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第 4 章    孔あき鋼板ジベルの破壊に関する諸検討

4.3   シリーズ II ( 15 体の押抜き試験)

4.3.5   せん断破壊面の観察結果

(1) 3Dスキャナによる計測例

中島ら [21] は,3 次元レーザー変位計を用い,水平方向と鉛直方向に

0.2mm

間隔でレーザー光をあて,

せん断破壊面の凹凸の高さを計測している.測定したデータを連結して

2

次元のデータに換算し,

JIS B 0601 [22]に準じて算術平均高さを求めている.この結果から,算術平均高さが低い試験体ほど,最大せん断力が小

さくなる傾向を示すことを報告している.

本研究では,せん断破壊面に形成された凹凸を把握するため,コンクリートブロック側のジベル孔部を解 像度

130

万画素の

3D

スキャナで計測した.

3D

スキャナによる計測の例を図4.3.16に示す.ジベル孔

φ60mm

の領域を

3D

スキャナの計測範囲とした.凹凸のコンター図からは,孔あき鋼板との接触によって平坦にな った領域やえぐられて凹部を形成している領域を判別することができる.

図4.3.16 3Dスキャナによる計測の例(B-1試験体前面側)

(a) 拡大写真 (b) 凹凸のコンター図

孔あき鋼板との 接触で平坦に なった領域

凹部を形成して いる領域

(2)   せん断破壊面の凹凸の影響

図4.3.17に各試験体の凹凸高さの標準偏差σを示す.最大せん断力が最も大きい

A-2

は,特に高い標準偏

σを示すわけではないが,最大せん断力が

A-2

に次いで大きい

B-1

は,背面側の標準偏差σが他の試験体 よりも大きいことが分かる.図4.3.18には,最大せん断力Vpsudと凹凸の標準偏差σの関係を示す.標準偏差 σ は,前面側と背面側の最大値をプロットしている.他の試験体と比べて大きい粗骨材が孔内を貫通してせ ん断抵抗を発揮している

A-2

を除き,最大せん断力Vpsudと凹凸の標準偏差σの間には相関性が見られる.

次に,図4.3.19に示すように最大の高低差Hdを定義し,試験体毎の最大の高低差Hdを整理した(図4.3.20).

全体的な傾向は,図4.3.17から変化が見られない.しかしHdで評価した場合,B-1背面側の特徴がさらに際 立ち,他に比べて

2

倍程度大きいHdを示すことが分かった.

図4.3.17  凹凸高さの標準偏差σ 図4.3.18  最大せん断力Vpsudと凹凸高さの

標準偏差σの関係

図4.3.19  最大の高低差Hdの定義 図4.3.20  試験体毎の最大の高低差Hd

0 1 2 3

A-2 A-3 B-3 A-1 B-1

前面側 背面側 平均

Vpsud= 198.3kN

Vpsud=147.0kN

Vpsud=155.0kN

Vpsud=135.7kN Vpsud=177.7kN

凹凸高さの標準偏差, σ( mm )

0 50 100 150 200 250

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

最大せん断力, Vpsud( kN )

凹凸高さの標準偏差, σ( mm ) 最大

A-2

最も高い凸部

最も低い凹部

最大の高低差Hd

0 10 20

A-2 A-3 B-3 A-1 B-1

最大の高低差, Hd( mm ) 前面側 背面側 平均

Vpsud= 198.3kN

Vpsud=147.0kN

Vpsud=155.0kN

Vpsud=135.7kN Vpsud=177.7kN

B-1

背面側の孔内コンクリートの観察結果を図4.3.21に示す.B-1 背面側は,ジベル孔の下部が大きくえ ぐられて凹部を形成している.y=4.5mmの

X

CT

画像を確認すると,孔内コンクリートの下部にせん断破 壊面を跨る粗骨材が集中しているという特徴が確認された.このことが凹部の形成に寄与し,最大せん断力 Vpsudに影響を与えている可能性が考えられた.

そこで,

X

CT

の撮影結果を用い,

B-1

背面側の孔内コンクリートの下部に集中している粗骨材の形状を 調べた.その結果を図4.3.22に示す.ジベル孔下部にある円形換算で直径

10mm

以上の粗骨材に着目し,せ ん断破壊面を基点に試験体中心方向と外表面方向の突出長さを計測した.その結果,これらの粗骨材は,い ずれもせん断破壊面からそれぞれの方向に

3.7〜8.9mm

突出していた.この結果から,これらの粗骨材が引き ずられてモルタルマトリクスを破壊したり,抜け出したりすることによって,コンクリートブロック側に凹 部を形成したと考えられる.その過程で,粗骨材が破壊している可能性も考えられる.

以上の結果から,B-1 の最大せん断力が

A-2

に次いで大きいのは,せん断破壊面を跨る複数の粗骨材が凹 部に引っかかって支圧抵抗が働くことや,モルタルマトリクスや粗骨材の破壊にエネルギーを要することが 影響していると推察される.ここで,片方の突出長さが短い場合,粗骨材が容易に抜け出したり,ひび割れ が粗骨材を迂回したりすると考えられる.よって,十分なせん断抵抗を発揮するためには,両方向にある程 度の突出長さを有している必要があると推察される.粗骨材の突出長さは,図4.2.14に示した破壊メカニズ ムにおいて,孔内コンクリートのせん断抵抗,凹凸の噛み合わせによるせん断抵抗のいずれにも影響を与え ると推察される.

図4.3.21 B-1試験体(背面側)の 孔内コンクリートの観察結果

図4.3.22 B-1試験体(背面側)の 粗骨材の位置および形状