自分に合った医師・医療機関を紹介するサービス
図表17 主な医療・健康産業の活性化策
(出所)政府・経済財政諮問会議「生活産業創出研究会」
から多額の融資に応じるというのではなく、協 調融資や流動化等によりある程度リスクをヘ ッジすることも視野に入れるべきであろう。
具体的な各事業については、次項で詳述する。
(2)医療機関がフィットネスクラブ経営に新 規参入するリスク
医療機関がフィットネスクラブ経営に新規 参入する場合には、特に留意が必要である。そ の理由は、フィットネスクラブ事業の収支構 造にある。
フィットネスクラブは装置産業(設備型産 業)であることから、支出面ではイニシャル コストが多額になるとともに、サービス品質 を維持するには固定的なランニングコストを 要することとなる。
一方の収入面は、売上の大半が利用者から の月会費などで占められることから、常に損 益分岐点を上回るようにするためには、一定 数以上の会員を常時確保しておくことが不可 欠である。
つまり、マーケティングの観点による、し っかりとした会員数予測に基づく収支計画と、
当該計画を実現するためのプロモーションが 不可欠となる。
また、一定期間ごとの設備更新や、競争力 強化のためのリニューアルも必要となろう。
近時、医療機関においてもマーケティング マインド・サービスマインドを持つところが 多くなってきていることも事実であるが、金 融機関においては、収支計画などビジネスプラ ンの事業リスクの見極めや、経営者としての手
腕の見極めなど、特段の留意が必要となろう。
(3)「必要不可欠であるか。不急不要である か」という観点の重要性
ヘルスケア・サービス事業に対応していく 上では、「必要不可欠であるか。不急不要であ るか」という観点が重要である。
健康増進・疾病予防が人間の本来的欲求で あることは論をまたないが、ブーム(流行)で ある側面も否定し得ないところであろう。
つまり、医療行為としてのリハビリテーシ ョン等と健康増進・疾病予防との相違点とし て、家計において可処分所得が減少した場合 に必要不可欠の支出として考えられるか否か という点である。
この観点からは、「フィットネスクラブ事業」
よりも「健康管理食宅配事業」の方が、必要 不可欠と見られる可能性が高いのではないだ ろうか。独居老人世帯の増加傾向なども勘案 すると、マーケットは拡大傾向にあるだけでは なく、安定的であるとも考えられるのである。
もっとも、利用者ニーズの多様化や、競争 激化に対応するため、仕入・販売など安定化・
コストダウンなど、経営努力は欠かせないも のである。
(4)民間事業者がヘルスケア・サービスに参 入するリスク
民間事業者が自社の競争力強化のためにヘ ルスケア・サービスに参入する場合に対応する 際も、内包するリスクを踏まえる必要がある。
なにがしかの提携となろうが、医療に近し
い事業であることから、許認可や資格が不可 欠であることが多く、その点についての確認 を欠かしてはならない。
また、当初段階において許認可・資格を確 認できていても、以降の段階においても失効 や要件の未充足などのリスクもあることから、
常態的な把握が必要である。
おわりに
以上取り上げてきたような、各種療法を取 り入れたサービスや医療情報サービスは、医 療保険が適用される治療の圧倒的な規模と比 較すると、今のところそれほど大きな規模で はない。しかし、生活習慣病の増加が、急速 にすすむ高齢化などとあいまって新たに社会 問題化してきた現在、健康増進や疾病予防を 目指し、医療と連続性をもったヘルスケア・
サービスが、今後大きく成長していくことは 間違いないだろう。
そもそも健康づくりなどの生活習慣は、幼 年期から高齢期に至るまでの人生の積み重ね の中で身についていくものが多いといえよう。
そこで、高齢期になって初めて健康増進や疾 病予防を始めるのではなく、若い頃から正し い食生活や適度な運動などを心掛ける生活習 慣を身につけておくことが大切である。こう した生涯を通じた「健康づくり」の重要性は、
今後さらに高まっていくことが予想される。
本来の医療の目的は、心身を共に健全に保 つことであると考えれば、これまでの医療は、
健康増進や疾病予防といったサービスと緊密 に連携し、連続性をもった「ヘルスケア(健 康管理)」という概念で一体的に進められてい くことが必要であろう。
〈参考文献〉
金森久雄・島田晴雄・伊部英男『高齢化社会の経済政策』東京大学出版会(1995)
島田晴雄『明るい構造改革』日本経済新聞社(2001)
島田晴雄他『生活産業創出研究会報告書』(2002)
野口悠紀雄『高齢化の日米比較』(1995)
浜野安宏『ライフスタイル系 生活創造型産業の時代』東急エージェンシー出版部(2000)
広井良典『医療の経済学』日本経済新聞社(1995)
布施泰男『成功する医療ニュービジネス』(1996)
松本幸弘『人口半減 日本経済の活路』東洋経済新報社(2002)
八代尚宏『改革始動する日本の医療サービス』東洋経済新報社(1999)
八代尚宏『高齢化社会の生活保障システム』東京大学出版会(2000)
八代尚宏『規制改革「法と経済学」からの提言』有斐閣(2003)
厚生労働省『厚生労働白書2002年版』
内閣府『高齢社会白書2002年版』