④内部イメージ(システム論:必要多様度の法則)
リンパ球の集まりに外部の情報が内部イメージとして反映し、それらが双方向 性を持ってリンパ球間で共有されていること。
⑤支援情報の場
マイクロファージ、T 細胞、B細胞といったプレイヤが、サイトカインと呼ば れる情報分子を媒介に相互作用し合う、動的な情報の場であること。
2.免疫系組織モデルの原則
①共同と支援の原則
多様なプレイヤによる共同作業と、それを支援する情報の場の存在
②水平の関係を基礎にした柔軟な階層性の原則
状況の変化に応じて、その場面に合わせた階層性が生じリーダーシップが発揮 されていくこと。
③偶然性と即興性の原則
偶然に生じる事象に対して、即興的に対処していくこと。能力を身につけるこ と。
④関係と場の原則
免疫系組織モデルは、多様なプレイヤの相互関係性によって成り立っておりそ の関係性は、情報の場によって支援・維持されていること。
⑤多様性の共生の原則
多様性の危機を回避するために、自己マーカと教育といった制御の仕組みによ って管理された、多様性が共生していくこと。(pp.163-194)
西山の免疫系組織モデルは、「個体」を一つの組織として捉え、その中の仕組み
を考察している。これを神経系組織モデルと統合できれば、階層構造組織とネットワ ーク構造組織のともに優れた部分を併せ持つ組織構造が構築できるのではないかと 考えられる。
2.5.
2.5. 2.5.
ントモデルの研究がある。和泉・植田(1998)は、次のように既存のモデルの難点を 指摘している。
既存のモデルでは、市場参加者である各エージェントは、市場がある条件を 満たしたらこのような売買行動を取れといったインプットとアウトプットが 直結した単純なルールの集合として表現されている。(p.1)
単純にルール化されているエージェントシステムを、より複雑なエージェントの
関係性として捉えようとする研究もある。出口(1997)は、多様で複雑な主体を捉え るポリエージェントシステムについて次のように規定している。
自律的な主体からなるシステムについては、すでにマルチエージェントシス テムという言い方があるが、われわれがあえてポリという用語を使ったのは、
同質のエージェントの自律分散的活動のみならず、多数の機能分化したヘテ ロば機能を持ったエージェントからなるシステム分析を目指しているからで ある。そこでは、複数のエージェントが集まって(重合≡ポリ)、上位のエー ジェントを形成するメカニズムやエージェント間の階層的関係もまた分析の 対象となる。(出口、1997:p592)
つまり、単純に複数のエージェントが存在しているという概念ではなく、エージェン トの集合し、上位エージェントを形成するという概念である。出口は、さらに続けて
「社会科学にとっては長期的に非常に重要な意義を持つと考えられる」(p.592)と述 べている。
ポリエージェントモデルの研究には、さまざまな手法が用いられているが、寺野
(1997)はそれについて、次のように3つのキーワードでまとめている。
それらに共通するキーワードは、システムと環境の融合、エージェントの内 部モデルの存在とその相互参照、ネットワーク指向の3つである。すなわち、
内部モデルを持つある程度粒度の大きなエージェントが、環境や他エージェ ントとの相互作用の中で、どのような創発的現象を引き起こすのかを解明し、
それを現代のネットワーク社会の分析・設計に供しようとという試みである。
(p.598)
キーワードである一つのエージェントでの内部モデルの存在とその相互参照につい ては、金子・松岡・下河辺(1998)のいう「相互編集性」(p.35)の概念、また、西 山(1995)のいう免疫型ネットワークにおけるリンパ球による情報の共有の概念と非 常に類似していると考えられる。但し、免疫型ネットワークでのリンパ球には「相互
このようなポリエージェントの概念を踏まえ、木嶋(1997)は多主体複雑系パラ ダイムは、有機体メタファーを越えて対象を文化的システムとして捉える「文化メタ ファー」に近づいていくとし、多主体複雑系パラダイムでは「組織は単なる適応複雑 系ではなく、『異質の価値』との遭遇が古い価値秩序にゆらぎを生み出し、このゆら ぎを通して自己組織化、変革・進化が進」み、「機能のネットワークという視点より、
多様な価値観・利害の対立とアコモデーション(価値観の一時的並立共存)のネット ワークが注目される」と指摘する。そして「単に空間的・地理的制約を越えるだけで なく、時間的制約、情報ドメインの制約など、あらゆる境界(バウンダリー)制約か らも自由な相互進化するネットワークである」(p.583)と説明している。
木嶋の指摘するところでは、多主体複雑系パラダイムは、人間や組織・集団と いった異質で複数の意思決定主体が関与するような状況を、内部参照モデルを持った エージェントがネットワークして相互作用するシステムとして捉えることであり、そ の構造や内容を解明しようとするものであるといえる。
高木(1996)は、ポリエージェントシステム原理によるネットワーク組織におい
てネットワークリーダーシップを唱えている。エージェントの持つ内部モデルの共有 化を促進していくことが、リーダーシップの重要な要素となるという。高木は、内部 モデルについて次のように規定している。
内部モデルとは、自律的に活動する人間(すなわちエージェント)が自分を とりまく状況の規則性について心の内部に持つ認知的な写像(モデル)のこ とである。主体としての人間は内部モデルをもとに行動や考えをするのであ り、同時に内部モデルそのものに変更を加える。(pp.54-55)
そして、自らの内部モデルを変更することを「自己言及」と呼び、これはネットワー ク型組織の特徴であるとしている。ポリエージェントシステムと内部モデルへの自己 言及をまとめ、「社会や組織を構成するメンバーが自分たちをとりまいている行動の 枠組みや考えかたを自らの理解で変更してしまう現象」(pp.54-55)であると述べ図 に表わしている。
しかし、高木のネットワークリーダーシップに対しては、河合(1999)が次のよ
うな問題点を指摘している。
すべての エージェントがリーダーが持つのと 相同の(企業全体に関する)
内部モデル を共有すべきだとしてしまったこと、すなわちポリエージェン ト・システムのフラクタル構造を自己組織化の必要条件としてしまったこと である。(p.294)
これは妥当な指摘であり、ネットワークリーダーシップの概念は、一部修正し新たな 展開を促す必要がある。
2.6.
2.6. 2.6.
2.6. まとめ まとめ まとめ まとめ
この章では、NPO、NPO支援組織、ネットワーク組織、ポリエージェントモデ
ルについての先行研究をレビューしてきた。NPO は、「価値の実現」という組織理念 に共感する市民が集い、自発的な行動特性を活かす活動の場を提供する。多数の団体 が多様な価値観に基づいて行動することで、行政や企業だけでは実現しにくい多元的 な社会を実現する存在である。それは、「人間変革機関」とも位置付けられるように、
自己改革・自己変容を促す存在でもある。市民による民間設立の団体であるが、私的 機関であるが故に特定のニーズに対してしかサービスを提供できなかったり、資源提 供者のコントロールが強く働いたり、専門性を問われたりという、実際的な問題が顕 著に表面化してきている。これは、NPO が団体設立の黎明期から本格的に具体的な 活動が始まった成長期に入ったことを示す現象であるといえる。
NPO 支援組織は、4 つのタイプが存在する。資源の提供を仲介する「インター
࿑2.13 内部モデルを持つエージェントによる フラクタル状のシステム
㜞ᧁ䇮(1996)䇮p.55
ガニザーション」、社会的基盤整備を目的とする「インフラストラクチャー・オーガ ニゼーション」、そして人材育成や調査研究を担う「エデュケーション・サポート・
オーガニゼーション」である。いずれも、行政や企業から見て「単なるコスト軽減機 関」と捉えられるべきものではない。また、「組織と組織の隙間1111」を埋めるという意 味での「中間組織(中間支援組織)」ということはできる。NPO支援組織は、単に中 間に存在しているわけではない。自己組織性を発揮するNPOをコーディネートしリ ンケージしていく役割を持っている。それは、「相互承認による協働」を促すもので ある。
自発的・自律的な活動主体のNPO とそれを支援するNPO支援組織は、ネット
ワークによって活動をリンケージしていくが、免疫型ネットワーク(システム)は、
こういった社会型自立分散システムと構造が整合する。免疫抗体に仮想的支援エージ ェントが位置付けられ、神経系を含む情報ネットワーク上に散開し、活動していると 考えられる。仮想的支援エージェントは、多様性を持ちながらも情報を収集し共有し、
情報をすり合わせている。また、蓄積された情報を共通認識として持ち、最低限の共 通理解を保つために徹底した教育・学習が施され、その上で多様性を促進させている。
ネットワークの中で自律的に活動する仮想支援エージェントだが、多様な仮想支援エ ージェントによる協働作業と支援のための「情報の場」が存在し、その場面に合わせ た階層性が生じリーダーシップが発揮される。
NPO、NPO 支援組織の概念やその関係性を明らかにする情報は見出したが、
NPO 支援組織の形成プロセスについて、具体的に何が(誰が)どのようなイベント でどのような影響を与えているかは、これだけでは明確にならない。
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1 組織と組織の間とは、「行政と企業」、「行政とNPO」、「企業とNPO」、「NPOとNPO」を指す。