にいる取締役については、当該取締役が通常インドにおい て居所としている場所(usual address)に送達する必要がある(286条)。こ の召集通知の送達を召集通知担当の役員が怠った場合、1000 ルピーの罰金 が課される。

取締役会は必ずしも会社の本店所在地で開催される必要はなく、インド 国内のその他の場所、あるいは外国で開催することも可能である。ただし、

取締役会は現実の会合形式で開催される必要があり、電話会議やビデオ会 議による開催は認められていない。

取締役会の議長は、通常取締役会決議により選任される(標準附属定款

76条参照)。

取締役会が開催された場合、議事録が作成、保管されなければならない

(193条)。

(4) 取締役会の権限

日本の会社法上は、取締役会は意思決定機関であり、執行機関は代表取 締役(または取締役)とされているが、インド会社法上、取締役会(Board

of directors)それ自体が意思決定機関であるとともに執行機関を兼ねている

(291 条)。個々の取締役の対外的な会社代表権限および業務執行権限が、

この取締役会の業務執行権限およびその明示または黙示による授権に由来 するものであることは、上記1、(4)で述べたとおりである。

取締役会の権限は、法令や定款で株主総会やその他の会社の機関(監査 役、会社秘書役等)に留保されている権限以外のほぼ全ての権限に及び、

これらについて決議を行うとともに、決定した事項を執行する(291条1項)。 また、株主総会の決議により、既に行われた取締役会の行為を無効とする ことはできないとされている(同条2項)。

取締役会で決議すべき事項のうち、特に重要なものについてはインド会 社法 292 条に列挙されており、これらについては、必ず会合形式の取締役 会により決議され、執行されなければならず、後述の書面決議による決議 は認められていない(292条1項)。

①株式の払い込みを行わない株主に対する払込請求

②自己株式の買取り

③社債の発行

④借入

⑤会社資金の投資

⑥融資

さらに、インド会社法上、下記の事項については、取締役会決議により 決定されなければならないとされている。

①取締役に空席(casual vacancy)が生じた場合の取締役の選任(262条。上 記1、(2)、イ参照)。

②ある取締役と利益が相反する契約の締結の承認(297条4項)

③既に他の会社のマネージング・パートナーまたはマネージャーとなって いる者を、会社のマネージング・パートナーまたはマネージャーに選任 する際の、取締役全員一致の賛成による承認(316条 2 項、386 条 2項。

上記1、(5)、イ参照)

④(公開会社において)企業間融資および投資(Inter-corporate loans and

investments)を行う際の、取締役全員一致の賛成による承認(372A条)

⑤債務弁済見込宣言(488条1項。第7節、第3、2、(1)参照)

その他、取締役による利益相反情報の開示を受けること(299条。上記1、 (6)、ア参照)、および取締役の保有株の開示を受けること(308条)も、取 締役会により行われなければならない。

一方、取締役会の権限を制限する規定として、公開会社においては、取 締役会が下記の行為を行うにあたっては、株主総会普通決議による同意が 必要とされる(293条1項。なお、非公開会社においては、取締役会は株主 総会普通決議を経ることなく下記事項を行うことができる。)。

①会社の事業の一部または全部の譲渡、貸与または放棄

②取締役の会社に対する期限が到来した債務の支払への猶予期間の付与

③第三者に会社資産を強制取得された場合に、当該強制取得に際して受領 した対価を投資すること

④会社の資本金および準備金の合計額を超える金額の借受け(一時貸付を 除く)

⑤50,000 ルピーまたは平均純利益の 5%のいずれか大きい金額を超える金

額を、会社の事業に直接関係しない慈善基金その他の基金に寄付するこ と

(5) 取締役会の決議要件

取締役会の決議要件について、インド会社法上明文の規定はない。もっ とも、一般に、附属定款において決議要件は出席取締役の過半数の賛成と されている(標準附属定款 74 条参照)。もちろん、附属定款で、一般的に または特定の事項につきこれよりも厳しい決議要件を定めた場合、それに 従う。また、上述のとおり、既に他の会社のマネージング・パートナーま たはマネージャーとなっている者を、会社のマネージング・パートナーま たはマネージャーに選任する場合(316条2項、386条2項)や、公開会社 において企業間融資および投資(Inter-corporate loans and investments)を行

ドキュメント内 インド会社設立手続き (ページ 84-89)

関連したドキュメント