檀信徒のお葬式に対する意識
はじめに当研究班以外の機関が実施したアンケートについて触れ
てお きた い
︒
読売新聞社が平成初年5月口日から凶日に行なった﹁年関連続世
日本人﹂の﹁宗教観﹂に関する調五によれば︑何かの宗教論調査
を信じている人は全体のお・1%で︑逆に信じていない人は冗・9%
に及 ぶと
一言
尽 つ ︒
﹁あなたは死んだ人の魂は︑どうなると思いますか
︒﹂
との 質問 での 回答 は︑
﹁消滅する﹂が口・6%︑﹁魂は存在しない﹂
が9・0%で︑合わせてお・6%が︑死者が何らかの形で存続する
事を否定する回答を寄せている︒回答者自身の葬式について﹁葬式
は形式にとらわれない無宗教の葬式にしてほしいと思いますか︑そ
うは思いませんか︑それとも葬式はしなくてよいと思いますか︒﹂
の質 問に は
8・
1% が﹁ 葬式 はし なく てよ い﹂ と答 え︑
﹁形 式に とら
われない無宗教の葬式にしてほしい﹂との回答は実にお・1%に及
んで いる
︒ また朝日新聞社が平成辺年9月から叩月にかけて行なった﹁死生
観﹂についての世論調査にも同様の質問がある︒
﹁あ なた は︑ この
世とは違う死後の世界や﹁あの世﹂があると思いますか︒
﹁あ
の世
﹂
はないと思いますか︒
﹂と の質 問に 必% が﹁ ない と思 う﹂ と答 え︑
﹁あ ると 思う
﹂の却%に迫ろうとしている︒死後に霊魂が残ると思うか
との質問でも﹁そうは思わない﹂が必%︑﹁霊魂が残る﹂が必%と︑
死者 の
霊魂が死後も存続する事を否定する回答の比率は相当
に高
ぃ︒回答者自身の葬儀についても当然この影響が顕れる︒自分の葬
儀を
﹁しなくてもよい﹂とお%が答え︑その形式についての質問で
も﹁宗教色を抜いた形式にしてほしい﹂が制%と︑﹁なんらかの宗
教に基づいた形式にしてほしい﹂と答えた回答の4%を遂に上回つ
てしまっている︒宗教者としては危機感を持たざるを得ない数値で
ある
︒ちなみにこの調査では﹁あなたには︑家族の葬儀や追悼行事
について相談できる宗教者(僧侶・牧師・神父など)がいますか︒﹂
との 質問 があ るが
︑
いると答えた人はお%に過ぎない︒6割以上の
方は︑葬儀や追悼行事について相談できるような宗教者との関わり
を持っていないのである︒
では浄土宗の檀信徒は現在﹁お葬式﹂をどのような意味で捉え︑
どのような意識を持っているのか︑平成口年
9
月に当研究班が実施した檀信徒対象の﹁お葬式に関するアンケー
ト﹂ (以 下︑
﹁檀 信徒 ア
ンケ
lト﹂と略す)と︑平成幻年3月に実施した﹁お葬式に関する
寺院対象(以下︑﹁寺院アンケー
ト﹂ と略 す)
﹂の
アン
ケ
ート調査
二
つの アン ケ
ートの結果から見えて来た﹁檀信徒のお葬式に対する
意識﹂に関する事柄を報告したい︒なお紙幅の関係からここでは︑
全教区の結果を中心とする︒教区や地域による特性は第一章をご覧
頂き たい
︒また年代差や性差による檀信徒の意識の違いなどは事項
以降 に譲 る
︒
{自 分の お葬 式は して ほし いか
︼
冒頭の読売新聞の調査にある︑自分のお葬式を﹁葬式は形式にと
らわれない無宗教の葬式にしてほしいと思いますか︑そうは思いま
せんか︑それとも葬式はしなくてよいと思いますか︒﹂という質問
への回答は以下の通りであった︒
第2章分析研究編
‑位
﹁そ うは 思わ ない
﹂
必・
5
%
2位﹁形式にとらわれない無宗教の葬式にしてほしい﹂お・
1
%
3位
﹁葬 式は しな くて よい
﹂
8・1%
4位
﹁答 えな い﹂
4・ 3
%
浄土宗の檀信徒はどうか︒以下が当研究班の調査結果である︒
‑位
﹁必 ずし てほ しい
﹂
54
%
2位
﹁で きれ ばし てほ しい
﹂
34
%
3位
﹁ま だわ から ない
﹂
% 7
4位﹁してほしいとは思わない﹂
% 3 5位
﹁無 回答
﹂
% 1 5位
﹁そ の他
﹂
1
%
﹁檀信徒アンケート﹂の回答者は︑平成元年以降に喪主を努めた
浄土宗の檀信徒で︑ご住職を通して配布されたものであるから︑あ
る程度菩提寺と近しい関係が築かれている方々と考えられる︒一方
読売新聞の調査対象は性別年齢を問わない不特定多数を対象として
いヲ 心
︒
読売新聞の調査では﹁そうは思わない﹂の必・5%が無宗教でな
い葬式を望む意見である︒浄土宗の檀信徒は1位と2位を合わせて
8 7
∞∞%が﹁必ず﹂もしくは﹁できれば﹂してほしいと望んでいる︒
読売新聞の調査で﹁葬式はしなくてよい﹂と明確に否定した回答
が幻%なのに対して︑檀信徒の全教区平均は3%である︒
しか
し︑
特に東京・神奈川の2教区では明確な否定意見が8%と︑読売新聞
の調査とほぼ同数値が出た︒近年喪主を務めたにも関わらず︑こう
した結果が顕れることは重く受け止めるべきであろう︒自身が経験
したお葬式に価値を見出せなかった︑あるいは何らかの不満を持つ
ている意識の顕れとも考えられるからである︒また﹁まだわからな
い﹂という不確定的な意見も7%ある︒
︻お 葬式 を望 まな い理 由︼
浄土宗の檀信徒の中で︑自分のお葬式を﹁してほしいとは思わな
い﹂その理由上位3位は以下の通りである︒
‑位﹁遺族の手を煩わせたくないから﹂
58
%
2位﹁お葬式に意味を見いだせないから﹂
21
%
3位
﹁費
用が
高い
から
﹂
% 8
金銭的な理由が高い位置に上るかと予想されたが︑実際は3位で
それほど多くはない事が明らかとなった︒
﹁お
葬式
に意
味を
見い
だ
せないから﹂もまた高い比率を占めそうだが︑意外にも第1
位は
﹁遺
族の手を煩わせたくないから﹂で6割近くを占めている︒東京・神 奈川では白%と更に高い︒自らが喪主を務めた経験から︑遺族の身
心の負担を軽減してやりたいという﹁思いやり﹂からか︑あるいは
家族の関係が希薄になっていて迷惑をかけたくない︑悪く言
えば
﹁世
話になりたくない﹂間柄であるかなどが具体的な理由だろうか︒
2位の﹁お葬式に意味を見いだせないから﹂が2割を超えている
事も見逃せない︒儀式の執行や法話の内容など︑僧侶の職分に大き
く左右される部分だからである︒ただし︑この理由は僧侶の努力次
第では︑今から取り除く事の出来得る部分であるとも言
える
︒
﹁ 自
分の時もあの人に引導を渡してもらいたい﹂と感じて頂けるお葬式
を︑どなたのお葬式でも執行出来ているかどうか︑今一度問い直す
時が来ている︒
︻ど んな お葬 式を 望む か}
自分のお葬式を﹁必ずしてほしい﹂﹁できればしてほしい﹂と答
えた方への質問﹁あなたは︑どのような形式のお葬式を望みますか︒﹂
の結
果で
ある
︒
‑位﹁僧侶を招いた家の宗旨である浄土宗の葬式﹂
打%(2170
人)
2位
﹁遺
族に
まか
せる
﹂
回
% ( 512
人)
3位﹁自分の希望する宗教による葬式﹂
1
% ( 3
人7
)
4位
﹁無
回答
﹂
1
% ( 2
人)8
5位﹁
宗教
色の
ない
お別
れ会
﹂
1
% ( 2
1人
)
6位
﹁ま だわ から ない
﹂
M%(
1
1人)
5位
﹁そ
の他
﹂
ω%( 6
人)
檀信 徒の
8割近くは︑近年家族を送った時と同じく︑浄土宗の僧
侶を招いてのお葬式を希望している︒地域的には﹁五重相伝﹂﹁授
戒会﹂の開娃率の高い近畿センターでは担%と更に高く︑東京︑神
奈
川の
2教区では刀%と全教区より若干低かった︒
また
2割近い檀信徒が自分のお葬式の形を﹁遺族にまかせる﹂と
回答している︒ならば︑解決策は遺族への﹁信仰の継承﹂を図る事
であろう︒お葬式の際の教化のあり方は︑次世代の浄土宗檀信徒の
お葬式のあり方を左右すると心得て︑真剣に取り組む事が望まれる︒
︻お
葬式
の意
味︼
回答者が喪主として家族を送り出したお葬式での︑最も大きな意
味を尋ねた質問の上位3位は以下の通りであった︒
‑位
﹁故 人を 極楽 浄土 へ送 る﹂
33
%
2位
﹁故 人と の別 れ﹂
却
%
3位
﹁故 人の 冥福 を祈 る﹂
28
%
第2章分析研究編 上位3位はほぼ括抗した結果である︒﹁故人を家の先祖にする儀
式﹂﹁故人が自分らしさを表現する最後の機会﹂といった他の選択
肢はいずれもわずかな数値で﹁残された遺族の心を慰める﹂の回答
は1%である︒
ところが回答者自身のお葬式の意味についての質問では︑以下の
ように順位に差が現れているのである︒
‑位
﹁家 族や 友人 との 別れ
﹂
43
%
2位﹁極楽浄土へ送ってもらう﹂
35
%
3位﹁自分の冥福を祈ってもらう﹂
11
%
家族を送る場合に対して︑自分が送られる側の場合は︑言わば﹁告
別式﹂的意味合いに重きを置く人が増えている事が分かる︒
つま
り︑
﹁極楽往生﹂という宗教的意味より人間関係上の別れの儀礼の意味
が優 先さ れる とい ろ事
・で ある
︒
では教師の側はお葬式の意味をどのような重点順位で伝えている
かを︑﹁寺院対象アンケート﹂から見てみよう︒回答は第1位から
3位までを重点を置く順に選択する方法を取った為︑第1位に3ポ
イント︑第2
位に
2ポイント︑第3位に1ポイントを付け︑総合ポ
イント数での比較とする︒(以下ポイントはP
で表 示す る)
8 9
‑位﹁故人を引導し︑極楽往生を薦める﹂つ
dq Jq Lq LD l
2位
﹁故
人の
冥福
を祈
る﹂
つ 臼
Fo qL nb PA
3位﹁残された遺族の心を慰める﹂2314P
4位
﹁故
人と
の別
れ﹂
2151p
教師は上のような順で比重を置いてお葬式の意味を伝えている︒
檀信徒の意識と比べて︑﹁残された遺族の心を慰める﹂に重きを置
いているのが特徴と言
える
︒しかし︑檀信徒が家族のお葬式の意味
として︑これを選択したのはわずか1%である︒あくまでも遺族に
とってお葬式の中心は︑故人その人であり︑自分の為の儀式とは思つ
てい
ない
とい
︑ユ
事が
明ら
かに
なっ
た
︒
{死 後の 存在 }家 族の 場合
﹁故
人の
霊は︑あなたにとってどのような存在であると思います
か︒﹂の質問には︑檀信徒のお%と圧倒的多数が﹁見守ってくれて
い る
﹂ ︑
言わば守護的存在であると答えている︒前述の読売新聞の
調査
では
︑﹁
消滅
する
﹂﹁
魂は
存在
し・
ない
﹂と
いっ
た故
人の
死後
の存
続や︑魂の存在を否定する人が4分の1以上あり︑朝日新聞の調査
では︑魂が残る事を否定した回答が位%と高かった︒しかし︑浄土 宗の檀信徒で﹁霊など存在しない﹂と答えた人は全教区では1
%で
あり︑北海道︑東北︑関東︑北陸︑中四国の5教化センターではO%
であ
る
︒﹁霊﹂とか﹁魂﹂といった形ではないにしても︑遺族を見
守る存在として捉える回答が多く︑わずかながら︑﹁困った時に助
けてくれる﹂1%︑﹁供養しないとよくないことが起こる﹂2%と︑
能動的に働きかけてくる存在とした回答もある︒これらを含めると
浄土宗の檀信徒の約9割は︑亡き人を死後も何らかの形で遺族との
関係を保ち続けられる存在と認識している︒
︻死 後の 存在 }自 分の 場合
では自分の場合はどうか︒
﹁あ なた は亡 くな った 後︑ あな たの 霊は
︑
どこに往くと思いますか︒
﹂の 回答 では
︑全 教区 で臼
%が
﹁極 楽浄 土﹂
を選んでいる︒﹁極楽浄土﹂を選んだ回答は関東
・東 海の 各セ ンタ ー
で日1ω%と若干低いものの︑北海道や九州では7割を超える︒こ
れは教師が説いた通り受け取ってくれた檀信徒の層と見て良い︒
しかし︑故人(家族)の存在を問うた時﹁霊など存在しない﹂は
1%とごく少数だったが︑自分自身の死後の質問では﹁死んだら何
もなくなる﹂がロ%と増加するのである︒ごく近い親族のお葬式で
喪主を務めた方にも関わらず︑その1割以上が存在否定の回答を寄
せた事には危機意識を持つ必要がある︒