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当委員会において、ベースライン時以降の CRF の該当箇所(チェック欄)を修 正した事例を確認したところ19例存した。

ア うち下記9例は、実際にはsingle-domain型であったにもかかわらず、誤って 双方にチェックをしてしまったもので、修正には何ら問題のないケースであった。

① 2009 年 2 月の検査当日に、双方チェックから「□記憶障害あり」のみ のチェックに修正されているもの

② 2009 年 8 月の検査当日に、双方チェックから「□記憶障害あり」のみ のチェックに修正されているもの

③ 2009年11月の検査当日に、双方チェックから「□記憶障害あり」のみ のチェックに修正されているもの

④ 2010 年 1 月の検査当日に、双方チェックから「□記憶障害あり」のみ のチェックに修正されているもの

⑤ 2010 年 2 月の検査当日に、双方チェックから「□記憶障害あり」のみ のチェックに修正されているもの

⑥ 2010 年 4 月の検査当日に、双方チェックから「□記憶障害あり」のみ のチェックに修正されているもの

⑦ 2011年7月の検査日の翌日に、双方チェックから「□記憶障害あり」の みのチェックに修正されているもの

⑧ 2011 年8 月の検査の5日後に、双方チェックから「□ 記憶以外の認知 機能障害あり」のみのチェックに修正されているもの

⑨ 2012 年 9 月の検査当日に、双方チェックから「□記憶障害あり」のみ のチェックに修正されているもの

イ 次に問題が確認された例として、次のものがある。

(ア) データセンターの指示で、再修正されたもの

⑩ 2010年6月の検査で双方にチェックをしたが、11月に「□記憶障害あり」

のみのチェックに修正された。しかしその後、上記2010年11月のデータ センターでの方針決定を受け、データセンターからの謝罪とともに、CRF の用紙をもとに戻すよう再度指示がなされ、翌2月に元に戻す修正がなされ ている。

この例では、元に戻す(双方にチェックを入れる)修正が行われており、最 終的に正しく修正がなされている。

(イ) 上記データセンターの方針に従えば、本来双方チェックのままにすべきだ ったところ、誤って修正されたもの

ⅰ)データセンターの方針決定前の修正

⑪ 研究実施医療機関において、2009 年 8 月の検査でチェックをしない ままCRFデータをアップロードしたあと、2ヶ月弱後、データセンター から、用紙上チェックがないのでチェックを入れるよう指示を受け、双 方にチェックをした。ところが入力画面で一方にしかチェックが入らな かったため、入力画面では「□ 記憶以外の認知機能障害あり」にチェッ クを入れた(「記憶以外の認知機能障害“も”あり」と解釈)。

その後、データセンターから、multi-domain 型の場合は「□記憶障 害あり」にチェックを入れるよう指示があったため、データベース上の 入力データだけではなく、用紙も含め、「□記憶障害あり」のみにチェ ックを入れる形に修正を行った。

⑫ 2009 年 9 月の検査で、当初双方にチェックが入れられたが、その後 データセンターから、「□ 記憶以外の認知機能障害あり」のチェックを 消すよう依頼があった。しかし、研究実施医療機関の判断で、「□ 記憶

以外の認知機能障害あり」のみのチェックに修正された。

評価者は、当時、multi-domain 型の場合にどちらにチェックを入れ るのか、自分の中で混乱があったとしている。

⑬ 2009年11月のベースライン検査で双方にチェックを入れてCRFデ ータをアップロードしたが、データセンターからmulti-domain 型の場 合は「□記憶障害あり」にチェックを入れ、その他は削除するよう指示 があったため、データベース上の入力データだけでなく、用紙も含め、

「□記憶障害あり」のみにチェックを入れる形に修正した。

⑭ データセンターにおける方針決定後であるが、⑬と同じ被験者につい て、同様に12MのVisit(2010年12月)でも、当初担当医師が「□ 記 憶以外の認知機能障害あり」にもチェックを入れていたのを、「□記憶障 害あり」のみのチェックに修正されている。

⑮ 2010 年 1 月の検査当日に、双方チェックから「□記憶障害あり」の みのチェックに修正されているもの

担当医師が、一旦は双方にチェックをしたが、「□ 記憶以外の認知機 能障害あり」のチェックは、multi-domain型でもsingle-domain型でも ない場合に付けるチェック欄なのではないかと考え直し、「□ 記憶以外 の認知機能障害あり」のチェックを削除した。

⑯ 2010 年 8 月の検査当日に、双方チェックから「□ 記憶以外の認知機 能障害あり」のみのチェックに修正されているもの

担当医師が、双方にチェックを入れた後、multi-domain型の場合に は「□ 記憶以外の認知機能障害あり」にチェックをすべきではないかと 考え直し、そのように修正をしたもの

ⅱ)データセンターにおける方針決定後

上 記

⑭ と 同 じ 研 究 実 施 医

(ウ) その他

2010年7月の検査当日に、双方チェックされたが、双方が削除されている ものも存するが、当該VisitでMCIからADにコンバージョンが認定されて おり、MCIではなくなったことによる削除と思われる。

(4) 結論

当委員会の調査結果は以上のとおりであり、不正な修正指示や誤った修正指示、

改ざんは行われていない。

当委員会は、上記修正にみられる混乱は、もともとのデータベースシステムの設 計ミス(multi-domain 型の場合に、双方チェックができないシステムであったこ と)、さらには CRF の記載自体の曖昧さ不明確さ(multi-domain 型の場合、どの 項目にチェックするのか、読む者によって評価が分かれるような内容であったこと)

を原因として、正しい被験者情報が CRF にも記載されず、入力システムにも反映 されなくなったという問題であると考える。

⑰ 上記⑬⑭と同じ研究実施医療機関であるが、⑬⑭とは別の被験者、別 の評価者の例で、2012年8月の検査当日に、当初双方にチェックを入れ ていたところ、「□記憶障害あり」のみのチェックに修正されているもの

実際にはmulti-domain型の被験者であるが、上記⑬、⑭で生じた誤解

が修正されなかったものと思われる。

⑱ 上記⑬⑭と同研究実施医療機関で、⑬⑭とは別の被験者、別の評価者 の事例で、2011年5月の検査当日に双方チェックを入れたあと、当日に

「□ 記憶以外の認知機能障害あり」のみのチェックに修正し、さらに当日 に再び、双方チェックに修正したもの

これは評価者自身による誤記の修正とみることができる。念のため復 元されたクリーニングメモを見ると、データセンターでは、クリーニン グメモ上で誤って「□ 記憶以外の認知機能障害あり」のチェックを削除 するよう指示をしかけたが、誤りに気がつき同指示をクリーニングメモ から削除し、結局指示は出されなかった。このような経緯からしても、

修正は、評価者自身による誤記の修正と思われる。

CRFにどのように記載するか、さらにどのようにシステムに入力するかについて、

研究実施医療機関の担当者にも一義的に判断がつかず、さらにデータセンターでも 2010年11月までチェック方針が決まらなかったというのであって、最終的に決定 された方針から遡ってみると、方針に従わない修正、方針に従っていない記載自体 があっても、これを、不正な修正、あるいは、不正な修正指示という評価をするの は適切ではない。

但し、データベースを公表する際には、被験者が single-domain 型であったか

multi-domain 型であったかについて正しく修正するか、データベースを用いる解

析者にもわかるよう、上記混乱があるという点を付記すべきではないかと思われる。

7 「改ざん」がなされたか

(1) データセンターが研究実施施設に対して行ったデータに関する問合せや修正依 頼、あるいは研究施設が実際に行ったデータの修正に、問題のある点があったか否 か(記憶再現検査の検査時間及びMCI の症状の記載におけるデータの「改ざん」

の有無)という点について、当委員会の調査の結果は以上のとおりである。

まずは、スクリーニング時に、本来は適格性を満たさない被験者に関し、適格性 を満たすよう認知機能検査等の点数が不適切に修正された、あるいはその修正指示 がデータセンターから出されたという事実は確認できなかった。

また、プロトコル違反を隠すための修正あるいは修正指示も確認できなかった。

他方で、一部のデータセンター職員が、一部の研究実施医療機関に対し、WNS-R 検査の時間について、事実と異なる記載をするような誤った指示を出したり(1件)、 検査の実施日について事実と異なる日であっても統一した記載をするよう誤解を与 える指示を出した(2件)事実が確認されている。

この指示は、データセンター全体の方針に基づくものとは認められず、データセ ンターにデータチェック基準が整備されず、十分なデータチェック教育がなされな い中で、知識不足の職員の混乱から生じたミスであり、ヒューマンエラーの一つと してとらえられる。

実際に、データセンターのデータチェック基準ないし方針に沿わないものであっ たために、後日データセンター職員により訂正されて、正しい記載に戻されている。

以上のとおり、J-ADNI 研究においては、ヒューマンエラーによる誤った修正指 示は確認できたが、組織的なあるいは不正な修正や「改ざん」というものがなされ た事実は認められなかった。