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気 胸

領域 3- 3 ファシリテーター用 せん妄の臨床像

トワイクロス先生のがん患者の症状マ ネジメント第2版 監訳 武田文和 医学書院 2009年より引用

【せん妄の臨床的な特徴】

せん妄の症状の特徴

・軽度~中程度の意識障害が主症状

・幻覚、妄想、興奮などの精神症状を 伴うことがある

・急性、亜急性発症し、症状の日内変 動が存在する

【せん妄の症状の特徴】

・主となる症状は意識障害です。よく、現場では不穏と言ったりします が、「せん妄は第一に意識障害である」ということを念頭においてくだ さい。

・そして、意識障害に加えて、幻覚や妄想、興奮などの精神症状を 伴うことがあります。しかし、これらの激しい精神症状を伴わない「低 活動性せん妄」というものも存在します。

・症状は急激に発症し、日内変動が存在するという点で、一般的な 認知症と鑑別可能であることが多いです。

・もう一点強調したいのは、せん妄は身体状態の増悪や、投与した 薬物などによって出てくる精神症状であるという点です。せん妄が出 てくると、「精神科医にお任せ」という対応をされている先生もいらっし ゃるかもしれません。しかし、大元となる原因は身体疾患の増悪であ ったりするわけですから、評価は精神科医が行い、原因の除去、治 療は身体疾患の主治医が行うという役割分担、密な連携が必要で す。

終末期せん妄

■入院歴のあるせん妄を伴う高齢者の死亡率は退院後3 か月で22~76% (Inouye et al 2007)

■緩和ケア対象者では死が迫っている徴候として重要

せん妄と4週間以内の死亡率が相関 (Bruera et al 1992)

ホスピス入所者では短期死亡の指標 (Morita 1999)

せん妄のある患者への抗がん剤治療は無効であり緩和 ケアプログラムへの移行が必要(Caraseni 2000)

【終末期せん妄の特徴】

・終末期に出現するせん妄を「終末期せん妄」と呼びます。

・高率で出現し、予後予測指標の一つにもなっています

領域

3-3 ファシリテーター用

Palliative Prognostic Index

がん疾患の予後予測に使用される指標

せん妄は予後予測の因子の一つ

せん妄の分類

分類 症状

過活動型 興奮、幻覚、幻視、妄想、不 眠など

低活動型 無表情、無気力、傾眠など

(うつ病と誤診しやすい)

混合型 過活動型と低活動型の特徴が 混在

【せん妄の分類】

・せん妄には過活動型、低活動型、混合型があり、特に低活動型 はうつ病と誤診されやすい

せん妄の評価

1.診断の確定:認知症、うつ等との鑑別 2.原因/誘因の検索

特に薬剤 全身状態 不快な症状の有無の確認 3.可逆性の確認

治療目標の確認

【せん妄の評価】

・評価にあたって確認すべきことを4つ挙げました

せん妄を疑う

次の場合、せん妄を疑う 本人より

「ぼんやりする」 「集中できない」

家族より

「最近言っていることがおかしい」

「忘れっぽくなっている」

「昼はうとうとしており、夜は眠れていない」

看護師より

「昼夜逆転している」

「言っていることのつじつまが合わない」

【せん妄の評価:せん妄を疑う】

・本人より、「ボーっとする」という訴えがある場合。また、他覚的に「何 か最近ボーっとしてこられたな」という印象があるとき、せん妄を疑った ほうが良いかもしれません。

・ご家族より、最近言っていることがおかしいとか、物忘れがあるとか、

昼間ずっとうとうとしているといった訴えがあるときも、せん妄であること が多いです。

せん妄は日内変動がありますので、特に夜勤の看護師が異常を察 知することがあります。昼夜逆転、言っていることのつじつまが合わな いなど、看護記録をよく読むことがせん妄の早期発見につながること があります

領域

3-3 ファシリテーター用

せん妄の診断基準

1. 意識障害:ボーっとしていて、周囲の状況を良く分 かっていない

2. 認知機能・知覚の異常:見当識障害、幻覚、妄想など 3. 日内変動:1日の中で症状のむらがある。夜間に悪化 4. 原因となる薬物、あるいは身体要因が存在する 上記を全て満たす場合、せん妄の診断に該当する

米国精神医学会診断基準 DSM-IV

【せん妄の評価:せん妄の診断基準】

・アメリカ精神医学会が定義した、せん妄の診断基準を示します。

・まず第一に、意識障害が存在することです。ボーっとしており、周囲 の状況を解っておらず、注意力が散漫になります。

・二番目に、日付や場所などの見当識が障害される、幻覚や妄想 などの知覚異常などが存在します。

・三番目に、急激に発症し、一日の中にも症状のムラがあるという特 徴があります。よく、患者さんが夜になると不穏になるという現象を経 験されると思います。入院時にしっかりされていた方が、その後記憶 力が低下したり、行動のつじつまが合わなくなるという場合のほとんど は、認知症ではなく、せん妄に該当します。

・そして、原因となる身体疾患の増悪や、薬物などがあることです。

せん妄の評価(スクリーニング)

Mini Mental State Examination

(MMSE)

30点満点 23点以下で せん妄を疑う

【せん妄の評価(スクリーニング)】

・精神科医などの精神保健の専門家以外の方でも診断できるように いくつかの評価尺度があります。・これはMini Mental State Examination;

MMSEで、せん妄をターゲットに開発されたものではなく、認知機能障 害全般の評価尺度ですが、いままで述べたようなせん妄が疑われる ような状況の場合、可能であれば施行してみてください。

・30点満点で、23点以下の場合は、せん妄である可能性が高いで す。しかし、いままでしっかりしていた人にMMSEを行ことは、尊厳を損 なったりと侵襲的であることもありますので、患者さんの心情に配慮し つつ実施を検討下さい。

せん妄の鑑別診断

■うつ、精神病、マニー、認知症との鑑別が必要 特に低活動性せん妄はうつと誤診されやすい

■せん妄の特徴

急に発症

認知機能障害が高度である

日内変動があること

【せん妄の評価:せん妄の鑑別診断】

・せん妄と鑑別診断が必要な病態と鑑別のためのせん妄の特徴を 提示します。

認知症とせん妄の合併

■認知症とせん妄が合併した場合の特徴

認知症状がより重症である

治療に反応しない

回復率が低い

■認知症を合併したせん妄と非合併の比較

(Boettger 2009 2011)

①意識障害がより重症

認知機能(見当識、短期記憶、集中力)障害がより重症

【認知症とせん妄の合併】

・認知症との鑑別ですが、高齢者の場合には、認知症とせん妄はよ く合併します。

・ここでは合併した場合の特徴を示しています。

領域

3-3 ファシリテーター用

せん妄と認知症の違い

特徴 せん妄 認知症

発生 突然で,明確な開始点をも

緩徐で漸進的であり,開始点は不明瞭

症状の持続時間 数日から数週間だが,それ より長くなりうる 日内変

動あり 通常は永続的

原因 ほとんど常に,他の病態

(例,感染,脱水,ある種 の薬物の使用または中止)

通常は,慢性脳疾患(例,アルツハイ マー病,レーヴィ体認知症,脳血管性 認知症)

経過 通常は可逆的 緩徐進行性

夜間の影響 ほとんど常に悪化 しばしば悪化

注意力への影響 高度に障害される 認知症が重度になるまで影響なし 意識レベルへの影響 鈍麻から清明まで様々 認知症が重度になるまで影響なし

時間と場所の見当識 様々 障害される

言語使用 ゆっくり,しばしば支離滅裂で

不適切 ときに正しい単語の発見が困難

記憶 様々 喪失する,特に最近の出来事について

医療の必要性 直ちに必要 必要とするが,緊急性は低い メルクマニュアルより引用

・せん妄と認知症の鑑別診断の仕方です。

・特に症状発現の仕方、意識レベルへの影響を注目して下さい。

せん妄の危険因子

・高齢:70歳以上で約30%が入院中にせん妄を呈する

・認知症、せん妄の既往

・脳梗塞の既往

・薬剤:内服薬について、せん妄症状出現前後の変更を 含めて調べる

・アルコール依存

・臓器障害:呼吸器障害・循環器障害・腎機能障害・肝 機能障害

・視覚障害:白内障、眼鏡を忘れた

・聴覚障害:難聴、補聴器を忘れた

・日中の活動の減少

【せん妄の評価:せん妄の危険因子】

・せん妄の危険因子(せん妄の閾値を下げる要因)です

せん妄の危険因子

(せん妄の憎悪因子)

・環境の変化

・慣れない過度な刺激:暑すぎ、寒すぎ、濡れたベッド、

シーツのしわ

・全身状態の悪化:疲労感、治療不十分な症状、不安、抑 うつ、痛み、宿便、尿閉、感染、脱水、低酸素症

・原発性脳腫瘍 がんの脳転移

・腫瘍随伴性症候群

・生化学的異常:高カルシウム血症 低ナトリウム血症

・薬:オピオイド、抗ムスカリン薬、コルチコステロイド、がん 化学療法、インターフェロン

・離脱症状(退薬症状):アルコール ニコチン 抗精 神病薬

・チアミン欠乏

・臓器不全:脳、肝臓、腎臓、呼吸器、心臓

【せん妄の評価:せん妄の危険因子】

・多少重複しますがせん妄を悪化させる要因です

せん妄に関係する要因

【せん妄に関係する要因】

・要因を準備因子、直接因子、誘発因子として分類した表です。