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3 章 プラズマ計測
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3.2.1 実験配置
この実験は、大阪大学レーザー科学研究所が所有する Extreme UltraViolet(EUV) Database レーザー施設で行った。実験の配置図をFig.3.1に示す。このレーザー施設では、1方向から Neodymium: Yttrium Aluminum Garnet(Nd:YAG)レーザーをポリスチレン([-CH2-CH(C6H6)-]n,
CH)中実球ターゲットに照射してCHプラズマを生成する。照射レーザーはターゲット半径
と同じ250 μmのスポット半径でターゲットに集光される。本実験における、照射レーザー
の条件をTable.3.1に示す。ポリスチレンターゲットはカーボンファイバーの先端に吊るし、
ファイバーの逆端をガラス棒に付けて保持した。これにより、ガラス棒がレーザー照射によ りプラズマ化するのを防いでいる。ターゲットは、電磁コイル表面から11 mm離して(電流 が流れるコイルの銅線からは13 mm離して)配置した。
磁場を生成するために、内半径13 mm、外半径25 mm、厚さ10 mmの電磁コイルに電流 を流すことで磁場を生成した。電磁コイルは、z軸方向に8回、コイルの半径方向に12層 銅線を巻いた。電磁コイルに電流を流すために、並列に並べた3つのコンデンサ(3 mF)に電 荷を溜め、レーザー照射に合わせてコンデンサから電磁コイルに電流を流した。ここで、電 磁コイルに流れる電流は電流プローブにより計測をした。ガウスメーターで磁束密度を事 前に計測することで、電流と磁束密度の関係を知ることができ、電流の実測値から生成され た磁場の強さが分かる。電磁コイルは Fig.3.2(a)が示すような(矢印は磁場ベクトルを表す)、 発散する磁場の初期形状を作る。コンデンサに500 Vを印加したとき、おおよそ1,100 Aの 電流が電磁コイルに流れ、そのときのターゲット位置(コイル表面から11 mm)の磁束密度の 時間変化をFig.3.2(b)に示す。このとき最大1.1 Tの磁場が生成され、磁場発生の時間スケー ルはミリ秒である。一方、磁気スラストチャンバ内のプラズマ膨張の時間スケールはマイク ロ秒であるため、磁場波形のピークの時間にレーザーを照射することにより、プラズマが膨 張している間は、電磁コイルの磁場強度は一定とみなすことができる。そのため、今後本章 で記述する磁束密度はターゲット位置における磁場波形のピーク値と定義する。
ここで磁気スラストチャンバのパラメータとしてプラズマと磁場のエネルギー比𝐸𝐵/𝐸𝑝
を定義する。磁場エネルギー𝐸𝐵とプラズマエネルギー𝐸𝑝は次式で定義される。
𝐸𝐵=12𝐿𝐼2、𝐸𝑝= 𝜂𝑎𝐸𝐿 (3.1)
ここで、Lはコイルのインダクタンス、Iはコイルを流れる電流、𝜂𝑎はレーザーのプラズマ への吸収率、𝐸𝐿はレーザーのエネルギーを示す。コイルのインダクタンスと電流は実測値を 用いている。レーザーの吸収率𝜂𝑎はレーザー強度I0の関数であり、式(2.16)から求めること ができる。レーザーの強度は𝐼0= 3.22 × 1011W cm⁄ 2であるため、密度勾配の特性長を50.0 μm 程度と仮定すると、レーザーの吸収率は𝜂𝑎 = 1.0となる。各磁場条件でのエネルギー比 をTable.3.2にまとめる。
プラズマからの発光は、レンズ(焦点距離 200 mm)により Intensified Charge Coupled
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Device(ICCD)カメラ上に集光する。ICCD カメラのゲート幅は、レーザー照射から t=0.5 μs
までは発光の強度が高いため5 nsに設定し、レーザー照射からt=1.0 μs 以降は発光の強度 が低いため20 nsに設定した。同時に2つのカメラを用いることで、1ショットで同時に違 う時間のイメージ図を撮影した。またカメラの前面にバンドパスフィルタ(660±5 nm)を配置 することで、H-α(波長656.28 nm)[9]と熱制動放射の発光のみを計測した。イオンの質量は電 子よりもはるかに重いため、イオンがクーロン力から受ける影響は電子よりはるかに小さ い。そのため、イオンからの熱制動放射は無視でき、計測される熱制動放射は電子からの発 光だと見做せる。熱制動放射の単位体積・単位時間・単位波長あたりの放射強度𝑑𝑊 𝑑𝑉𝑑𝑡𝑑𝜈⁄ は次式で表せられる[10]、
𝑑𝑊
𝑑𝑉𝑑𝑡𝑑𝜈= 𝑒6 3√3𝑚𝑒𝑐3𝜀03𝜋3 2⁄
1
√2𝑘𝑚𝑒
𝑇𝑒−1/2𝑧2𝑛𝑒𝑛𝑖𝑒−
ℎ𝜈 𝑘𝑇𝑒𝑔̅𝑓𝑓
= 6.8 × 10−51𝑧2𝑛𝑒𝑛𝑖𝑇𝑒−1/2𝑒−
ℎ𝜈 𝑘𝑇𝑒𝑔̅𝑓𝑓
(MKS単位系) (3.2)
ここで、eは電気素量、𝑚𝑒は電子質量、𝑐は光速、𝜀0は真空中の誘電率、𝑘はボルツマン定数、
𝑇𝑒は電子温度、𝑧は荷電数、𝑛𝑒と𝑛𝑖はそれぞれ電子とイオン密度、ℎはプランク定数、𝜈は振 動数、𝑔̅𝑓𝑓は速度平均のゴーント因子(velocity averaged Gaunt factor)を表す。先行研究[11]よ
り、EUV Database 施設のレーザーで生成されたレーザープラズマの諸量は、𝑇𝑒≈ 10 eV、
𝑛𝑒≈ 1024 m−3、𝑧 ≈ 4と見積もられている。𝑔̅𝑓𝑓= 1.0、イオン密度𝑛𝑖を電子密度𝑛𝑒と等しい と仮定すると、熱制動放射の単位体積・単位時間・単位波長あたりの放射強度は、2.65 × 10−4 J ∙ s−1∙ m−3∙ Hz−1となる。プラズマが生成されてから早い時間では、プラズマの密度は 高い。熱制動放射の放射強度は密度の2乗に比例するため、早い時間では熱制動放射が支配 的である。一方遅い時間では、プラズマの膨張により密度が下がり、熱制動放射の放射強度 が低下する。またプラズマの温度は低くなると、プラズマの再結合が増加し、H-αの発光強 度が増加するため、H-αの発光強度が支配的となる。
ICCDカメラで撮影された発光イメージは、各ピクセル点での発光強度の線積分で観測さ れる。しかし、プラズマは球状に膨張するため、場所によって「プラズマの厚み」が変わっ てくる。厚みがあるということは発光源が多数あるということで、一つ一つの発光源の発光 強度が低くても、積算の発光強度は大きくなる。厚みが薄い場所は逆のことが言える。その ため、発光イメージからプラズマの内部構造を知ることは困難である。そこで、計測された 発光イメージを「アーベル変換(Abel Transform)」する。アーベル変換は、プラズマが軸対称 であると仮定したとき、発光強度の線積分分布からプラズマ内部の発光強度分布に変換す る方法である。実験配置図(Fig.3.1)からも分かるように、ターゲット配置、レーザー照射、
電磁コイル配置はz軸に対して対称である。そのため、磁気スラストチャンバ内のレーザー プラズマはz軸に対して軸対称に膨張すると考えられる。そこでz軸に対してプラズマは対 称であると仮定し、観測された発光イメージをアーベル変換する。アーベル変換は以下の式
38 で表される。アーベル変換により、z-x 座標の発光イメージは z-r座標に変換される。ここ
で、rはFig.3.1に示すようにz軸からの半径方向の距離である。
𝑘(𝑟) =1
𝜋∫ 𝑑𝐾(𝑥) 𝑑𝑥
1
√𝑥2− 𝑟2𝑑𝑥
𝑎 𝑟
(3.3) ここで、𝑘(𝑟)はアーベル変換後の発光強度、𝐾(𝑥)はアーベル変換前の発光強度、aはプラズ マ半径を示す。上式の積分を部分積分すると、下の式に変換できる[12]。
𝑘(𝑟) =1
𝜋{ 𝐾(𝑥)
√𝑥2− 𝑟2|
𝑟 𝑎
+ ∫ 𝑥𝐾(𝑥) (𝑥2− 𝑟2)3/2𝑑𝑥
𝑎 𝑟
} (3.4)
z軸から距離rでの発光強度k(r)はrからaまでの発光強度を積算することで、式(3.4)か ら得られる。
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Fig.3.1プラズマ自発光計測の実験配置図
Table.3.1プラズマ自発光計測におけるレーザー条件
照射ビーム本数 1 beam/shot レーザー波長 1,064 nm レーザーパルス幅 9.5±0.5 ns レーザースポット半径 250 μm
レーザーエネルギー 6.0±0.8 J
40 Fig.3.2 (a)磁場生成用コイルの初期形状と(b)ターゲット位置(z, y)=(0, 0)における磁束密度の 時間変化
Table.3.2プラズマ自発光計測におけるエネルギー比EB/Ep
磁場 [T] EB/Ep
0.0 0.0
0.23 1.4
0.46 5.4
0.67 12
0.89 21
1.1 31
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3.2.2 実験結果
レーザーエネルギーが6.0 Jのときのエネルギー比が𝐸𝐵⁄𝐸𝑝=(a)0、(b)1.4、(c)5.4、(d)12、 (e)21、(f)31となる磁場を印加した時、レーザー照射からt=0.1 μs、0.2 μs、0.3 μs、0.5 μs、
1.0 μs、1.5 μs経過後のプラズマ自発光イメージをFig.3.3(a)-(f)に示す。ターゲットは初めに
(𝑧, 𝑥) = (0, 0)に設置されており、レーザーは図中の左側からコイル内を通過しターゲットに 照射された。ここでz=0 mmにおいて、x>0の発光強度はx<0の発光強度と比較すると強い ことが分かる。これはターゲットを保持するカーボンファイバーがプラズマ化し、そのプラ ズマからの発光である。また𝑧 ≈ −10 mmにおいてx方向に広がっている発光は、コイル表 面に衝突したプラズマからの発光である。磁場がないとき[Fig.3.3(a)]、大部分のプラズマが
左方向(z<0)と上下方向に広がっている。高エネルギーのレーザープラズマがコイル表面に
衝突することで、コイル表面がプラズマ化しz>0方向にアブレーションしている。今回の実
験は、1 方向(z<0 の方向)からレーザーをターゲットに照射している。レーザーが照射され
た側のターゲット表面は、レーザーによって直接加熱されアブレーションが起こりプラズ マを噴出する。その噴出の反作用として物質内部に衝撃波が発生し、熱がターゲット中を伝 播し反対側を加熱する。今回の実験で用いたターゲットは中実球であるため、熱が十分に反 対側に伝わらず、レーザーが照射された側のみプラズマが膨張した。一方磁場があるとき
[Fig.3.3(b)-(f)]、磁場がないときと比較してコイル表面に衝突するプラズマが減少している。
また磁場を印加することで、プラズマの膨張が減速し、t=1.5 μs後にはz>0のプラズマ密度 が増加している。
計測された発光イメージ[Fig.3.3(a)-(f)]をアーベル変換した図をFig.3.4(a)-(f)に示す。磁場 がないとき、t=0.1 μs以降ではプラズマ膨張により密度が低くなり発光強度が低下し、ほと んど発光が見えていない。一方磁場があるとき、t=0.2 μs以降もプラズマの発光は観測され、
そのプラズマの外殻に発光強度が高い領域が生成される。これは、プラズマの膨張が磁気圧 によって減速され、プラズマが外殻に留まったためである。そのため、プラズマはこのよう なシェル構造を形成している。
プラズマ自発光のイメージ図から、z軸に沿った(-4<x<4 mmの平均)発光強度のラインプ
ロットをFig.3.5(a)-(f)の左図に示す。黒線、赤線、緑線、青線、紫線、黄色線はそれぞれエ
ネルギー比が 0、1.4、5.4、12、21、31 のときの発光強度を示す。レーザー照射から t=0.2 μs[Fig.3.5(b)]では、0<𝐸𝐵⁄𝐸𝑝<1.4の発光強度波形ではx=-11 mm付近で高エネルギーのプラ ズマがコイル表面に衝突したため、波形にピークが現れる。𝐸𝐵⁄𝐸𝑝>5.4のとき、コイル表面 に衝突するプラズマが減少しているため、高エネルギーのプラズマが外部磁場によって減 速させられていることが分かる。時間が経つ[Fig.3.5(d)-(f)]につれ、プラズマの膨張はz<0に 移動している。レーザー照射からt=0.5 μsでは、𝐸𝐵⁄𝐸𝑝=1.4の発光強度はz=-3 mmにピーク が移動している。𝐸𝐵⁄𝐸𝑝>5.4の発光強度は𝑧 ≈ 0 mm付近にピークがあり、外部磁場によって
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z<0のプラズマ膨張が減速していることを示す。またレーザー照射から t=1.0 μs、1.5 μs で
は、𝐸𝐵⁄𝐸𝑝>5.4の場合、z>0の発光強度が増加している。
レーザーが 1 方向からターゲットに照射された場合、ターゲットの電離過程はレーザー の電界による電離(光電離)とターゲット中を熱が伝播して起こる電離(熱電離)が考えられる。
レーザーが照射されたターゲット面は、レーザーの光子を吸収することで、中性原子から電 子が電離される。光子吸収によって電離した電子は、レーザーの電界によって振動し、中性 原子と衝突することで、さらに電離を加速させる(光電離)。光電離によって生成されたプラ ズマは、固体表面から噴出する。その噴出の反作用としてターゲット内部に衝撃波が発生し、
熱がターゲット中を伝播しレーザー照射面と反対側(ターゲット裏面)を加熱しプラズマ化 (熱電離)する。そのため、レーザー照射からt=1.0 μs、1.5 μsにおける、-5 mm<z<5 mmのプ ラズマは、(1)「レーザーの直接加熱により電離(光電離)したプラズマが、初めにz<0に噴出 して磁場によってz>0に押し返された」、(2)「ターゲット中を熱が伝播し加熱され電離(熱電 離)したプラズマが、初めにz<0に噴出して磁場によってz>0に押し返された」、もしくは(3)
「ターゲット中を熱が伝播し、ターゲット裏面が加熱され電離(熱電離)したプラズマが、初
めからz>0に噴出した」という3つの可能性が考えられる。そこで、ターゲット中を伝播す
る衝撃波の伝播速度を考える。衝撃波のマッハ数𝑀𝑠は次式で表せられる(Fig.3.6)[13]。
𝑀𝑠 =𝑢𝑠− 𝑢1
𝑎1 = √ (𝑃2
𝑃1
⁄ ) + 𝜇 1 + 𝜇
(3.5)
ここで、𝑢は速度、𝑎 = √𝛾 𝑃 𝜌⁄ は音速、𝑃は圧力、𝜌は質量密度(ポリスチレン 1.05 g/cm3)、 𝛾は比熱比、𝜇 = (𝛾 − 1)/(𝛾 + 1)である。添え字s、1、2は衝撃波面、衝撃波前方、衝撃波後 方を示す。衝撃波のマッハ数は、衝撃波の前方と後方の圧力比によって決定される。
衝撃波の前方の圧力𝑃1はポリスチレンターゲット内の圧力で表せ、状態方程式から、
𝑃1= 𝜌1𝑅𝑇1= 𝜌1𝑅
𝑀𝑇1 (3.6)
となる。ここで、𝑅 = 𝑅 𝑀⁄ は気体定数、𝑅は一般気体定数(8314.3 J/kmol ∙ K)、𝑀は分子量(ポ リスチレン 105 kg/kmol)、𝑇は温度を示す。ポリスチレンターゲット内の温度を室温(300 K) とすると、𝑃1= 1.8 × 107 Paとなる。またポリスチレンターゲット内の音速は、固体の比熱 比𝛾 ≈ 1を考慮すると、𝑎1≈ 154 m/sとなる。
つぎに衝撃波の後方の圧力𝑃2を求める。レーザーをターゲット面に照射するとアブレー ションプラズマが噴出する。このときに達成される圧力𝑃𝑎は経験的に、
𝑃𝑎 [Mbar] = 8.6(𝐼0 [W/cm2]
1014 )2/3(𝜆 [μm])−2/3 (3.7) で表すことができる[14]。ここで、𝐼0はレーザーの強度、𝜆はレーザーの波長を示す。レーザ ーの条件(Table.3.1)では𝐼0= 3.22 × 1011 W/cm2となり、アブレーション圧力は𝑃𝑎= 𝑃2=
43 1.8 × 1010 Paとなる。
衝撃波の前方と後方の圧力比から、固体中の衝撃波のマッハ数は𝑀𝑠= 26.9となる。ター ゲットは静止しているため𝑢1≈ 0とすると、衝撃波の伝播速度は𝑢𝑠 = 4.14 km/sとなる。そ のため、ポリスチレンターゲット(直径500 μm)を横断するのに要する時間は~120 nsである。
一方、レーザーの電界によって振動した電子が中性原子に衝突して起こる光電離の時間ス ケールはレーザーのパルス幅(~9.5 ns)以下と考えると、熱伝導による電離より十分に早い。
そのためこの-5 mm<z<5 mmのプラズマは、(1)「レーザーの直接加熱により電離(光電離)し たプラズマが、初めにz<0に噴出して磁場によって z>0 に押し返された」や(3)「ターゲッ ト中を熱が伝播し、ターゲット裏面が加熱され電離(熱電離)したプラズマが、初めから z>0 に噴出した」プラズマではなく、(2) 「ターゲット中を熱が伝播し加熱され電離(熱電離)し たプラズマが、初めにz<0に噴出して磁場によってz>0に押し返された」プラズマであると 考えられる。
次にレーザー照射からt=1.0 μs、1.5 μsにおける、z>10 mmのプラズマについて考察する [Fig.3.5(e)、(f)]。このプラズマはt=1.0 μsでは𝑧 ≈ 10 mmに、t=1.5 μsでは𝑧 ≈ 15 mmにピー クがあることから、速度はおおよそ10 km/s程度だと考えられる。そのため逆算すると、t=0 sではターゲット初期位置(𝑧 ≈ 0 mm)付近にいると考えられる。そのためt=1.0 μs、1.5 μs に
おけるz>10 mmのプラズマは、ターゲット裏面が熱電離により噴出したものであると考え
られる。しかしターゲット裏面からの噴射と考えると、磁場がないときにz>10 mmの発光 が観測されず、エネルギー比𝐸𝐵⁄𝐸𝑝>5.4のときに観測される[Fig.3.5(e)]ことが謎である。考 えられる可能性として、磁場によって反射された電子もしくはイオンがターゲット裏面か ら噴出した中性粒子と衝突することで、中性粒子が励起し発光したと考えられる。そのため 磁場がない場合は、z>0の荷電粒子が少なく中性粒子の励起が起こらず発光が観測されなか ったと考えられる。
次に、アーベル変換後のプラズマ自発光のイメージ図から、r軸に沿った(-5<z<0 mmの平 均)発光強度のラインプロットをFig.3.5(a)-(f)の右図に示す。レーザー照射後t=0.2 μsでは、
𝐸𝐵⁄𝐸𝑝= 5.4以上のとき、r 方向へのプラズマ膨張は𝐸𝐵⁄𝐸𝑝< 1.4の広がりに比べて狭いこと が分かる。またプラズマの中心部(r=0 mm)では、t=0.3 μs以降では磁場強度が増加するにつ れて発光強度が増加している。これらは磁場によってプラズマが減速し、中心部のプラズマ 密度が増加しているためである。
先行研究では磁気スラストチャンバの推力の直接計測において、推力の発生を確認する ことで、磁気スラストチャンバの有効性を確認した[6]。今回の自発光計測では、プラズマの 自発光を計測することで、プラズマ膨張が磁気圧により減速されていることを確認した。こ れはプラズマと磁場の相互作用を示唆しており、プラズマ膨張の磁場による影響から磁気 スラストチャンバの有効性を確認することができた。