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世界の NGO/NPO の考え方

ドキュメント内 Bob Taylor (ページ 56-59)

第 4 章  NGO/NPO から見た企業の CSR の評価

4.1 世界の NGO/NPO の考え方

4.1.1 IUCN総会における調査結果

本調査研究の一環として、2008年10月5〜9日にバルセロナで開催されたIUCN総会フォーラムに 参加した。今回の総会はIUCNの設立60周年を記念するもので、各国政府、国際機関、NGO/NPO、

企業などから8,000人以上の参加者があった。総会では2008年のレッドリストが公開され、2007年版 に比べると絶滅の恐れが高い種が622種も増えている。特に哺乳類は人間活動の影響で1/4が絶滅の危 機にあるとして、生物の多様性の喪失を食い止める必要性が再確認された。

フォーラムでは、4日間で800ものイベントが開催されたが、中には立ち見者が出るほど盛況なもの も多くあった。生物多様性条約の締約国会議で企業の役割の重要性が再認識されたこともあり、生物多 様性の保護に対する企業の責任・貢献や NGO/NPO と企業のパートナーシップ事例の報告など、企業 に焦点を当てたイベントには多くの参加者が集まっていたようである。また、企業の視点で生物多様性 を「(環境サービスへの支払いPayments for Environmental Services – PES)」など、生物多様性に経 済価値をつけ保護を市場の枠組みに取り込もうとする動き、同時にこのような傾向そのものに警鐘を鳴 らす動きなど、企業やNGO/NPOの視点からの議論も活発であった。

  パートナーシップ事例の報告としては、IUCNオランダ委員会が2005年に始めたLeaders for Nature というイニシアティブの発表があった。生態系に基づく考え方を企業の中心部に浸透させることを目的 とし、経営陣・上級管理職、中間管理職、若手社員の3つのグループそれぞれ別々に働きかけ、社内か ら動きを起こさせようというもの。大企業を主なメンバーとしており、交流会や勉強会を行っているが、

発表後のコメントには教育やパブリシティーだけでなく、もう少し明確な目標を定めたイニシアティブ にすべきではないかという意見があった。

  また、IUCN、 UNDP、 UNEPなどが主催しているSEED (Supporting Entrepreneurs for Environment

and Development) からは、主に途上国で地域に根ざしたビジネス経営を行う実業家を支援する、複数ス

テークホルダーとのパートナーシップの仕組みについての発表があった。パートナーシップ成功への 8 つの条件として挙げられたのは、パートナーとなる企業のリーダーシップ、パートナーシップ管理能力、

事業コンセプト、事業とマーケティング能力、経済、環境、社会的利益の3 つのボトムラインの確保、

収益の獲得と分配、地域コミュニティーの参画、リスクマネジメントである。パフォーマンスの指標と しては、事業成功度、社会的利益、環境上の利益、パートナーシップ達成度を挙げたが、環境上の利益 は認知度が最も低いという。パートナーシップのパフォーマンス指標は、役割・責任・期待、定期的な コミュニケーション、監視とパートナーシップ管理であるとした。

企業側の発表もいくつかあったが、企業の中には、生物多様性への影響に対する対策を取らないこと はビジネスリスクであると捉え、専門性の高い NGO/NPO の協力を得て対策を取るところが出て来て いるのは明らかだ。今回のフォーラムで最も注目を集めた企業の一つが鉱業会社である リオ・ティント 社であろう。50カ国、110のサイトで鉱業プロジェクトを実施する同社は、Birdlife International、 Kew

Gardens、 Fauna and Flora International など複数のNGO/NPOとパートナーシップを結んでおり、

彼らの協力のもと地元住民の意識調査からミティゲーションやオフセットまで、様々な取り組みを1990 年代から行っている。同社の目標はネットでの生物多様性への影響をプラスにする「net positive impact」である。同社はギニア、マダガスカル、ブラジルで生物多様性オフセットを実施している。

オフセットに注目が集まることでもわかるように、パートナーシップの有無に関わらず、企業の側か らは生物多様性の数値化を求める声が多く聞かれた。生物オフセットやREDD (森林減少と森林劣化に よる排出の削減)など、PES として数値化をはかる多くの取り組みが存在するが、World Resources Institute (WRI)の主催で行われたパネルディスカッションでは、生物多様性を市場に認識させる際の課 題として、政策枠組み、生物多様性・生態系サービスの主流市場への統合、投資対効果が挙げられた。

しかし実際は、多様で人間にとっては別の内在的な価値を持つ生物多様性を数値化することには様々な 課題や問題がある。

  そうした理由で、PESを中心とした市場原理に基づく取り組みには慎重なNGO/NPOも多くある。

そのようなスタンスの違いに従って、パートナーシップの形も様々である。今回のフォーラム中、企業 とのパートナーシップを結んでいる NGO/NPO 団体に対し、どのような企業を相手に選ぶかの基準を 設けているかどうかのインタビュー調査を行ったが、その結果、ほとんどの団体では正式な基準は設け ておらず、自らの団体が行うプロジェクトに影響を与えている企業のなかからケースバイケースで選択 していくという。ただ、その企業のトップからのコミットメントを条件に挙げる点は共通であった。

NGO/NPO側から見たとき、その企業の現在のパフォーマンスに改善の必要性があるためパートナーシ

ップを結んで改善に協力していくことを考えれば当然と言えるだろう。

  同時に、団体のブランドを損なわないような関係でなければならないという条件を挙げる団体も多か った。また、協力関係は結んでも企業から金銭的な代償は受け取らないとする団体もあった。そうした 団体は独立性を確保し自由に指摘や批判ができる位置を維持していく必要性を感じている。実際、今回 のIUCN総会では、IUCNと石油会社シェルが生物多様性保護を目標として結んだパートナーシップに 対して、IUCNの独立性と名前が脅かされるとして反対するIUCNのメンバーから異議申立が提出され ている。この申立は否決されたが、かなりの支持を得ており、パートナーシップは1年後に見直される ことが決まっている。

  シェルとIUCNとのパートナーシップに否定的な動きでもわかるように、一部のNGO/NPO間に広 がるグリーンウォッシュに対する懸念はフォーラムでも顕著であり、イベントの一つにグリーンウォッ シュについてのラウンドテーブル議論があった。対立姿勢は生産的でなくこれからは企業とNGO/NPO の恊働が大切とする意見、何でもよいから取り組みを始めることが大切とする意見など様々あったが、

グリーンウォッシュかそうでないかは企業のPRの仕方で決まるのではないかというところで落ち着い た。実質的な保護への貢献度と対外宣伝の内容が一致するかどうか、ここに一つの指標があるようだ。

企業の側がNGO/NPOの協力をあおぐ上でも注意すべき重要な点だろう。

  今後ますます企業と NGO/NPO のパートナーシップは増えていくことが予想されるが、企業の側は もちろん、個々の NGO/NPO にとっても、パートナーシップによる企業のパフォーマンス改善度を第 三者が見てわかるような基準は透明性を確保するために有用であると言える。

4.1.2 海外NGO/NPOに対するインタビュー結果 (1) WWF International

「基準というものは特になく、個々のケースで判断する。企業が持続可能な発展のためにコミットし、

リーダ− シップを発揮する企業とは、パートナーシップを結ぶ。現在、コカコーラ7)、アリアンツ、HSBC8) などとパートナーシップを締結している。

企業から求める場合もあれば、WWFから求める場合も両方がある。」 (2) The Nature Conservancy (TNC)

「自分は森林火災防止の専門家でTNCに入ったのは比較的最近であるが、知っている範囲内で回答す る。西海岸で大規模な森林火災があり多くの人々が被害にあった時、航空機製造社であるBoeing社は からTNCへ森林火災防止のための協力の申出があり、プロジェクトベースのパートナーシップを形成 した。また、TNCは石油会社のCocophilともパートナーシップを締結している。 」

TNCは、全米で100万人の会員を有し、専属のスタッフは約3800名。世界中に支所があり、中国だ けでも 5 箇所にある。日本にもかつては支所があったが、インタビューした時点では閉鎖してしいた。

現在再開することを検討しているとのことである。

(3) Wildlife Conservation Society (WCS) 

ニューヨークに本部がある。40〜60名のスタッフがおり、4〜5箇所に動物園を所有している。

チリではゴールドマンサックス社との協力で、長期の景観管理を実施している。ゴールドマンサック ス社は、WCSが会員から集めた資金と同額をWCSに寄付する仕組みである(マッチングファンド)。

ボリビアでも同様の仕組みでガス会社と協力している。これはガスパイプラインの設置に伴う保全プ ロジェクト(10年計画)で、トラスト基金を設立している。

(4) Conservation International (CI)

企業とのパートナーシップは、CELB(Center for Environmental Leadership in Business)という組 織が担当しているため、そのHPを見てほしい。

CIは、パートナーシップを結ぶ企業を積極的に探しており、候補企業を選定してアプローチしている。

環境への影響を最小化する意欲があり、環境問題の解決においてリーダーシップを発揮し、外部からの 助言にオープンな会社が対象となる。

パートナーシップを締結する企業の選定の基準は、特になく、ケースバイケースである。CIの資金(約 200百万ドル)は、50%が個人、20〜30%がNGO/NPOや政府であり、企業からは5%である。パー トナーシップの締結に当たっては、企業の様々なレベルの人々と交流し、パートナーシップへの意識を 高めるようにすると効果的である。

例えば、Wal-Mart とは、中国でのサプライヤーに対し、エコロジカルフットプリントを小さくする ために協働している。

(5) Birdlife International

企業とのパートナーシップは、簡単なもの以外にはなく、ケースバイケースであり、役員会でその採 否を決定する。役員会は3ヶ月に1回であるが、適宜メールで意思決定をするので、問題はない。

7) 淡水保全を目標としたパートナーシップを締結。

8)2007年に5年計画で世界の淡水保護のパートナーシップを締結した(資金50百万ドル)。目標は3大河川の保全(50 百万人が依存)20,000種の稀少植物の保護、200人の科学者の訓練、2,000のHCBCの職員を保全研究の現場に派遣す ること。

ドキュメント内 Bob Taylor (ページ 56-59)