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4 モバイルとプリペイド決済の融合

4.3 まとめ

テレホンカードや交通カードの大半が前受金の運用益においてその事業性を支えて きたが、2002年度の超低金利時代においては諸刃の剣となってしまっている。

  

4.2.3.2 モバイル・プリペイド決済のニーズ

大前提は普及するサービスであるか否かにある。いくら優れたセキュリティ技術を持ち 合わせても利用者がいなければ意味がない。

そのためにもまずは、消費者、事業者双方にとって既存インフラ(PETカード)に比 べて明かに優位性ある機能を提供し受け入れられるかにかかってくる。

(1) 利便性向上

単一事業者が発行するプリペイドカードでは利用範囲が限定され普及にも時間を要 している。そこで、複数事業者が容易に相乗りできる環境を提供することが求められ る。

(2) 安全性向上(偽造防止)

プリペイドカードにおける偽造問題は事業者にとって死活問題である。この最重要 課題を解決する機能としてモバイルのセキュリティ機能が期待される。

(3) コストの低減

プリペイドカードは使い切りであり、その作成コストは事業者負担となる。カード 作成が不要なサービスを実現できれば、事業者側のコスト負担も軽減でき、より多く のインセンティブを消費者にも提供できるようになる。

これらニーズをみたすことでより普及度の高いモバイル・プリペイド決済が実現できる ものと考える。

側としての決済事業者とサービスを受ける側としての利用者双方にメリットのある仕組み であるかどうか、ということである。その間に立つ利用店舗(加盟店)にとっては、利用 者が増え売り上げが増加することが結果としてメリットとなるため、利用店舗のメリット を中心に考える前に、サービスの需要と供給の担い手である決済事業者と利用者を中心に 考える必要がある。

まず、サービスを提供する側の決済事業者(発行者)の観点から考えてみよう。プリペ イド機能を提供する場合、一企業のビジネスの中でサービスの 1 つとしてプリペイド機能 を展開する場合と、プリペイド決済(発行)を専門にビジネス展開する場合とでは、考え 方が大きく異なる。

一企業が顧客囲い込みと他社との差別化を目的として実施するならば、投資・運用コス トの考え方については、プリペイド機能だけを費用対効果の対象とするのではなく、その 企業のビジネス全体の収益にどのように貢献したか、という観点から費用対効果をみれば 良い。例えば交通系企業の場合は、業務効率向上の観点から費用対効果判断することがで きる。つまり、ビジネス全体の中で、投資・運用コストを吸収する余地があるということ である。また、モバイル端末(携帯電話)を利用することで、企業としてはマーケティン グと連動したサービス提供が可能となるなどの付加価値も生まれるため、より投資へのハ ードルが低くなると予想される。

次に、プリペイド決済を専門とした決済事業者の場合はどうか。当然のことながら、プ リペイド決済(発行)に関わる利用店舗(加盟店)または利用者からの手数料収入により、

収益を確保しなければならない。プリペイド決済は、その性格上、小口決済が主流となる ことが予想されるため、収益を上げるためには利用店舗、利用者を相当数確保する必要が ある。ただし、利用店舗、利用者を大幅に増やすためには、プロモーション等の推進コス トも増加するため、事業性確保のための損益分岐点を見極めることが、非常に重要となる。

現実的には、決済事業者が単独でインフラの整備、端末等の開発を行い、利用店舗、利用 者を集めるためのプロモーション活動を行ってビジネスとして成り立たせるのは、非常に 困難であるといえる。

上記を踏まえ、利用者のメリットとのかかわりを見てみよう。利用者におけるモバイル プリペイドのメリットとしては、①余分なカードを保有する必要がなく既に保有している 携帯電話を利用できること、②いつでもどこでもバリューチャージが可能なこと、③簡単 に利用できること、④安全確実なこと、⑤利用範囲が広いこと等、である。この中で①〜

④までは、一企業だけでも十分サービス可能である。また一企業での対応であるため、ビ ジネス全体としての位置づけを踏まえたタイムリーなサービスの提供と積極的なプロモー ション活動が行いやすいことから、利用者にとっては利用範囲が限定していたとしても、

求めるサービスが満足されれば短期間で普及する可能性は高い。⑤については、標準化、

運用方法等、企業間での調整事項が多く、サービス実施に至るには課題が多い。

今後の普及への足がかりとしては、一企業の囲い込み、差別化戦略の中で利用者への利 便性、メリット間を醸成しつつ、プリペイド機能を普及させ、ある程度普及した時点で各 企業(発行者)間での相互利用を検討するというステップが必要ではないだろうか。利用 者は、実際に利用してみて「便利でお得」だと気がつけば利用を継続するとともに、普及 促進の担い手となるのである。その先、利用範囲を拡げることについても、利用者が便利 だと実感できるスキームを実現することが前提であり、やみくもに利用範囲を拡げること が目的となってはならない。その課程において、決済インフラ、端末等、技術ベースの標 準化を含め、各企業間での決済ルール、手数料、顧客対応等、業界の枠を越え、運用ルー ルの整備を行っていくべきであろう。

5 2005 年を想定したモバイルプリペイド決済のあり方