第7章 介護施設経営の経営指標にみる処遇等の問題
7.7 人(40.8%) 8.5人(43.7%)
介護福祉士 264,107 258,986
介護職員 223,124 223,464
介護福祉士 230,476 262,173
介護職員 212,046 199,209
延訪問回数
常勤換算職員数(常勤率)
看護・介護職員常勤換算数(常勤率)
常勤換算1人当たり給与 (円)
常勤 非常勤
出所:厚生労働省(2012i)「平成 23 年介護事業経営実態調査結果」老健局老人保健課 に基づき筆者作成。
(4)新規採用にみる給与等の状況
いくつかの社会福祉法人の求人票から、2014(平成 26)年度卒業の介護職の採用条件を まとめてみると、図表 71 で示されるように、4年制大学卒の基本給は 180,000 円前後が多 く、それに加えて夜勤手当が 20,000 円(月4回)、資格手当が介護福祉士で 5,000 円、そ の他調整手当等を含めて、多くの施設は月額 21-22 万円程度となっている。賞与も多くの 施設では、年2回4か月でこれらを含むと年収は 320-350 万円と推計される。どの施設も 大きな開きはない。
参考までに、2013(平成25)賃金構造基本統計調査114から一般企業の大学卒初任給を確 認すると、以下のような状況である。
男女計の金額では、月額198,000円であり、規模別の小企業では190,000円となっている。
産業別では、全産業計が月額198,000円であるのに対して医療・福祉では、192,700円とや や低くなっている。これをみる限り、福祉分野の初任給は一般企業よりもまだ低い状況に ある。
114厚生労働省(2013e)「賃金構造基本統計調査-産業別新規学卒者の初任給の推移-」大臣官房統計情報部 雇用・賃金福祉統計課賃金福祉統計室。
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図表 71 新卒求人にみる基本給と諸手当
法人
(職員数)
基本給
(円)
夜勤手当
(円)
資格手当
(円)
通勤手当
(円) 賞与 処遇交付金
ほか 備考 1 兵庫県A
548 人
162,800~
(22 歳) 不明 10,000 上限
45,000 年 2 回 賞与で対 応
年齢給あ り 2 大阪府 B
300 人
182,500
(大卒) 4,500/回 5000(介護
福祉士) 全額支給 年 2 回 ―
事業活動 収入 12 億円 3 京都府 C
765 人 185,000 5,000/回 10,000(会 議福祉士)
上限 45,000
年 2 回+
資格加算 あり
―
年間収入 30 億 4691
万円 4 大阪府 D
不明
198,200
(大卒) 4,500/回 不明 上限 45,000
年 2 回:
4 か月 ― 5 奈良県E
不明
168,000~
178,000 5,000/回 7,000(会 議福祉士)
上限
20,000 年 2 回 ―
役職手当 住宅手当 皆勤手当 6 滋賀県F
161 人
181,900
(大卒) 3,500/回 5,000 上限 30,000
年 3 回:
4.1 か月
昇給率 2%
年間収入 6 億 9300 万円 7 大阪府 G
120 人
182,500
(大卒)
15,000/
月 3,000 上限 30,000
年 2 回:
4 か月
昇給年 1 回 2 千~4
千
年間収入 6 億 8700 万円 8 大阪府 H
120 人
208,800
(大卒) 3,000/回 3,000(会 議福祉士)
上限
30,000 不明 ― 不明 9 兵庫県I
164 人
163,500
(介護職) 5,000/回 5,000~
15,000
上限 30,000
年 2 回:
4 か月 10,000
年間収入 8 億 4824 万円 10 大阪府
J 120 人
188,800
(大卒) 5,000/回 5,000(介
護福祉士) 全額支給 年 2 回:
3 か月 10,000 11 大阪府
K 349 人
157,700
(ケアワ ーカー)
4,500/回 3,000 上限 30,000
年 3 回:
4.75 か月 ― 調整手当 15,770 12 愛知県
L 250 人
160,000
(大卒、介 護)
6,000/回 不明 上限 30,000
年 2 回:
3.5 か月
昇給年 1 回 2 千~6
千
年間収入 12 億 5000
万円 13 愛知県
M 93 人
180,000
(大卒、介 護)
5,000/回 5,000 上限 50,000
年 2 回:
4 か月 ―
年間収入 7 億 2000 万円 14 愛媛県
N 115 人
135,000
(大卒、介 護)
20,000/
月
5,000(介 護福祉士)
上限 17,500
年 2 回:
2.5 か月
住宅手当 22,000
年間収入 5 億円 参考:日経ヘルスケア 2013 年 9 月号 求人広告による賃金速報
正看護師の全国平均 281,863 円/月 (年収 450 万円)
出所:2014 年卒対象の求人票より筆者作成。
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3
先進的な取り組みを実践している社会福祉法人の経営の実態
これまで、データから介護老人施設等の収入や人件費を見てきたが、規模の大きさや地 域による差が少しみられるものの、その経営手法というものがはっきり見えない。そこで 全国でも屈指の大規模法人と言われる2法人115の理事長等に社会福祉法人の経営とその 課題についてインタビュー調査を試み、日本においてトップクラスの社会福祉法人の歩み と今後の展望について考察を行った。
(1)調査の概要
①調査時期 S法人 2013 年 11 月 14 日 (現地法人にて)
K法人 2013 年 11 月 19 日 (現地法人にて)
②調査対象
法人の代表(S法人は常務理事、他部長クラス。 K法人は理事長が対応)
③調査方法
半構造化インタビュー 約2時間
④おもな質問
・法人の概要(職員数、処遇、福利厚生、研修体制、キャリア・アップ等)
・職員の定着・確保策
・介護職の専門性とは
・施設長の条件
・介護保険制度、介護報酬について
・社会福祉法人の課題
・貴法人の強み など
(2)調査の結果
①両法人の概要等
図表 72 にあるように、2法人とも開設時期は古い。現在は障害者分野、保育分野など 多面的な事業展開をしているが、創設当初は特別養護老人ホームからスタートしている。
115調査対象として選んだ2法人は、いずれも地方都市に本部があり、社会福祉法人の在り方等に関する 検討会の委員を出している法人であり、社会福祉分野では、新聞等マスコミで多く取り上げられている 法人である。
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職員数もS法人は約 1,000 人、K法人に至っては 2,000 人を超えており、一法人一施設で 職員数が少ない社会福祉法人とは異なり、際立って職員数が多い。
職員の正規、非正規の構成比をみると、S法人では 6:4、K法人では 7:3 というよう に正規職員が多くなっている。両法人とも施設、在宅部門の事業展開をしているので、施 設は正規職員が多く、在宅部門はパートやアルバイトなど非正規が多くなっている。職員 の男女比はS法人では 2:8、K法人では 3:7 でいずれも女性が多い職場である。
介護職全体の平均年収はS法人で約350万円であり、世間と比べても高くはないが、低 いとは思わないという考えである。次長クラスになると年収600万円くらいになるという ことであった。K法人でも専門学校卒の新採用では年収300万円であり、勤続20年くらい すると年収450万円ほどになり、夫婦で働くと900万円でこの法人の所在する地方なら家 が買えるということで決して給料は安くはないということである。
ただS法人では定期昇給を毎年2%実施しており、その分年々人件費比率は上がり66%
にも達しており、全国平均の60%を大きく超えているとのことである。
夜勤手当は、S法人では 1回11,000 円と全国の傾向である5,000-6,000円より高く設定 してある。資格給については、たとえば介護福祉士で 6,000 円と全国の傾向と同じレベル である。
キャリアパスについては、両法人とも明確に課業を示しており、スッテプアップが職員 にわかるようにしてある。K法人では3年ごとに論文と面接という試験を行い昇進させて いる。一方で見直しも行い、降格人事もあるという。
人事考課制度についてS法人は数年間、第三者評価を導入したが成果が上がらず、現在 は欠怠勤で評価している。K法人は第三者評価を取り入れS・SAなどの評価を行ってい る。またそのために評価者研修も行い、評価者の質の確保も行っている。
離職率についてS法人では12%くらいで全国の16%に比べると低いが、離職対策を特別 にとっていることはない。最近は、同じ地域で新規事業者が立ち上げ時に職員の引き抜き などを行うため中堅どころで辞めていく人が多くなっている。K法人では年々離職率は減 っており、2011年では8.6%と格段に低くなっている。
また福利厚生は両法人とも充実しており、産休、育休、有給、介護休暇などの取りやす さのほかに、海外への研修旅行なども積極的に支援している。
さらに特筆すべきは、両法人とも介護の質を上げる人材育成として研修体制が充実して おり、法人内部や法人外部の学会や研究会においても積極的に成果を報告している。
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図表 72 ヒアリング調査法人の概要
社会福祉法人 S 社会福祉法人 K
設立 昭和49年 昭和61年
職員数 978名(25年10月現在) 2,152名(25年10月現在)
正職員数:パート数 578名(59%): 400名(41%)
施設系は正社員の割合が高い
正規約 1422 名(70%):約 619 名(約30%) *24年度
男女比 2 : 8 3 : 7
事業所数 48事業(施設、在宅等) 119事業(病院、施設、在宅等)
主な事業
特別養護老人ホーム、老人保健 施設、グループホーム、通所介 護、訪問介護・看護、地域包括 支援センターなど
病院、特別養護老人ホーム、老人 保健施設、グループホーム、ケア プランセンター、ケアハウス、保 育所、障がい者就労施設など
平均給与等
介護職 年収350万円
(高くはないが、安いとは思っ ていない。給料が安いといって 辞める人は少ない)
次長クラスで年収600万円以上
20歳専門学校出身で年300万円。
勤続20年、40歳で年収450万円。
法人全体の平均で21万円/月
(賞与除く)
残業代の100%完全支給 賞与 年5か月(3回支給)
昇給等 定期昇給 毎年2%
人件費率 66%
夜勤手当 11,000円/回 7,000円/回 資格手当 介護福祉士 6,000円
キャリアパス
職員⇒主任補佐⇒主任⇒次長⇒
副部長⇒部長(次長以上は管理 職)何年でという職位は決めて いない。その人の実力で評価
総合職(2・1級)⇒指導職(2・
1級)⇒管理職(2・1級)⇒経営 職(2・1級)
3年で職位を見直し
人事考課
第三者評価を試行したが、効果 が上がらず、現在は欠怠勤のみ で評価
一般職、総合職、専門職に分類。
総合職は職群別資格等級で昇進 する制度を実施。第三者評価で S・SA などで評価(そのための 評価者研修も実施している)
離職率 12%で辞める人は少ない 8.6%(2011年)全国16.1%
福利厚生
海外旅行(法人補助の共済で実 施)産休、育休、有給、介護休 暇等を取りやすく支援
リフッレッシュ休暇制度、職員旅 行制度(国内外)
その他 職員組合はないが、職員のニー ズをいつも吸い上げている
研修体系を充実。法人内で研究報 告会を毎年開催。
出所:ヒアリング調査をもとに筆者作成。
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