第 3 章 アジア・ダイナミズムへの参加と問題点
第 3 節 ラオスの ASEAN 加盟及び AFTA 参加問題
1 .
AFTA参加の意義ラオス側の経済関連諸制度および組織が十分に整備されるならば、国際貿易お よび直接投資の面でラオス経済が AFTA参加によって享受する潜在的利益は大 きい。国際的なインフラサービスが整っていない状況では自由な国際取引の利益 は一般的には小さいと考えられるが、例えば国際道路網整備に関していえば、す でに
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年4
月、ラオス中部に位置する首都ビエンチャンとメコン川を挟んで対峠 するタイ領ノンカイ市がオーストラリアの無償援助によって建設されたメコン橋 によって結ぼれた。また、日本政府はラオス領南部のパクセ市に無償援助によっ て第2
のメコン橋を建設中である。東西のベトナムータイ聞の複数のルート、ま た、現在整備中の南北ルート(中国雲南省 ラオスーカンボジア)が完成すれば、アジア経済危機にも抱わらず AFTAの枠組のなかで、周辺各国からの輸出指向 的な企業進出を従来よりも一層多く受け入れるばかりでなく、西暦
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年頃には ラオスがインドシナ半島の物流の要所、l a n db r i d g e
となる可能性も否定できな し、。また、ラオスの物流上の優位性が顕在化すれば、メコン流域開発にもはずみが つくことも期待できる。ただでさえ調整が困難な国際河川としてのメコン川の開
発利用に関する各国聞の政策対話は、全体としてはかつて期待されたほどはか どっているとはいえない。しかし、中期的に観ればインドシナ半島全体の市場経 済化が進むなかで開発プロジェクト推進に関する政府聞の政策調整過程が一層促 進きれることも考えられる。きらに、インドシナ諸国の経済発展やメコン開発の 推進とともに、インドシナ半島を舞台とした中国と
N I E s
やASEAN
諸国との 経済的な交流が活発化する可能性が膨らんでくることは、インドシナ半島のみな らず東・東南アジア全体の政治的安定に寄与するとみることもできる。ただし、こうした展望をより現実的なものとするためには、以下で述べるよう な実際的な問題に対してラオスのみならず国際地域社会が協調して取り組まねば ならないことも事実である。
2 .
当面の問題ラオスが
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年7
月にASEAN
正式加盟を果たす前後から周辺国の動きは活発 化した。特に、地理的には勿論、言語・習慣などの点で共通点が多いタイは、か ねてより自国内の都市・地方閉経済格差問題解決策の一環として自国東部及び東 北部の開発を推進しており、カンボジアと共にラオスを自国経済の後背地として も位置づけ、中央政府・関係各県政府連携のもとでラオスとの経済交流を一層加 速させるとの明確な方針を有している。両国間の歴史的確執にもかかわらず貿 易・民間直接投資を通じてラオスとの経済関係を強固なものにしつつある。最近 では、韓国、台湾、マレーシア、シンガポールなどのラオスへの企業進出の動き も顕著になってきている。ラオスの対外経済関係を一層変化させようとするこうした動きにも応じる意味 での
ASEAN
そしてAFTA
への加盟・参加は、一方でh自国内の対外経済問題に 関連する諸制度・諸組織を場合によっては従来よりも一層早く改革する、つまり 急速なfASEAN
化」を進めていかねばならないことを示している。第l章で述べたように、過去において国際機関に加盟した経験のないラオスが 早期に整備しなければならないのは、まず、
ASEAN
およびAFTA
における政 策対話に関して圏内でも迅速に議論を調整できるだけの制度的パックアップ体制 の構築である。2 4 0
もの部会を持つASEAN
における協議に即応できるだけの人材確保・経常費用負担のための体制造りはすでに着手きれているとはいえ、この 問題はラオスの財政運営と国際協力如何に依存しており、短時日のうちに解決可 能な問題ではないであろう。
政府が対応しなければならない問題として、次に、域内貿易自由化以降の関税 収入減少問題がある。現状では、輸入関税が無償協力を除く政府歳入のおよそ
23%
を占める構造となっているが、急速な域内自由貿易化が進めば、関税収入の減少 を通じて、開発援助案件の被援助国負担分である経常費用負担の問題も現状より 深刻化する恐れがある。密輸貿易が通常貿易の
3‑5
倍ともいわれるラオスの場 合、関税ヲ│き下げによって密輸品が顕在化し全体としては関税収入は減少しない とする見方もあるが、一方で、は、輸入が急増することは避けられず、いずれにし てもマクロ経済運営のかじ取りを難しくする要素として現れるものと考えられ る。3 .
長期的な取組みを要する問題ラオスはカンボジアやミャンマーベトナムと同様、これら以外の
ASEAN
原加 盟国と比較すれば、工業化や圏内市場の深化の程度から観て明らかに後発経済の 国々であるため、域内国同士の産業調整問題が大きな議論を巻き起こす可能性が ある。農産品や一部の工業製品に関しては免除ないし猶予規定が設けられてはい るが、AFTA
の枠組においては、参加国は2 0 0 3
年までに自国の輸入関税率を原則 的に0‑5%
の範囲におさめるという大幅な貿易自由化が義務づけられている。そして、まさにその過程において、ラオスは、すでに顕在化している別の国内 問題との調整をどのようにはかっていくのかという課題に直面することになろ う。経済改革開始以降、貧富の格差、都市農村聞の所得格差問題である。特に、
経済開発利益を均需しなければ国内政治を不安定化させかねないという意味での 社会主義革命以来の山岳少数民族問題は、今後
ASEAN
そしてAFTA
での議論を幌みながら圏内経済調整を進める過程で、ラオスにとって、運営を誤れば大き な政治問題となって跳ね返ってくる重要な問題である。換言すれば、この問題が ラオスの
ASEAN
やAFTA
における経済上のコミットメントを制約する要素と なる可能性があり、域内国相互の産業調整問題とともにラオス自身のASEAN
化そして
AFTA
へのコミットメントを当初の予想や期待に反してゆっくりとした ものにする要素であるともいうことができる。次に、すでに述べたように、ラオスは経済地理的には不利な位置にあるものの 国際的地域的な自由貿易制度の枠組が確立されれば、そのことによって物流の国 際的な拠点、となる潜在的な可能性をも有しているところから、自国の経済開発に とってもっとも効果的な国際インフラストラクチャーの整備を進めなければなら ない。そのための国際協力を適切に制御するための準備という意味では、部門別 のみならず空間的な投資配分を考慮にいれた全国総合開発計画をラオス側が主体 となって早急に整備すべきであろう。その際、域内の国際分業の在り方がどのよ うに自国経済に連結して変化していくのかなどにつき十分な検討が必要で ある。
さらに、長期的には自前の工業部門を育成したいとラオスが考えるかぎり、域 内貿易自由化と国内民間企業育成政策との折り合いをどのようにつけるかも大き な政策課題で、