第4章 ISO/JIS Q 10012 の企業内活用のための手引きと考察
4.2 ISO/JIS Q 10012 の自己適合宣言(制度)の推進方法
1) 適正計量管理事業所(およびそれと同等の計測管理レベルを持つ事業所)からの展開 自己適合宣言の方法については、すでに“1.5章:ISO 10012のJIS制定経緯と制定後の 展望”で述べたが、その進め方については、すでに日本においては適正計量管理事業所制度 があり、この制度は国際規格であるISO/JIS Q 10012の基本的な考え方に多くの共通点を もつ。また、適正計量管理事業所制度は、日本における多くの企業の計測管理の基本とな っていることから、適正計量管理事業所指定事業所および適正計量管理事業所に順ずる管 理レベルを持つ事業所からの展開が無理のない方法であると思われるためその方法につい て提案する。
<参考>計量法設立時の精神
適正管理事業所制度は、その前身の計量器使用事業所制度が計量法として制定された昭 和26年から、本年で61 年となり、企業の経済活動がグローバル化することにより、国際 的なもの変えていく時期にきている。しかしながら適正管理事業所制度の精神は決して古 くなってはいない。以下に計量法の設立当時の、指定制度設立の目的を紹介する。
2)自己適合宣言の問題点とその解決
「制度に対する社会的信用の確保」が自己適合宣言の最大の問題点であるが、都道府県
『適正な計量の実施を確保することは計量法の最大眼目であり、そのため一方では計量の 安全の確保という面から種々の規制を設けたが、他方適正な計量が生産技術の進歩、企業 運営の合理化、人命財産の保安など各分野において不可欠の重要性を持つことにかんが み、計量管理を助長するための制度を設けている。
計量管理の方策としては、
(イ) 使用している計量器を最適の状態に整備すること。
(ロ) 如何なる箇所において如何なる計量器を使用すべきかを検討すること。
(ハ) 計量する箇所における適切な計量の精度を決定すること。
(ニ) 計量器の使用の方法を適正にすること。
(ホ) より合理的に計量器を改善すること。
が挙げられるが、巷間喧伝されている能率管理、品質管理、熱管理などは計量管理が実施 された上で初めて可能であるといい得る。しかし、計量管理は、本来使用者そのものの自 主的な実施にまつべきであり、その担当者たる計量士の制度及び計量器を使用する事業所 についての指定の制度を設けるに止めている。』
計量法立案担当者:通商産業省重工業局計量課課長 高田忠成
“計量管理の指針 ―その考え方と進め方―”
(社)計量管理協会偏 昭和47年8月発行より
知事が指定する適正計量管理事業所(およびそれと同等の計測管理レベルを持つ事業所)
が、ISO/JIS Q 10012の自己適合宣言に挑戦することにより、社会的信用の確保が可能と
なる。また、特に適正計量管理事業所においては、その事業所の計量管理の核となって活 動する適正計量管理主任者の設置が計量法で義務付けられており、ISO/JIS Q 10012を組 織として展開する基盤ができている。またISO/JIS Q 10012の自己適合宣言する企業にと っても、企業がグローバルにその経営活動を進めていく中において、その企業の計測マネ ジメントシステムを国際的に通用するものにしていくことができる。
3)自己適合宣言の手順およびその後の展開
適正計量管理事業所およびそれと同等の計測管理レベルを持つ事業所の ISO/JIS Q
10012自己適合宣言を進めるために、次の手順を提案する。
(ステップ1)計量技術者に対する教育
適正計量管理事業所およびそれと同等の計測管理レベルを持つ事業所における、計量関 係者(計量士、計測計量技術責任者)に対し、講習会を開催しISO/JIS Q 10012に関 する理解を深め、ISO 9001取得企業あるいは中国進出企業を中心にして推進対象の事 業所を選定する。同時に、行政機関(各県の計量検定所、計量センター)に対しても同 様の勉強会を開催する。
(ステップ2)経営者にたいするアピール
推進事業所の経営者に対し、ISO/JIS Q 10012のメリット(① 品質、環境、安全面の リスクの未然防止、②マネジメントシステムの有効な運用と効率の向上、③顧客よりの 計量のグローバル化要求への対応、④適正な計測管理システム構築による品質保証レベ ルの向上、⑤適正計量管理事業所の機能・役割の拡大)をアピールし、事業所としての 取り組みを方針として決定する。
(ステップ3)事業所内での活動
推進事業所において、適正計量管理主任者に対し教育を行い、適正計量管理主任者がチ ェックリストにより自己が担当するプロセスを監査できるようにするとともに、互いの プロセスに対し、内部監査を行いISO/JIS Q 10012への適合までレベルアップを行う。
(ステップ4)自己適合宣言
ISO/JIS Q 10012の要求事項への適合が満足できた時点で、そのレベルを確認するため
に、指導団体としての第三者機関(日本計量振興協会あるいは、各県の計量連合会等)
の評価を受ける。同時に各県の計量検定所、計量センターの計量法要求事項への適合へ の審査も受審し、問題がないと認められた時点で自己適合宣言を行う。また、この時点 で適正計量管理事業所でない事業所は、同時に適正計量管理事業所として認められるも のとする。
(ステップ5)管理レベルの維持とグローバル適正管理事業所制度の設立
自己適合宣言をした事業所のうち、ISO/JIS Q 10012を適切に維持し、その制度を効果
的に運用し、顧客満足を達成して経営に役立てていることが、定期的な立ち入りあるい は報告等により確認される事業所を、グローバル適正管理事業所として認定する制度を 設ける。(各県の計量連合会の推薦により(社)日本計量振興協会が認定してもよい)
(ステップ6)経済産業大臣表彰への挑戦
ISO/JIS Q 10012による顧客満足を経済産業大臣表彰の選定基準とし、グローバル適正
管理事業所の中から、経済大臣表彰にふさわしい事業所を選定し表彰する。
このような施策により、日本の産業基盤はより確実なものとなると同時に、ISO/JIS Q
10012 の導入は、日本の消費者に安心・安全を与えるのみならず、世界の顧客に満足を与
えうるものとなる。