• 検索結果がありません。

全体配置に関連する項目の整理(医療浮体)

第 3 章 :全体配置に関する初期計画

3.1 全体配置に関連する項目の整理(医療浮体)

3.1.1 考慮すべき項目と内容

初期計画の難しさと特徴は,目的である大災害時の救急医療支援(および救命)活動 の具体的内容が社会的にまだ確定していない,あるいは誰もイメージできいていないこ とである.更に言えば浮体式医療支援施設というこれまでサンプルとなる事例がない浮 体システムを活用および運用して医療支援を行う具体的な活動がどのようなものであ るかイメージできないことである.そこへ焦点を合わせて浮体を計画するのであるから,

種々の状況が想定され100 人100色の意見が発生してもおかしくない.これは貨物を 早く安価に運ぶという明確な経済的な目的が明らかな,新型船舶の開発や石油掘削とい う作業を行う経済活動がベースの海洋構造物の開発・設計とは,要素技術の難しさは別 にして,全く状況が異なるということである.即ちこれまで誰もやったことない浮体を 活用した大災害時の大量救命支援という,全く新しい緊急時の救命活動の内容をある程 度定義または提案してからでないと,初期計画も進まないことである.

従って本浮体システムの提案では,現在の社会システムの中で可能な,浮体を活用し た救急救命活動の内容を提案し,その目的に適合する医療浮体の初期計画を計画工学的 に如何に進めるかを示すことも大きな意義があると考える.またこのF.Sは,すぐにも 実現させるための提案でなく,広く関係する人と組織から,さらに具体的な批判やアド バイスを得るための所謂叩き台的な性格であるから,出来るだけ簡便な工学的な方法を 模索して実行するものであり,さらに多くの人がより良い案を容易に且つ短期間に提案 できることを期待するものである.

現在の社会シスステムの多くの要素が本浮体の計画に関係する.それらを思いつくま ま列記すると下記の項目がすぐ考えられる.

1) 大災害時かつ非常時の救命,救急活動として現状の関係者に容易に受け入れられ るか.

2) 大災害としては,どんな状態を想定しているのか?

3) 医療スタッフは迅速に集合できるのか.

4) 災害時の救急救命のため新しい特別な組織が必要か.

5) 誰が運用するのか.所有者は誰か.誰が費用を負担するのか.

6) 平時にも何らかの社会貢献が可能か.

7) 設置海域&水域は浮体にとって安全か.

8) 災害時に多数の患者は容易に搬入されてくるか.

9) 既存の病院と並立できるか.

10)どれだけの期間でどれだけの人命を救命するのか.その根拠はあるのか.

3.1.2 関係要素の整理

前項の項目を少し分野ごとに分けて大雑把に整理すると下記のような関係になる.

図3.1 要素項目の関係図

上記(A),(B),(C)はお互いに関連するが,ハードである浮体システム(C)を先 に決定しておいて,既存の社会システム(制度)で運用されている現状の救急医療活動 を新しい医療浮体(C)に合わすよう社会に要求することは極めて難しいと思われる.

(B)の制約&前提条件とは浮体を計画する場合,現状の社会システムや法的制約な ど変更のできない条件を意味するが,結局,(A),(B)それぞれに対して,浮体計画に 必要なあるいは関係する項目を適当に想定して初期計画の出発点とした.この想定した 諸条件に対して計画途中の段階で不具合が見つかれば元に戻って計画内容を修正する という計画スパイラルを実行するのが流れである.それを下記に示す.

また(B)にはその時の計画作業で自分たちがすぐ使用できる設計ツール,プログラ ムなども含めて考える柔軟性が必要である.そうしないと新しい設計ツールの開発まで も計画作業に含まれ多くの時間とマンパワーが必要になり計画作業が極めて重くなり なかなか着手できなくなるというジレンマに陥る可能性があり,十分注意を要する.

3.1.3 医療浮体の初期計画の流れ

図3.2 医療浮体の初期計画の流れ

上記の流れで注意すべきことは,検討中に疑義が生じた場合は常に上流に戻って再検 討する必要があることである.即ち,初期計画でも常にスパイラル的に見直していくこ とが必要である.

以下に各項目への補足を下記に述べる.

1)国や東京都から首都圏の地震被害について多くの調査報告書が出ておりそれらを 参考にする.

2)目標は医療関係者など誰かが決めてくれるものでなく,医療浮体を計画する人が設 定する必要がある.初期計画の出発点であるから重要な項目である.想定する患者 搬送法もこの項目であるが.

3)前提&制約条件:医療浮体は大災害時への対応を目的としているので,平常時は不 要ではないかという疑問を出される可能性が強い.この疑問に対しての回答を準備 して前提または制約条件として計画に織り込む必要がある.回答は当然複数ある.

4)設置場所は1),2),3) を勘案して,いくつかの候補を設定する.

5)1),2),3),4)を勘案して,係留方式,患者収容&居住面積,乾舷高さ,医療面積,

機械室面積,種々のタンク容積などを仮決めする.

画,係留方式などを目に見える形にして平面計画に織り込む.またその結果を受け て構造安全性や居住性などの確認作業を行う.

9)医療関連機器以外の浮体関連項目の概略コストの推定を行う.概略で良いので関連 資料を調査して推定することも可能である.

3.1.4 医療浮体の特性

上記の流れのさらに前に,医療浮体の特性を把握しておく必要がる.

1)河川,海域を活用し,埋め立て方式を補完できる全く新しいタイプの社会インフラ であり,沿岸域を含めた日本国土の有効活用に繋がる.

2)従来の災害時の救急救命活は,災害拠点病院を中心とした個別病院の能力と自衛隊,

ドクターヘリによる広域搬送に頼る方式であるが,浮体方式は災害場所の近くに存 在することによって,患者のアクセスがより容易になり救急活動が効率的になる.

また災害時にも健全な浮体式医療施設が存在することにより,多くの関係組織との 連携を密に行うことが可能となり,広域的かつ組織的な活動が可能となる.その結 果,患者が極端に集中する(サージ需要)既存病院の救急救命活もが全体として効 率的になり,多くのpreventable death(無駄死)を防ぐと思われる.

3)新しい医療浮体を活用するためには,当然現存組織との連携が必要であるが,どの ような連携が望ましいかなどは医療浮体というハードの検討とは別にソフトの検 討を繰り返し,現存の組織運営に混乱を与えずにより良いものへと逐次改良できる と思われる.

4)万一設置地域から離れた地域で災害が発生した場合は,当該医療浮体を国または自 治体の所有するタグボートにより災害地域まで曳航移動させ救急活動に参加させ ることが可能である.

5)医療浮体を活用する場合には,「トリアージ」という医療診断が重要であり,それ を救急関係者が常に実施することが前提になるので,トリアージの内容を図3.3に 紹介する.

図3.3 トリアージのイメージ

・直ちに処置を行えば 救命が可能ない者

・多少治療の時間が遅れても 生命に危険がない者

・上記以外の軽易な傷病で

ほとんど専門医の治療を必要としない者

・既に死亡している者又は直ちに処置を行っても 明らかに救命が不可能な者

緑色(Ⅲ)

傷病等の状態

黒色(0)

分類

最優先治療群(重症群)

非緊急治療群(中等症群)

軽処置群(軽症群)

不処置群(死亡群)

識別色 赤色(Ⅰ)

黄色(Ⅱ)

黄 黒 赤

トリアージ

応急処置 手術 処置 入院・治療 トリアージとは災害発生時など多数の傷病者が同時に発生した場合,

傷病者の治療優先順位を決定することをいう.この作業により救命治 療の効率を図る.

退院 後方施設