(1) 総論(債務引受に関する規定の要否) (中間的論点整理第15 1)
① 検討上の留意点
・ 銀行実務上、債務引受が利用される場面として次のようなものがあげられる。
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抵当不動産の買主による抵当債務の引受け。¾
事業譲渡の場合における事業上の債務の引受け(例えば、個人経営を法 人組織に変える場合、親会社の財産を子会社に移転する場合等)。¾
信用悪化した債務者に代わる新債務者の引受け。¾
債務者死亡の場合の相続人のなかの一部の者の引受け。¾
一括支払における債務引受スキーム。¾
決済システムにおける清算者による参加金融機関の債務の引受け。・ 債務引受の要件・効果の明文化については、当該実務に法的安定性を付与す る方向で検討されるべきである。
② 改正提案に対する意見
・ 債務引受に関する規定を設けることは現行取引の法的安定に資すると考え られ、賛成する。
・ なお、上記①のとおり、実務に法的安定性を付与する方向で検討されるべき である。
(2) 併存的債務引受の要件・効果(中間的論点整理第15 2(1)(2))
① 検討上の留意点
・ 債務者と引受人との合意による併存的債務引受における受益の意思表示の 要否について、銀行界では取引ニーズを背景に以下のとおり両論みられる。
・ 債権者の受益の意思表示を不要とする見解は、発行済みの社債に事後的に保 証を付けようとした場合に、多数の債権者との間で各別に保証契約を締結す ることが困難であるといった事情があるときに、併存的債務引受により、同 様の法律効果が得られるという点を指摘する。
・ 他方、債権者の受益の意思表示を不要とする場合には、引受人として、反社 会的勢力のような者が取引に入ることを債権者は事前に排除できなくなる 懸念があると指摘する。この点については、受益の意思表示は不要だが、債 権者は事後的に反対の意思表示によって、併存的債務引受の効果がそもそも 生じないこととする規律であれば、この懸念も緩和されるが、債権者が債務
引受の事実を知らない場合には、当該反対の意思表示もできない。また、知 ったとしても当該引受人が取引関係に一旦入ることは避けられず、知るまで の間に反社会的勢力が入ってきてしまうという問題はある。なお、このよう な場合について、一時的に反社会的勢力との接点を持ち得る点につき、反社 会的勢力排除の観点から非難されるべきことなのかは本問題を検討するう えで考慮すべきであるという指摘がある。
・ なお、いずれの立場においても、併存的債務引受の効果として、連帯債務と なるにしても、時効の完成に絶対的効力を認めることは懸念が指摘されてい る。例えば、債権者が知らない間に引受人が現れて、引受人との間で時効が 完成したとすると、そのような場合に絶対的効力が生ずると、債権者に不当 に不利益が課されるという指摘がある。
② 改正提案に対する意見
・ 上記①のとおり、債権者の受益の意思表示の要否について両論があるため、
これらの実務状況に配慮を求める。
・ また、この両論意見は、保証引受契約および第三者のためのする契約での受 益の意思表示を不要とする類型に関しても同様の理由にもとづいて提案さ れており、併せて検討を行う必要がある(なお、本意見書「10.保証債務 (2) 主債務者と保証人との間の契約による保証債務の成立」および「21.
第三者のためにする契約 (1)受益の意思の表示を不要とする類型の創設 等」参照)。
(3) 併存的債務引受と保証との関係(中間的論点整理第15 2(3))
① 検討上の留意点
・ 本論点に関しては、実務上、債務引受が様々に利用されていることから、不 明確な基準により保証と判断されることは、かえって取引を阻害する。
・ 要件については、「併存的債務引受の趣旨が補充的に債務を負うものであっ た場合」や「契約の目的が債務者の債務を保証するものであるとき」といっ た規律は、区別の基準として明確性に欠けるという指摘がある。
・ また、仮に、債務者と引受人の内部負担割合が 100 対ゼロの場合をメルクマ ールとする場合でも、債権者にとって内部負担割合は分からないため、十分 ではないという指摘がある。
② 改正提案に対する意見
・ 保証の規律の脱法を防ぐという観点から、併存的債務引受を一定の場合に保 証と推定する、あるいは保証の規律を準用する必要性については理解する。
・ ただし、当該規定を設ける場合には、実務の併存的債務引受の利用状況をみ たうえで、要件や基準が不明確であったり、実務の利用目的と大きく乖離す る要件とならないよう検討すべきである。
・ また、保証債務の規律について、保証人保護の強化ないし当該保護に関する 規律の導入が提案されており、本意見書でも意見を述べている(本意見書「1 0.保証債務 (3)保証契約締結の際における保証人保護の方策」等参照)。
併存的債務引受について、信用補完機能面を重視して利用するにしても、保 証とは異なる利用を当事者が選択していることがあり、また、保証と同様の 機能を有する場合であっても、保証人保護の規律が単純に準用されることが、
取引の実態から見て適切か否か慎重な検討が必要である。
(4) 免責的債務引受(中間的論点整理第15 3)
① 検討上の留意点
・ 銀行実務上、債務引受については、免責的債務引受の利用が中心という指摘 があり、規律を設ける場合には実務状況を十分に勘案して検討すべきである。
・ 免責的債務引受については、利害関係のない第三者による弁済が無効とされ ていることから、通説・判例は、債務者の意思に反して免責的債務引受をす ることはできないとしているが、利害関係のない第三者も債務者の意思に関 わらず弁済することができるとするのであれば、免責的債務引受についても 債務者の意思の様態に関わらず認めてよいという指摘がある。
・ 実務的には相続の免責的債務引受について旧債務者たる免除される相続人 の同意が取れないことが多く、その対応として、債権者と引受人の合意によ り免責的債務引受が成立するとしても、免除を受ける債務者の保護に乏しい とは思われないという指摘がある。
・ 免責的債務引受について債務者の意思に反しないことを要件としない場合 の引受人の求償権の考え方としては、第三者による弁済における提案(部会 資料 10-2[3頁])と同様、求償権を取得しないと考えればよいという指摘 がある。一方、債務者の意思の反するか否に関わらず、求償権を取得するこ ととし、求償の範囲については債務者の意思に反するときは現存利益の限度 とすることでよいという指摘もある。
・ また、免責的債務引受は、決済システムにおける清算機関における清算参加 者との債権債務の置換えにおいて広く利用されている。このことは、清算機
関を規制する業法においても明確に規定されている(金融商品取引法第2条 第 28 項、同第 156 条の2、資金決済法第2条第5項、同第 64 条第1項・第 2項)。このスキームの法的有効性は、決済システムの根幹に関わるもので あり、過去長い期間にわたって慎重な検討を続け、法的に安定した設計を行 ってきており、経済社会における重要なインフラを支える決済システムの実 務を踏まえた検討が必要で、これを否定するようなことは受け入れ難いとい う強い指摘がある。特に、清算機関の採用する免責的債務引受と原債務者に 対する債権の取得構成について、両者の無因的な法律関係に関し法理論的な 問題点の指摘があるが、清算機関の取扱いは、免責的債務引受を原因とする 債権取得と考えられ、有因的に規律を設けており、また、当該意思解釈もそ のように解することができるのではないかとも考えられるところ、検討に当 たっては、そのような実務を阻害しないようにすべきという指摘がある(こ の点は、「新たな債権消滅原因に関する法的概念」の評価に関わるものであ る)。
・ 免責的債務引受の法的性質を併存的債務引受に債権者による意思表示が付 加されたものと見るという考えによる場合には、規定の設け方によっては、
清算機関が現在採用している構成に影響を与える可能性があるのではない かという懸念もあり、この点も現行実務を踏まえた慎重な検討を要する。
・ 法理論的に免除や第三者による弁済も同様に考えざるを得ないのか、免責的 債務引受と截然と分けた規律とするのかという検討も希望する指摘もある。
・ 免責的債務引受の要件として債権者の承認を必要とした場合には、債務者と 引受人との間で債務引受の合意がされたときに、債務引受の効力発生時期が 問題となり、債権者が承認することにより債務引受が有効となり、債務者と 引受人との合意の時点に遡って効力が生ずるとの考え方(部会資料9-2 [65 頁])もあるが、清算機関の実務では、予め包括的に参加者が承認をして おり、個別の債権発生時に承認をしていないことから、免責的債務引受の要 件および効果の検討に当たっては、当該実務に沿った検討が必要という指摘 がある。
② 改正提案に対する意見
・ 上記①のとおり、現行実務を踏まえた免責的債務引受の規律導入の検討を強 く望む。債務の承継場面だけでなく、金融スキームを支える規律として重要 な役割を果たしていることに配慮が必要である。
・ 決済システムにおける清算機関がこのスキームを採用しており、同システム