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ブルネイ

ドキュメント内 Microsoft Word - ASEAN石油原稿_Rev4.docx (ページ 47-54)

6-1 エネルギー政策動向、石油政策動向

ブルネイ政府は長期の経済開発計画と国家ビジョン・タスクフォースとして、2035 年を 目指した長期ビジョン「Wawasan Brunei 2035」を 2008 年 1 月に策定し、持続可能な経済 において世界トップ 10 国家に入ることを目指している。この達成のため、「石油・ガス上 流事業および下流事業の強化」、「信頼性が高く効率的なエネルギー供給と利用の確保」、「エ ネルギー産業による経済発展」の 3 つの目標を掲げている。また、2010 年から 2035 年のエ ネルギー分野における目標成長率を年率 6%としている32

資源開発に関しては、国内エネルギー資源の長期にわたる安定した生産と輸出の維持を 目指し、特別な事情が無い限り石油・ガスの追加増産は行わず、新たな資源発見により埋蔵 量を追加し、現行確認埋蔵量を減少させないという「資源温存」を基本方針としている。

「Wawasan Brunei 2035」では、2035 年までに 35 億 Boe の追加埋蔵量を開発し、RRR(Reserve Replacement Ratio)が 1.0 を下回らないようにするとしている。その他、石油・ガス資源 を活用した石油精製や石油化学など下流部門の育成、アルミニウムなどのエネルギー集約 型産業の育成等も進めようとしている。現在、ブルネイの天然ガスを原料としたエタノー ル製造プラントが Sungai Liang Industrial Park(SPARK)で稼働中である。

ブルネイ政府は外資の誘致による新たな産業の育成を目的としたブルネイ経済開発委員 会(BEDB)を 2002 年に設立。また、経済多様化の観点から、①石油・天然ガスを単に生産・

輸出するのではなく、石油・天然ガスを原料としてメタノールやアンモニアの製造等を行 う石油「川下」産業の振興や、②Muara 島を巨大ハブ港湾として開発する事業計画等を策定 している。メタノール事業に関しては、日本企業との合弁プロジェクトとして、2010 年 5 月から Sungai Liang 工業団地において操業を開始している。投資額は 4 億ドルで、国際協 力銀行などからファイナンスを受けている。

エネルギー政策を所管する省庁としては、2005 年 5 月、総理府内にエネルギー部(Energy Department)が設置され、エネルギー政策を全て担っている。2008 年 8 月より、エネルギ ー大臣は Pehin Dato Mohammad Yasmin Umar 氏が就いている。また、2015 年 11 月より、組 織名が「Department of Energy and Industry,Prime Minister’s Office」へ変更されて いる。

32 ブルネイエネルギー省、「Energy White Paper 2014」

45

図 6-1 ブルネイのエネルギー政策行政機関

(出所)ブルネイ政府ホームページより

(http://www.energy.gov.bn/About%20Us/Pages/OrganizationChart.aspx)

6-2 石油等の化石エネルギーの需給バランス

ブルネイは天然ガス、石油が豊富に存在する資源国であり、生産が国内需要を上回って おり、殆んどが輸出されている。石炭の利用はなく、また他のアジア諸国に見られる薪炭 等の非商業エネルギーの利用もない。2013年に生産された天然ガス

1,020

万トン(石油換 算トン、以下同じ)の

76%、772

万トンが輸出に供されており、残りの大半が発電用に利 用されている。2013年の発電電力の

99%が天然ガス火力であり、石油の利用は 1%に満た

ない。

2013

年における石油生産量は

678

万トンであるが、このうち

94%、 637

万トンが輸出さ れている。

57

万トンが国内で精製処理され、51万トンの石油製品が生産されているが、石 油製品の需要を見ると最終消費量は

63

万トン、発電用の

1

万トンと合わせると

64

万トン の需要がある。従って、国内生産だけでは不足しており、30 万トンの製品輸入が行われて いる。

46

石油製品の需要のほとんどが運輸部門であり、最終消費の

70%を占める。家庭部門のエ

ネルギー消費を見ると、天然ガス、石油の消費はあるものの大半が電力であり、電化の進 展がうかがえる。

表 6-1 ブルネイ・エネルギーバランス表(2013 年、単位:石油換算万トン)

(出所)IEA、Energy Balances of Non-OECD Countries 2015 を基に作成

表 6-2 ブルネイ・一次エネルギー供給の推移

(出所)IEA、Energy Balances of Non-OECD Countries 2015 を基に作成

エネルギ ー源 A B C D E F G H I

部門 原油 石油

製品

水力・

原子力 電力 石炭・

コーク ス ガス 地熱・

新エネ他 廃棄物 バ イオマス 合計

1国内生産 678 0 0 0 0 1,020 0 0 1,699

2輸入 1 30 0 0 0 0 0 0 31

3輸出 -637 -1 0 0 0 -772 0 0 -1,409

4国際バ ンカー 0 -17 0 0 0 0 0 0 -17

5在庫変動 4 -1 0 0 0 -3 0 0 1

6一次エネルギ ー国内供給 47 12 0 0 0 246 0 0 304

7電力生産 0 -1 0 34 0 -101 0 0 -68

8石油精製 -57 51 0 0 0 0 0 0 -6

9その他転換 0 0 0 4 0 -14 0 0 -10

10自家消費・ ロス 0 -2 0 -11 0 -112 0 0 -124

11品種転換・ 統計誤差 10 4 0 0 0 0 0 0 14

12最終エネルギ ー計 0 63 0 27 0 19 0 0 110

13 産業 0 14 0 2 0 0 0 0 16

鉄鋼 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  化学・ 石油化学 0 2 0 0 0 0 0 0 2

  非鉄金属 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  非金属 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  輸送機械 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  機械 0 0 0 0 0 0 0 0 0

鉱業 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  食料・ タバコ 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  紙パ・ 印刷 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  木材・ 木製品 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  建設 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  繊維・ 皮革 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  その他 0 12 0 2 0 0 0 0 14

14 民生 0 2 0 26 0 2 0 0 29

  家庭部門 0 2 0 12 0 2 0 0 15

  業務部門 0 0 0 14 0 0 0 0 14

15 運輸 0 45 0 0 0 0 0 0 45

  国内航空輸送 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  道路輸送 0 45 0 0 0 0 0 0 45

  鉄道輸送 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  パイプライン輸送 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  国内海上輸送 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  その他 0 0 0 0 0 0 0 0 0

16 農林水産 0 2 0 0 0 0 0 0 2

  農業・ 林業 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  水産業 0 0 0 0 0 0 0 0 0

  その他 0 2 0 0 0 0 0 0 2

17 非エ ネルギ ー消費 0 2 0 0 0 17 0 0 19

一次 エネルギ ー

供給

エネルギ ー 転換・

自家消費

最終 エネルギ ー

消費

1990 2000 2013 1990 2000 2013 1990-2000 2000-2013 1990-2013

石炭 0 0 0 0.0% 0.0% 0.0%

石油 5 53 58 2.8% 22.4% 19.2% 27.2% 0.7% 11.5%

天然ガス 168 185 246 97.0% 77.6% 80.8% 1.0% 2.2% 1.7%

原子力 0 0 0 0.0% 0.0% 0.0%

水力 0 0 0 0.0% 0.0% 0.0%

再生可能エネルギー他 0 0 0 0.1% 0.0% 0.0%

173 239 304 100.0% 100.0% 100.0% 3.3% 1.9% 2.5%

シェア % 年平均伸び率 %

一次エネルギー供給 万TOE

合計

47

表 6-3 ブルネイ・電源別発電量(2013 年、単位:GWH)

(出所)IEA、Energy Balances of Non-OECD Countries 2015 を基に作成

6-3 各国主要エネルギー企業(上流・中流等)の概況及び動向

1929 年に陸上の Seria 油田が発見されて以降、ブルネイの石油・ガス生産は、ブルネイ 政府と Shell が折半出資して設立した Brunei Shell Petroleum Co. Sdn Bhd(BSP)が唯一 の操業会社であった。その後、2001 年 11 月には、国営石油会社 Brunei National Petroleum Co.(Petroleum Brunei)が設立され、また 2002 年には外資に対し新規の探鉱開発が解放 されたことから、Total、BHP Billiton、Amerada Hess、ConocoPhillips、三菱商事などの 外資が参入している。

6-4 原油及び石油製品需要、輸出入、輸入依存度の推移と今後の見通し

ブルネイにおける製油所ガスを除く石油製品の国内需要は 2000 年の 37 万トンから 2013 年には 63 万トンに増加しており、2000 年~2013 年の年平均伸び率では 4.2%と高い値とな っている。2013 年の石油消費量を油種別のシェアで見ると 48%を軽油、46%をガソリンが 占めており、 この 2 油種で総需要の 94%を占める。2000~2013 年の年平均伸び率では、軽 油 7.2%、ガソリン 2.8%で軽油の伸びが著しい。

一方、石油製品の生産は、2000 年の 50 万トンから 2008 年には 65 万トンに達したが、以 後減少に転じ 2013 年には 48 万トンに減少している。2000 年~2013 年の年平均伸び率では

▲0.3%である。ブルネイの唯一の製油所は、1980 年代に稼働した常圧蒸留装置とリフォー マーだけの小規模な製油所であることから、燃料の品質基準強化への対応といった操業の 面で制約が生じていることも考えられる。

発電電力量  GW H

2013年

シ ェア%

石炭

0 0.0

石油

40 0.9

天然ガス

4,360 99.0

原子力

0 0.0

水力

0 0.0

地熱

0 0.0

太陽光

2 0.0

可燃再生エネルギー

0 0.0

0 0.0

合計

4,402 100.0

48

図 6-2 ブルネイの石油製品需給バランス(単位:石油換算百万トン)

(出所)IEA、Energy Balances of Non-OECD Countries 2015 を基に作成

図 6-3 ブルネイの石油製品需要の推移(単位:石油換算百万トン)

(出所)IEA、Energy Balances of Non-OECD Countries 2015 を基に作成

2009 年以降の生産量の減少に伴い、製品の輸入量が急激に増加しており 2009 年の 10 万 トンに対し 2013 年は 3 倍の 30 万トンに達している。内訳で見ると軽油が 16 万トン、53%

を占め、次いでガソリン 11 万トン、36%となっており、今後も増加が見込まれる。

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2013

MTOE

国内消費 生産 輸入

輸出(含、国際バンカー)

0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2013

MTOE

その他 LPG ナフサ 重油 ジェット燃料油 灯油 軽油 ガソリン

49

図 6-4 ブルネイの石油製品輸入の推移(単位:石油換算百万トン)

(出所)IEA、Energy Balances of Non-OECD Countries 2015 を基に作成

6-5 石油精製設備の状況、今後の建設計画、M&A の動向

ブルネイの製油所は、BSP が所有する Seria 製油所(精製能力 8,600b/d)1 ヶ所のみであ り、そこで製造される石油製品の 5,000~6,000b/d は国内用に回されている。同国の人口 は僅か 40 万人(2012 年)であるためエネルギー消費は極めて少ないが、輸出される石油製 品はほとんどなく、むしろ国内消費用として石油製品は輸入されている。

一方、2011 年 7 月にブルネイ政府は、中国の浙江恒逸集団が同国最北端の Pulau Muara Besar 島で 13.5 万 b/d 前後の石油精製施設を建設することを承認した。当設備は原油およ びコンデンセートをガソリン、ディーゼル燃料、ジェット燃料のほか、パラキシレン、ベ ンゼンに加工する。建設開始時期は未定であるが、生産した石油製品の一部は、ブルネイ 国内向けとなる予定である33

6-6 原油及び石油製品備蓄設備の状況、今後の建設計画

ブルネイに国家備蓄制度はないが、ブルネイ政府は緊急時に際し、国内で生産される原 油および石油製品に関して優先的に購入する権利を有しているとされている。

33 石油エネルギー技術センター「ブルネイの石油・ガス産業」2013 年 11 月 14 日

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2013

MTOE その他 LPG ナフサ ジェット燃料油 灯油 軽油 ガソリン 重油

50

6-7 石油供給セキュリティ上の課題

資源国のブルネイにとっては、石油・ガス資源の安定的な輸出先の確保が、エネルギー セキュリティ上の重要な課題と考えられる。また、東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国 として、ASEAN エネルギー協力協定(ASEAN Plan of Action on Energy Cooperation 2010–2015)

に従い、地域国間のエネルギー安全保障、供給の多様化、エネルギー効率と保全に努めて いる34

34 Asia Pacific Energy Research Centre, APEC Energy Overview 2013.

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ドキュメント内 Microsoft Word - ASEAN石油原稿_Rev4.docx (ページ 47-54)

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