第 4 章 1024CdTe アレイ部の評価
4.2 単素子の評価
これまでに陰極側からガンマ線を当てていたのに対し、エッヂオン入射にしたことによる影響 を見るため、まず単素子の性能評価を行った。図4.5にCdTeの典型的なµτ値を用いて計算した、
エッヂオン入射時のスペクトルを示す。エッヂオン入射なので、電極間での光子の反応は完全にど の位置でも等確率で起こり、そこでの電荷収集効率がそのまま見える。図から分かるように、出 来るだけ高いバイアスをかけることが重要であり、例えば、素子の全ての領域において90 %以上 の電荷収集を実現するには、800 V以上の電圧を加えねばならない。
図4.5: 電極間が1.2 mmのCdTe素子についてエッヂオン照射とした場合に100 V, 400 V, 800 V でHechtの式から計算したスペクトル(µτ)e=2×10−3, (µτ)h=1×10−4と仮定した。
図4.6に、エッヂオン入射で用いた1.2 mm×1.2 mm×5 mmのCdTeダイオードのI-V特性を 示す。測定はKeithley237を用い、恒温槽中で行った。エッヂオン入射を採用した場合、結果とし て電極の面積は大きくなるためリーク電流は若干大きくなり、−20◦C, 800 Vでは200 pA程度と なる。
次に実際にこの素子でガンマ線のスペクトルを測定した。図4.7に大まかなセットアップを示 す。測定は、図4.7のように恒温槽中に素子とプリアンプCP5102BS(クリアパルス)を配置し、波 形整形増幅器としてはORTEC570、高電圧源としてはCP6641(クリアパルス)、MCAはpocket MCA8000A (Amptek)を用いた。図4.8にエッヂオン、フェイスオン両方の時について−20◦C, 800 Vのときの57Coののスペクトルを示す。122 keVのラインについてはテール成分に大きな違 いはない。
より詳しくみるために400 Vと800 Vで取得した57Coのスペクトルの122 keV部分の拡大図
4.2. 単素子の評価 23
図4.6: 1024CdTeアレイ用単素子(1.2 mm×1.2 mm×5 mm)のI-V特性。エッヂオン入射で用い るので、1.2 mm×5 mmの面に電圧を印加した。
を図4.9に示す。このとき、線源−素子間の距離の不定性のため、縦軸は122 keVのピークのカ ウント数で規格化した。図より、400 Vでは若干の差は見られるものの、800 Vを印加していれ
ば、122 keVのテール成分は入射方向によらずほとんど変わらないことが見て取れる。また、テー
ル成分の幅は400 V印加で、∼20 %, 800 V印加で∼10 %と、図4.5の計算とよく合っていること がわかる。これからエッヂオン入射であっても800 V程度を印加すれば、良いエネルギー分解能 が得られることが示された。
Thermostat Chamber
PreAmp Shaping Amplifier ORTEC 570 High Voltage CP6641
Pocket MCA
Amptek 8000A PC CdTe
Case RI
図 4.7: 単素子でのスペクトル測定のセットアップ
24 第4章 1024CdTeアレイ部の評価
図4.8: エッヂオン入射[左図]とフェイスオン(陰極)入射[右図]による57Coのスペクトル。印加 電圧: 800 V,波形整形時定数: 1µsec,温度: −20◦C。低エネルギー側の相違は、素子をマウントす るケースの厚さによる違いである。
4.3 1024 素子 CdTe アレイの評価
実際に我々が用いたCdTeアレイに使用した1024素子のリーク電流の分布を図に示す。常温、
700 Vを印加したとき、リーク電流の平均値は1.5 nAで、そのばらつきは1 nA程度である。用 いた素子は、10分間700 Vをかけ続けた時にリーク電流が10 nAを越えないという基準で選ば れた。
1024CdTeアレイからの信号の引き出しの概念図を図4.11に示す。CdTeの検出器と同じ大きさ の中に、電極と同じ間隔でスプリングピンが電極と同じ数だけ並んだスプリングコネクタをCdTe センサに押し付けて、電気的な接触を図った。基板側にも電極と同じ間隔で接触できる部分があ り、そこから信号が基板の逆面にあるファインピッチのコネクタに引き出されている。このコネ クタを利用すれば、アナログLSIと違った読み出しシステムに信号をつなぐことができる。
スプリングコネクタ、ピッチ変換基板、コネクタまでを含めた1024チャネルCdTeアレイのス ペクトル性能を確認するために、我々はこのコネクタに16本の同軸ケーブルがついた信号引き出 し基板をさした。同軸ケーブルは、潤工社のDAS502(96 pF/mの容量をもつ)を用い、その長さ は30 cm程度とした。
まず、スプリングコネクタと基板を介して、センサの電極からの導通が取れているかを確かめ るために、CdTeダイオードに順方向の電圧がかかるように、共通電極側に+5 Vを印加し、電流 が流れるかを各チャネルごとにチェックした。その結果、2列については、高電圧をかける電極が 接触していないことが分かった。
これを10チャネルハイブリッドプリアンプアレイ4セットと、NIMビン対応の波形整形増幅器、
そして、VME-ADCで構成される「40チャネルスペクトル取得システム」に接続(図4.12)し、32 チャネルずつ信号を読み出した。このときは、検出器の前には、タングステンでできたコリメータ を設置してある。このコリメータは1.2 mm×1.2 mmの穴がちょうどCdTeアレイの大きさにあ うように32×32個開けられている。検出器からプリアンプまでは少しでも低温にするために恒温 槽の中に入れ冷却するが、セットアップの都合上、32回に分けて測定する必要があり、そのたび に同軸ケーブル基板をつけかえる作業を伴うため、結露を気にせずに作業できる+10◦Cに恒温槽 を設定し、試験を行った。前節で示したように、本来は800 Vを印加すべきではあるが、+10◦C におけるリーク電流は500 Vで典型的に1 nAに達してしまい、これ以上のバイアスでは分解能 の劣化を招いてしまう。そのため、本実験では印加電圧は500 Vとした。素子の個性の違いから、