(1) 代理人の行為能力(中間的論点整理第33 1(3))
① 検討上の留意点
・ 現在の高齢化社会では、法定代理人が高齢で制限行為能力者であるという事 態が生じることがあるので、制限行為能力者の代理人就任に当たり、代理権 の範囲を制限するという考え方は理解できるが、取引の安全性の観点からは その必要性に疑問がある。法定代理人の代理権の範囲を制限することになれ ば、本人の行為能力ばかりでなく、その法定代理人の行為能力や代理権の範 囲の調査も必要になり、取引の相手方の負担が重くなる。
・ 仮に代理権限の範囲を制限することとした場合には、銀行実務上、預金等の 管理業務ができない法定代理人との取引をどのように行うのか(別途代理人 を選任してもらう等の手当てが必要となるのか)等、新たに対応すべき課題 が生じる。また、法定代理人が制限行為能力者である場合に、代理権の範囲 を制限するという提案について、取引の相手方から見ると、必ずしも代理権 の制限の有無あるいはその内容が分からないこともあるのではないかとい う指摘がある。
② 改正提案に対する意見
・ 本件については、取引の安全の観点から慎重な検討を望む。
・ 民法上の法定代理人としては、親権者、未成年後見人、成年後見人がある。
親権者については、「親権を行うことができないとき」は親権を行使するこ とができなくなるのであるから、法定代理権の範囲の問題とする必要はなく、
「親権を行うことができないとき」の解釈等で本人の保護を図ることができ るのではないかと考えられる。
・ また、親権者以外の法定代理人については、家庭裁判所の審判がなされるた め、家庭裁判所が法定代理人を選任する際、または法定代理人に就任してい る者についての後見等開始の審判の際に、本人の保護を図ることができるか 否かを考慮すれば足りることから、法定代理権の範囲の問題とする必要はな く、家庭裁判所の法定代理人選任審判についての運用状況の調査等を行い、
必要に応じて運用状況を改善することでよいのではないかと考えられる。
・ なお、意思能力についての規定を設ける場合には、意思無能力者が代理人と してした行為の効力等についても規定する必要があるのではないかという 指摘がある。
(2) 法定代理における復代理
・ 代理人については、成年後見制度が問題となることが多い。成年後見人が直 ちに復代理人を選任するケースがあり、成年後見人に選任された者が簡単に 復代理人を選任してよいのか疑問がある。
(3) 表見代理規定の法定代理への適用の可否(中間的論点整理第33 2(1) ア、(2)ア、(3)ア)
① 検討上の留意点
・ 法定代理であっても、夫婦間の日常家事代理権や、公共法人の機関等におい て、代理権を有すると誤信させるような名称の使用を放置していた場合や、
代理権授与の表示があったのと同様の評価ができるケースも存在し得ると して、また、法定代理でも本人の側の帰責性について、これを認めることが できる場合もあるとして、民法第 109 条、第 110 条、第 112 条の適用を認め てよいという指摘がある。
② 改正提案に対する意見
・ 上記①のとおり、法定代理においても表見代理の規定の適用を認める必要が あると考えられる。
(4) 無権代理人の責任(中間的論点整理第33 3(1))
① 検討上の留意点
・ 銀行取引においては、本人が法人の場合等も含め、第三者を介して取引が行 われることが少なくなく、また、そのことが取引の利便性を高めることとも なっている。無権代理人の保護を強めすぎることは、取引実務への影響が少 なくないと考えられる。
・ 無権代理人が自らに代理権がないことを知らなかった場合には、無権代理人 の保護を図る必要があるケースがあると思われるものの、相手方の保護と比 較衡量した場合に、全て責任を免れると考えてよいか、なお検討が必要とい う指摘がある。
② 改正提案に対する意見
・ 無権代理人が故意に無権代理行為を行った場合、相手方に過失があるときで あっても、無権代理人は責任を免れないとする点は妥当であり、賛成する。
・ 上記①のとおり、無権代理人が故意の場合だけでなく、重過失がある場合も 同様とすることも検討を望む。また、相手方の主観的態様について、現行法 は善意無過失を要するが、無権代理人と相手方の保護の必要性を比較した場 合に、相手方に過失がある場合であっても、軽過失に留まる場合は、無権代 理人の責任を追及できる余地がないのか併せて検討が望まれる。