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A 公判廷の構成

1 総説

【参照】刑事訴訟法第 282 条

1 公判期日における取調は、公判廷でこれを行う

2 公判廷は、裁判官及び裁判所書記が列席し、且つ検察官が出席してこれを開く

公判廷は、公判裁判所を構成する裁判官・裁判所書記官の列席の元、検察官が出席して行われるわけだが、もちろん 被告人や弁護人も出席する。被告人が出席しないときは原則として開廷できず、そのために被告人は召喚されるし、

通知も必要であるとされる。以下公判廷の構成につき、その登場人物の話をしていくことにしたい。

2 裁判所

(1)事件の配付と裁判所の構成 起訴状の提出先は、管轄権を持つ国法上の意味における官署としての裁判所である。この裁判所では複数の裁判官が それぞれ複数の裁判機関を構成するのであり、審理を担当する裁判体に事件を配布(配点)する必要がある。これにつ いては恣意などを介在させることはあってはならず、年度ごとに事務分配規定を定め、事件受理の順序に従い機械的 に順次事件を配布するのが原則である。

◎第一審における単独制と合議制

①高等裁判所(裁判所法 18 条)…内乱罪の場合、5名の合議体で裁判をする。内乱罪の刑事第一審の特別の定め。

②簡易裁判所(裁判所法 35 条)…常に1名の裁判官が単独で事件を扱う。

③地方裁判所(裁判所法 26 条)…原則は1名であるが、次の二つの場合には3名。

A法定合議事件…死刑無期または短期1年以上の懲役・禁錮になる事件は法定で合議制になる。このうちの一定の 重大なモノについては、裁判員法 2 条により裁判員を加えた合議体となる。3名の裁判官と6名の裁判員により合 議体が構成される。

B裁定合議事件…合議体として扱うことが適切な場合がある。まずは一人の裁判官に事件が割り振られるが、その 後にその人の申し出により合議体となる。

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(2)公平な裁判所 本年度省略部分。裁判所が公平に裁判を行うために、裁判官には強い身分保障がなされるというのみならず、裁判の 公平性を当該事件とのかかわりで害す恐れがある場合に備えて、除斥・忌避・回避という制度を設けている。

除斥…当該事件および関係者と一定の人的なつながりを有する場合や、予断を抱いていると類型的に認められる場合 に当然に当該裁判官を職務執行から排除する。

忌避…除斥事由があるだとか、不公平な裁判をする恐れがある場合に、当事者・弁護人の申立で裁判官を排除する。

ただ、単に態度が悪いとかでは認められないし、一度請求や陳述をした場合は原則忌避は不可能となる。

回避…裁判官が忌避される事情があると自分で思った場合に、自分から職務執行を辞退する。

3 被告人

(1)訴訟能力 本年度省略部分。当事者も、防御権の行使主体として刑事訴訟に参加するわけだから、訴訟行為を有効に行うために、

訴訟を追行して適切な防御をしうるだけの能力が必要である。この力を訴訟能力と言う。

自己の手続き上の地位や権利内容を理解し、意思を相手に伝える能力が必要とされる。ただし、この判断は弁護人の 援助を踏まえて行ってよいし、そもそも「訴訟が」できるかということだから、刑法上の責任能力とは異なる。

(2)被告人の出頭 被告人の出頭が無い場合には、原則として公判廷を開くことはできない。出頭と言うのは、被告人の権利保護の要請 と、裁判の公正確保の要請の双方から必要とされるものであり、権利としての側面だけでなく義務の側面もある。具 体的には刑事訴訟法 273 条2項の決めるように、公判期日には召喚されることとなる。これは日時場所を指定して 出頭を命じる裁判で、原則として召喚状を送達して行われる。送達については 62 条などを参照。方式についてはい くつかの例外があり、65 条の2項や3項などには例外がある。

【参照】刑事訴訟法第 273 条

1 裁判長は、公判期日を定めなければならない 2 公判期日には、被告人を召喚しなければならない

3 公判期日は、これを検察官、弁護人及び補佐人に通知しなければならない

【参照】刑事訴訟法第 62 条

被告人の召喚、勾引又は勾留は、召喚状、勾引状又は勾留状を発してこれをしなければならない

【参照】刑事訴訟法第 65 条

1 召喚状は、これを送達する。※原本送達である。一般に謄本送達で良いことに比べると特殊である。

2 被告人から期日に出頭する旨を記載した書面を差し出し、又は出頭した被告人に対し口頭で次回の出頭を命じ たときは、召喚状を送達した場合と同一の効力を有する。口頭で出頭を命じた場合には、その旨を調書に記載しな ければならない

3 裁判所に近接する刑事施設にいる被告人に対しては、刑事施設職員(刑事施設の長又はその指名する刑事施設 の職員をいう。以下同じ。)に通知してこれを召喚することができる。この場合には、被告人が刑事施設職員から 通知を受けた時に召喚状の送達があつたものとみなす

これは出頭の機会を保障するものであり、あとから述べるように出頭義務を負わない場合にも召喚を必要とするが、

同時に多くの場合は出頭を義務付けるものである。正当な理由なく召喚に応じないまたは応じない恐れがあるときは、

被告人を勾引することができる。勾引と言うのは特定の者を特定の場所に引致する強制処分である。

またいったん出頭した被告人は裁判庁の許可なく退廷できない。刑訴法 288 条(在廷義務)

◎出頭義務の免除

一定の場合には免除される。

【参照】刑事訴訟法第 284 条

五十万円(刑法 、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、

当分の間、五万円)以下の罰金又は科料に当たる事件については、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。

ただし、被告人は、代理人を出頭させることができる

【参照】刑事訴訟法第 285 条

1 拘留にあたる事件の被告人は、判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場 合には、裁判所は、被告人の出頭がその権利の保護のため重要でないと認めるときは、被告人に対し公判期日に出 頭しないことを許すことができる

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2 長期三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円(刑法 、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整 備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、五万円)を超える罰金に当たる事件の被告人は、第二百九十 一条の手続をする場合及び判決の宣告をする場合には、公判期日に出頭しなければならない。その他の場合には、

前項後段の例による

事件の軽微性などを考慮して段階的な定めが置かれている。

また、被告人が法人である場合には、代理人を出頭させることができ、代表者の出頭は義務付けられていない(283 条)。そして、被告人の出頭無くして開廷できないのが原則だが、「被告人が出頭しなければ開廷することができない 場合において、勾留されている被告人が、公判期日に召喚を受け、正当な理由がなく出頭を拒否し、刑事施設職員に よる引致を著しく困難にしたとき」(刑訴法 286 条の 2)は出頭が無くとも公判期日を続行できるし、そして「被告人 が陳述をせず、許可を受けないで退廷し、又は秩序維持のため裁判長から退廷を命ぜられたときは、その陳述を聴か ないで判決をすることができる」(341 条)ことになっているから例外である。刑訴法 304 条の 2 の場合も証人に配 慮して、一定の条件のもとに被告人を退廷させて証人尋問を行うことができるものとしている。

(3)被告人の勾留

a.公訴提起と被告人の身柄

被告人も、逃亡あるいは罪証隠滅の虞がある場合には勾留される。そしてその要件・手続きは被疑者の勾留について 述べたことがおおむね当てはまると言うか、そもそも被告人の規定が準用されていたのだった。

起訴の時点における被疑者の身柄の状態には、①被疑者として勾留している、②逮捕中だが勾留はされていない、③ 身柄が拘束されていない、の三つの可能性がある。以下、順次検討していくことにする。

①勾留中の場合

公訴の提起によって、被疑者としての勾留は自動的に被告人としての勾留に引き継がれ、公訴提起の日から被告人と しての勾留の期間が進行することとなっている。208 条1項は、10 日以内に公訴の提起をしないときは、釈放と言 う構造の規定なので、反対に公訴提起すれば釈放しなくて良いことになる。刑訴法 60 条2項は、勾留の期間につい て、勾留の期間は公訴の提起があった日から2 か月ということにしている。

※ちなみに、身柄拘束中だった被告人が起訴後途中から勾留された場合には、そのときから勾留期間がはじまる。

②逮捕中の場合

この場合については、被疑者の身柄拘束の時に話したが、裁判官が速やかに被告事件の告知とこれに関する聴取を行 い(勾留質問)、勾留するか釈放するかを決める。280 条 2 項に条文がある。検察官が逮捕の期間中に公訴を提起し、

裁判官の職権発動を求める手続きは、逮捕中求令状(求令状起訴)と呼ばれる。

③身柄不拘束の場合

在宅の場合でも、裁判所に職権発動を促し、所定の手続きを踏んで勾留することは可能である。

※なお、検察官は、被告人に関しては勾留請求権が認められていないので、裁判官が職権で勾留を行うと言う法構造 は大前提である。あくまで実務上の慣行として、検察官は起訴状に勾留の必要があると思われる場合に、「勾留中 求令状/逮捕中求令状/在宅求令状」と付して、職権発動を促すにとどまる。

b.勾留の裁判

処分は、基本的には事件の公判審理を担当する裁判所(公判もしくは受訴裁判所)が行うのだが、起訴後第一回公判期 日までは、公判裁判所を構成しない裁判官が行うこととされている。280 条、規則 187 条参照。このようにされる のは、予断形成を防止する主旨である。

【参照】刑事訴訟法第 280 条1項

公訴の提起があつた後第一回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う

【参照】刑事訴訟規則第 187 条1項

公訴の提起があつた後第一回の公判期日までの勾留に関する処分は、公訴の提起を受けた裁判所の裁判官がこれを しなければならない。但し、事件の審判に関与すべき裁判官は、その処分をすることができない

c.被疑者の勾留と被告人の勾留

被疑者の勾留といくつか異なるところがある。

①逮捕前置主義が必要ない。在宅の被告人を所定の手続きのもとでいきなり勾留できる。

②職権で行われる。検察官の請求は必要ない。あくまで公判審理の必要性から行われるのだから、職権事項である。

③勾留期間が2か月であり、具体的に理由を付した決定で一か月ごとに更新することができる。