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① 既存のリウマチ性肺障害,高齢,糖尿病,低アルブミン血症,過去の DMARD 使用歴があげられている13,14)

② 全くリスク因子のない症例に発症することも少なくない9)

2)予防対策

① 患者にはあらかじめ,発熱,咳嗽,息切れ,呼吸困難などの初期症状を定期的 に説明し,これらの症状が急性あるいは亜急性に出現した場合には,MTX の 中止,医療機関への連絡,および可及的すみやかな受診を指示する.

② 呼吸器病変が疑われた場合には,聴診 ,経皮的酸素飽和度モニター(SpO2),

胸部 X 線検査,胸部 CT 検査〔高分解能 CT(HRCT)が望ましい〕などを行う.

3)発生時の対処方法

① MTX をただちに中止した後,専門医療機関に紹介し,MTX 肺炎,呼吸器感染 症,RA に伴う肺病変などの出現・増悪を鑑別するための検査をすみやかに進 める.一般的には,尿中・血中迅速抗原検査などでウイルスや一般細菌感染な どを除外し,β -D- グルカン測定,喀痰・誘発喀痰で一般菌培養とともにニュー

9章

モシスチス PCR 検査を提出する.胸部 X 線,HRCT 所見にて,びまん性のすり ガラス陰影や汎小葉性陰影がみられた場合(図 5A〜D),間質性肺炎を疑う.

MTX 肺炎では近接する正常肺と明瞭に境されたすりガラス陰影(ground glass opacity:GGO)が特徴的とされる(図 5B,C)ものの,明瞭な境界が認めら れない例も少なくなく(図 5D),CT 画像だけでニューモシスチス肺炎と MTX 肺炎を鑑別することはできない.可能であれば気管支肺胞洗浄液検査にて,洗 浄液の細胞分画を確認し,ニューモシスチス PCR 検査を含む微生物学的検査を 提出する.β -D- グルカン陰性でニューモシスチス PCR 陰性,すべての微生物 学的検査が陰性であれば,MTX 肺炎や RA による間質性肺炎を疑う.日本呼吸 器学会より発刊されている「薬剤性肺障害の診断・治療の手引き」が参考にな

■図 5 MTX 肺炎の胸部画像所見

胸部 X 線,HRCT にて,広範なびまん性すりガラス陰影と斑状影を認める.胸部 HRCT では,正常 肺と明瞭に区別されたびまん性すりガラス陰影を認めることが特徴(B,C)とされるが,境界が 明瞭でない場合(D)も少なくない(東京女子医科大学 中島亜矢子先生提供).

A

D B

C

第 9 章 副作用への対応 73 る15).症状発現から診断までの期間は平均 8±6 日前後である11)

② 必要に応じ呼吸器専門医にコンサルトする.図6に呼吸器疾患の鑑別15)を示す.

③ MTX による薬剤性肺炎が疑われた場合は MTX を中止後,ただちに副腎皮質ス テロイドの中等量〜高用量の投与(経口プレドニゾロン 0.5 〜 1 mg/kg/ 日)を 行う.重症度に応じてステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン 500 mg

〜 1,000 mg/ 日,3 日間連続点滴静注)を併用する10,11)

④ ニューモシスチス肺炎や細菌性肺炎などの肺疾患の鑑別が困難なときは,副腎皮 質ステロイドにスルファメトキサゾール・トリメトプリム〔ST合剤6〜12 g/日:

本章4.感染症 3)発生時の対処方法の項参照,p.78〕などの抗菌薬投与を並行 して行う.状況に応じて,他の真菌性・ウイルス性肺炎に対する治療も併用する.

⑤ 副腎皮質ステロイドでの加療中には,新規の肺感染症に留意する.必要に応じ,

感染症専門医にコンサルトする.

■図 6 MTX 投与中の発熱・呼吸器症状発現時の対処

PSL:プレドニゾロン,BALF:気管支肺胞洗浄液,PCR:polymerase chain reaction,SpO2:経皮的酸素飽和度 発熱・咳・呼吸困難(低酸素血症)

MTX 中止 MTX 中止 MTX 中止

いずれか陽性 いずれか陽性

いずれか陽性 すべて

陰性すべて 陰性すべて 陰性

・β-D- グルカン高値

・Pneumocystis jirovecii  PCR 陽性,菌体検出

・β-D- グルカン高値

・Pneumocystis jirovecii  PCR 陽性,菌体検出

・β-D- グルカン高値

・Pneumocystis jirovecii  PCR 陽性,菌体検出

・β-D- グルカン陰性

・Pneumocystis jirovecii  PCR 陰性

・そのほかの病原体検出

・β-D- グルカン陰性

・Pneumocystis jirovecii  PCR 陰性

・そのほかの病原体検出

・β-D- グルカン陰性

・Pneumocystis jirovecii  PCR 陰性

・そのほかの病原体検出 すべて陰性

すべて陰性 すべて陰性

抗菌薬,抗真菌薬が無効 抗菌薬,抗真菌薬が無効 抗菌薬,抗真菌薬が無効

放射線・呼吸器専門医に相談 放射線・呼吸器専門医に相談 放射線・呼吸器専門医に相談

· 身体所見・SpO2

· 胸部X線・胸部CT・そのほかの検査

· 誘発喀痰・BALF:Pneumocystis jirovecii(PCR,染色),

        サイトメガロウイルス(PCR)

· β-D-グルカンの測定

· 血・尿検査:マイコプラズマ,クラミジア,

      レジオネラ,サイトメガロウイルス

· 喀痰(誘発)・BALF:スメア,培養

→抗酸菌を含む細菌の検出

→真菌の検出

· 血・尿検査:肺炎球菌,真菌抗原

· 血液培養

· 細菌性肺炎

· 結核· 非結核性抗酸菌症

· 真菌性肺炎

· 薬剤性肺障害

· RAに伴う間質性肺炎 · ニューモシスチス肺炎 (PCP)

· PCP以外の異型肺炎

· サイトメガロウイルス 肺炎

浸潤影,結節,空洞など 間質性陰影

【MTX 投与前のスクリーニング】

· 肺病変の確認

→病歴,胸部 X 線写真,CT など

· そのほかの危険因子の確認

→高齢,低アルブミン血症,

  PSL 併用,糖尿病合併,

  関節外症状など

9章