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本章では,矢吹,角が開発したシリアスゲームの「言外の意味ZERO」[28][29][30][31][32]

を用いた場合,実際の会話に応用できるか検証するための予備実験の計画と,その結果に ついて述べる.

5.1 実験計画

5.1.1 実験目的

実験目的は,矢吹,角が開発したシリアスゲームの「言外の意味ZERO」[28][29][30][31][32]

は,自閉症者と普段関わりがない定型発達者にてペーパーテスト上で学習効果が認められ た.しかしながら,実際の会話に応用できるかまでは検証がなされていない.そのため,

インタビュー形式の事前事後テストを行い,実際の会話にどれだけ応用できるかどうか検 証を行った.

5.1.2 実験対象

実験対象は,公立はこだて未来大学に在籍する定型発達者4名であった.性別の内訳は,

男性2名,女性2名であった.また,平均年齢は,22.75歳であった.

5.1.3 実験材料

実験材料として,学習した内容を実際の会話にどれだけ応用できるかどうか検証を行う ため,インタビュー形式の事前および事後テストを作成した.表5.1はインタビューの内 容である.事前事後両方に共通して,まず「私は国語のテストを受けました」といった会 話状況の説明を行い,その後「あなたは私にテストの出来具合を聞いてください」と指示 を行い,そのあと表出された発話を記録した.また,事前事後の問題間は類似例を用い,

両方ともある対象の出来具合を聞く問題であった.

その他の実験材料として,言外の意味ZEROをプレイするためのノートパソコン,マ ウス,イヤホンと,実験風景の撮影用にビデオカメラと三脚を用いた.

表5.1: 予備実験の事前事後インタビューの内容

テスト 問題 模範解答

事前

私は国語のテストを受けました あなたは私にテストの

出来具合を聞いてください

あなたが受けた国語のテスト難しかった?

事後

私は算数の宿題をやりました あなたは私に宿題の

出来具合を聞いてください

あなたがやった算数の宿題難しかった?

5.1.4 実験手続き

実験手続きの骨子は以下の通りであった.また,被験者一人当たりの実験時間は約20 分であった.

1. 実験説明

2. 事前テスト

3. 実験刺激

4. 事後テスト

実験手続きの詳細は,実験説明にて本実験が自閉症者に対して伝わりやすい話し方を学 習するシステムの評価実験である趣旨を説明した.その後,事前テストについて説明を行 い,説明終了後にアンケートを実施した.なお,説明内容は以下の通りであった.

今から一つの質問を行うこと

間違っても問題なく,気軽に答えること

インタビューの進行方法として,まず会話状況の説明を行うこと

インタビューの進行方法として,会話状況の説明のあと被験者に指示を行うこと

指示に従って,実験者を「語用障害をかかえる人」だと思って発話すること その後,15分ほど言外の意味ZEROをプレイしてもらった.最後に,事後テストにつ いて事前テストと同様の説明を行った後,事後テストを実施した.

5.1.5 実験結果の処理方法

実験結果は事前テストに比べて事後テストでの変化を被験者ごとに評価した.評価基準 は,以下の通りであった.これら評価基準を総合的に見て,発話に改善がみられたかどう か評価を行った.

曖昧な表現の有無および量の変化

改善が見られた文節句の有無および量の変化

変化が見られなかったまたは悪化した文節句の有無および量の変化

5.2 実験結果と考察

実験結果を表5.2に示した.まず,Aさんは事前事後ともに曖昧な表現はないものの,

何のテスト(宿題)なのかどかの改善が見られず効果が無かった.次に,Bさんは事前に はなかった曖昧な表現の「この」が事後テストで現れてしまい曖昧な表現に対しては悪化 したが,事後では数学の宿題というフレーズを用いて何の出来なのか言及しており,その 点は改善が見られた.また,Cさんは事前事後ともに曖昧な表現があり,改善が見られず 効果が無かった.最後に,Dさんは事前で曖昧な表現の「この」「どう」があったが,事後 では曖昧な表現がなくなり,誰がどうした何の宿題なのか発話しており,改善が見られた.

表5.2: 予備実験の結果

被験者 事前 事後

A テスト何点だった? 宿題難しかった?

B 難しい問題は何かあった? この数学の宿題で何か わからないことはありますか?

C この前受けた国語のテスト

結果どうだった? 数学の宿題ってどうだった?

D

この前のテストどうだった?

自分でも難しいと思ったんだけど、

何点くらい?

君がやってる数学の宿題 どこまで進んでるかな?

考察として,何も改善しなかった人が全体の50%で,部分的に改善(部分的に悪化)し た人が25%,完全に改善した人が25%と,改善にかなり個人差が目立ち,かつ改善でき た人のほうが少ないため,言外の意味ZEROでは実際の会話に応用が難しいことがわかっ た.考えられる原因は,全てパソコン上のマウス操作で進めることができ,対話への応用 に関して言外の意味ZERO上では練習することができないため,対話へ応用できるかど うかは学習者の能力に依存する可能性があると考えられる.よって,本研究では「学習手 段に音声対話を用いることで実際の会話に応用しやすい」と仮設を立てた.

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