MTX 治療開始後,4 週間経過しても治療目標に達しない場合は増量する.
通常,増量は 1 回に 2 mg ずつ行う.高疾患活動性,予後不良因子をもつ 非高齢者では,2 週ごとに 2 mg あるいは 4 週ごとに 4 mg ずつ迅速に増量 してもよい(図 2).
副作用危険因子がなく,忍容性に問題なければ10〜12 mg/週まで増量する.
効果が不十分であれば,最大16 mg/週まで漸増することができるが,他の 従来型合成抗リウマチ薬や生物学的製剤の併用を考慮してもよい(図2).
2008 年の MTX 使用法に関する海外の推奨では,投与量増量の判断をする時期 は,投与開始後 6 週間後6)と定めている.MTX 投与開始 4 週間後の有効率は20 〜 30 %(最終有効率の約 50 %)と報告されており20),特に低用量では MTX の最大 推奨❺
推奨❻
注 1: 活動性評価には DAS28,SDAI,CDAI などの総合疾患活動性評価を用いて評価する.
注 2: 予後不良因子16-18):第 1 章 - 表 1(p.17)参照.
注 3: 難治例:罹病期間> 2 年,他の低分子 DMARD 2 剤以上で効果不十分.罹病期間が長 い症例では短い症例に比べて,低分子 DMARD の有効率,寛解率が低いことが報告さ れている.
第
3章
効果を判定するのには,2 週間は短期間と考えられる.一方 ,最近の低分子 DMARD による T2T 戦略の有効性を検証した報告では,4 週ごとに RA 疾患活動性 を評価し治療を強化した症例では 3 カ月ごとに評価した症例に比べて,寛解率が 高く,関節破壊も進行しなかった21, 22).T2T 治療戦略では,治療開始後 3 カ月で 有効性を評価し,6 カ月以内に治療目標達成をめざしている.
本邦で行われたC-OPERA 試験では8 mg/ 週で開始し,4 週ごとに4 mg 増量し,
治療開始 8 週後には最大用量の16 mg/ 週まで到達するプロトコールである10).最 近,海外で行われたFUNCTION 試験では7.5 mg/ 週で治療開始し,8 週までに20 mg/ 週まで増量14),AVERT 試験では 7.5 mg/ 週で開始し,6 〜 8 週までに 15 〜 20 mg/ 週まで増量するプロトコールで行われた13).これらの投与法の忍容性が確 認されていることから,MTX 治療開始あるいは増量後は 2 〜 4 週ごとに RA 疾患 活動性を評価しながら,効果が不十分であれば投与量を再考し,治療開始後 8 〜 12 週までに目標である最大投与量まで増量することが望ましい.MTX 投与によ り RA 活動性が低下しても,目標に達しない場合は,用量を増やすことによりさら なる改善が期待できる.
最大投与量は 16 mg/ 週まで増量可能であるが,増量の際の目標とする用量は 10 〜 12 mg/ 週とした.海外の推奨では,効果不十分であれば,安全性を考慮し ながら 20 〜 30 mg/ 週まで増量が勧められている6).
本邦では承認以来,用量の上限は 8 mg/ 週であったが,用量増量に関する公知 申請が承認され,最大 16 mg/ 週まで投与が可能になって4 年以上が経過し,MTX 用量も 8 mg/ 週を超える症例が年々増加している23).
MTX の RA に対する有効性に用量依存性があることは多くの臨床試験で確認さ れている.MTX の投与量別効果を二重盲検無作為比較試験で検討した成績では 5 〜 20 mg/ 週の間で用量依存性が示されているが,15 mg/ 週を超えると,一部 の治療効果の指標はプラトーに達してくる24).また,15 mg/ 週の用量を超える と,経口投与より皮下 ,筋肉内投与の方が有効性が高く,消化管症状が少ないこ とが報告されている25).
C-OPERA 試験は治療開始後 8 週で 16 mg/ 週まで増量するプロトコールで行わ れたが,試験期間中の MTX 平均投与量は 11.6 mg/ 週(中央値 11.9 mg/ 週)で あり,最終 MTX 用量は 10.5±5.2 mg/ 週(中央値 12.0 mg/ 週)であった.また,
第 3 章 用量・用法● 31 MTX を 16 mg/ 週服用していた症例は全体の約 3 割であった.このことは,本邦 では 16 mg/ 週まで忍容性のある症例は多くはないことを示している10).
一方,MTX 8 mg/週を超えた高用量の有効性と安全性を検証する特定使用成績調 査の成績では,8〜10 mg/週以上に増量することにより寛解症例は24週調査群で 10.5%から32.5%へ,52週調査群では16.9%から47.1%まで増加した26).以上の 成績から,日本人ではMTX 12 mg/週は忍容性に問題ないこと,また8 mg/週で寛解 に至らない症例でも,10 mg/週以上の増量により寛解が達成できる症例が相当数い ることが示唆される.したがって,MTX単剤で効果不十分であれば,10〜12 mg/週 までは増量することが勧められる.目標用量の10〜12 mg/ 週まで増量後もさらに 十分な効果が得られない場合は,個々のリスク・ベネフィットのバランスを考えな がら最大16 mg/週までの漸増やMTXをアンカーとして他のcsDMARDや生物学的 製剤あるいはJAK阻害薬との併用療法のいずれかを選択する.
高用量まで使用することにより,寛解例・著効例の増加や治療効果減弱例への 対応が可能になる反面 ,用量依存性副作用の頻度が増加し,免疫抑制作用は強ま ることを念頭に,定期的な副作用モニタリングを必ず行いながら,葉酸を適切に 併用することが重要である.
MTX 治療により十分効果が得られても,治療経過中に治療効果が減弱すること が報告されている(エスケープ現象).一般的には,治療効果の減弱の際にはMTX の増量により,再び効果が得られることが多いので,安全性に考慮しながら増量 を試みる.
2 用法
1 週間あたりの MTX 投与量を 1 回または 2 〜 3 回に分割して,12 時間間隔 で 1 〜 2 日間かけて経口投与する.1 週間あたりの全量を 1 回投与するこ とも可能であるが,8 mg/ 週を超えて投与するときは,分割投与が望まし い(図 3).
推奨❼
第
3章
MTX 6 mg/ 週の用量であれば,1 カプセルないし 1 錠(2 mg)を 12 時間間隔 で 3 回,2 日間にわたって服用し,残りの 5 日間は休薬する.8 mg/ 週の用量であ れば,2 日間にわたって 12 時間ごとに 2-1-1 カプセル(錠)を服用するのが本邦 での標準的な服用法であった.RA に対する MTX 投与法は海外では単回投与が一 般的であり,本邦でも若年性特発性関節炎に対しては単回投与が認められている.
経口投与した場合の bioavailability(生物学的利用能)は MTX 投与量や単回投 与 / 分割投与で異なる27-30).本邦において単回投与と分割投与のbioavailability を 比較した成績はないが,MTX 単回経口投与と皮下注投与の bioavailability の比較 は海外で検討されている.MTX の皮下注製剤は経口投与で効果不十分例や忍容性
【投与方法】
■~8 mg/ 週 内服
① 1 2 3
MTX 休薬(6 日間)
…MTX の投与
…葉酸の投与
MTX 休薬(6 日間)
MTX 休薬(5 日間)
4 5 6 7
1 2 3 4 5 6 7
1 2 3 4 5 6 7
②
③
■10~16 mg/ 週 内服
【投与方法】①1 日 1 回(朝)投与
②1 日 2 回,12 時間ごと(朝夕)に投与
③2 日にかけて 3 回,12 時間ごと(朝夕朝)に投与 適宜,葉酸 ≦5mg を 1 日 1 回(朝)投与
適宜,葉酸 ≦5mg を 1 日 1 回(朝)投与
① 1 2 3
MTX 休薬(6 日間)
MTX 休薬(5 日間)
4 5 6 7
1 2 3 4 5 6 7
②
MTX 休薬(5 日間)
1 2 3 4 5 6 7
③
①1 日 2 回,12 時間ごと(朝夕)に投与
②2 日にかけて 3 回,12 時間ごと(朝夕朝)に投与
③2 日にかけて 4 回,12 時間ごと(朝夕朝夕)に投与
(日)
(日)
■図 3 MTX の用量別投与法
第 3 章 用量・用法● 33 がない症例に海外で使用されている31).Braun らは MTX 15 mg/ 週の皮下注投与 と経口投与を比較した結果,皮下注投与の有効性がまさっていた32).また,MTX 用量別に皮下注投与と経口投与の bioavailability を比較した成績では,10 mg/ 週 の用量でも,皮下注投与の方が経口投与よりbioavailability は25 %高く,15 mg/
週を超えるとその差は大きくなる33).このように,MTX 高用量における皮下注投 与の有効性が経口投与に比べて高いことは bioavailability で説明されている.以 上の成績は 10 〜 15 mg/ 週でも,経口単回投与の bioavailability は皮下注投与よ り劣ることを示している.また,海外の成績では MTX 8 mg/ 週以内の投与量にお いては単回投与と分割投与の bioavailability に差はないが,25 〜 35 mg/ 週の高 用量投与の場合は,分割投与の方がbioavailability は高いことが示されている34).
一方,高用量を単回投与した場合は,嘔気などの消化管症状の発現が問題になる ことがあり,RA患者におけるMTX使用法についてのカナダリウマチ学会の推奨で は MTX 経口分割投与あるいは皮下注投与が消化器症状の軽減策として示されて いる35).
したがって,MTX 8 mg/ 週を超えて使用する際は,1 〜 2 日にかけて,1 週あ たりの投与量を 12 時間ごとに分割投与する方が,消化器症状が少なく,bioavail-ability が高い可能性がある.
高用量使用時の特定使用成績調査では,2 日にかけて分 3 投与が全例の約 2/3 を 占め,1 日 2 回投与が約 25 %であった.2 日にかけての分 4 投与は 5 〜 10 %で,
1 週間あたりの投与量を 1 回で服用する症例は 4 %未満であった26).
MTX 8 mg/ 週以下の用量では,朝 1 回投与も可能であるが,12 時間ごとの 1 日 2 回投与あるいは初日から 2 日目にかけての 2 〜 3 回投与でもよい.MTX 10 〜 16 mg/ 週の用量では,12 時間間隔で 1 日 2 回あるいは初日から 2 日目にかけて,12 時間間隔で 3 〜 4 回に分割投与する.1 回または 2 回分割投与の場合は,残りの 6 日間,3 〜 4 回分割投与の場合は残りの 5 日間は休薬し,このサイクルを 1 週ごと にくり返す.