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第 3 章 側面衝突事故シミュレーションによる自動車乗員傷害予測手法の構築

3.2 側面衝突事故シミュレーションモデル

3.2.1 乗員モデル

本研究では乗員モデルとして過去に著者らによって開発された日本人男性の 5th%ile,50

th%ileと95 th%ileの身長と体重を有する乗員マルチボディモデル[10]を用いた.このモデルの特 徴は実人体形状の三次元計測に基づいているため,形状忠実性が高いとされている.各関節の 受動抵抗や接触剛性などについては文献値を参考に決定した[10][11].なお,モデルの設定および 解析にはMADYMO ver. 7.1 (TASS社)を用いた.

このモデルは先行研究にて前面衝突における妥当性が検証されている[23][11]が,側面衝突にお ける妥当性も明らかにする必要がある.そこで,肩への側方衝撃を模擬した志願者実験[24]を再 現し,実験結果とシミュレーション結果との比較を行うことにより検証した.実験で用いられ た側方衝撃負荷装置をFig. 3.1に示す.この装置はインパクターを押し出すための空気蓄圧部お よびコイルばね部,インパクター位置の高さ調整部,被験者の着座位置の調整部(前後・上下)

から構成されている.被験者との接触部はピストンに固定されており,蓄圧された空気を開放 することによりインパクターが発射されるという仕組みである.被験者の挙動と体節加速度は それぞれ3次元モーションキャプチャシステム(EAGLE)と3軸加速度計によって取得された.

Fig. 3.1 view of the dummy test

再現シミュレーションでは,実験で測定された変位を,作成したインパクターモデルに入力 することで人体モデルとインパクターとの衝突を表現した.インパクターの材料が不明だった ため,接触特性は人体モデルに与えられる荷重が実験と合うように設定した.実験は被験者が 非緊張の状態で行われており,人体モデルが自動車衝突を想定した高衝撃下での使用を前提と しているため,筋力の影響は無視することとした.シミュレーションの様子をFig. 3.2に示す.

解析時間は300msとし,全身挙動および頭部と胸部の加速度,速度,変位を比較した.

Fig. 3.2 Side impact simulation

Fig. 3.3にインパクター荷重の比較を示す.実験とシミュレーションで同程度の力が被験者お よび人体モデルに与えられていることがわかる.次に,被験者の筋電は総じて75msから100ms の間に立ち上がっているため,この時間以降,筋力の考慮されていないシミュレーションとは 異なる現象になったと考えられる.従って,75msまでの挙動および加速度を評価する.

Fig. 3.4に示すように,全身挙動について,実験とシミュレーションを比較した.100ms以降

は人体モデルがインパクターから離れるのが早いことがわかる.しかし,この時間帯ではすで に被験者の筋発揮が見られ,体がインパクターに押されることにより発生した加速度に抵抗し ている.人体モデルには筋による影響が一切含まれていないため,この違いが生まれたと考え られる.その他,人体モデルの示した挙動に不自然な点は見られなかった.

Fig. 3.5に示すように,頭部と胸部T1の加速度について,実験とシミュレーションを比較し

た.加速度について,全体的な波形は定性的によく一致している.頭部加速度が100ms付近で 一度落ちるのは胸鎖乳突筋が大きく発揮されている影響であると考えられる.胸部加速度の最 大値が実験に比べて小さくなっているが,積分値を取って速度と変位を比較すると実験のコリ ドール内にほぼ収まることから運動量はよく合っていると言える.全体的にシミュレーション の波形の立ち上がりが早くなっているが,これはインパクター荷重の立ち上がりが実験にくら べて早いためであり,インパクターとの接触特性を修正することで改善されると考えられる.

以上より,本乗員モデルは側面衝突シミュレーションにも応用可能であると考えられる.

Impactor model

Human model

floor

seat impact

Fig. 3.3 Impact force

0 ms 50 ms 100 ms 150 ms 200 ms

Fig. 3.4 Comparison of human behavior in simulation and the test simulation

experiment

0 100 200

200

0 400 600 800 1000

Time [ms]

Force[N]

-10 0 10 20 30

0 100 200 300

Ac c e le ra ti o n[ m m /s

2

]

time [ms]

experiment simulation

(a) head

-90 -60 -30 0 30 60 90

0 100 200 300

A c cel er at io n[ m m /s

2

]

time [ms]

experiment simulation

(b) thorax

Fig. 3.5 Validation results of occupant model against volunteer test