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マネジメント評価基準

ドキュメント内 Bob Taylor (ページ 75-79)

第 5 章  生物多様性保全活動の評価基準案

5.3 評価基準案

5.3.1 マネジメント評価基準

既に述べた通り、マネジメント評価基準は、企業が生物多様性保全のために自らの活動の継続的な改 善を図ることを目的としたマネジメント努力(理念・方針、計画、実施、点検、改善)を評価する基準 である。

本検討委員会では、このようなマネジメントのプロセスに従って、下記の通り、評価基準案を作成し た。

5.3.1.1 経営方針

基準M1  企業の経営方針に生物多様性の保全を組み込むとともに、その方針に基づく目標と計画を策

定していること 

(本基準の説明)

企業活動を通して生物多様性に影響を与えている企業には、その影響をできるだけ低減する社会的責 任がある。なぜならば、生物多様性は人類共通の財産であり、企業がそのような財産を減らすことは、

社会全体に不利益をもたらすことになるためである。企業は生物多様性を保全する責任を果たそうとす るのであれば、経営方針の中にそのことを明記するとともに、その方針に基づく生物多様性保全のため の目標と計画を策定する必要がある。

本基準はこのように、企業が、経営方針の中に生物多様性の保全を組み込んでいることを評価するも のである。しかし、企業の生物多様性への取り組みは、単に経営方針に生物多様性の保全を明記するだ けでは十分ではない。既に述べた生物多様性保全に関する国際的または国内的に合意された基本概念に 基づいて、生物多様性の保全に関する方針を定め(基準M2、M3)、体制を整備し(基準M4、M5)、 実施し(基準M6、M7)、点検・改善(基準M8、M9、M10)を実施している必要がある。

なお、企業は、生物多様性保全を組み込んだ経営方針を定め、その方針に基づく目標と計画を策定す るだけでなく、それを環境報告書、CSR報告書、年次報告書、Webサイト等(以下、「環境報告書等」

という)で公表していることが求められる。

 

基準M2 企業として生物多様性に与える影響をすべての側面で量的、質的に回避または低減することを 方針としていること 

(本基準の説明)

  企業が生物多様性に与える影響には、土地の改変や汚染物質の排出などによる直接影響と、原材料・

製品などの購入を通じた間接影響がある。このような影響はできる限り低減する努力が行われるべきで あることは議論の余地がない。しかし、そうした努力を行ったとしても、企業活動が量的に拡大する場 合(例:生産量の増加、新しい工場の建設など)には、生物多様性への影響の総量も結果的に増大する 場合が多いであろう。現在、世界的に生物多様性の喪失が懸念されている中、環境への影響の量的拡大 を許容するような企業活動のあり方そのものに、根本的な転換が求められている。

  以上のことから、新しい時代の企業に求められることは、仮に企業活動が量的に増大した場合でも、

生物多様性に与える影響の総量は拡大させないだけでなく、さまざまな努力によって、それを低減する ことであろう。

しかし、企業が生物多様性に与える影響の総量を把握するための評価手法は確立されていない。した がって、現状では、側面ごとに、定量的に測定できるものは定量的に、そうでないものは定性的に評価 し、それぞれにおいて影響を低減させていることを評価することが現実的な解決策であろう。

定量的に評価可能な指標を用いることによって、生物多様性への影響を総量として軽減する方針を採 用している企業としては、下記の例がある。

- リオ・ティント(英/豪の鉱山会社)は、生物多様性へのネットでの正の影響を与えることを経 営方針に掲げている(Rio Tinto, 2008)。

- ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(米の製薬会社)は、生物多様性の豊かな土地を購入し、

永久に保全することとしており、2010 年までに自社の研究開発、生産、流通や事務所のため に使用している土地の総面積と同じ面積の土地を保護することを目標とし、2005 年にこれを 達成した(Bristol-Myers-Squibb, 2007)。

- ウォール・マート(米、小売業)は、土地へのフットプリント(負荷)を相殺(オフセット)

するため、2005年4月から、自社が占有している土地及び2015年までに開発する予定のすべ ての土地の面積に対し、少なくても同じ面積の重要な野生動物の生息地を永久に保全する計画 を進めている(Wal-mart, 2008)。

本基準は、上記の考え方から、企業が生物多様性に与える影響をすべての側面で量的、質的に低減す る方針を採用していることを評価するものである。

  なお、企業は、この方針を採用したことを環境報告書等で公表していることが求められる。

(検討課題)企業活動が生物多様性へ与えるさまざまな影響を総量として測定できる手法を開発するこ と。

基準M3  企業活動が生物多様性に与える影響を分析し、その結果を公表することを方針としているこ

と 

(本基準の説明)

  企業活動が生物多様性に与える影響には、直接的な影響のみならず間接的な影響もある。本基準は、

企業活動が生物多様性に与える影響を直接影響や間接影響を含めて調査・分析し、その結果を公表する 方針を有していることを評価するものである。

  なお、企業は、企業活動が生物多様性に与える影響について分析し、その結果を公表することを方針 としていることを環境報告書等で公表していることが求められる。

5.3.1.2 管理体制

企業は、上記基準M1〜3 に述べた方針・目標・計画をを実施するための体制(組織)を整備してい る必要がある。基準M4、5 は、企業のこのような体制を整備しているかどうかを評価するための基準 である。

基準M4  企業の環境管理システムの中に生物多様性保全管理を組み込んでいること

(本基準の説明)

本基準は、企業が既に構築し運用しているISO14001などの環境管理システムの中に生物多様性保全 に関する方針に基づく保全管理を組み込んでいることを評価するものである。

 

なお、企業は、環境管理システムに生物多様性保全管理を組み込んでいることを環境報告書等で公表 していることが求められる。

基準M5  生物多様性保全の視点で事業活動を統括し、生物多様性保全を推進する体制が構築されてい

ること

(本基準の説明)

  本基準は、企業が生物多様性保全管理を実施するための社内体制が構築されていることを評価するも のである。

  具体的には、生物多様性に関するすべての活動を統括し、役員会に報告を行い、役員会の決定を実施 することに責任を持つ担当者が企業内で指名されていることが求められる。

  なお、企業は、生物多様性保全管理を実施する社内体制と、その担当者を環境報告書等で公表してい ることが求められる。

5.3.1.3 実施

実施に関する基準は、企業が上記の経営方針と体制に基づいて行う生物多様性保全活動の実施状況を 評価する基準である。

基準M6  生物多様性保全活動を改善するため、研究機関やNGO/NPOなどの協力を得ていること

(本基準の説明)

  生物多様性の保全は、専門的な知識や経験なしには実施不可能である。

本基準は、企業が生物多様性保全を効果的に行うよう、外部の研究機関やNGO/NPO の協力を得て いることを評価するものである。

  なお、企業は、生物多様性保全のために協力を得ている外部の研究機関や NGO/NPO の名称および 協力内容の概要を環境報告書等で公表していることが求められる。

基準M7  環境報告書等にて、生物多様性保全に関するすべての活動実績を公表していること

(本基準の説明)

  本基準は、企業の生物多様性保全活動のすべての実績を公表していることを評価するものである。

  環境報告書等で活動実績を公表する場合には、下記が求められる。

- 設定した生物多様性保全目標の達成度を明らかにしていること - 公開するすべての情報は、正確であること

- 企業にとって不利益な情報も公表していること

- 特に広告においては、事実の誇張や誤解をまねく表現を避けていること

5.3.1.4 点検・改善

点検・改善に関する基準は、企業が実施したことを自ら点検するだけでなく、外部からの意見を積極 的に受け入れて、それを基に方針や計画の見直し・修正を行っていることを評価するものである。

基準M8  企業活動が生物多様性に与える影響を定期的に確認し、目標を達成するために必要があれば

計画を修正していること

(本基準の説明)

  既に述べたように、生物多様性には科学的な不確実性があり、生物多様性に影響を与える企業は、そ の保全のために、予防的アプローチと順応的管理を採用することが求められている。

本基準は、企業活動が生物多様性へ与える影響を定期的(少なくとも年1回)に社内で確認する作業 を行い、その結果、目標を達成するために不十分な点があれば、それを改善するために計画を変更して いることを評価するものである。

ドキュメント内 Bob Taylor (ページ 75-79)