第2章 立体自動倉庫ラックを対象とした地震対策に関する解析的検討
2.3 個々の積荷を対象としたパレット免震装置
- 40 - 2.3 個々の積荷を対象としたパレット免震装置
2.3 個々の積荷を対象としたパレット免震装置
- 41 - 2.3.2 免震装置の復元力特性
免震装置の復元力特性を図 2.28に示す。また、1質点系モデルの概念を図 2.29に示す。
免震装置が滑動している場合の傾斜軸に沿った運動方程式は次式で表される。
o k f
m(x x )cos Q Q 0
(1)k o
f o o
o o
m:
Q : x m(z z g)sin
x
x x
Q : m (z z g) cos (x x )sin
x x
x : : x : x :
ここで, すべり材に作用する質量(積荷、パレット、免震装置の可動部)
復元力( )
摩擦力( )
腕木の絶対加速度 (水平方向)
z 腕木の絶対加速度(鉛直方向)
免震装置の相対変位(水平方向)
免震装置の相対加速度(水平
z :
方向)
免震装置の相対加速度(鉛直方向)
免震装置が静止している判定は(2)式より行い、静止している場合は(3)式となる。
o k f
mx cos Q Q (2)
x 0 , x 0, x const
(3) すべり材の傾斜角すべり材の摩擦係数 重力加速度
: : : g
z x tan
( )
0
+
Q
kx x
0
=
Q
f0
x
Q
(a) 復元力 (b) 摩擦力 (c) 復元力+摩擦力 図 2.28 傾斜軸に沿った免震装置の復元力特性
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図 2.28(a)より、傾斜による復元力は、免震装置の水平変位の符号が切替わるところで不 連続となる。そのため、地震応答解析では、便宜的に免震装置の水平変位が (ここ で、r: 支持材の半径)以下の微小変位区間において、半径rの円弧上を動くものと仮定した。
また、すべり材の傾斜による復元力から割線剛性を求めて評価した等価周期Teは、次式に より表せる。
e
x
T 2
g sin
(4)
(4)式より、免震装置の等価周期は、質量によらず免震装置の相対変位とすべり材の傾斜 角に依存し、一定の周期を持たない。図 2.30に免震装置の周期特性を示す。
r sin
z
x
z z g
m o
m(z z og) cos
Qf
m(x x )sin o m(x x ) o
m(x x ) cos o m (z zo g ) sin
図 2.29 1質点系モデル
図 2.30 免震装置の周期特性
0 5 10 15 20 25
0 2 4 6 8
=0.05
=0.04
=0.03
=0.02
等価周期[s]
免震装置の相対変位 [cm]
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- 43 - 2.3.3 傾斜角と摩擦係数の検討
積荷の荷崩れや荷すべりは、最大応答加速度が 200cm/s2程度で生じることが報告されて
いる〔2.3〕~〔2.7〕。そこで、荷崩れや荷すべりを起こさせないために、免震装置の最大応答加
速度は 200cm/s2以下、かつ汎用的なパレットサイズである平面 100cm×100cm に免震装置
を納めることを想定し、最大応答変位は25cm以下とすることを目標性能とした。
実機の免震装置に採用するすべり材の傾斜角と摩擦係数を把握するために、地震応答解 析による検討を行った。解析モデルは、積荷とパレット間、パレットと免震装置間ではすべ りが生じない 1 質点系モデルとし、質点の質量を700kgとした。解析パラメータは、免震装 置の高さを抑制しながら目標性能を満足するために、すべり材の傾斜角を 2/100~5/100 と し、すべり材の摩擦係数を0.03~0.10とした。入力地震動は、気象庁および防災科学技術研 究所の強震観測により得られた前述の表 2.1 に示す 3 波とした。解析モデルに入力した観 測波は、それぞれの地震で得られた水平方向の成分のうち、最大加速度が大きい方向の成分 とした。
すべり材の傾斜角と摩擦係数をパラメータとした地震応答解析の結果を図 2.31 に示す。
パレット免震装置の最大応答値に着目すると、免震装置の非線形特性により比例的な増減 ではないが、すべり材の傾斜角と摩擦係数が小さいほど応答加速度は減少し、すべり材の傾 斜角と摩擦係数が大きいほど応答変位は減少する傾向が見られた。本解析条件において、免 震装置のすべり材の傾斜角を5/100 以下、摩擦係数を 0.07以上とすることで、想定する目 標性能(免震装置の最大応答加速度を200cm/s2以下、かつ最大応答変位を25cm以下)を得 ることができた。なお、パレット免震装置の設計にあたっては、ラックの形状寸法に加えて、
積荷の条件等を考慮する必要がある。
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0.010 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06
10 20 30 40
最 大 応 答 変 位 [c m ]
すべり材の傾斜角 [rad]
=0.03 =0.05 =0.06 =0.07 =0.08 =0.10
0.010 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06
50 100 150 200 250
最 大 応 答 加 速 度 [c m /s
2]
すべり材の傾斜角 [rad]
=0.03 =0.05 =0.06 =0.07 =0.08 =0.10
(a) 最大応答加速度(白河波)
(b) 最大応答変位(小千谷波) 図 2.31 パレット免震装置の最大応答値
の傾斜角 すべり材
の傾斜角 すべり材
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- 45 - 2.3.4 免震装置を設置したラックの地震応答解析
後述の 4.4 で使用した振動台実験のラックを対象として、パレット免震装置の配置が応 答に与える影響を把握するための地震応答解析を行った。解析モデルを図 2.32に、諸元を 表 2.5に示す。すべての収納棚に、40cm四方のパレットの積載物(100 kg)がある状態を 対象とした。柱脚を固定したラックの立体モデルの頂部に強制変位を与えて水平剛性を求 めた後、ラック自身と積載物の質量を足し合わせて腕木の位置に集中させた等価せん断ば ねモデルを作成した。ラック(弾性モデル)の構造減衰は、瞬間剛性比例型とし、等価減衰
定数をheq=0.015とした。パレット免震装置のある棚は、免震装置の上にパレットを載せた
状態を仮定した。免震装置のすべり材の傾斜角は3/100、摩擦係数は0.074とした。免震装 置のない棚は、パレットと腕木の接触面での摩擦係数を0.4とし、パレットと腕木の相対変 位がパレットサイズの50%(20cm)に達した時点でパレットは落下〔2.7〕、〔2.8〕して解析モデル 上の質量がなくなるものとした。入力地震動は、4.4の実験に用いた観測波(一軸)とした。
図 2.32 パレット免震装置の配置をパラメータとした解析モデル
m
f10段
m
pCASE 1 免震装置なし
CASE 2 10 段目に
CASE 3 8~10 段目に
CASE 4 6~10 段目に 免震装置を設置
免震装置を設置 免震装置を設置
CASE 5 1~10 段目に 免震装置を設置 パレット(免震装置なし)
免震装置を設置したパレット
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パレットの応答が最大となる神戸波(NS、700cm/s2)を入力した解析について、最大応答 変位と残留変位の分布を図 2.33に示す。免震装置のない棚は、CASE1において9~10段目 のパレットが落下した。免震装置のある棚は、CASE4 において最大応答変位が 20cm を超 える場合があった。また、免震装置のある棚のパレットの残留変位は概ねゼロとなった。免 震装置の適用にあたっては、最大応答変位に対応する免震装置のストロークが必要となる。
図 2.33 免震装置の配置とパレット応答変位の関係
(神戸海洋気象台、NS 成分、700cm/s2)
(b) 残留変位の分布 (a) 最大応答変位の分布
(CASE2~4) 黒塗りは免震 装置のある棚
20cm に達して パレット落下 (免震装置なし) [cm] [kg] [kN/cm]
11 624.0 47.0 23.8 10 544.0 435.1 31.8 9 482.5 430.3 39.5 8 431.0 428.3 41.6 7 379.5 428.3 44.5 6 328.0 443.2 40.8 5 266.0 428.2 57.0 4 214.5 428.3 68.2 3 163.0 428.3 87.3 2 111.5 428.3 127.6 1 60.0 447.0 247.7 質点 高さ 質量 等価剛性
表 2.5 解析モデルの諸元(ラック片側あたり)