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介護労働者のアンケート分析から~
本章では、これまで第2章、第3章の調査(Ⅰ)で介護従事者の定着に関する要因を事 業者側から分析を試みてきたが、ここでは働き手である介護従事者側からの視点を中心に 離職等と関連する事項の分析を進めたい。
特に本章の特徴である介護従事者の働く動機や理由、キャリア、給与などの待遇、上司 や同僚などの職場の人間関係などとの相関からこれらの要素から離職へ繋がる変数を導き 出し、介護従事者の確保・定着に資する労働環境や条件を提示する。
本章の構成は以下の3節からなっている。
第1節では、職員アンケート調査の目的や対象などの概要を説明している。第2節では、
職員アンケートから介護老人福祉施設で働く介護従事者の特徴を、性別、年齢、経験年数、
年収など基本属性などから概観している。第3節においては、これまでに仕事を辞めたい と感じたことと、その時の職場環境との関係について相関関係を確認しながら、離職の抑 制、または促進の要因を分析している。
介護従事者の労働環境にみる離職に関する調査の概要
(1)調査目的
介護従事者の不足から人材の確保、定着が日常的な課題となっている。このため働き手 である介護人材へのアンケート調査をもとに、働く動機や理由をはじめ、キャリア・アッ プや給与、職場の人間関係など多くの要素から、介護従事者の確保・定着に資する要素を 提示する。
(2)対象機関の選定方法と調査対象
本調査は、2009(平成 21)年に財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究 機構(以下、医療経済研究機構)が厚生労働省の「老人保健健康増進事業」の補助金を受 けて行った調査である。筆者はこの調査に係らせていただいた関係から、この元データに よる分析を行うため、医療経済研究機構へ利用申請を行い、使用許可74を得たものである。
742014 年 2 月 21 日にデータの使用を承認いただき当該データとパスワードを戴いた。
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そのため、調査対象は下記のように医療経済研究機構が本来の調査75のために選定した 地域であり、必ずしも日本全国に普遍的に当てはまるものではないが、同じ介護保険制度 下において働く介護従事者であることから、大きな地域偏在はないものとして分析を進め る
、この中から実際に回答のあった有効回答 4,356 のサンプルをもとに分析を し
下の通りである。
・職員の労働環境など
回収状況は以下のとおりである。いずれの施設も30%を下回っている。
図表 20 回収
。
調査対象地域は、東京都、静岡県、山形県の3都県としている。そこにあるすべての介 護老人福祉施設(657 施設)、介護老人保健施設(294 施設)、及び認知症対応型共同生活 介護(679 施設)の合計 1,630 施設としている。選定に当たっては 2009(平成 21)年8月 時点の WAM-NET データを利用している。介護従事者に関してはこれらの施設に職員用とし て 25 部(認知症対応型共同生活介護は 15 部)ずつ配布。各施設を通じて職員の自記入式 で回答を依頼している。なお、本論文では、介護福祉施設に勤務する介護従事者を対象と しているため
ている。
(3)調査項目 (職員票)
主な調査項目は以
・職員の勤務実態
・職員の基本属性
・介護職の経験年数
・職員の就労意欲、理由
(4)回収状況
状況
施設種類 推計配布数* 有効回収数 有効回収率
介護老人福祉施設 15,832 4,555 28.8%
介護老人保健施設 7,044 1,682 23.9%
認知症対応型共同生活介護 7,848 2,165 27.6%
合計 30,724 8,402 27.3%
*2009 年 8 月末時点の WAM-NET の登録情報を元に計算
出所:財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構(2010)『介護労働者の労働
75介護労働者の労働状況に関する調査。
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状況に関する調査報告書』の43頁をもとに筆者作成
図表 21 施設別の回収状況
施設の種類 度数 パーセント 有効パーセント 累積パーセント
介護老人福祉施設 4,356 51.8 54.8 54.8
介護老人保健施設 1,622 19.3 20.4 75.1
認知症対応共同生活介護 1,978 23.5 24.9 100.0
無回答 446 5.3 ― ―
合 計 8,402 100.0 ― ―
出所:本章の以下のいずれの表も作成は元データ(財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会医 療経済研究機構(2010)『介護労働者の労働状況に関する調査報告書』に使用されたなかの施設 別 福祉施設の有効回答数(4,356))をもとに筆者作成
などとのクロス集計を行い、χ二乗検定を行った。
「女性」が 69.7%と7割近くを占めており、女性の多い職場で
性別
の回収状況の介護老人
(5)調査分析方法
分析ソフト(SPSS.Ver18)を使い、単純集計ならびに各変数との相関関係や諸労働条件
この中から、離職意向と後押し要因や抑制要因等の関係を明らかにした。
2 介護従事者の労働環境にみる離職に関する調査の結果と考察
(1)基本属性
①性別
回答者の性別をみると、
あることが確認できる。
図表 22
性別 度数 パーセント 有効パーセント 累積パーセント
女性 3,023 69.4 69.7 69.7
男性 1,316 30.2 30.3 100.0
無回答 17 .4 ― ―
合計 4,356 100.0 ― ―
72
②
で最も多く、次いで「30-39 歳」が 29.3%
の順で多く、この両方で6割以上を占める。
図表 23 年齢
回答者の性別をみると、「20-29 歳」が 33.0%
年齢区分
年齢区分 度数 パーセント 有効パーセント 累積パーセント
20-29歳 1,410 32.4 33.0 33.0
30-39歳 1,252 28.7 29.3 62.3
40-49歳 831 19.1 19.5 81.8
50-59歳 626 14.4 14.7 96.4
60歳以上 153 3.5 3.6 100.0
無回答 84 1.9 ― ―
合計 4,356 100.0 ― ―
③
とんどが正規職 員である。次いで「パート・アルバイト」が 10.3%の順となっている。
図表 24
職員の就業形態
回答者の就業形態をみると、「正規職員」が 82.1%と8割以上を占めほ
就業形態
就業形態 度数 パーセント 有効パーセント 累積パーセント
正規職員 3,540 81.3 82.1 82.1
パート・アルバイト 445 10.2 10.3 92.4
嘱託・契約 321 7.4 7.4 99.9
派遣 6 .1 .1 100.0
無回答 44 1.0 ― ―
合計 4,356 100.0 ― ―
④
」が25.2%、「1-3年」が24.8%の順となっている。経験年数には 大きな差は見られない。
職員の介護職の経験年数
回答者の介護職としての経験年数をみると、「4-6年」が29.1%で最も多く3割近くを占 めている。次いで「7-10年
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図表25 介護職経験年数
介護職経験年数 度数 パーセント 有効パーセント 累積パーセント
1-3年 999 22.9 24.8 24.8
4-6年 1,175 27.0 29.1 53.9
7-10年 1,016 23.3 25.2 79.1
11年以上 842 19.3 20.9 100.0
無回答 324 7.4 ― ―
合計 4,356 100.0 ― ―
⑤
い る。次いで「25-29万円」が29.8%の順となっており、この両方で7割を占めている。
図表 26 区分
職員の月収(9月) *諸手当等は含まず
回答者の調査月の給与をみると、「10-20万円」が40.6%で最も多く4割以上を占めて
給与
給与 度数 パーセント 有効パーセント 累積パーセント
15万円未満 595 13.7 15.5 15.5
15-20万円未満 1557 35.7 40.6 56.1
20-25万円未満 1144 26.3 29.8 86.0
25-30万円未満 376 8.6 9.8 95.8
以上 161 3.7
30万円 4.2 100.0
― ―
無回答 523 12.0
合計 4356 100.0 ― ―
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(2)基本属性等とのクロス分析
①経験年数と給与のクロス
さらに給与と経験年収を合わせみると、経験年数が長いほど給与は多くなっている。
図表 27 介護経験年数と給与のクロス表
給与
合計 15万円
未満
15-20万円 未満
20-25万円 未満
25-30万円 未満
30万円 以上 介
護 経 験 年 数
1-3年 度数 191 512 182 24 6 915
介護経験年数 の % 20.9% 56.0% 19.9% 2.6% .7% 100.0%
4-6年 度数 172 446 326 75 9 1028
介護経験年数 の % 16.7% 43.4% 31.7% 7.3% .9% 100.0%
7-10年 度数 104 305 349 114 38 910
介護経験年数 の % 11.4% 33.5% 38.4% 12.5% 4.2% 100.0%
11年以上 度数 48 170 233 156 107 714
介護経験年数 の % 6.7% 23.8% 32.6% 21.8% 15.0% 100.0%
合計 度数 515 1433 1090 369 160 3567
介護経験年数 の % 14.4% 40.2% 30.6% 10.3% 4.5% 100.0%
上記の図表27を裏付けるように図表28では介護職の経験年数と給与は.409という強い相 関がみられ、経験年数が増えるほど給与の額も上がることが示されている。
図表28 経験年数と給与の相関係数
介護職としての仕事
年数 給与
介護職としての 仕事年数
Pearson の相関係数 1 .409**
有意確率 (両側) .000
N 4,248 3,756
給与
Pearson の相関係数 .409** 1
有意確率 (両側) .000
N 3,756 3,833
**. 相関係数は 1% 水準で有意 (両側)
また図表29のように年齢と給与の関係では、年齢が上がるほどに給与の額も上がるとい う相関があるとまでは言い切れない。
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図表 29 年齢と給与の相関係数
給与 現在の年齢
給与 Pearson の相関係数 1 .126**
有意確率 (両側) .000
N 3,833 3,807
現在の年齢 Pearson の相関係数 .126** 1
有意確率 (両側) .000
N 3,807 4,299
**. 相関係数は 1% 水準で有意 (両側)
②就業形態と給与区分のクロス
職員の就業形態と給与の関係をみると、「正規職員」は他の就業形態と比較して月収「15-20 万円未満」や「20-25万円未満」の層が多くなっており、正規職員の方が明らかに月収の多 いことが確認される。
図表 30 就業形態と給与のクロス表
給与
合計 15万円
未満
15-20万円 未満
20-25万円 未満
25-30万円 未満
30万円 以上
就 業 形 態
正規職員 度数 167 1317 1094 368 161 3107
就業形態の % 5.4% 42.4% 35.2% 11.8% 5.2% 100.0%
パート・ア ルバイト
度数 277 103 14 1 0 395
就業形態 の % 70.1% 26.1% 3.5% .3% .0% 100.0%
嘱託・契約 度数 133 120 33 5 0 291
就業形態 の % 45.7% 41.2% 11.3% 1.7% .0% 100.0%
派遣 度数 1 3 0 0 0 4
就業形態 の% 25.0% 75.0% .0% .0% .0% 100.0%
合計 度数 578 1543 1141 374 161 3797
就業形態 の% 15.2% 40.6% 30.1% 9.8% 4.2% 100.0%
③配偶者の有無
回答者の配偶者の有無をみると、「いる」が43.0%で4割強となっている。
図表 31 配偶者の有無
配偶者の有無 度数 パーセント 有効パーセント 累積パーセント
いる 1,862 42.7 43.0 43.0
いない 2,465 56.6 57.0 100.0
無回答 29 .7 29 .7
合計 4,356 100.0 29 .7
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④世帯年収区分
回答者の世帯年収区分をみると、「250-350万円未満」が28.2%で最も多く、3割弱を占 めている。次いで「350-450万円未満」が19.3%の順で多くなっている。「250万円未満」
の14.5%を合わせると、350万円未満の世帯は全体の42.7%となり4割以上を占めている。
図表 32 世帯年収区分(配偶者あり)
世帯年収区分 度数 パーセント 有効パーセント 累積パーセント
250万円未満 447 10.3 14.5 14.5
250-350万円未満 869 19.9 28.2 42.7 350-450万円未満 594 13.6 19.3 62.0
450-550万円未満 378 8.7 12.3 74.3
550-650万円未満 233 5.3 7.6 81.9
650-750万円未満 174 4.0 5.7 87.5
750万円以上 384 8.8 12.5 100.0
無回答 1,277 29.3 ― ―
合計 4,356 100.0 ― ―
さらに配偶者なし(2,465 人)の回答者の世帯年収区分をみると、「250-350 万円未満」
が 36.6%で最も多く、4割弱を占めている。次いで「350-450 万円未満」が 19.0%の順で 多くなっている。「250 万円未満」の 18.7%を合わせると 350 万円未満の世帯は全体の 55.3%となり6割近くを占めている。
図表33 世帯年収区分(配偶者なし)
世帯年収区分
(配偶者なし) 度数 パーセント 有効パーセント 累積パーセント
250万円未満 307 12.5 18.7 18.7
250-350万円未満 600 24.3 36.6 55.3 350-450万円未満 312 12.7 19.0 74.3
450-550万円未満 142 5.8 8.7 83.0
550-650万円未満 77 3.1 4.7 87.7
650-750万円未満 47 1.9 2.9 90.5
750万円以上 155 6.3 9.5 100.0
無回答 825 33.5 ― ―
合計 2,465 100.0 ― ―
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