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他の γ 線ピークを使用することによる考察

ドキュメント内 学位論文 Experimental Particle Physicsyushu University (ページ 63-68)

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5.4 考察

5.4.3 他の γ 線ピークを使用することによる考察

表5.1に、解析に使用可能なγ 線ピークの存在について記していた。理論式から、共鳴出 口の状態に課せられる要請は終状態スピンF のみであり、終状態スピンF が同一であれば、

複数のピークを使用した解析が可能である。

表5.1に記される終状態スピンF = 4の各ピーク部分のイベント数は表5.4の通りに得ら れる。この表から、5892.5 keVのピークのみを使用した場合に比べて、統計量としては1.3 倍程度の増加が期待できる。

γ線エネルギー[keV] ピークのイベント数

5892.5 3.0×104

6229.0 5.6×103

6559.3 2.6×103

5.4 各解析候補ピークのイベント数

ピークを1つだけ使用していた場合に対して、複数のピークを使用した場合の積分領域の シングルヒットイベント数は表5.5のように変遷する。

検出器角度 ピークを1つ使用した場合 複数のピークを使用した場合 増加率

70.9 83.9 99.7 18.8%

109.1 62.4 59.6 -4.5%

5.5 ピークを複数用いて解析した場合のシングルヒットイベントの変遷

ピーク強度の弱いものを含めるとバックグラウンドイベントが増えるために、期待してい

56 第5章 In(n, γ)反応の解析 たほどの統計量の増加は実現できなかった。検出器角度109.1 において統計量に減少が見ら れているのは、シグナル数の増加量よりもバックグラウンド数の増加量が大きかったためで ある。しかし、ピークを1つだけ用いて解析していた場合に対して、統計量を最大で約1.2 倍増加することがわかった。この場合の非対称度の結果として、次が得られる。

Asym.70.9 =−0.245±0.391 (5.7)

Asym.109.1 =−0.864±0.660 (5.8) これまでの議論から、現状の測定データは統計量が十分でなく、非対称度の誤差を減少さ せることができないことがわかった。このために、解析時の主要誤差要因に関する議論を次 で行う。

5.4.4 不感時間改善による非対称度誤差の減少

ここでは非対称度誤差の主要な誤差要因についての考察と、主要誤差要因を改善した場合 の測定時間について議論する。

5.2節での各補正に付随する中性子共鳴分布の誤差σEn は、以下の式で表される。

σEn = xEn fDead×fF lux

√ (σxEn

xEn

)2+ (σDead fDead

)2+ (σF lux fF lux

)2 (5.9)

ここで、xEn は中性子共鳴分布のイベント数、fDead、fF luxは各補正因子、σDead、σF luxは 各補正の誤差である。式(5.9)を用いて、各補正を独立に行って誤差を計算すると、表5.6が 得られる。

σxEn σDead σF lux

σθ=70.9 0.125 0.795 0.089 σθ=109.1 1.034 3.816 0.735

5.6 各補正誤差のみを伝播した場合の非対称度の誤差。不感時間補正の誤差が最も影 響を及ぼしていることがわかる。

表5.6より、各補正の内、非対称度の誤差に影響を及ぼすのは不感時間補正であることが わかる。そこで、以下では不感時間の改善に焦点を絞り、議論を行う。

図2.5より、非対称度は0.100±0.105の範囲で振動した形状を取る。そこで、混合角φを 求めるための指標として、非対称度の誤差が0.105以下であることを条件に議論する。現状 の測定精度でこれに到達する場合、検出器角度70.9 での非対称度の統計誤差が0.591であ ることから、38.0[h]×(0.5910.105)2 ∼50.2[days]の測定時間が必要となる。

5.4 考察 57 図5.17のように、測定系の不感時間の減少に応じて、不感時間によって失われるイベント 数も同じ割合で減少することを仮定する。つまり、不感時間によって損失するイベント数の 全量は、不感時間を2倍改善すると損失数は元の 12 倍になり、不感時間が3倍改善されると 損失数は元の 13 倍されるとする。この場合、不感時間の改善に応じて、同じ割合で図5.17の 高さ部分が変化する。

これと現状の不感時間と誤差を用いて、不感時間と誤差の関係性を予測すると、図5.18 が得られる。この図に示される各点は同じ統計精度を持っており、不感時間の改善に応じ て誤差が改善する様子がわかる。これより、測定系の改良によって不感時間を現状の4.6倍

(14.0%)改善した場合、現状の統計量でも目標への到達が可能となることがわかる。

TOF

e ve nt s

Dead Time 0 %

Dead Time 20 % Dead Time 40 % Dead Time 10 %

5.17 測定系の不感時間と不感時間によって失われたイベント数の対応。不感時間の減 少に応じて、不感時間によって失われるイベント数同じ割合で減少することを仮定する。

これに対し、現状の測定系を使用して測定時のレートを下げることによって不感時間を減 らす場合について考える。この場合、不感時間と測定時間との関係は図5.19のように得られ る。測定レートが高いと単位時間あたりの統計量が増加するが、不感時間が増加するために 測定時間は長くなる。反対に、不感時間が減少すると、それに伴って測定レートが下がり、測 定時間は長くなる。図5.19より、最も良い測定条件は不感時間30.3%の場合であり、この時 の測定時間は約5.4日である。

以上の議論から、不感時間を減少することによって測定精度が大幅に改善されることがわ かる。その場合、現状の測定システムを用いる場合でも約5.4日間の測定によって、混合角 φの決定が期待できる。

58 第5章 In(n, γ)反応の解析

Dead time (total) [%]

0 10 20 30 40 50 60 70

Error of Asymmetry

0.2 0.4 0.6

5.18 測定系の改良によって不感時間を改善した際に期待される誤差の減少。横軸は不 感時間[%]を示し、縦軸は非対称度の誤差を示す。

Dead time (total) [%]

0 10 20 30 40 50 60 70

Measurement time [h]

102

103

104

5.19 測定レートを減少した際に期待される不感時間と測定時間の関係。横軸は不感時 [%]を示し、縦軸は測定時間を示す。

59

第 6

結論

宇宙における物質・反物質数の非対称性を議論するには、CP対称性の破れは不可欠であ る。現時点で観測されているCP対称性の破れのみでは現宇宙の物質優位性を説明できない ため、さらなるCP非保存過程の存在が示唆されている。そのうちの一つとして、複合核共 鳴を利用したCP対称性の破れを探索する実験が計画されている。この実験を行うために、

標的原子核候補の一つであるインジウムについて、J-PARC MLF BL04で115In(n, γ)反応 の測定及び解析を行った。

115In(n, γ)反応の解析を行うにあたり、(n, γ)反応より放出されるγ 線の放出角度の情報 が必要となる。しかし、検出器を構成する物質によってγ 線が散乱し、放出時に持っていた 角度情報とは異なる角度でγ 線が検出器される可能性があった。この検出角度の誤認識が解 析に与える影響を見積もるために、Geant4を用いたシミュレーションを行った。Geant4に BL04クラスタ型Ge検出器を実装し、データの再現性の良いシミュレーションを構築する事 ができた。シミュレーションの結果、検出角度の誤認識が非対称度に与える影響は最大でも 2 %程度であり、解析には影響が無いことがわかった。

115In(n, γ)反応の解析結果から、現状の測定精度では混合角φに関して有意な結果は得ら

れなかったが、本研究によって 115In(n, γ)反応の解析手法を確立することができた。測定 精度を悪化させる主な要因は測定系の不感時間であり、その改善に応じて、目標到達までに 必要となる測定時間を見積もった。測定系の改善によって不感時間を現状の4.6倍減少した 場合、現状の統計精度でも目標に到達できることがわかった。また、測定レートを減少して 不感時間を低減した場合、最も良い条件では約5.4日間の測定で目標に到達できることがわ かった。いずれの場合においても現状の測定精度を大幅に改善でき、今後の測定によってIn における混合角φの決定が期待できる。

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付録 A

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