• 検索結果がありません。

事例比較

ドキュメント内 修士論文 (ページ 65-69)

第一項 各企業の検証結果 1.大塚製薬の検証結果

下の図表

5.1

が示しているように、

1980

年代の中国大塚製薬有限公司の合弁の形 態が合理的であった。しかし

1990

年代になってから、競争の激化によって、モデル は合弁相手の株式を買収することで、統制力の高い形態にしたほうがいいと指摘した。

実際に、大塚製薬は中国政府との良好な関係を維持するために、中国大塚製薬有限公 司の合弁の形態を維持することにし、代わりに他の新しい工場を単独出資で作った。

その結果、中国大塚製薬有限公司のメイン事業である輸液において苦戦してきたが、

政府側から大きなソーシャルキャピタルを獲得することに成功し、中国大塚製薬グル ープ全体としての競争力が上がった。まさに人間万事塞翁が馬。つまり、モデルから みれば不適切なのに、長期的な視点からするとより大きな利益につながった。そのた め評価が△であった。反省として、モデルの要因にソーシャルキャピタルを追加する 余地があったかもしれない。

図表5.1 三社の検証結果のまとめ Step

1

Step 2 Step 3 モデル

の結論

実際 使用 した 形態

海外

直接 投資

全社 戦略 を気 にす る必 要性

中国 大塚

19 80

代)

合理

ない

合弁 合弁

中国 大塚

19 90

代)

合理

ない

激し

あり 買収 合弁 のま ま、新

工場 を単 独出 資で 設立

天津 大塚 飲料 有限 公司

合理

ない

合弁 合弁

天津 武田

19 94 年)

合理

ない

合弁 合弁

天津 武田

20 10 年)

合理

ない

激し

あり 買収 買収

GSK 重慶

合理

ない

合弁 合弁

GSK 重慶

(仮 定)

合理

ない

統制力 の高い 形態

GSK 蘇州

合理

ない

激し

ない 単独出

単独 出資

出所:筆者作成

2.武田薬品工業の検証結果

大塚製薬は短期的な利益より、政府との長期的な関係作りを重視していたが、武 田薬品工業の場合はその逆であった。天津武田薬品有限公司(天津武田药品有限公司)

における提携相手の天津力生製薬厂(天津力生制药厂)が国営企業であったにもかか わらず、武田薬品工業は断然と天津力生から合弁企業の株式を買収することを決め、

2010

年に天津武田薬品を完全子会社化した。統制力が上がったおかげで、近年の業 績が好調で、

2019

年から工場の拡大改修を始めた。

武田薬品工業の一連の意思決定がモデルの結論と一致し、〇の評価を得た。

3.グラクソ・スミスクライン社の検証結果

参入当時の条件から考察すれば、

GSK

社重慶工場がとった合弁の形態が適切であ ったが、

2000

年に行われた合併を

1980

年に、前倒しにすることを仮定してから検 証すれば、最も適切なのは統制力の高い形態であった。当時の

GSK

社の意思決定は

工場の評価を△にした。

このことから、モデルは製薬業界で多発する合併という前提を考慮しなかった側面 を反映している。

また、

GSK

社蘇州工場は〇評価を得たが、中国

GSK

社の全体的なガバナンス上の 失敗とマーケティング上の挫折のせいで、資源配分の合理化という理由で売却された。

したがって、実務上の海外参入における失敗を回避するため、適切な参入形態を選ぶ だけでなく、その後の事業運営においても十分な注意を払う必要がある。

第二項 検証結果のまとめ

中国における売上が占める割合が低いため、三社ともに中国における売上データを 公表していない。そのため、筆者は大塚の日本と北米以外の地域(主に途上国)の売 上、武田工業のアジア売上(主に途上国、日本を除く)、GSK 社の新興国とアジア売 上(日本を除く、通貨はポンド)のデータを各社の決算資料により、以下の図表

5.2

にまとめた。元々三社の規模が異なるので、単に売上高の数値を比較しても意味がな いため、三社の売上増加(減少)率を比べることにした。それで明らかに分かったの が武田工業の増加率が最も高く、急成長していることや、GSK 社の業績が年々悪化し ていること。また、大塚の業績はすこしずつ上がっているが、

1995

年から

2003

年ま での間、中国大塚の業績の増加はほぼ停止していたことが先行研究により分かった。

これは

1990

年代に大塚が実際に選んだ参入形態「合弁」が、モデルが出した適切な 形態「買収による完全子会社化」と異なることが招いた結果だと思われる。

図表5.2 三社の業績比較

2011 2012 2013 2014 2015

大塚の日本 北米以外に おける売上 高(百万円)

中 国 大 塚 は 1995 年代か 2003年ま で 業 績 増 加 ほぼ停滞

149809 166195 177068 224882 211641

武田アジア 売上高(百 万円)

38054 60087 85371 111412 125961

GSK 新 興 国とアジア における売 上高(日本 を除く、百 万ポンド)

7116 6780 6746 6193 業 績 悪 化 で 、2015 年 以 降 は

「 北 米 と ヨ ー ロ ッ パ 以 外 の 地 域 の 業 績」に統合 した 出所:各社の決算資料により筆者作成

次は三社の共通点を見てみる。

図表

5.1

から分かるように、分析対象であった三社は全て、折衷理論における所有

の優位性、内部化の優位性、立地を優位性を所有している。実際に、前の二つと比べ、

最後の立地の優位性の判断は最も主観的であると筆者は検証を通じて感じた。例えば、

今回の中国の製薬業界への参入の場合、企業が中国を生産・流通・販売の一連の価値 創造プロセスを実現できるところとして見ているかどうかによって、企業にとっての 立地の優位性が決まる。武田薬品工業の例になるが、

1994

年の合弁の前、すでに中 国企業とライセンス提携契約を結んだ。たった数年間の違いで、ライセンスから合弁 に移行した理由は、恐らく会社の資源上の変化ではなく、経営陣の中国に対する印象 が変わったことにあるのであろう。

そして、三社とも、グローバル統合の戦略意向を当時持っていなかった。勿論、現 地の知識やノウハウを活用するという観点から、研究開発しか持たない拠点を設立し たケースはあるが、今回の研究対象である子会社は主に生産販売を目的としたもので、

研究開発型の拠点の参入形態に携わっていなかった。今後機会があれば補足したい。

また、三社の相違点について説明する。

第一項で述べたように、大塚製薬と武田薬品工業が政府との良好な関係の構築をめ ぐって、異なる対処の仕方を選んだ。また、武田薬品工業と

GSK

社はそれぞれ各自 の吸収・合併によって得た海外子会社を売却したが、それによって生じた問題意識が 異なる。武田薬品工業の場合はどのような条件を揃えば、企業が売却を決めるのに対 して、

GSK

社の場合は合併後の重複した資源を効率最大化のように分配するには、ど のような形態が合理的であるかという質問になる。

最後、評価と実際の中国における業績からみて、三社の中、最も優れたのは武田薬 品工業で、その次は大塚製薬、第

3

位は

GSK

社という結果になった。

また、今回の研究を通じて、製薬業界の特性について再確認できた。ソーシャルキ ャピタルを重視し、結合の強いネットワークに位置付けようとすること、摺合せ型シ ナジーで提携相手に自社の技術やノウハウなどが流出しやすいこと(相手も同じく製 薬会社のとき、これは相手の無形資産を獲得しやすいとメリットにつながるが)は先 行研究のレビューで改めて認識することができた。

ドキュメント内 修士論文 (ページ 65-69)

関連したドキュメント