気 胸
領域 3- 3 ファシリテーター用
領域3( Module 3)安楽さや QOL(人生の質、生活の質)の最善化 3-3 心理的ニーズへの対応
すべての専門職は自分たちの職能と技能に応じて、生命予後の限られている状況にある人の心理 的ニーズを理解し、支持的介入を行うことができるべきです。すぐれた心理的ケアには、症例を適切 に評価する技能と繊細なコミュニケーション技能及び判断力(例えば、生命予後の限られている状 況にある人が心理学的サービスの照会が必要な場合)などが必要とされます。しかし、すべての生命 予後の限られている状況にある人とその家族が、心理的介入を必要としているわけではないことも 認識すべきです。また、いつ、だれが関わればいいのかを知っていることも基本能力とされていま す。
―地域緩和ケア実践者として求められる資質―
●生命予後の限られている状況にある人の感情を 認め、それらに敏感に対応する。(感情に対応する ことの重要性の理解)
●良好なコミュニケーションは、心理的ニーズに 対応するために必要不可欠であることを認識でき る。(心理的ニーズにおけるコミュニケーションの 重要性)
●生命予後の限られている状況にある人の対応方 法を培うことができる。
●診断を行い、ケアプランを立て、本人の心理的 状況を評価しながら、本人の予後、個人的な希望、
生活環境を念頭に置きながら、適切な時期に体系 的で巧みな介入を行うことが重要であることを理
解できる。
・延命治療から緩和ケアへの移行時でのサポート ができる
・治療の継続/差し控えに関する適切な意思決定 支援ができる(専門的緩和ケア)
・在宅移行時でのサポートができる
●生命予後の限られている状況にある人とその家 族の対応と、人生の質を最大限に高めるために入 手できる最善と思われるエビデンスに基づいて、
ケアの心理的側面を評価し、多職種協働の形で対 応することの必要性を理解できる(多職種協働に よるケア)。
・適切な評価と心理的介入ができる(専門的緩和 ケア)
領域
3-3 ファシリテーター用
領域3
安楽さやQOL(人生の質、生活の質)の最善化 3-3 心理的ニーズへの対応
Module 3
プライマリ緩和ケア人材育成研修用副読本(医療職用)
ファシリテーター用
領域3
安楽さやQOL(人生の質、生活の質)の最善化 3-3 心理的ニーズへの対応
1.生命を脅かす疾患を持つ人 生命予後の限られている人の感情とは
1 生命を脅かす疾患を持つ人生命予後の限られている人および家 族の感情とは
障害や進行し た病気をもつ 心理的苦悩 人の苦悩
身体的苦悩
社会的苦悩
がんによる症状 がん治療による症状 併存疾患による症状 日常生活動作の障害 不安
恐れ 孤独感 悲しみ うつ状態 怒り
仕事上の問題 経済的問題 家庭内の問題 介護の問題 将来への悩み 生きる意味への問い 信念や価値感の変化
罪悪感 役割の喪失 未来の喪失
スピリチュアル な苦悩
全人的苦悩(total suffering or pain)の概念 【全人的苦悩(total suffering or pain)の概念】
・生命を脅かす疾患を持つ、人生命予後の限られている人はほぼす べてが身体面、心理面、社会面、スピリチュアリティーの困難さに直 面し、様々な苦悩を抱きます。そして、これらの苦悩は単独で存在す るというよりむしろ影響しあって存在します。
・ここでは心理的苦悩について学んでいきます。
心理的苦悩の臨床像
•
不安やうつとして表現されるが、その大部分 は情緒的な問題で収まっている•
対応(coping)としてよく見られるのが否認 である•
症状としてよく見られるのが、いらいらして いる、落ち着きがない、感情に起伏がみられ る等である【心理的苦悩の臨床像】
・ 心理的苦悩は不安やうつとして表現されますが、その大部分は情 緒的な問題で収まる、正常な反応です。
・対応としてよく見られるのが否認であり、症状としてよく見られるのが、
いらいらしている、落ち着きがない、感情に起伏がみられる等です。
・具体的な症状は不安・うつの項目で提示します。
領域
3-3 ファシリテーター用
否認
• 否認はよく見られる反応(coping)である
• 否認では必ずしも患者が説明されたことを受け止めて いないというわけではない
• 否認は必ずしも異常な、病的なものではない
生命予後が限定された人では正常の反応であるかもしれない
・自分の置かれている状況を受け入れる時まで待つ
・チームメンバーが患者に情報を強いることのないよう、
防衛反応であると警告しておく必要がある
・否認はよく見られる反応(coping)であり、否認したからといってでは必 ずしも受け止めていないというわけではありません。
・否認は必ずしも異常な、病的なものではなく、生命予後が限定され た人では正常の反応(防衛反応)であるかもしれません
・しかし、適応を妨げ、治療にひずみをもたらす場合もあります。
・対応としては、その否認が状況の対処(コーピング)に役に立ってい る場合には、自分の置かれている状況を受け入れる時まで待つこと です。しかし、問題が生じているかあるいはその可能性の高いときに は、正面から取り上げる必要があります(ただし、患者が危機状態に あるときはそのままとし、危機状態を脱し、内的な感情が回復してから 対応します)。
・他のチームメンバーが患者に情報を強いることのないよう、防衛反 応であると警告しておく必要があります
2.心理的苦悩の評価
(1)苦悩の要因(悪化要因を含め)の評価
(2)コーピングタイプを知る
2.心理的苦悩の評価
緩和ケアにおける心理的苦悩の要因
■症状に関係する要因
症状が制御されていないか、コントロールが不十分である 主治医が無関心であることの認識
他の症状の原因に気づかない
■治療に関係する要因 診断の遅延、複数の失敗した治療 治療の副作用
■治療チームに関係する要因 不十分なコミュニケーション ケアの継続性の不足 家族、介護人の排除
■心理的要因」
障害や死の自覚
■社会的な要因
仕事、社会的地位、家族としての役割の喪失(または喪失に対する恐怖) 疎外感(実際あるいは認識)
家族や介護者に負担をかけているという認識 まだ終わっていない仕事:個人的、人間関係、経済的 経済的困難
家族への心配
The IAHPC Manual of Palliative Care 3rd Edition 2013より引用
■文化的な要因
病気、苦しみ、損失、および死に対する態度における文化的 な違い
言語障壁。
■スピリチュアルな要因 宗教の問題。
スピリチュアルな問題(例えば自責、罪の感覚、期待に応えら れない)
人生の無意味さ
【緩和ケアにおける心理的苦悩の要因】
・対応の第1歩は心理的苦悩の要因の評価です。
・心理的要因には社会的な要因、文化的な要因、スピリチュアルな 要因などがあり、それぞれの面から要因を評価し、これらを含めた対 応が必要になります。
・評価するためには、適切な質問が必要となります。
コーピングタイプ
コーピング
タイプ 特徴
問題中心(焦点)型
ストレスのもととなる原因を取り除くことが目的
直面している問題に対し、自分の努力で解決したり対策を立てる、あ るいは回避(逃避)するような対処行動
・知的・合理的反応:理性的に考え、情報を集めようとする
・対決:断固とした処置をとる
・対策の検討:可能な選択肢について話し合う
・行動化:どんなことでもやってみる
・回避:意識的に考えないようにする
情動中心(焦点)型
ストレッサーによって引き起こされた怒りや不安などの低減が目的 怒りや不満、悲しみなどを感じる場面で、情動を表出したり抑制した りする対処行動
・感情の逆転:笑い飛ばす、軽く考える
・置き換え:他のことをして気を紛らす
・回避:心配や不安を意識しないようにする
【コーピングタイプ】
・次の段階はこれまでの危機に対する対応方法(コーピングタイプ)を 尋ねることです。コーピングタイプの分類の仕方はいろいろあるようで すが、一般的にはストレスのもととなる原因を取り除くことを目的とする 問題中心型と、ストレッサーによって引き起こされた怒りや不安などの 低減を目的とする情動中心型に分けられるようです。
領域
3-3 ファシリテーター用
情動中心(焦点)型コーピングタイプ
コーピングタイプ 特徴
情緒処理型 感情を表に出したり、聴いてもらうことによって気持 ちの整理をつけ発散させる
社会的支援
(探索)型
問題に直面したとき、専門家、家族、上司、友人など、
信頼できる人に相談したりアドバイスを求めたり、話 をすることで心理的安定をえる対処行動
気晴らし型 運動や趣味など、いわゆるストレス解消法と呼ばれる もので、気分転換や日常性からの解放などが含まれる
その他
(リラクゼーション法など)
ストレスへの気づきを促し、ストレス軽減する方法と して用いられる
呼吸法、ヨガ、瞑想、自立訓練法、アロマなど
・そして情動中心型はさらにいくつかに分類されています。
3.心理的苦悩のマネジメント
(1)原因となる状況への対応
(2)基本的な対応
3.心理的苦悩のマネジメント
心理的苦悩(マネジメント)
•
原因となる状況(要因)への対応•
基本的な対応•
痛みや症状への対応•
社会的な問題への対応•
文化的な問題への対応•
スピリチュアルな問題への対応•
心理療法•
他の方法【心理的苦悩(マネジメント)】
・原因となる状況(要因)を評価し、対応できるところは対応すること
・基本的な対応を心がけること
・苦悩となっている症状や問題に対応することなどが重要とされてい ます
うまく対応できない要因
■個人的素因 心配症、悲観的な性格
病気、ストレス、喪失経験でうまく対応できなかった経験がある
(多くの場合は、経験をいかし予想以上にうまく対応できている)
知人や家族ががんで不運な経験をしている 最近、個人的近しい人の喪失を経験している 自尊心(esteem)が低い
家族問題を多く抱える、あるいは閉じこもり 夫婦間の問題
精神疾患の既往 パーソナリティー障害 アルコールや薬物依存
■社会的要因
ソーシャルサポートが少ない 社会経済的な階級が低い
■文化的要因
文化的な伝統(禁欲主義的、感情を示すことに慎み深い)
■スピリチュアルな要因
宗教信をもっていない 異なる価値観をもっていない
【うまく対応できない要因】
・原因となる要因の評価として、うまく対応できない要因、個人的要 因、社会的要因、文化的要因、スピリチュアリティに関する要因を探 ります。