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10 ブーム伝播解析

ここでは前章までの 6 自由度非線形飛行シミュレーションモデルを使って計算した飛行 データをもとに, BMS で所望のブームが計測できるかどうかを判定するためのブーム伝播 解析についてまとめる.ブーム伝播解析は機体重心位置を頂点とする円錐表面をブームが 伝播すると近似してブームの三次元空間での伝播を模擬するものである.ただし計算負荷 の観点から, MCS では大気温度の変化や定常風の影響によるブームコーンの屈折ならびに フォーカシングの影響を考慮したブーム伝播解析は通常は行わず,必要に応じて実施した.

10.1 ブームコーンによる三次元伝播モデル

ブームコーンによる三次元伝播モデルの概要を図 19 および図 20 に示す.ブームコーン はブームが発生した時の機体重心位置を頂点とし,重心対気速度ベクトルの方向を軸とす る円錐によって定義される.ブーム計測座標系の 𝑋𝑋 𝑀𝑀 − 𝑌𝑌 𝑀𝑀 平面とブームコーンとの交線(形 状は楕円あるいは双曲線)が BMS のマイクと交差したときにブームが計測される.

6 自由度非線形シミュレーションの飛行データは離散的であるため,飛行データのうち計 測フェーズ中に 11.1 節の計測条件を満足する全ての時刻においてブーム伝播解析を実施し てこの交線を求め,交線が BMS と交差した時刻にブームが計測されたと定義する.交線を 求めるための幾何学的な解析の詳細は 10.3 節に示す.

ただし,目的のブーム波形が計測できるのは機体の下面で発生したブームなので,この 範囲内で BMS と交差しなくてはならない.この判定は対気速度座標系で行う.所望の波形 が観測できるための条件は, BMS に到達したブームが発生した時点での重心対気速度ベク トル周りの機体のロール角(バンク角)を 𝜎𝜎 ,またその時の機体重心位置から BMS へ向か うベクトル 𝑠𝑠 𝑑𝑑 𝐵𝐵𝑀𝑀𝑀𝑀 = [𝑋𝑋 𝐵𝐵𝑀𝑀𝑀𝑀 𝑌𝑌 𝐵𝐵𝑀𝑀𝑀𝑀 ℎ − ℎ 𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥 ] 𝑇𝑇 を 𝑌𝑌 𝑉𝑉 − 𝑍𝑍 𝑉𝑉 平面へ投影したもの(図 19 におい て対気速度座標系の原点から 𝑃𝑃 𝐵𝐵𝑀𝑀𝑀𝑀 に向かうベクトル)と 𝑍𝑍 𝑉𝑉 軸のなす角度を 𝜉𝜉 としたとき,

|𝜎𝜎 − 𝜉𝜉| ≤ 40 を満足することである.ただし ℎ 𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥 は BMS のマイク高度であり, 𝜎𝜎, 𝜉𝜉 の符号は 𝑋𝑋 𝑉𝑉 軸の正方向に右ねじを回す向きの角度を正とする. 𝜎𝜎, 𝜉𝜉 は次式で与えられる.

𝜎𝜎 = − atan � 𝑉𝑉 𝑒𝑒 𝑧𝑧

𝑒𝑒 𝑦𝑦

𝑉𝑉 �

� 𝑒𝑒 𝑥𝑥

𝑒𝑒 𝑦𝑦 𝑒𝑒 𝑧𝑧

� =

𝑉𝑉

𝑻𝑻 𝑉𝑉/𝑇𝑇𝐴𝐴 𝑻𝑻 𝑇𝑇𝐴𝐴/𝑠𝑠 𝑻𝑻 𝐵𝐵/𝑠𝑠 −1 � 0 0 1 �

𝐵𝐵 (177)

𝜉𝜉 = − atan � 𝑉𝑉 𝑑𝑑 𝐵𝐵𝑀𝑀𝑀𝑀𝑧𝑧

𝑑𝑑 𝐵𝐵𝑀𝑀𝑀𝑀𝑦𝑦

𝑉𝑉 �

� 𝑑𝑑 𝐵𝐵𝑀𝑀𝑀𝑀𝑥𝑥

𝑑𝑑 𝐵𝐵𝑀𝑀𝑀𝑀𝑦𝑦

𝑑𝑑 𝐵𝐵𝑀𝑀𝑀𝑀𝑧𝑧

𝑉𝑉

= 𝑻𝑻 𝑉𝑉/𝑇𝑇𝐴𝐴 𝑻𝑻 𝑇𝑇𝐴𝐴/𝑠𝑠 𝑠𝑠 𝑑𝑑 𝐵𝐵𝑀𝑀𝑀𝑀

(178)

図 19 ブームコーンによる三次元伝播モデルの概要(その 1)

図 20 ブームコーンによる三次元伝播モデルの概要(その 2 ) 機体重心

(高度 )

BMS

BMS 到達ブーム

(重心対気速度ベクトル後方より)

図 19 ブームコーンによる三次元伝播モデルの概要(その 1 )

図 20 ブームコーンによる三次元伝播モデルの概要(その 2 ) 機体重心

(高度 )

BMS

BMS 到達ブーム

(重心対気速度ベクトル後方より)

10.2 Blimp ドリフトモデル

ブーム計測に用いるマイクは Blimp を係留しているテザーに 250 m の間隔で取り付けら れており, Blimp のノミナル位置は地表から鉛直上方 1000 m の位置である.ただし実際に

は Blimp は定常風に流されてしまうため,マイクの水平位置ならびに高度も変化する.そ

こで D-SEND#1 と ABBA ( 2009 年から 2011 年に計 3 回実施された BMS 機能確認試験)

における Blimp 位置の実測データを検証したところ, Blimp のノミナル位置からのドリフ

ト量と風向きおよび風速の間にはある程度相関があることがわかった.

いま Blimp のドリフト方向は定常風の向きに一致するものとし, Blimp を係留している

テザーの変形を FEM により解析したところ, Blimp のノミナル位置からの水平変位と変位

後の Blimp 高度のテーブルがそれぞれに表 115 と表 116 に示すように定常風の風速

�𝑈𝑈 𝑠𝑠 2 + 𝑉𝑉 𝑠𝑠 2 をパラメータとして得られたので,これを線形補間して用いるものとした.なお,

補外する場合は端点保持とする.

表 115 Blimp の水平面内のドリフト量(m)と風速の関係 定常風の風速 [m/s]

Blimp ノミナル高度 [m] 2.5 5 7.5 10 12.5 15 17

0 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00

50 2.32 9.10 19.03 28.94 36.16 40.49 42.54

250 11.45 45.09 95.33 147.87 188.62 214.49 227.20 500 20.33 80.28 171.49 271.41 354.71 411.79 441.45 750 26.34 104.29 224.33 361.07 483.33 575.26 627.34 1000 30.04 118.96 257.30 418.58 569.86 692.41 767.99

表 116 変位後の Blimp 高度( m )と風速の関係 定常風の風速 [m/s]

Blimp ノミナル高度 [m] 2.5 5 7.5 10 12.5 15 17

0 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00

50 50.06 49.21 46.02 39.95 32.74 26.34 22.27

250 250.40 246.57 231.80 202.43 165.39 130.67 107.77

500 500.95 494.79 470.64 420.55 353.27 285.79 238.96

750 751.68 744.44 715.78 654.71 568.48 475.98 407.51

1000 1002.54 994.89 964.47 898.84 803.81 697.58 614.96

10.2 Blimp ドリフトモデル

ブーム計測に用いるマイクは Blimp を係留しているテザーに 250 m の間隔で取り付けら れており, Blimp のノミナル位置は地表から鉛直上方 1000 m の位置である.ただし実際に

は Blimp は定常風に流されてしまうため,マイクの水平位置ならびに高度も変化する.そ

こで D-SEND#1 と ABBA ( 2009 年から 2011 年に計 3 回実施された BMS 機能確認試験)

における Blimp 位置の実測データを検証したところ, Blimp のノミナル位置からのドリフ

ト量と風向きおよび風速の間にはある程度相関があることがわかった.

いま Blimp のドリフト方向は定常風の向きに一致するものとし, Blimp を係留している

テザーの変形を FEM により解析したところ, Blimp のノミナル位置からの水平変位と変位

後の Blimp 高度のテーブルがそれぞれに表 115 と表 116 に示すように定常風の風速

�𝑈𝑈 𝑠𝑠 2 + 𝑉𝑉 𝑠𝑠 2 をパラメータとして得られたので,これを線形補間して用いるものとした.なお,

補外する場合は端点保持とする.

表 115 Blimp の水平面内のドリフト量(m)と風速の関係 定常風の風速 [m/s]

Blimp ノミナル高度 [m] 2.5 5 7.5 10 12.5 15 17

0 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00

50 2.32 9.10 19.03 28.94 36.16 40.49 42.54

250 11.45 45.09 95.33 147.87 188.62 214.49 227.20

500 20.33 80.28 171.49 271.41 354.71 411.79 441.45

750 26.34 104.29 224.33 361.07 483.33 575.26 627.34

1000 30.04 118.96 257.30 418.58 569.86 692.41 767.99

表 116 変位後の Blimp 高度( m )と風速の関係

定常風の風速 [m/s]

Blimp ノミナル高度 [m] 2.5 5 7.5 10 12.5 15 17

0 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00

50 50.06 49.21 46.02 39.95 32.74 26.34 22.27

250 250.40 246.57 231.80 202.43 165.39 130.67 107.77

500 500.95 494.79 470.64 420.55 353.27 285.79 238.96

750 751.68 744.44 715.78 654.71 568.48 475.98 407.51

1000 1002.54 994.89 964.47 898.84 803.81 697.58 614.96

10.3 ブーム計測システムにおけるブーム計測判定方法

マッハ角を 𝜇𝜇 = 1/ cos 𝐻𝐻 𝑠𝑠𝑠𝑠 とすると, −𝛾𝛾 𝑛𝑛 − 𝜇𝜇 > 0のときブーム計測座標系の 𝑋𝑋 𝑀𝑀 − 𝑌𝑌 𝑀𝑀 平面 とブームコーンとの交線は楕円, −𝛾𝛾 𝑛𝑛 − 𝜇𝜇 𝜇 0のときは双曲線となる. −𝛾𝛾 𝑛𝑛 − 𝜇𝜇 > 0の場合に おける 𝑋𝑋 𝑀𝑀 − 𝑌𝑌 𝑀𝑀 平面とブームコーンとの交線との関係を図 21 に示す.ブームコーンの円錐 の方程式は対気速度座標系では

𝑉𝑉 𝑍𝑍 2 + 𝑉𝑉 𝑌𝑌 2 = 𝑉𝑉 𝑋𝑋 2 tan 2 𝜇𝜇 (179)

で表現され,また対気速度座標系と対気方位角座標系の関係は � 𝑋𝑋

𝑌𝑌 𝑍𝑍 �

𝑉𝑉

= 𝑻𝑻 𝑉𝑉/𝑇𝑇𝐴𝐴 � 𝑋𝑋 𝑌𝑌 𝑍𝑍 �

𝑇𝑇𝐴𝐴

= � cos 𝛾𝛾 𝑛𝑛 0 − sin 𝛾𝛾 𝑛𝑛

0 1 1

sin 𝛾𝛾 𝑛𝑛 0 cos 𝛾𝛾 𝑛𝑛

� � 𝑋𝑋 𝑌𝑌 𝑍𝑍 �

𝑇𝑇𝐴𝐴

(180)

であるので,これを式(179)に代入すると

( 𝑇𝑇𝐴𝐴 𝑋𝑋 sin 𝛾𝛾 𝑛𝑛 + 𝑇𝑇𝐴𝐴 𝑍𝑍 cos 𝛾𝛾 𝑛𝑛 ) 2 + 𝑇𝑇𝐴𝐴 𝑌𝑌 2 = ( 𝑇𝑇𝐴𝐴 𝑋𝑋 cos 𝛾𝛾 𝑛𝑛 − 𝑍𝑍 𝑇𝑇𝐴𝐴 sin 𝛾𝛾 𝑛𝑛 ) 2 tan 𝜇𝜇 (181) となる.これを 𝑇𝑇𝐴𝐴 𝑌𝑌 について解くと

𝑇𝑇𝐴𝐴 𝑌𝑌 = ±�( 𝑇𝑇𝐴𝐴 𝑋𝑋 cos 𝛾𝛾 𝑛𝑛 − 𝑍𝑍 𝑇𝑇𝐴𝐴 sin 𝛾𝛾 𝑛𝑛 ) 2 tan 𝜇𝜇 − ( 𝑇𝑇𝐴𝐴 𝑋𝑋 sin 𝛾𝛾 𝑛𝑛 + 𝑇𝑇𝐴𝐴 𝑍𝑍 cos 𝛾𝛾 𝑛𝑛 ) 2 (182) となる.対気方位角座標系における 𝑃𝑃 1 , 𝑃𝑃 2 の座標は 𝑇𝑇𝐴𝐴 [(ℎ − ℎ 𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥 ) tan(−𝛾𝛾 𝑛𝑛 ± 𝜇𝜇) 0 ℎ − ℎ 𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥 ] 𝑇𝑇 であるので, (ℎ − ℎ 𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥 ) tan(−𝛾𝛾 𝑛𝑛 + 𝜇𝜇) 𝜇 𝑋𝑋 𝜇 𝑇𝑇𝐴𝐴 (ℎ − ℎ 𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥 ) tan(−𝛾𝛾 𝑛𝑛 − 𝜇𝜇) の範囲では式(182)に

おいて 𝑇𝑇𝐴𝐴 𝑍𝑍 = ℎ − ℎ 𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥 とすることで交線となる楕円の軌跡を求めることができる.なおこの

範囲外においても式 (182) で同様に 𝑇𝑇𝐴𝐴 𝑍𝑍 = ℎ − ℎ 𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥 として双曲線軌道が計算される.

図 21 ブーム計測座標系におけるブームコーンとの交線(楕円)の計算

局所水平面 BMS

式 (182) で記述される楕円もしくは双曲線が BMS を横切る瞬間を判定することにより

BMS でブームが計測される時刻を決定できる.ただし D-SEND#2 における計測マッハ数

は 1.2 から 1.4 程度, 𝛾𝛾 𝑛𝑛 ≅ − 45 程度であり −𝛾𝛾 𝑛𝑛 − 𝜇𝜇 の値が十分小さくなることから,機体上

方から発生するブームに対応する 𝑃𝑃 2 近傍の線分は BMS よりもかなり遠方( 𝑃𝑃 2 > 𝑀𝑀 𝑋𝑋 𝐵𝐵𝑀𝑀𝑀𝑀 )と

なる.そのため楕円軌道のうち実際に BMS を横切るのは機体下方から発生するブームに対

応する 𝑃𝑃 1 近傍の線分に限られる.そこで楕円軌道のうち 𝑃𝑃 1 を含む側の半分(弧 𝑃𝑃 𝑌𝑌𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥 𝑃𝑃 1 𝑃𝑃 𝑌𝑌𝑥𝑥𝑛𝑛𝑛𝑛

のみを交差判定の対象とする.

式 (182) で記述される楕円もしくは双曲線が BMS を横切る瞬間を判定することにより

BMS でブームが計測される時刻を決定できる.ただし D-SEND#2 における計測マッハ数

は 1.2 から 1.4 程度, 𝛾𝛾 𝑛𝑛 ≅ − 45 程度であり −𝛾𝛾 𝑛𝑛 − 𝜇𝜇 の値が十分小さくなることから,機体上

方から発生するブームに対応する 𝑃𝑃 2 近傍の線分は BMS よりもかなり遠方( 𝑃𝑃 2 > 𝑀𝑀 𝑋𝑋 𝐵𝐵𝑀𝑀𝑀𝑀 )と

なる.そのため楕円軌道のうち実際に BMS を横切るのは機体下方から発生するブームに対

応する 𝑃𝑃 1 近傍の線分に限られる.そこで楕円軌道のうち 𝑃𝑃 1 を含む側の半分(弧 𝑃𝑃 𝑌𝑌𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥𝑥 𝑃𝑃 1 𝑃𝑃 𝑌𝑌𝑥𝑥𝑛𝑛𝑛𝑛

のみを交差判定の対象とする.