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刺激強度とパルス数

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 76-80)

第 4 章 総合討論及び展望

4.1 刺激強度とパルス数

本研究では、rTMS により抑制効果が誘発されるとき、より強い刺激強度、

より多いパルス数で刺激を行うことでその効果が顕著に生じることが分かった。

また、刺激前のMEPの特徴量とrTMSの刺激効果の間には、負の相関があるこ とが示された。更に、rTMSを与える前の MEP の立上り潜時と rTMSの刺激効 果の相関に関して、強い刺激でパルス数が多い時、相関の値が小さいことが分 かった。近似モデルに関して、rTMS の抑制効果が誘発されにくい群において、

弱い刺激強度の時、促進効果が誘発された。一方、rTMSの抑制効果が誘発され やすい群において、強い刺激強度、パルス数が多い場合、抑制効果がより顕著 に生じることが分かった。

rTMS の刺激強度に関して、刺激強度が閾値以上の時、刺激効果がより顕著 により長い時間誘発されることが報告されている(Fizgerald et al., 2002)。この機 序として、閾値以上の刺激は、閾値以下の刺激に比べ、M1におけるより多くの 細胞集団に影響を与えること(Muellbacher et al., 2000)や、閾値以上の1 Hz rTMS では、隣接する運動前野背側部に影響が広がり、より強い抑制効果が生じるこ と、また、閾値以上のrTMSにより筋肉が収縮し、再求心性のフィードバックが 生じる(Lang et al., 2006)など、様々な機序があるとされている。

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パルス数については、従来の研究より、90% MTの強度で1 Hz 1600 pulsesの rTMSは1 Hz 240 pulsesに比べ、MEPの振幅を顕著に減少させること(Maeda et al., 2000a)や、95%RMT 1 Hzの刺激条件のもとで1500 pulsesのrTMSは、150 pulses に比べ抑制効果が強いことが報告されている(Touge et al., 2001)。

また、誘導電流の流れる方向に対し、軸索が垂直方向にあると発火しやすい ことが報告されており(Sun et al., 1998)、更に、軸索における、シュワン細胞に磁 場をかけると磁界に対し垂直方向に細胞が移動することが報告されている (Eguchi et al., 2003)。また、本研究の結果では、刺激強度、パルス数を大きくす ることで、MEP の抑制が顕著に生じていることから、そうした刺激条件におい ては、刺激範囲が広がり、rTMSによる磁場の影響を受けるニューロンの数が増 加したことが考えられる。

上記の機序から、本研究における計測結果及び近似モデルおいて、より強い 刺激強度、より多いパルス数でrTMSを与えた時、抑制効果が生じたと考えた。

更に、刺激強度が強く、パルス数が多い時ほとんど全ての被験者において抑制 効果が誘発されたため、MEP の立上り潜時とrTMS の刺激効果の相関が小さく なったと考えた。

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4.2 MEP

の振幅と立上り潜時

本研究では、rTMSを与える前のMEPの振幅と立上り潜時が刺激効果に影響 を与えていることが分かった。特に、振幅が小さく潜時が早い被験者では、1 Hz のrTMSにより抑制効果が誘発されにくく、逆に、振幅が大きく潜時が遅い被験 者では抑制効果が誘発されやすいことが分かった。潜時が遅くMEP振幅が大き い被験者は、I3-waveの発火効果を含んだMEPであると考えられる。1 HzのrTMS は発生源が大脳皮質表層付近と推定されている I3-wave に影響を与える報告や

(Lazzaro et al., 2010)、また、その影響はMEPの振幅の変化量に関係していると

いう報告(Lazzaro et al., 2008)がある。I3-waveを誘発しやすいAnterior-Posterior 方向の TMS による MEP の立上り潜時を調べることで、rTMS(TBS)の刺激効果 が分かれる事を示した報告(Lateral-Midline 方向の潜時を基準として解析)もある

(Hamada et al., 2013)。よって、MEPの振幅が小さく、潜時が早い被験者におい

ては、I3-waveを誘発するニューロンが刺激されにくく、そのため抑制効果が十 分に生じなかったと考えられる。逆に、振幅が大きく潜時が遅い被験者におい ては、I3-waveを誘発するニューロンが刺激されやすく、その結果、抑制効果が 顕著に生じたと考えられる。

また、I3-waveを誘発するニューロンの発火数が1 HzのrTMSにより抑制さ

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れたとMEPの振幅は減少する。誘導電流の流れる方向に対し、軸索が垂直方向 にあると発火しやすいことが報告されており(Sun et al., 1998)、更に軸索におけ る、シュワン細胞に磁場をかけると磁界に対し垂直方向に細胞が移動すること が報告されている(Eguchi et al., 2003)。また、本研究の結果では刺激強度を大き くすることで、MEP の抑制が顕著に生じていることから、刺激範囲が広がり、

rTMSによる磁場の影響を受けるニューロンの数が増加したことが考えられる。

上記の機序より、軸索の方向がrTMSにより磁場の影響を受け、発火するニュー ロンの数に変化が生じたことからMEPが減少したことが考えられる。また、刺 激前の軸索の方向及びニューロンの発火数の違いが、各被験者における個人差 を示しており、rTMSを与える前のMEPの振幅と潜時に現れた可能性がある。

加えて、これらのMEPの特徴量とrTMSの刺激効果には負の相関があった。

1 HzのrTMSによりMEPの振幅が減少することが一般的に知られているが、刺 激条件(Maeda et al., 2000a; Berger et al., 2011)や被験者の違い(Gangitano et al.,

2002)により1 HzのrTMSによりMEPの振幅が増加したという相反する報告も

存在する。これらの報告における、刺激条件や被験者の違いは本研究における 状況と一致することも考えられる。また、MEP の振幅が小さく、潜時が遅い被 験者は興奮性のシナプスの活動が強く、抑制性のシナプスの活動が弱かったた め、促進効果を誘発する結果になったと考えた(Pascual-Leone et al., 1994c)

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