第3章 冒認商標が韓国で出願されたときに利用できる規定と手続き
第2節 冒認商標の拒絶および無効に適用される規定および要件分析
2.1. 冒認商標を発見したときの段階的検討
上述の不使用取消審判のほか、外国企業の立場において自身が使用する商標と類似 する商標が韓国に出願又は登録されたことを発見した場合には、次の事項を段階的に チェックして対応案を模索する必要がある。
冒認商標が自身の韓国先出願又は先登録商標と同一又は類似 し、また指定商品が同一又は類似するか?(商標法第34条第1項 第7号、第35条第1項)
(YES)自身の商標の周知性に関係なく冒認商標の無効を主張 することができる。
冒認商標が韓国に出願又は登録されたことを発見した場合は、まず冒認商標より先 に出願された自身の商標登録の有無、そして冒認商標が自身の先登録商標の権利範囲 に属するか否かを検討しなければならない。
自身の先出願/先登録商標を引用商標として提起することができる無効請求は、いわ ゆる「類似範囲」に限り認められる。すなわち、無効対象商標と引用商標が互いに商 標が類似し、またその指定商品が類似することを要件とする。
なお、冒認商標の出願日より先に韓国における先出願/先登録商標がない場合には、
冒認商標の出願人と取引関係がないか検討する。
STEP1
51 同業、雇用等の契約関係や、業務上の取引関係又はその他の関 係を通じて他人が使用したり、使用の準備をしている商標であ ることを知りながら、その商標と同一又は類似の商標を同一又 は類似する商品に出願したのか?(商標法第34条第1項第20号)
(YES)除斥期間なしの無効事由に該当する。
条約当事国で登録された商標と同一又は類似する冒認商標であ って、出願人が日本企業と同業・雇用等の契約関係や業務上で 取引関係などの関係があったか? (商標法第34条第1項第21号)
(YES)除斥期間なしの無効事由に該当する。
また、このような登録商標が存在しない場合は、「先使用商標」による攻撃を考え る。もっとも、これらの方法は、各適用条文により著名性・周知性などに差があるも のの、いずれにせよ自身の先使用商標の周知性を主張・立証することが重要な勝訴要 件である。
自身の先使用商標が韓国内の需要者に著名な商標であるか?(商 標法第34条第1項第11号)
(YES)冒認商標が先使用著名商標に類似しないが、商標の 構成やモチーフに関連性があって先使用著名商標を容易に連 想させる場合にも無効請求ができる。(事例24参照)
(YES)冒認商標の指定商品が先使用著名商標の使用商品に類 似しないとしても、両商品間に経済的関連性が認められる場 合にも無効請求ができる。(事例27参照)
STEP2
STEP3
STEP4
52 自身の先使用商標が著名ではないとしても、韓国内の需要者 に特定人の商品を表示する商標として知られているか?(商標法 第34条第1項第12号)
(YES) 自身の先使用商標が著名ではないとしても、特定人 の商標であると周知が認められる場合は無効請求ができる。
(事例30参照)
(YES) 冒認商標の指定商品が先使用商標が使用された商品 に類似しないとしても、両商品が互いに密接な関連性があっ て冒認商標をその指定商品に使用する場合、需要者が先使用 商標の使用者に使用されることによって商品出所の誤認、混 同を生じるおそれがある商品に対しても無効請求ができる。
(事例31参照)
自身の先使用商標が日本などの国外で特定人の商品出所とし て知られているか?(商標法第34条第1項第13号)
(YES) 自身の先使用商標がたとえ著名ではないとしても、
国外で特定人の商標として知られていれば無効請求ができる (事例37参照)。ただし、冒認商標が不正な目的で出願され たことを立証しなければならない。
(YES) 冒認商標の指定商品が、先使用商標が使われた商品 と類似ではないとしても、互いに経済的関連性があれば無効 を請求できる(事例54参照)。異種商品の場合、本号による 無効審判を提起できないという訳ではないが、不正の目的に よる出願であることを立証するのに困難が生じる。
STEP5
STEP6
53 ここでは、一般的に攻撃の効果が高いものを段階的に紹介したが、状況に応じて、
無効・取消可能性の最も高いものを一つあるいは複数選び、攻撃をすれば良い。
それぞれの事由に対する具体的な判決事例、考え方などは、次項目以下を順次参照 されたい。