1.経済協力の留意点
すでに述べたように、ラオスに対しては、経常収支赤字を相殺できる規模の援 助が流入している。国際機関による多国間協力ではADB(アジア開発銀行)、世 界銀行、
IMF
、UNDP
が主要援助機関であるoまた、二国間協力では、日本がトッ プ・ドナーで、 ドイツ・スウェーデンをあわせ3
大援助国となっている。分野別 には、世界銀行、IMF
が構造調整融資プログラムによるマクロ経済運営支援を実 施してきているほか、各援助機関・国が、農業開発、森林保全、運輸・通信を中 心に各分野においてインフラストラクチュア建設や人材育成を支援している。ま た、空間的にはこれまで日本を含め各国の援助案件は首都ビエンチャンに集中す る傾向にあったが、道路網が整備されてきたことにともない近年は地方へも展開 きれるようになってきている。きて、政府は、
1 9 8 9
年以降、世界銀行やIMF
による構造調整融資を受けてき た。そのプログラムの要諦は、財・要素価格の自由化等によるマクロ経済不均衡 問題の軽減にある。世界銀行やIMF
による構造調整の枠組では、構造的な経済 不均衡は当該国政府の経済政策の「失敗」によるものであることが想定きれてい る。言い換えれば、これらは「調整jあるいは「振り子を戻すことJ
によって「本 来の」成長軌道に復帰できるとの考え方である。しかし、これを市場経済を新規 に構築しようとしている経済に適用しても、そもそも価格の自由化に経済が反応 しないといった問題があるo 道路や通信設備がなければ価格変更による実態経済 からの反応は鈍い。民間セクターが発達していなければ、これを育成する段階から考慮しなければならず、民営化問題においても公共企業が国内で売却あるいは 貸与されるようになるまでにはかなりの努力と時間の経過が必要である。市場原 理を基本とした経済開発のためには市場が形成されていなければならない。いわ ゆる構造調整の枠組における「市場の歪み
J
の是正や政策の変更・調整は、新た な技術の導入が成果を挙げるための重要な要件ではあるが、これのみではラオス の持続的且つ安定的な経済成長は望めない。生産基盤ないし成長のための基盤作 りが必要であり、財政運営や行政機構の整備に加えて、人的資源、インフラスト ラクチュア等の基礎的条件の整備に関わる支援を考慮しなければならない。ラオスでは、幹線道路の整備、電力開発、国内航空網の整備、国際・国内通信 サービスの供給などインフラストラクチュア・サービスに対する需要は今後も拡 大し続けるであろう。しかし、当面のラオスの援助吸収能力は限られたものであ り、国際協力が急激に拡大することがあれば、現在の財政金融機構の下では、イ ンフレ助長、債務累積を呼び、結果的にはラオスの経済的負担を増大させる結果 に終わる可能性もある以上、援助機関・国相互はもとよりラオス政府との十分な 政策対話にもとづいた援助計画が必要で ある。更に、援助吸収力が十分ではない という意味で援助流入が事実上厳しく制限されていることを踏まえると、ラオス への特に日本の国際協力の在り方を考えるうえで重要と思われる点は、第
1
に、 著しい財政不均衡に配慮したコスト節約的な「草の根無償援助J
、第2
は「住民あるいは地方政府参加
( p a r t i c i p a t r yd e v e l o p m e n t ) J
の推進である。特に、第2
の 点については、ラオス経済社会が置かれている状況を踏まえると、非常に重要な 概念と思われる。地方政府が従来よりも一層直接的に開発投資案件実施過程に参 加することによって、組織的にプロジェクト管理のノウハウを体得し、さらには 訓練・教育の必要性を実感することが是非とも必要で、ある。援助案件としても、そのような制度的・組織的問題の解決あるいは改善に貢献できるようなコンポー ネントを含む内容のものか望まれる。例えば、ネノfールにおけるイギリス援助の ように、道路建設案件のなかに、建設工事中に発生する事故被災者を看護するた めの診療システムの構築や訓練のために必要な識字教育の組み込みといった、統 計上は表面化しないコンポーネントを組み合わせて援助を実施している例があ る。森林資源の分野でも、森林管理を組織的に効果的なものとするために識字教
育を組み込み、結果として、参加住民の識字率を向上させるといったプラスの間 接効果を生みだすような援助案件の実施が強〈望まれる。ラオスでは、残念なが ら、資金協力や技術協力を実施する際に前提とされる技術知識や経験そのものが 欠落しており、これを補う段階から出発しなければならないためである。
2 .
ソフト支援型・連携型援助の推進( 1 )
ソフト支援型援助1
)経済発展、投資、技術進歩前項で述べたように、ハードウェアに附随する、いわばソフトウェアや知識経 験そのものを援助受け入れ固と分かち合おうという考え方でもって成り立つのが ソフト支援型援助ということができるが、ここで、少し一般化したうえでラオス の今日的課題と照らし合わせてみたい。
きて、経済発展は産業構造の高度化の過程である。そこでは、新しい技術が企 業や農家による投資行動を通じて次々に導入され圏内経済へ波及していく。した がって、経済開発を進め所得水準を上昇させていくためには、企業等による設備 投資を活発化させることが重要であり、政府としては、そのための経済環境を整 備し成熟させていくことが基本的に重要でーあるということができる。
設備投資は、その実施が新たな投資需要を生む効果を潜在的に有しており、技 術の導入と普及を連鎖的に促す効果が期待できる。ただし、国内で調達できる設 備機械・原材料のメニューが少なく、結果として輸入コンポーネントが大きくな る場合は投資の有効需要創出効果が小さい。したがって、先進的な技術の波及過 程においても、①関連産業における企業自身の経営能力及び、労働者の熟練度の ほか、②インフラストラクチュア・サービス(電力・運輸・通信等)の・ネット ワークや金融市場・労働市場・流通市場の整備状況、さらに、③これらを支援す るための経済的な制度・組織・政策の在り方(充分に競争的であるかどうか等に 注意する必要がある)が適切であれば、投資の効率性確保、企業家のリスク負担 や不確実性の軽減をもたらし、必要な原材料を国際価格水準で調達できるうえに、
投資全体の需要創出効果を最大化することによって、経済全体としての技術導入 過程を加速化することが可能で、ある。これら
3
つの要素がここで定義するところの「ソフト」を指している。
2 )政府と民間
特に、ソフトのほとんどが不足している後発開発途上国の場合、政府としては、
経済成長を開始するためには、企業の育成、インフラ・ネットワーク、開発行政 機構、といった全ての要素の整備に関して中心的な役割を果たきねばならない。
企業の育成と言っても、事実上、政府が企業活動を取り込んだ形で自ら生産活動 を行なわざるをえない場合もある。
しかしながら、国営企業の経営の場合、それらが政府の経済政策に基づいて非 競争的な環境の下で経営されるかぎり、経済全体から観たときの静態的な意味で の資源配分が非効率的になる可能性が極めて高いうえに、国営企業赤字補墳が財 政支出を拡大させ民間企業活動を圧迫し、経済全体としての投資活動・技術進歩 の停滞を招〈場合が非常に多いことに注意しなければならない。また、内外から の借款によってインフラ建設を公共投資として推進する場合も、返済のための資 金源は農業や製造業などである点に留意しつつインフラサービスを利用する企業 の投資活動を従来以上に活発させることが必要で、、中長期的に農業や製造業にお ける特に民間投資を阻害しないように経済を運営することが重要で、ある。した がって、政府自身も、以上の問題点に留意しつつ経済を運営できるだけの人材と 制度・組織・政策を備えていなければならない。投資は長期の経済発展にとって 非常に重要で、あるが、それらが充分な効果を発揮するためには上で述べたように 多くの前提条件の整備が必要で、あり、投資フ。ロジェクトサイクルにおける諸条件 (所与の経済的政策的環境下での人材・資金の調達及び生産工程管理に関わる生 産技術の水準)だけでなく、インフラの整備状況、プロジェクト相互の関係(例:
産業組織の在り方)、他部門との連関(例:圏内相対価格体系の在り方)、さらに 部門毎の問題点を集約したマクロレベルの問題(例:財政金融機構)にも注目し なければならない。結局、様々な分野での人材育成と制度的・政策的な環境の整 備と安定が重要である。