第 6 章 樹脂封止された積層半導体チップの残留応力に起因する電気特性変動
6.4 模擬積層チップと4点曲げ負荷試験による評価手法の検討
6.4.4 ピエゾ効果マトリックスを用いた電流変化率の予測
図6.6に荷重5Nの場合について解析した応力値を示す.この図では図6.5(b)に示す テストチップの測定したトランジスタの位置にあるノード(節点)を通る節点間の位置 を横軸に,垂直応力とせん断応力成分を縦軸にプロットした.図6.6の横軸は,ダミー チップ角部を中心(原点0)に,ダミーチップ下部をマイナス方向,ダミーチップ外部 をプラス方向と定義した座標x をとり,±10m で表示している.これより,ダミーチ ップ角部に近づくほど応力の絶対値が高くなっているのがわかる.この応力値を用いて 電流変化率を予測した.そのために,ピエゾ効果マトリックスを用いた.次式にピエゾ 抵抗効果における応力(テンソル量)と結晶の誘電率の変化量(ベクトル量)の関係を 3次元のX,Y,Z直交座標系を用いて表したピエゾ効果マトリックスを示す.
(6.1)
ここで,Gij/G(i,j=X, Y, Z)は,i方向に電流を流した際にj方向で検出される誘電率の 変化成分,ii(i = X, Y, Z)は,各座標方向の垂直応力成分,ij(i,j= X, Y, Z)は各座標 面内のせん断応力成分である.式(6.1)中の 6×6 のピエゾ抵抗係数行列中のピエゾ抵抗 係数値Π11 ,Π12 ,Π44は,結晶の種類,半導体に添加される不純物の種類及びその濃 度,温度などの関数であるため,本来は実験により求める.本研究では,文献値[3]の 値を引用してpMOSを評価した.nMOSも参考値として表6.2に示す[3].テストチッ プのpMOSトランジスタは,Si単結晶座標系で(001)面に形成されており,その長手方 向は および 方向である.本論文では応力測定結果や有限要素法モデルを表す際に便宜 上,110をX軸に,110をY軸にとった座標系を用いる.式(6.1)のマトリックス は電流方向が X 軸になるように座標系を回転(テンソル変換)したマトリックスにな っている.よって,4 点曲げ応力による電流変化率の評価には,GXX/Gの値を用いた.
ダミーチップ角部周りの応力は,どの方向から近づいても無限大となるが,便宜的にダ ミーチップ下側に沿った応力を用いて評価した.GXX/G の計算には,せん断応力が 0 になっているため,XX,YY,ZZの応力値を使用した.また,実際の動作チップも,同 じ結晶座標系のWaferを用いている.
YX ZX YZ ZZ YY XX
YX ZX YZ ZZ YY XX
G G
G G
G G
G G
G G
G G
12 11 44 44 11 12
12
12 44 12
11 44 12
11
12 44 12
11 44
12 11
2 0 0 0 0
0
0 0
0 0
0
0 0
0 0
0
0 0
0
0 0
4 0 1 2
1 4 1 2
1
0 0
4 0 1 2
1 4 1 2
1
/ / / / / /
Stress(MPa)
-30.0 -25.0 -20.0 -15.0 -10.0 -5.0 0.0 5.0
-15 -10 -5 0 5 10 15
σxx σyy σzz τxy τyz τxz σXX
σZZ τXY τYZ τXZ σYY
Current changing rate near the edge of dummy chip x(m)
Fig. 6.6 Stress distributions around the edge of a dummy chip.
Table 6.2 Piezo constants.
pMOS nMOS
-6.6 102.2
1.1 -53.4
-138.1 13.6 unit:10-11m2/N
12
44
11
図6.7に計算で求めたテストチップの電流変化率を示す.横軸は,チップ角部を原点 とした位置を示しており,チップの下部は負の方向になる.荷重8Nのシングルテスト チップの結果と,ダミーチップを搭載したサンプルの荷重5Nの結果を示す.シングル チップに発生する電流変化率は,面内方向で応力値がほぼ均一のため,電流変化率もほ ぼ0.66%だった.図6.4に示す8Nでのシングルチップの実験結果は,電流変化率0.61% であり,ほぼ計算値と等しいことが分かった.文献から引用したpMOSのピエゾ抵抗 マトリックスで評価した場合,本研究に用いたテストチップとほぼ等しい結果になるこ とがわかった.しかし実験で大きく電流変動をした積層サンプルの電流変化率は,ダミ ーチップ角部の最大の応力値で評価しても0.64%で実験値と大きなかい離があった.
よって,この手法では,電気特性変動を予測できないことがわかった.そこで,さらに チップ角部の応力評価の検討を試みた.
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
-15 -10 -5 0
Loading force 8(N) Single chip Loading force 5(N) Stacked dummy chip
x
(m)Fig. 6.7 Current changing rate near the edge of dummy chip.