Colin
らは前述したBigot de Préameneu
の立法院における発言を引用しつつ,時効期間の合意による延長は,原則として,仏民旧
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条が維持することを目的とする公序を理由 に認められないとする。ただし,破毀院が示した通り,債務の存在の有無に関して別訴にて 審議がなされており,訴えることができない場合において,一時的に時効がその進行を停止 すると取り決めることを妨げるものはなにもないと述べる。そして,当該合意は公序を侵害 するものではなく,債権者の権利と裁判所の利益(intérêt de la justice)への配慮のために なされるものであるため,そのような合意は,尊重されなければならないとし,⑯判決が合 意による時効の進行停止を認めたことを例に挙げる143。Planiol
らは,時効期間の合意による延長について,まず,下級審(⑯⑰判決)が採用する合意による時効の進行の停止を認めることと時効の事前放棄を認めることの差異はある のかとの疑問を呈し,そのような合意が有効なのであれば,時効期間を延長する合意そのも のも有効となってしまうとして批判する。他方で,破毀院が採用する「訴え得ざる者に対し ては時効は進行しない」という法原則については,法定される時効の停止原因に該当する場 合と同じように考えることができ,それは法が当初から予定していることであるため認め られるとする144。
Marty
らは,原則として仏民旧2220
条により時効期間の合意による延長は認められないとしつつ,破毀院が間接的な延長を認めていると言及するにとどまる145。
(2)まとめ
以上みてきたように,Baudry=Lacantinerieら,Colinら,Guillouardは,破毀院及び控 訴 院 で 認 め ら れ た 合 意 に よ る 時 効 の 進 行 停 止 を 有 効 で あ る と し て い る 。
Baudry=Lacantinerie
らは,債務の承認と合意による時効の進行停止の類似性,すなわち,債務の承認により時効の中断が生じ,結果的に時効期間の満了が遅れる場合と時効が合意 により一時的に進行を停止することを同様であると評価する。そして,当該合意が公序に反 しない場合には有効であるとして,⑰判決を挙げる。ここで述べられている公序とは,おそ らく普通時効期間の直接的延長が認められない場合に言及されていたものと同じく,永遠 の訴権を認めず,債務を弁済した者を証拠保全の負担から解放することを指しているもの
142 Guillouard, supra note 123, no 322, p.293.
143 Colin et Capitant, supra note 87, p.137.
144 Planiol et Ripert, supra note 126, no 1350, p.763.
145 Marty et Raynaud, supra note 127, no 867, p.869.
そのほか,Mazeaudら(H. Mazeaud et al., supra note 66, no 1192, p.1198.)やTerré ら(Terré et al.,
supra note 65, no 1472, p.1387.)も時効期間の合意による延長は原則認められず,例外的に間接的延長が
認められるとする。
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と理解することができる。また,
Colin
らやGuillouard
らも同様に,合意による時効の進行 停止を有効であるとする。他方,Planiol らは,破毀院の立場は支持するが,控訴院の判断についてはこれを否定し ている。その理由として,破毀院で認められた事案は,「訴え得ざる者に対しては時効は進 行しない」とする法原則があてはまる場面であるが,控訴院で問題とされたのは,当事者が 合意により意図的に時効の進行を停止させた場面であったからであると考えられる。彼ら は,このような合意を有効とすることは,直接的に時効期間を延長していることと同じでは ないかとして,批判する。
このように,破毀院の採る,債権者の権利行使が期待できない場合において時効の進行の 停止を認めるとの考えは,学説も一致してこれを採用している。他方,下級審の行った,当 事者の合意により一時的に時効の進行が停止するとしても一定期間の経過後に再び時効が 進行するため,そのような合意は仏民旧
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条に抵触せず有効であるとの判断は,一部学 説を除いて有効であると考えられていた。第4節 分析
本節では,これまで概観してきた旧フランス時効法における時効期間の合意による変更 に関する裁判例・学説を基に,合意の有効性の根拠について検討する。まず第
1
款において 時効期間の合意による延長について分析し,次に,第2
款において時効期間の合意による 短縮について分析する。第
1
款 時効期間の合意による延長(1)時効期間の直接的延長
時効期間の直接的延長が認められるか否かの判断基準は,仏民旧
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条に反するか否か ということが中心的であったといえるであろう。また,これにくわえ,訴権の性質(時効期 間の性質)が影響してくるものと考えられる。まず,裁判例にみられた瑕疵担保責任に関す る期間,次に,学説においてみられた短期消滅時効期間について分析する。裁判例において唯一みられた事例が,建物の建築者・請負人が負う瑕疵担保責任に関する 期間を延長するというものであった。⑬決定⑭判決で言及されているように,この期間は
2
つの性質を帯びるものであると考えられる。まず一方で,建物の建築者・請負人の負う責任 に関する消滅時効146期間は建築物に対する保証(garantie)としての性質を帯びるものであ るという理解である。他方で,期間の経過により,建物の建築者・請負人はそれ以上,訴追 されることはないというものであり,こちらは一般的な消滅時効の効果として捉えられる ものである。これらのうち,裁判例・学説では特に,保証期間としての瑕疵担保責任に関す146 日本法においては,瑕疵担保責任に関する期間は除斥期間とされる(平野裕之『コア・テキスト 民法
Ⅴ 契約法』〔新世社,2011年〕243頁など。)が,フランスにおいては,請負の瑕疵担保責任に関する期 間は「時効(prescription)」とされる。
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る期間を重視し,当事者がこれを合意により延長することができるとしたのではないであ ろうか。まさに,建物の品質をいつまで保証するかということに関する期間は当事者の合意 にゆだねられるものと考えられるからである。その上で,おそらく,消滅時効としての期間 の性質もあることから,公序に反しなければ,30 年までは当該期間を延長することができ ると解釈されていたのではないであろうか。すなわち,保証期間としてこれを法定されてい る
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年の期間よりも長く設定することは当事者の合意にゆだねられるが,その限界を画す るため,仏民旧2220
条の維持しようとする「公序」,すなわち,永遠の訴権を認めず,債務 を弁済した者を証拠保全の負担から解放するとの趣旨を侵害しないという条件が付された ものと理解できるであろう。そうすると,瑕疵担保責任に関する期間の直接的延長に関して は,合意の対象となった期間の性質および権利の性質により,当該合意の可否が判断されて いたこととなる。次に,仏民旧
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条~同旧2273
条に規定された短期消滅時効期間の延長について分析 する。裁判例はみられないものの,学説においては,これら短期消滅時効期間を延長するこ とができるか否かの判断が分かれていた。その際,その分かれ目となったのが,これら短期 消滅時効期間が公序に基づく期間であるか否かというものであった。短期消滅時効期間の 直接的延長を認める見解は,「弁済の推定」に基礎を置くとされる短期消滅時効は公序に基 づかない時効であるとして,仏民旧2220
条の維持しようとする「公序」,すなわち,永遠の 訴権を認めず,債務を弁済した者を証拠保全の負担から解放するという目的に基づく一般 の時効の時効期間である30
年までは,時効期間を延長することができるとする。他方で,直接的延長を認めないとする少数説は,たとえ短期消滅時効であっても,裁判所による簡便 な紛争解決という「公序」に基づく制度であるという点を強調する。このように両学説を見 てみると,一方は短期消滅時効制度の「弁済の推定」という点に基づき,また,他方は「簡 便な紛争解決」という点に基づき,その有効性の判断を行っていることから,いずれも消滅 時効制度の目的に基づき,その判断を行っているといえる。実際に合意の有効性の判断にお いてどの点を強調するのかという問題は残されているが,消滅時効制度は公序のための制 度であるからという一括りでの議論はなされていないという点は注目に値するのではない であろうか。
(2)時効期間の間接的延長
裁判例において,時効期間の合意による間接的延長は有効であるとされてきており,その 際に考慮されていたのは,(a)当事者が訴えることのできない状況,すなわち,中断手続が とれない状況にあったこと,(b)時効の中断・停止に関する規定により生ずる効果との類似 点であった。
先述のとおり,権利の存在に関する判断が別訴に係属している場合(⑮⑱判決)や当事者 が仲裁手続きに入っている場合(⑯判決),権利の発生から一定期間は時効が進行しないと