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今後の研究課題および展望

第 6 章    結論

6.3  今後の研究課題および展望

本研究を通じて得た成果と今後の課題を図 6.3.1 に示す.本研究では,鋼コンクリート複合構造の様々な 技術課題を実験的な検討によって達成することを目指し,複合構造の各構成要素,特に

PBL

に関して基礎的 な研究を行った.これにより,正負交番載荷および繰返し載荷を受けた際のずれ挙動,ジベル孔内の粗骨材 が及ぼす影響,PBL のせん断耐力のばらつき程度等を明らかにした.また,正負交番作用や繰返し作用の影 響を考慮できる

PBL

の履歴構成則を構築した.

しかしながら,PBL のせん断抵抗メカニズムは複雑で未だ全てを解明できていない.特に粗骨材の分布が せん断耐力とそのばらつきに及ぼす影響は,本研究で活用した

X

CT,コンクリートの流動解析,粗骨材

の分布をコントロールした載荷試験等によって,さらにつきつめて検討することが必要だと考える.また,

同条件の載荷試験を数多くおこなって,信頼性の高い変動係数を求めることも重要である.実構造物の拘束 状態を想定した

PBL

のせん断耐力の推定式やせん断力−ずれ変位関係も構築すべきだと考えられる.本研究 で取り組んだ履歴構成則やS-N曲線は,現時点では完全なものではない.疲労に関しては,変動荷重に対す る設計法を確立していく必要がある.PBL以外の頭付きスタッド,付着強度,摩擦係数,複合構造の非線形 有限要素解析にも未だ多くの課題が残っている.

本研究が最終的に目指しているのは,規模や構造によらず,鋼コンクリート複合構造の破壊に至るまでの 力学挙動や疲労寿命を非線形有限要素解析で予測することである.この達成に向けては,これらの残課題を 一つ一つ解決していく必要がある.鋼コンクリート複合構造分野の発展のため,今後の研究が期待される.

図6.3.1  本研究の成果と今後の課題

合成床版の水平ひび割れ 発生メカニズム,発生条件 の解明

合成床版の押抜きせん断 耐力式の構築

最終的な目標

せん断耐力推定式,

せん断力−ずれ変位関係 の妥当性を確認

せん断付着強度を推定する 近似式の提示

・ 防錆処理ごとの鋼・コンク リート間の摩擦係数を設定

表面粗さが付着強度に及ぼ す影響の解明

解析による合成床版の 斜め引張破壊の再現 ずれ止めの履歴構成則の 汎用解析コードへの実装

<第2章> ・

<第5章>

規模や構造によらず,鋼コンクリート複合構造の破壊に至るまで の力学挙動や疲労寿命を非線形有限要素解析で予測 輪荷重走行疲労試験の再現,実橋の強度評価,

既設橋梁の余寿命予測等への活用 合成床版以外の複合構造への展開

既往研究の調査を通じた 技術課題の抽出

本研究の成果 今後の課題

非線形有限要素解析

<第1章>

・ ジベル孔内の粗骨材がせん 断耐力およびずれ剛性に及 ぼす影響を把握

本研究の目的

孔あき鋼板ジベル(PBL)

頭付きスタッド

異種材料の接触面 鋼コンクリート複合構造に 関する研究要素の大分類

<第1章>

4段階に区分したせん断 抵抗メカニズムの提示 最大せん断力の変動係数

(16.7%)を提示

上側二面下側一面せん断破 壊の破壊メカニズムを 把握

正負交番作用を受けた PBLの複雑なせん断力−ず れ変位関係の把握

様々な諸元を同一の実験 パラメータで扱え,正負交番 載荷,繰返し載荷の影響を 考慮できる履歴構成則を 提案

<第3章>

既往研究と本研究の疲労試 験結果よりS-N曲線を提案

<第4章>

拘束状態がPBLのせん断 耐力およびせん断力−

ずれ変位関係に及ぼす 影響の把握

Δδp予測式の改善

(疲労破壊直前のΔδpが増 大する現象の表現,再載荷 時の指向点の精度向上)

変動荷重に対応可能な履歴 構成則の構築

コンクリートの圧縮強度と 引張付着強度の関係を 定式化

PBLの配置間隔がせん断耐 力,ずれ挙動に及ぼす影響 の定量化

実構造物の拘束状態を考慮 したせん断耐力推定式の 構築,ずれ挙動の解明

鋼コンクリート複合構造の非線形有限要素解析で問題となる異種材料の境界面およびずれ止めに関し,

特にPBLに焦点をあてて技術課題を抽出するとともに,実験的検討を通じてこれらを達成する.

・ 履歴構成則の調査,履歴 構成則の拡張(正負交番 載荷,繰返し載荷の対応)

・ 終局ずれ変位の予測手法 の確立

非線形有限要素解析や RBSMを用いた要素試験の 再現と同解析を用いた 破壊メカニズムの解明

載荷途中のX線CT撮影に よる破壊メカニズムの さらなる解明

粗骨材がδps0に及ぼす影響 の把握

疲労試験データの蓄積と S-N曲線の完成

変動荷重の影響を考慮した 疲労設計法の確立

謝辞

本論文は,著者が株式会社IHI基盤技術研究所構造研究部の在職中および法政大学大学院デザイン工学研究科都市環境 デザイン工学専攻博士後期課程の在学中に行った繰返し荷重を受ける孔あき鋼板ジベルの履歴構成則に関する研究の成 果を取りまとめたものである.

本研究を取りまとめるにあたり,主査をお引き受け頂きました法政大学大学院デザイン工学部都市環境デザイン工学科 の藤山知加子教授とは,2013年4月より共同研究を実施させて頂きました.長きにわたって細部までご指導を賜り,自 分の成長を実感できる充実した5年間となりました.また,一緒にイタリアのボローニャで研究発表できたのは,とても 良い経験,思い出となりました.心より厚く御礼申し上げます.また副査をお引き受け頂きました法政大学大学院デザイ ン工学部都市環境デザイン工学科の森猛教授,溝渕利明教授,宇都宮大学大学院地域デザイン科学部社会基盤デザイン学 科の中島章典教授に深謝の意を表します.森猛教授には,審査会において多くの的確なご指摘を頂きました.溝渕利明教 授には,コンクリートの実験設備や3Dスキャナ等の装置をご提供頂くなどご協力を賜りました.中島章典教授,同学科

のNguyen Minh Hai助教には,学会で有益な助言をして頂くとともに,直接ご指導を頂く機会を設けて頂きました.誠に

ありがとうございました.

法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科複合構造研究室の真部洋大氏,保阪拓実氏,松田隆志氏,時任秀哉氏 には,共同研究を通じて本研究に関連する様々な実験を実施して頂きました.また,教育技術員の辻正子氏には,実験準 備に多大なるご協力を頂きました.ここに感謝申し上げます.

このような研究の機会を与えて頂いた株式会社IHI執行役員/技術開発本部長の村上晃一氏,理事/技術開発本部副本 部長/基盤技術研究所所長の張惟敦氏,日常業務と博士課程の両立にご理解を頂くとともに,様々なご支援を頂きました 構造研究部の大竹泰弘部長,構造強度グループの高梨正祐課長,博士課程をスタートするきっかけを与えて頂いた構造強 度グループの山下洋一主幹,要所で技術的なアドバイスを頂いた構造強度グループの塩永亮介主査,山口隆一主査,他皆 様に心より御礼申し上げます.

株式会社IHI構造研究部の木村忠課長代理,奥瀬裕樹氏,谷口基樹課長代理,リブコンエンジニアリング株式会社の大 仲正秀部長,小松信夫課長,斉野純氏には,予算が限られる中で手間のかかる実験にご協力頂きました.おかげで,本論 文の根幹をなす有用な実験データを取得することができました.株式会社IHIインフラシステム開発部の岡田誠司部長,

齊藤史朗課長,戸田勝哉主査には,論文を投稿するたびに内容を確認して頂くなど,様々なご協力を頂きました.また,

都市高速部の鈴木統課長には,合成床版に関する貴重な資料をご提供頂きました.テスコ株式会社の佐藤之敬氏,横山智 子氏には,試験体のX線CT撮影時に全面的なご協力を頂きました.改めて感謝申し上げます.

最後に,休日もパソコンに向かってばかりの自分を文句も言わずに支えてくれた妻由香利には,感謝の言葉もありませ ん.この博士論文を作成するにあたり,多くの方々のご支援ご協力を賜りました.ここに改めて皆様に感謝の意を表し,

本論文の謝辞とさせて頂きます.

本論文の作成にあたっては,公益社団法人土木学会および公益社団法人日本コンクリート工学会の著作物である以下論 文を利用させて頂きました.ご協力を感謝致します.

・ 木作友亮, 藤山知加子, "正負交番載荷および疲労載荷を受ける孔あき鋼板ジベルのせん断ずれ挙動と破壊性状," 土木 学会論文集 A1(構造・地震工学), vol. 72, no. 5, pp. II_56-II_68, 2016.

・ 木作友亮, 保阪拓実, 藤山知加子, "X線CT法を用いた孔あき鋼板ジベルのせん断抵抗メカニズムの検証," 土木学会論