次に、通信と放送の法体系が必要になってきた理由をこの報告書とは別の視点から述べてみたいと思います。すなわち、本報告書によれば、通信技 術の発展により ALL IP 化が進展し、「情報の自由な流通」、「情報通信技術の恵沢のあまねく享受」及び「安全・安心なネットワーク社会の構築」の 必要から通信・放送の融合・連携に積極的に対応し、競争の促進を通じて情報通信産業におけるイノベーションの進展につながるのでレイヤー型の法 体系を構築することが望ましいと記述されております。しかし、無線電波による伝統的な放送サービス事業者におきましては、「コンテンツ」「プラッ トフォーム」「伝送インフラ」及び「伝送設備」をすべて自前で調達しサービス提供しています。いわばレイヤー独占によりサービスを提供している のであり、新たな法体系のもとで重ねて規定することに意味が乏しく、IP 化の進展とは直接関係ないものと考えられます。むしろ、現在、通信と放送 の融合が双方のサイドから徐々に進展しており、その境界領域において、旧来のメディア別で縦割りの規律ではカバーできなくなったことが通信と放 送の総合的な法体系の導入の必要性を増してきたのではないかと考えております。例えば、多数のステークホルダーの意識的又は無意識的な協調又は 競争によって形成されているインターネットというメディアの出現により、従来、放送事業者と多くの聴衆すなわち、「1対多数」の形態に変化がお き、ユニキャストや IP マルチキャストの出現等により無線電波を利用するような従来型の放送に取って代わり、IP ネットワークを積極的に利用する ような情報伝達手段があらわれました。これは通信の範囲を超え、放送の領域に深く踏み込むことになったものと考えられます。さらには、Web2.0 にあるように情報の受け手が発信することも可能になるいわゆる「多数対多数」という新たな放送スタイルも視野に入ってきました。放送コンテンツ のネットを利用した配信も可能な時代になり、放送事業者等の著作権をどのように保護するかも問題になってきており、通信の秘密や個人のプライバ シー保護等の確保も益々困難な時代になりつつあります。またボトルネック設備の所有者である電気通信事業者が放送コンテンツを自由に配信するこ とができるようになれば、従来は下部レイヤーのみでの優越的な提供に留まっていたものが、上部レイヤーにまで提供が及ぶに至っては、レイヤー独 占及びメディア独占により、公正競争阻害や表現の自由の足かせとなる可能性もありますので、国民生活の公共福祉推進の観点からより妥当な統一的 な法体系が必要になってきたということも考えられます。さらには、貴重有限な周波数を独占的に使用することに、「1 対多数」により国民に与える多 大な影響力を誇ってきた放送局も IP 化の進展により過去のビジネス モデルが今後も有益なものとは考えられない時代になりつつあり、今後どのよ うに放送産業というものを、進展させていくかという産業政策的な観点からの考察も必要です。そして、諸外国ですでに導入されているように、周波 数の有料化等の検討も必要になるかもしれません。つまり通信技術等の進展により、通信と放送の垣根が低くなってきたので、今までの個別具体的な 規制方法では弊害がでてきたことにより、新たな総合的な視点での法体系の元、通信・放送一体となった法体系の整備が必要になったというのが、今 回検討されている大きな要因ではないかと考えます。
(KVH(株))
○ 現行の 9 法を、情報通信法として統合した法制度(以下、「融合法制」という。)への移行は、大規模且つ抜本的な法改正であり、関係事業者の事 業運営並びに事業者間の競争環境、ひいては国民が享受するサービスにも相応に影響を及ぼすものになると考えられます。新たな法体系への移行の結
果、特定の事業者が有利に事業運営を行えるようになったり、特定の利用者が不利益を被ったりするようなことがあってはならないことは言うまでも なく、新たな法体系は、事業者間の適正な競争を促進し、それをもって国民利便の最大化に資するものである必要があります。
その意味で、新たな情報通信法は、基本的には各々の事業者の自由な戦略に基づく自由競争を可能とするものでありつつも、ボトルネック設備を有 する事業者に対しては厳格な規制を課すという非対称規制の体系を維持することが必要です。
なお、この非対称規制は、自由競争の結果、多くの市場シェアを獲得した事業者に対しても一律に規制を課すものであってはならず、規制の対象は 電気通信における加入者回線等のボトルネック設備を有する市場支配的事業者に限定する必要があります。
すなわち、ボトルネック設備を有する事業者である NTT 東西に対して、NTT 法や電気通信事業法等により現在課されている各種規制は、事業者間の 公正な競争環境を確保するために不可欠であり、新たな法体系の下においても引き続き維持される必要があると考えます。
また、通信・放送の在り方に関する政府与党合意(平成 18 年.6 月 20 日)において、NTT の組織問題については、2010 年の時点で検討を行い、その後 速やかに結論を得ることになっていますが、融合法制への移行においては、NTT の組織問題に関する議論の動向を踏まえた法体系の整備が必要不可欠 であり、融合法制に係る法案の国会提出を 2010 年、同法の施行を 2011 年と予定していることに鑑みると、NTT の組織問題に関する議論を 2010 年を待 たずに早急に開始すべきであると考えます。なお、融合法制の目的が、真に公正な競争環境を整備し、サービスの多様化を推進し、ユビキタス社会を 実現するというものであるのなら、NTT の資本分離・上下構造分離の実現は必要不可欠であると考えます。
(ソフトバンクBB(株)、ソフトバンクテレコム(株)、ソフトバンクモバイル(株))
○
1.当協会は、インターネットの陰の部分への対策に従来から取り組んできており、プロバイダ責任制限法関係ガイドラインや、昨年11月に発表した
「インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」、「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項」の策定において中心 的な役割を担ってきている。
インターネット上のコンテンツの在り方に係わってきた観点から、今回の中間取りまとめにおけるコンテンツに対する方向性については、EU法を モデルとした基本的な大枠など賛同するものである。
2.業界としてガイドライン等による自主規制を中心に、ネット社会の安全・安心な取り組みを推進してきているが、インターネット上のコンテンツは 通信業界以外の関係者がさまざまな情報発信を行っており、利用者にとって不適切なコンテンツ(違法・有害情報等)に関しては通信業界のみで対処 することは困難な点も多く、対応にも限界があると認識している。
今後の法制度のさらなる検討に際しては、すべての関係者が対象となる枠組みを検討することが重要である。
3.また、今後の具体的な検討に際しては、ネット社会における実態を十分ふまえた上で、慎重な検討を行うことが重要と考えており、以下をふまえて
検討いただきたい。
・ メディア特性を議論するにあたって、WEB2.0に見られる双方向性のあるサービス(コンテンツ)への検討が更に必要。
・ 違法・有害なコンテンツが発生することを未然に防止することを狙いとするのか、その法的救済に力点を置くのかの議論も必要。
・ 技術的に中立なコンテンツ規律を目指すことに異論はないが、技術的特性への配慮も必要。
・ 青少年保護に関しては保護者の選択が常に重要であり、コンテンツの発信規制のみに依存せず、多角的な検討が必要。
((社)テレコムサービス協会)
○ 情報通信分野においては、固定と移動、通信と放送等、様々な分野で従来の市場の枠を超えたサービスの融合化が進展し、様々な事業者が多様なサ ービス・ビジネスモデルの展開に取り組み始めているところであって、今後の市場の発展は各事業者の創意工夫や努力如何にかかっているところです。
従って、情報通信分野のダイナミックな発展及び、健全な競争の促進の観点からは、インフラ整備や新規サービス開発を進めようとしている事業者 の意欲を殺ぎ、多様なサービス・ビジネスモデルの展開の芽を摘むことがないよう、まずは各事業者に自由に事業展開を行わせるべきであり、万一そ れによって問題が生じたとしても、事後的に問題を解決する姿勢に徹し、あえて事態の推移を先回りした想定や懸念に基づく事前規制をかけないなど、
規制は必要最小限にとどめることが適当であり、その旨を基本的な考え方として明記することが必要と考えます。
(西日本電信電話(株))
○ 平成18年6月20日の「通信・放送の在り方に関する政府与党合意」では、“通信と放送に関する総合的な法体系について、基幹放送の概念の維 持を前提に早急に検討に着手し、2010年までに結論を得る。”とされていますが、今般の中間取りまとめでは、「基幹放送の概念の維持」について 具体的に論じられていない点が懸念されます。
((株)静岡朝日テレビ)
○ デジタル化や IP による情報通信産業の構造変化を踏まえ、法体系を「縦割り」から「レイヤー構造」へ転換し、現在の通信・放送法制を「情報通 信法(仮称)」として一本化するという狙いについては一定の理解をするものです。しかしながら、法体系を「レイヤー構造」に転換する必要性や、
その効果、メリット等については一般論の域を出ず、具体性に乏しいと言わざるを得ません。経済、産業だけでなく、我が国の市民社会と文化形成に まで大きく影響する分野だけに、効果、メリットをまず具体的に示すことが、法体系のあり方を検討する際の前提になると考えます。
例えば、法体系の見直しは、言論・表現の自由にどのような影響を与えるのか、また、現在の法体系が国民生活や産業、経済に不利益を及ぼしてい るとすれば、それはどのような点なのか、具体例の例示を含め、法体系見直しの効用について、合理的な説明が必要と考えます。特に「基幹放送」で