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ミャンマー

ドキュメント内 Microsoft Word - ASEAN石油原稿_Rev4.docx (ページ 71-138)

9-1 エネルギー政策動向、石油政策動向

ミャンマーのエネルギー政策における基本方針は、以下の 7 点である。

① 持続可能なエネルギー開発を実施する。

② 再生可能エネルギーの多角的な利用を推進する。

③ 省エネルギーを推進するなど、エネルギーの効率的な利用を図る。

④ 家庭部門で代替燃料の利用を推進する。

⑤ 国内エネルギー需要に優先して応える。

⑥ 国民全体の利益に資するような石油・天然ガスの効果的な活用を行う。

⑦ 民間企業の参入を促進する。

ミャンマーの石油政策における課題としては、陸上油田の老朽化で低迷している原油生 産や、原油不足のため製油所の稼働率が 30~60%と極めて低く、石油製品供給の多くを製品 輸入に依存していることが挙げられる。

国内の上流部門については、1988 年に制定された外国投資法により、外資企業は国営企 業との合弁という形でミャンマー国内の探鉱・開発を行うことが可能となった。同法は、

事業の接収・国有化が行われないことを規定した政府保証の付与、外国への利益送金に関 する権利及び生産開始年から 3 年間の所得税免除などを認めている46。2012 年 11 月には、

この外国投資法の改正法が成立し、外資参入を規制する分野への出資比率上限が撤回され、

出資比率は投資委員会が個別に判断することとなった47

下流部門では、2009 年 11 月に軽油、2010 年 1 月にガソリンに関し、自社で外貨を保有 している民間企業に輸入が認められるようになった。また、2009 年以降、ガソリンスタン ドの民営化やガソリン配給制の廃止が行われた48

国内の石油製品価格は、MPE から MPPE への卸販売価格はコストプラスマージン方式がと られている。一方、民間事業者への販売価格は自由に決められるが、MPPE に対する販売価 格よりは高い水準に設定される。最終消費者への販売価格は政府の統制価格となっている。

エネルギー政策の関連機関としては、2013 年 1 月に新しく設立された国家エネルギー管 理委員会(National Energy Management Committee, NEMC)が、エネルギー分野全体の政

46 クリスチャン・ブラッドショウ「ミャンマーにおける石油・ガスへの投資」海外投融資 2012 年 7 月号

47 日本経済新聞 2012 年 11 月 3 日

48 村上(2012)「ミャンマーのエネルギー・セクター、金融セクター」海外投融資 2012 年 9 月号

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策を所管している。エネルギー省(Ministry of Energy, MOE)下のエネルギー計画部(Energy Planning Department)がエネルギー政策や、石油・ガス開発方針・生産計画を策定してい る。ミャンマーの石油・ガス産業はこの MOE の管轄下にある。電気事業については電力省

(Ministry of Electric Power, MOEP)が管轄する。この他、国家エネルギー管理委員会

(National Energy Management Committee)が、2013 年 1 月、エネルギー分野全体を管理 する機関として設立された。

図 9-1 ミャンマー・エネルギー関連省庁組織図

(出所)Wint Thiri Swe. Country Report. Presentation for JICA Energy Policy Training Course. Tokyo.

June 24 – July 12 2013.

エネルギー省(Ministry of Energy, MOE)は、エネルギー各分野の調整機関であり、石 油・ガス分野を管理する。石油・ガス産業はこの MOE の管轄下にある。2015 年 12 月時点の 大臣は Zeyar Aung 氏。MOE には次の 3 つの組織が置かれている。

-

石油ガス公社(Myanmar Oil and Gas Enterprise, MOGE):石油・ガスの探鉱開発、

生産、及び国内ガスパイプラインの整備

-

石油化学公社(Myanmar Petrochemical Enterprise, MPE):石油製品の輸入を担当 すると同時に、製油所・LPG 工場・化学肥料工場等の操業、管理

-

石油製品公社(Myanmar Petroleum Products Enterprise, MPPE):石油製品の国内 輸送・販売

9-2 石油等の化石エネルギーの需給バランス

ミャンマーは天然ガス資源に恵まれ、併産されるコンデンセートの大部分が石油精製用 に利用されている。水力資源も豊富で 2013 年の発電電力量の 75%を占める。一次エネルギ ー供給における国内生産の割合は 100%を上回り、エネルギーの自給国である。ただ、この 中には、家庭部門を主体に消費されている廃棄物・バイオマスが含まれており、2013 年の

70

国内生産 2,319 万トン(石油換算、以下同じ)のうち 1,082 万トン、47%を占める。一方、

2013 年の天然ガス生産量 1,040 万トンのうち 82%、854 万トンは輸出に回され、国内供給 は 184 万トンに過ぎない。このうち 76 万トンが発電用に消費されている。石油製品の需要 は最終消費の 270 万トンに発電用の 1 万トンを加えた 271 万トンであるが、石油精製から の生産量は 73 万トンに過ぎないことから 218 万トンが輸入されている。

表 9-1 ミャンマー・エネルギーバランス表(2013 年、単位:石油換算万トン)

(出所)IEA、Energy Balances of Non-OECD Countries 2015 を基に作成

エネルギー源 A B C D E F G H I

部門 原油 石油

製品

水力・

原子力 電力 石炭・

コーク ス ガス 地熱・

新エネ他 廃棄物 バ イオマス 合計

1国内生産 87 0 76 0 34 1,040 0 1,082 2,319

2輸入 0 218 0 0 3 0 0 0 221

3輸出 -14 0 0 0 0 -856 0 0 -871

4国際バ ンカー 0 -4 0 0 0 0 0 0 -4

5在庫変動 -2 -6 0 0 0 0 0 0 -8

6一次エネルギー国内供給 70 208 76 0 37 184 0 1,082 1,657

7電力生産 0 -1 -76 102 -12 -76 0 0 -64

8石油精製 -73 73 0 0 0 0 0 0 0

9その他転換 0 0 0 0 0 0 0 -4 -4

10自家消費・ ロス 0 -6 0 -27 0 -22 0 0 -56

11品種転換・ 統計誤差 3 -3 0 0 0 -8 0 0 -8

12最終エネルギー計 0 270 0 75 25 78 0 1,078 1,525

13 産業 0 69 0 21 24 42 0 34 190

鉄鋼 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  化学・ 石油化学 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  非鉄金属 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  非金属 0 0 0 0 20 0 0 0 20

  輸送機械 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  機械 0 0 0 0 0 0 0 0 0

鉱業 0 15 0 0 0 0 0 0 15

  食料・ タバコ 0 15 0 0 0 0 0 0 15

  紙パ・ 印刷 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  木材・ 木製品 0 9 0 0 0 0 0 0 9

  建設 0 20 0 0 0 0 0 0 20

  繊維・ 皮革 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  その他 0 10 0 21 4 42 0 34 110

14 民生 0 0 0 43 0 0 0 1,044 1,086

  家庭部門 0 0 0 29 0 0 0 1,044 1,073

  業務部門 0 0 0 13 0 0 0 0 13

15 運輸 0 118 0 0 0 19 0 0 137

  国内航空輸送 0 8 0 0 0 0 0 0 8

  道路輸送 0 84 0 0 0 19 0 0 103

  鉄道輸送 0 19 0 0 0 0 0 0 19

  国内海上輸送 0 8 0 0 0 0 0 0 8

  その他 0 0 0 0 0 0 0 0 0

16 農林水産 0 72 0 11 1 2 0 0 86

  農業・ 林業 0 12 0 0 0 0 0 0 12

  水産業 0 9 0 0 0 0 0 0 9

  その他 0 51 0 11 1 2 0 0 66

17 非エ ネルギ ー消費 0 11 0 0 0 15 0 0 26

一次 エネルギー

供給

エネルギー 転換・

自家消費

最終 エネルギー

消費

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表 9-2 ミャンマー・一次エネルギー供給の推移

(出所)IEA、Energy Balances of Non-OECD Countries 2015 を基に作成

表 9-3 ミャンマー・電源別発電量(2013 年、単位:GWH)

(出所)IEA、Energy Balances of Non-OECD Countries 2015 を基に作成

9-3 各国主要エネルギー企業(上流・中流等)の概況及び動向

石油上流部門においては、石油ガス公社(Myanmar Oil and Gas Enterprise:MOGE)が 探鉱・開発・生産に関する独占権を有している。外資企業は MOGE との生産物分与契約 (Production Sharing Contracts, PSC)締結によって開発事業に参加できる。

9-4 原油及び石油製品需要、輸出入、輸入依存度の推移と今後の見通し

ミャンマーにおける石油製品の国内需要は 2005 年に 199 万トンに拡大したが、2008 年に 99 万トンまで一挙に減少、その後 2012 年に 207 万トン、2013 年には 272 万トンと再び急 速に増加している。この背景として、2008 年 5 月に巨大なサイクロン・ナルギスが南西部 を直撃し、8 万 5 千人を超す死者と 5 万 4 千人の行方不明者を出したことが挙げられる。ま た、政府は 2007 年 8 月にエネルギー価格を最大 5 倍にまで引き上げ、これをきっかけに大 規模なデモが発生した。政府のデモ参加者に対する実力行使を受けて欧米諸国は経済制裁

1990 2000 2013 1990 2000 2013 1990-2000 2000-2013 1990-2013

石炭 7 32 37 0.6% 2.5% 2.2% 16.9% 1.1% 7.7%

石油 73 197 278 6.8% 15.4% 16.8% 10.5% 2.7% 6.0%

天然ガス 76 120 184 7.1% 9.3% 11.1% 4.6% 3.3% 3.9%

原子力 0 0 0 0.0% 0.0% 0.0%

水力 10 16 76 1.0% 1.3% 4.6% 4.7% 12.6% 9.1%

再生可能エネルギー他 902 919 1,082 84.5% 71.5% 65.3% 0.2% 1.3% 0.8%

1,068 1,284 1,657 100.0% 100.0% 100.0% 1.9% 2.0% 1.9%

シェア % 年平均伸び率 %

一次エネルギー供給 万TOE

合計

発電電力量  GW H

2013年

シ ェア%

石炭

514 4.3

石油

55 0.5

天然ガス

2,443 20.5

原子力

0 0.0

水力

8,878 74.7

地熱

0 0.0

太陽光

0 0.0

可燃再生エネルギ ー

0 0.0

0 0.0

合計

11,890 100.0

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措置の強化を行なった。この結果、ミャンマーの実質経済成長率は 2007 年の 11.99%から 2008 年には 3.60%、2009 年は 5.14%に落ち込んだ。その後、2010 年 11 月に実施された総 選挙で、連邦連帯開発党(USDP)が約 8 割の議席を確保し、アウン・サン・スー・チー氏 の自宅軟禁を解除した。2011 年 3 月にはテイン・セイン文民政権が発足、民政移管が実現 したことから、経済は再び回復に転じており、2012 年の実質成長率は 7.30%、2013 年は 8.25%に達している。

石油製品需給については、製油所の老朽化と稼働率の低迷に伴い、石油製品の生産は 2000 年~2013 年の年平均伸び率で見ると▲2.5%と減少を続けており、需要を賄うための製品輸 入が活発化している。2013 年の石油消費量を 272 万トン油種別に見ると軽油が 160 万トン、

59%を占め、次いでガソリンが 78 万トン、29%とこの 2 油種で需要の大半を占める。この ため、2013 年の輸入量 218 万トンの内訳も軽油が 153 万トンと全体の 70%を占め、次いで ガソリン 46 万トン、21%となっている。今後の経済の発展に伴い、これら 2 油種の輸入は 益々増加することが予想される。

図 9-2 ミャンマーの石油製品需給バランス(単位:石油換算百万トン)

(出所)IEA、Energy Balances of Non-OECD Countries 2015 を基に作成

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2013

MTOE

国内消費 生産 輸入

輸出(含、国際バンカー)

73

図 9-3 ミャンマーの石油製品需要の推移(単位:石油換算百万トン)

(出所)IEA、Energy Balances of Non-OECD Countries 2015 を基に作成

図 9-4 ミャンマーの石油製品輸入の推移(単位:石油換算百万トン)

(出所)IEA、Energy Balances of Non-OECD Countries 2015 を基に作成

9-5 石油精製設備の状況

ミャンマーでは、石油化学公社(Myanmar Petrochemical Enterprise:MPE)が石油製品 の 輸 入 、 製 油 所 の 操 業 、 管 理 を 担 い 、 石 油 製 品 公 社 ( Myanmar Petroleum Products Enterprise:MPPE)が物流・販売を担っている。MPE が保有する製油所は 3 ヶ所ある。原料 として、Thanlyin 製油所が国産コンデンセートを用い、Chauk 及び Thanbayakan 製油所は 原油とコンデンセートを処理している。減少している国内の原油生産量だけでは処理能力

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2013

MTOE

その他 LPG ナフサ 重油 ジェット燃料油 灯油 軽油 ガソリン

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2013

MTOE

その他 LPG ナフサ ジェット燃料油 灯油 軽油 ガソリン 重油

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の半分も賄えず、立地的な問題もあり、原料となる原油・コンデンセートの供給が不足し、

バッチ運転(在庫が十分にたまった段階で稼働させ、それがなくなった時点で運転を止め ることを繰り返すこと)を余儀なくされている49。そのため、合計処理能力は国内消費量を 上回っているが、稼働率は 30~60%と極めて低く、石油製品供給の多くを製品輸入に依存し ている。

表 9-4 ミャンマー製油所一覧

製油所名 精製能力(b/d) 稼働率

Chauk 6,000 30%

Thanlyin 20,000 40%

Thanbayakan 25,000 60%

合計 51,000

(出所)Myanmar Petrochemical Enterprise、日本エネルギー経済研究所

現在、ミャンマーでは二か所の新規製油所建設が検討されている。一つは、Mandalay に 中国-ミャンマー石油パイプラインから供給される原油を処理するための 製油所(精製能 力 20,000b/d)が合弁事業として計画されている50。また、Guangdong Zhenrong Energy Co Ltd.

(中国国営 Zhuhai Zhenrong Corp.が一部株式保有)が、ミャンマーの Union of Myanmar Economic Holdings Ltd. 及び民間企業 Htoo Group of Companies と共に、Dawei 経済特別 区に 25 億ドルの設備投資をして原油処理能力約 100,000b/d の製油所建設を計画している51

9-6 原油及び石油製品備蓄設備の状況、今後の建設計画

2025 年まで石油製品 18 万 bbl を含む 62 万 bbl の戦略石油備蓄を目標としている52

9-7 石油供給セキュリティ上の課題

ミャンマー政府はエネルギー安全保障を念頭に置いてエネルギー自給率の向上、エネル ギーの効率使用及び節約等を打ち出している。

49 Chauk 及び Thanbayakan 製油所は、内陸部にあり生産量が減少している陸上油田に原料を依存せざるを 得ない。Thanlyin 製油所は、Ayeyarwady川のデルタ地帯にあるが大型タンカーが直接入港できない。

50 World Economic Forum. 2013. New Energy Architecture: Myanmar.

51 石油エネルギー技術センターHP. JPEC 世界製油所関連最新情報(2012 年 2 月)

52 IEA. 2013. Medium-Term Oil Market Report 2013.

ドキュメント内 Microsoft Word - ASEAN石油原稿_Rev4.docx (ページ 71-138)

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