• 検索結果がありません。

モバイルビジネスの動向

3 モバイルの現状と動向

3.2 モバイルビジネスの動向

ここでは、上記のモバイル端末の機能を利用したいくつかのサービスの例をいくつか紹 介し、モバイルビジネスの動向を解説する。

3.2.1 電子チケット

モバイル端末に電子化されたチケットをダウンロードし、イベント会場等でそのチケッ ト情報を提示するいわゆる「電子チケット」は、近年、普及の兆しが見えつつある。

2002年の東京国際映画祭では、イベントチケットの最大手のチケットぴあが赤外線通信 機能付き携帯電話DoCoMo 504iシリーズを利用した電子チケットサービスを提供した。こ のシステムでは、電子チケットの発行はインターネット通信機能を利用し、電子チケット の改札は、赤外線によるローカル通信機能を利用することで、チケットの購入から入場ま でを携帯電話で完結できるようになっている。チケットぴあは、このような電子チケット サービスを本格サービスすることを目指し、2002年8月には、NTTコミュニケーション と共同でぴあディジタルライフラインを設立している。

チケット情報をバーコード化して配信し、改札は、携帯の液晶画面に表示した 1 次元あ るいは2次元バーコードをバーコードリーダで読み取ることで行う方式は、2000頃から実 証実験が行われており、その1例としては、NTTドコモ, コカコーラ、伊藤忠商事でおこ なっているc-modeや、KDDIがターゲットワン社と共同で進める方式等がある。これら の方式に比較して、前述のぴあの方式では、改札端末から赤外線通信を使ってiアプリと双 方向通信できる特長を生かし、一旦、電子チケットを用いて入場すると、電子チケットが

「使用済み」状態とし、再入場を防止する、いわゆる「もぎり」の機能を実現しているこ とが1つの特徴となっている。

3.2.2 G-Book

トヨタ自動車は 2002 年7月、車載端末向け情報ネットワークサービス「G-Book」の開 始を発表した。同サービスの特徴は、KDDIが開発した車載データ専用通信モジュール

(Data Communication Module)を使うことにより、ユーザは携帯電話を用意する必要が ない上、通信料金を意識せず利用することができるという点である。同社は「MONET」

という情報ネットワークサービスも提供しているが、こちらは従量制課金である携帯電話 回線を使っていたことから通話料金がかさむことが最大のネックとなり、あまり普及して いなかった。今回発表した「G-Book」はその点、定額料金制で会員費 650円/月のみでの

提供となっている。

KDDIは、トヨタ自動車のこのサービスに対し、第 3 世代携帯端末ネットワークとし て「CDMA2000 1x」、パケット通信網CPA(CDMA packet access)、KDDI IP-VPN サービス(KDDIネットワークセンターからG-Bookセンターを結ぶネットワーク)を提 供している。これにより各端末(カーナビ、PC、PDA、携帯電話)それぞれから最大

144kbps での通信が可能である。そして、道路の交通情報の取得やレストランやキャンプ

場の検索ができる他、コンビニエンスストア等に設置している「E-Tower」と称するATM マシンからSDメモリカードに音楽などコンテンツをダウンロードすることも可能となっ ている。

また、コンビニエンスストアなどで広く販売されているKDDIのプリペイドカード「ス ーパーワールドカード@CA(エーカ)も、この「G-Book」基本利用料の支払いや有償サー ビスの購入に利用可能であることから、「G-Book」の普及次第では、今後Eコマースなど のオンライン決済の手段としてスーパーワールドカード@CA(エーカ)にも普及の可能性 が大いにある。

トヨタの新型車「Willサイファ」には標準搭載されているが、松下電器製の G-Book対 応ナビゲーションシステムにおいては、HDDやDVDなどの専用記録媒体を持たず、他 アプリケーションと汎用のSDメモリカードにて地図情報の蓄積や交通情報等・コンテン ツのやりとりを行うことが出来る。これにより、データ転送・変換の高速化・大容量化が 実現され、同社の情報ネットワークサービス「MONET」より格段に機能性がアップし たと言われており、今後一層多くのトヨタ車に搭載されるとともに、電器メーカ各社のナ ビゲーションにも対応機種が増えていくものと予想される。

3.2.3 IYキャッシュカード

2002年7月、㈱アイワイバンクは携帯電話を利用した新サービスを発表した。NTTド コモの「504i」以降の端末に搭載されている専用iアプリにアイワイバンクのキャッシュ カード情報を格納し、赤外線通信(IrDA)でATMにカード情報を送信するというも のである。これにより物理的なカードなしに現金の預入れや引出し等を行うことが出来る ようになるが、サービス提供開始は2003年度以降を予定し、現在開発段階である。

3.2.4 MOPASSカード

MOPASS(Mobile Passport)カードは、2002年7月、㈱日立製作所、松下電器産業㈱、

㈱東芝、Ingentix GmbH&Co.Ltd、サンディスクコーポレーションの5社により共同開発 された、フラッシュメモリカード用のモバイルコマース拡張規格に準拠した各種応用アプ リケーションを搭載可能なICカードである。  PKI(公開鍵暗号基盤)技術を標準搭載し、

ICカード機能とメモリカード機能を有し、マルチアプリケーション対応カードOSや*

Global Platformの仕様に準拠していることから、複数のアプリケーションを載せる事が可

能である。また、上記 5 社のうち日立製作所、松下電器産業、東芝は、「MOPASSコ ンソーシアム」を結成、このMOPASSカードを活用したモバイルコマースの普及促進 を目的に共同で活動を行っていくことを発表、このコンソーシアムの今後の活動内容に期 待が寄せられている。

*Global Platformは、多機能ICカード発展のための規格推進・標準化を目的にカード 会社、行政団体、テクノロジー企業等世界数十社がメンバーとして参加している団体