図3.4-3 MRM1内部の様子
MRM1「ラスヴェット」は、2010年5月にSTS-132で運ばれて「ザーリャ」(FGB)下部に結合されました。
図3.4-4 MRM1にドッキングしたソユーズ宇宙船(39S) (NASA) 後方はプログレスM-23M(55P)補給船
https://www.nasa.gov/content/soyuz-and-progress-docked-to-space-station
3.5 再突入/着陸(帰還当日)
ソユーズ宇宙船は中央アジアに位置するカザフスタンの草原地帯に着陸します。ソユーズ宇宙 船は、最大3名の宇宙飛行士を乗せて、ISS分離後、約3.5時間で地上に帰還します。
ソユーズ宇宙船は帰還モジュールのみが地上に帰還し、他の2つのモジュールは再突入の少し 前(*機器/推進モジュールを使用した軌道離脱噴射後)に帰還モジュールから分離して、大 気圏で燃焼して廃棄されます。
帰還モジュールは再突入の約23分後に着陸します。再突入から着陸までの流れは以下のとお りです。
① 軌道離脱噴射を実施。
② 軌道モジュールと機器/推進モジュールを分離。
③ 高度約100kmから再突入開始(ISS分離後、約3時間経過時点)。
④ 8つのスラスタ噴射による再突入飛行の制御(スラスタ噴射は着陸の約15分前(パラシュ ート展開時)に停止)。
⑤ 誘導パラシュート2個を放ち、減速用パラシュート(drogue chute)を展開。これにより、
降下速度は秒速230mから秒速80mにまで減速。
⑥ 着陸の15分前にメインパラシュート(面積3,281m
2)を展開。これにより帰還モジュール の降下速度は秒速7.3mにまで減速。
⑦ 着陸1秒前に帰還モジュールの小型ロケット(衝撃緩和ロケット)を噴射。これにより地上 にタッチダウン時には秒速1.5m以下の降下速度に減速。
図3.5-1 ソユーズ宇宙船の分離イメージ(左)
図3.5-2 帰還モジュールの再突入イメージ(右)
https://www.nasa.gov/mission_pages/station/structure/elements/soyuz/landing.html
図3.5-3 メインパラシュートを展開した帰還モジュール(左)
図3.5-4 衝撃緩和ロケットを噴射して着陸する帰還モジュール(右)
図3.5-5 ソユーズTMA宇宙船の着陸予定地の例(矢印の方向から帰還) (NASA) 注:ミッション毎に着陸地は多少移動します。
【ソユーズ宇宙船の軌道離脱に備えた訓練】
古川宇宙飛行士のTwitterより
「ソユーズ宇宙船が国際宇宙ステーションから離脱し、地上に帰還する部分のシミュレーション訓練。宇宙飛行にお いて、最も危険性が高い時期のひとつのため、様々な異常事態に対処できるよう、繰り返し行う。
ソユーズ宇宙船の軌道離脱噴射が鍵。すなわち、ソユーズ宇宙船の姿勢を制御し、決められたタイミングで、決めら れた時間の噴射を行う必要がある。噴射が少な過ぎると、大気圏突入角が浅くて大気に弾かれ、噴射が多過ぎると 大気圏突入角が深くて速度が上がりすぎ、空力加熱で機体破壊の恐れもある。
そのため、正常な軌道離脱噴射を妨げるような様々な異常事態への対処を訓練する。赤外線を使って地球の縁をと
らえるセンサーの故障で、船長が手動でソユーズ宇宙船の姿勢を制御。軌道離脱噴射開始前に、メインで使用する
デジタルループが故障しアナログループへ移行。軌道離脱噴射エンジン用燃料タンクを加圧するヘリウム系に漏れが発
生。軌道離脱噴射中には、メインの軌道噴射エンジンが停止し、バックアップのエンジンを点火して噴射を継続。その
他、帰還モジュール内への酸素漏れ、などなど。3人のクルーで力を合わせて乗り切る。」
【ソユーズ宇宙船の大気圏突入に備えた訓練】古川宇宙飛行士のTwitterより
「手動で揚力をコントロールするソユーズ宇宙船帰還モードの訓練。帰還モードは4種類ある。1番目は、通常使 われる自動で揚力をコントロールするモード。それが使えない場合、2番目の手動揚力コントロールモードを使用するこ とがある。実際の飛行ではまだそれが使われたことはないという。
よく誤解されるが、弾道飛行モードはロール軸のスピンで姿勢を安定させる一種の安全モードであり、「失敗」ではな いのである。クルーには最高8-9G程度(通常は最高4G程度)の高い負荷がかかるものの、安全に帰還している。
3番目のモードは弾道飛行。過去に何回か実際に起こっている。1番目と2番目のモードが使用不可の場合に使 われる。
4番目のモードはバックアップ弾道飛行モード。弾道飛行モードで必要な角速度センサーが故障した場合に備え、
別系統の角速度センサーを使うもの。訓練ではしばしば起こるが、実際に起こったことはない。
というわけで、手動揚力コントロールモードでのソユーズ宇宙船帰還のシミュレーション訓練。画面の情報を見ながら 先を予想し、左右のボタンを押して揚力をコントロールする。」
図3.5-6 手動揚力コントロールモードでのソユーズ宇宙船帰還時に使う操縦装置
(カナダ人宇宙飛行士Chris HadfieldのTwitterより)
3.6 ソユーズ宇宙船の捜索・回収
ソユーズ宇宙船(帰還カプセル)は、予定した帰還地点から約20~30kmの範囲に着地し ます。しかし、弾道モードで帰還した為に予定地点よりも約400kmも手前に着地し、捜索・到着 が遅れた例もあり、そのような状況でも素早く捜索部隊が到着できるよう、事前に捜索計画が設 定されるようになりました。
捜索は、予定の着地地点と、弾道モードで帰還した場合の着地点のどちらにも向かえるように、
捜索部隊の最適な配置・展開が行われます。
捜索には10機以上のMi-8ヘリコプターが投入され、捜索範囲を広くカバーできるように航空機 も使用します。また地上では、支援部隊が水陸両用車(All-terrain vehicle: ATV)とオフロード 車に乗って配置・展開します。帰還カプセルの降下が確認された場合は直ちに全チームが着地点 へ向かいます。
ソユーズ宇宙船のカプセルからはVHFビーコンが発信されているため、近くに捜索部隊がいれば、
この信号をもとにパラシュート降下中のカプセルを発見し、着地後直ちにカプセルのハッチを開ける 準備に移ることができます (2012年の30SからはGLONASS/GPS受信機の搭載を開始したため、帰還 地を把握しやすくなりました) 。また、カプセルを視認することが可能な距離であれば、クルーとの音声 交信も可能です。しかし、ミッション毎に状況が変わり、無線が通じないブラックアウト期間を終えた パラシュート降下中でも音声交信がほとんどできない場合や、ノイズがひどく通信不能になる場合 もあります。また現地からの簡易的な衛星中継に使うインマルサット衛星システムでは伝送容量に 限りがあるため、衛星中継車が到着するまでは高画質な映像は得られません。
着地したカプセルは、パラシュートが風であおられた場合は横倒しになってしまいますが、問題は ありません(約半数は横倒しとなります)。
もし着地後も捜索チームの到着が遅れてしまった場合は、クルーは船内に装備しているイリジウ
ム衛星電話を使って、モスクワの管制センター等と連絡をとることが出来ます。
ドキュメント内
金井宇宙飛行士プレスキット A改訂版
(ページ 161-166)