第 1 項 シングルチャネル時代からマルチチャネル時代へ
過去、消費者が商品やサービスを獲得には、シングルチャネルを通じて、買い物行 動を行う場合が多くみられている。通信手段がそれほど発展されていなかった時代は、
実店舗というチャネル形態しかないため、小売業者から最終消費者までのチャネルは
1
対1
の関係である。この場合、チャネルの数も限られている伝統的な「シングルチャ ネル」である。その後、テレビ通販、電話通販、カタログ通販のようなシングルチャ ネルが盛んになっていた。一方、インターネットの発展に伴い、新しいチャネルタイ プである「ネットショッピング」が生まれてきた。ここでは、現実的チャネルと虚像 的チャネルを分けることにより、同時にいくつかのチャネルを存在させることができ るようになった。このようなチャネルタイプの革新により、「マルチチャネル」という チャネル形態が現れ、消費者が複数チャネルを選べるようになる。その流れの中で、ネットとリアル店舗を統合しながら運営していくクリック・アンド・モルタル戦略が 注目された。いわゆる、オム二チャネルの発展が重要になったといえる。
シングルチャネルからマルチチャネルへの成功的な転換で、消費者の買い物プロセ スおけるコンタクト・ポイントがより豊富になり、消費者の買い物時間をより長くす ることができている。小売業は新しいチャネルを増やすことで、新たなビジネスモデ ルの構築が可能になり、チャネルのシナジー効果によってより良い売上を期待できる ようになってきている。
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第 2 項 マルチチャネルの時代
マルチチャネルは、また十分に概念化されてない用語であるが、先行研究ではいく かマルチチャネルについての定義がなされている。
Stone, Hobbs & Khaleeli (2002)は、
マルチチャネル顧客管理とは、企業が一つ以上のチャネルを用いて、チャネル間の顧 客の一元管理をする方法である、とする。また、企業のマルチチャネル・マーケティ ングは同時的に顧客や見込み客に情報、商品、サービス、サポートなどを提供するこ とを通じて、企業と顧客の長期的関係を構築することができる
(Rangaswamy & Van 2005)。マルチチャネルでは、顧客が商品を購買する際に、企業が提供している複数の
異なるチャネルを利用することができる。たとえば、実店舗、カタログ、ウェブサイ ト、モバイルアプリ、テレビコマーシャル、コールセンターなどである。コトラー(2008p.308)は、マルチチャネル・マーケティングを「1
つの企業が複数の顧客セグメントに到着するために、複数のマーケティング・チャネルを使うこと。」と定義した。チャ ネルを増やすことで、市場カバレッジが広がる、チャネル・コストが下がる、カスタ マイズされた販売ができる、といった 3 つの効果が得られる。
マルチチャネルにおいては、顧客がオンラインチャネルで商品に関する情報収集し、
ローカルストア(実店舗)で実際の購買することは小売業にとっての機会となるが、
一方で脅威ともなる(McIver, Luxton & Sands 2009)。チャネルの融合とは、異なる チャネルが互いに関連する程度のことを指している(Bendoly et al.
2005)。マルチチャ
ネルによる顧客マネジメントとは、有効な顧客獲得、顧客保持、顧客開発を通じて、顧客価値を高めるためにチャネルのデザインと展開および評価を実施することである
(Neslin et al. 2006)。
ウォールマート、メイシーズなどの小売業は、すでに多くのチャネルを使うことで、
シングルチャネルよりも優位性を持っていると意識し始めていたが、マルチチャネル 小 売 業 に つ い て は 成 功 事 例 が ま だ 少 な い (
Herhausen et al. 2015
)。Thomas&
Sullivan(2005)によると、2
つのチャネルを組み合わせて利用している顧客は、シングルチャネルの利用者よりも獲得する価値がつねに大きいとはいえないが、
1
つのチャネ ルともう1
つのチャネルを組み合わせることは、元のチャネルよりもたらされる価値 が大きいとされる。これはいわゆる、チャネル間のシナジー効果を指している。具体 的にいうと、顧客がインターネットとテレビ通販という2
つチャネルを使用すること47
だけでは、実店舗のみ使用する顧客より生み出される価値が大きいとはいえない。し かしながら、もともと実店舗だけ使っている顧客が、実店舗とインターネットと両方 使用することは実店舗だけの時より獲得した価値が大きくなるということである。
マルチチャネルが企業にとっての競争優位をもたらすかは今後更なる検証する必要 である(Neslin
& Shankar 2009)。現段階では、マルチチャネルの優位性は結論づける
ことはできないが、企業がマルチチャネルを実施することは他社と差別化をもたらす (Venkatesan, Kumar & Ravishanker 2007)。一方、一企業内でいくつかのチャネルの活 用することによる各チャネル間のカニバリゼーション問題については、予防および対 策をしなければいけない。一定のコストを費やして構築していたチャネルが、自社の 期待する目標と相反する結果になることは望ましくない。第 3 項 クロスチャネルの時代
マルチチャネルからオムニチャネルへ至る間には、クロスチャネルというチャネル 形態が存在している。「クロスチャネル」は言葉通り、横断的にチャネルを使用するこ とである。クロスチャネルを構築する際には、小売業はチャネル間をいかに統合する かよく考えなければいけない。クロスチャネルに対する標準的な定義は発表されてい ないが、クロスチャネルという概念は学術論文において近年よく用いられるようにな った。
クロスチャネルは、企業と顧客の双方にベネフィットを提供することができる。顧 客向けに考えると、クロスチャネルは顧客管理方法として、顧客をひとつのチャネル から別のチャネルへシフトすることができ、特定ベネフィットを顧客に提供し、シー ムレスな買い物体験を構築することによって顧客満足度を高めることができる。一方 企業とっては、チャネルのシナジー効果を生み出すことや利益を増やすことができる。
先行研究では、マルチチャネルからクロスチャネルへの転換には、チャネルの「組 み合わせ」が必要となり、チャネル間の統合が重視されている。Cao & Li(2015)に よると、クロスチャネルの役割とは、企業がチャネルの目的、デザインおよび展開を 調整し、チャネルの組み合わせを通じて、チャネル間のシナジー効果や特定な顧客に 与えたベネフィットを高めることとされる。企業がクロスチャネルを構築することに より、顧客の信頼感の上昇や顧客の忠誠心を増やすことができる一方、問題点として、
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顧客の切り替え率が高くなる点や、各チャネルに独特の特徴を失う点などが存在して いる。
第 4 項 マルチチャネル、クロスチャネルからオムニチャネルへ
過去
10
年間、オンラインチャネルの到来とデジタル化により、小売ミックスおよび 消費者行動が変わってきた。このような変化に応じるように、小売業がマルチチャネ ル戦略を実行し始めることによって、小売業のビジネスモデルにも劇的な変化が起き た。マルチチャネル戦略とは、既存のチャネルミックスの中に新しいチャネルを加え ることに関連する考え方である。マルチチャネルの目的は、チャネル間に渡って顧客の管理と小売ミックスの統合す ることである。販売チャネルを豊富にする多面チャネル展開と比べて、オムニチャネ ルはすべでのチャネルを統合していくことに違いがある。この統合するプロセスにお いて、各段階で得られた情報やデータが整理され、良い顧客関係を構築することに活 用される。近年では、マーケティングと小売業はさらなるデジタル化が進んでいる。
特に、モバイルチャネル、タブレット、ソーシャルメディアが引き金となり、新しい チャネルがネット店舗と実店舗での統合を促し、小売業は継続的に変化してきている。
デジタル小売業の発展により、ウェブサイト、実店舗、キオスク、カタログ、ソーシ ャルメディア、モバイルデバイスなどのコミュニケーション・チャネルの統合が進み、
オムニチャネルの時代が進んできた(Rigby
2011)。マルチチャネルからオムニチャ
ネルへとシフトしてきたが、オムニチャネルの概念化はまだ十分になされていない。マルチチャネルからオムニチャネルへのシフトでは、複数チャネルの使い分けでは なく、チャネルを連携して、顧客に価値を提供することを目指す。複数チャネル間の 顧客、商品の在庫、販売情報(実店舗、通販、チラシ、EC、SNS、オウンドメディア など)を同時管理することによって、消費者の購買ニーズを最大限満たすことができ、
売上を最大化することも可能になる。オムニチャネル戦略は、オフラインとオンライ ンのショッピング経験を融合することができる(Rigby 2011)。Neslin & Shankar al.
(2009) は、顧客を強制的に特定チャネルを使用させることは、顧客の好みと反するチ ャネルになりがちであり、顧客の不満足を生じやすいとしている。そのため、同時に 複数のチャネルを消費者が選択し、統合的に使用できることが、オムニチャネルの目