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ビーム Flux 制御と Flux 測定

第 3 章 SET パルス幅測定回路と加速器を用いた実験手法 24

3.3 加速器を用いた実験手法の検討

3.3.3 ビーム Flux 制御と Flux 測定

Flux制御

ビームの粒子束(ビームFlux)の制御に,ビームアッテネータとビームチョッパーが利 用可能である [23].他にも,ビームを磁場でフォーカス(もしくはデフォーカス)させる ことによって,サンプル上でのビームFluxを変える方法や,ビームライン上流部に設け られたビームスリットによってビームをけずる方法もあるが,ビーム Flux調整前後での 再現性が悪い上に,ビームスポットの形状も変わってしまう.ビームアッテネータは,イ オン源とサイクロトロンの間にメッシュを挿入することで,イオン源からサイクロトロン に供給するイオンを間引く機構となっている.ビームアッテネータでは,ビームFluxを 1/10, 1/100,..., 1010 の10段階で減らすことができ,ビームスポットの形状にも影響を 与えない.また,減衰量無限大のアッテネータも挿入可能で,これをビームシャッターと して利用できる.ビームチョッパーは,矩形波の RF電圧をビーム軸に垂直に印加して ビームを間引くパルス型チョッパーが利用可能であり,1%単位でビームFluxを制御可 能である.ビームチョッパーは,Flux調整前後での再現性がよく,ビームスポットの形 状にも影響を与えない.

Flux測定

大気中でのFlux測定には多くの方法があるが,真空チャンバー内での Flux測定とな ると,測定方法が限られる.半導体デバイスへのイオン照射試験では,単位時間当たり試 験対象素子にどれだけイオンが入射したか(Flux)を知ることが重要であるが,試験中の Fluxの絶対値を知ることは非常に困難である.そのため,一般的には試験対象素子にど れだけイオンが入射したかを間接的にモニタリングする方法が取られる.Fluxのモニタ リング手法としては,シンチレータ(CsI)とpinフォトダイオードによって照射領域外の Flux変動をモニタする方法がある.この方法は,照射領域のFlux測定と同時に照射領域 外のFluxも測定し,互いのFlux比を用いることによって,照射領域外のFlux変動から 照射領域でのFluxを推定する方法である [24].しかし,この手法はノイズが多く,さら に測定回路が煩雑という欠点がある.そのため,本論文における研究と同時に,東北大学 サイクロトロン·ラジオアイソトープセンター(CYRIC)において,金属がイオン入射の 際に放出する二次電子を利用した Segmented Secondary Emission Monitor(S-SEM)と 呼ばれるFluxモニタの開発を行い,半導体照射試験に供してきた [25].S-SEMは,ビー ム軸対して垂直に挿入された 箔 厚 がビーム入射によって放出する二次電子

中心に照射領域と同じ大きさの穴が設けられており,ビームライン上流に設けられた散乱 体で照射領域外に散乱されたビームを利用してFluxをモニタリングする.さらに,信号 部は4極に分割されておりビーム軸の位置をモニタすることも可能である.このS-SEM は,構造が非常に簡単でノイズもほとんどなく,リアルタイムFluxモニタとして非常に 有用である [25].

HE2チャンバーには,備え付けのFluxモニタがなく,試験前にファラデーカップと半 導体検出器(Si-SSD)によって測定したFlux を照射中のFluxとみなして照射時間から

Fluenceを割り出す.ここで,ファラデーカップは,伝導体で作製されたカップ内にイオ

ンをフルストップさせ,カップに流れる電流を用いてFluxを測定する方法である.ファ ラデーカップは,比較的大きなビーム Fluxの測定は出来るが,低 Flux(Krの場合で約 2×107 particles/cm2·s以下)の測定は出来ない.これは,電流測定で一般的に用いられ るカレントインテグレータ(ORTEC社製)の最小測定レンジが100 pAであることに由 来している4.それに対して,Si-SSDはイオン1個から測定できる.しかし,1秒間辺り

10,000個以上のイオン計測には,検出器の不感時間の増加や検出器の故障につながるた

め,適用できない.そこで,今回測定に利用するSi-SSDの検出面積は,25 mm2 である ため,Si-SSDでの最大測定可能Fluxは,4×104 particles/cm2·sである.

実験に使用したFlux制御法と,Flux測定法

スナップショットを用いた他の実験結果 [16]とFPGAのメモリ制限から,一度の照射 でFluence 2×108 particles/cm2 程度が上限であるとした.Flux 108 particles/cm2·s を2秒間照射することで効率よくSETパルスを得られると考えられるが,ビームのON, OFFにはアッテネータで2 〜 3秒かかり,さらにアッテネータ挿入中のサンプル上での ビーム形状とFluxの変動を観測しFluenceを評価することは不可能である.サンプル上 でのビーム形状とFluxの変動を無視するためには長時間(100秒程度)の照射が必要であ り,その場合Fluxは106 particles/cm2·s程度となるためファラデーカップでのFlux測 定ができずSi-SSDでも測定できない領域である.これらの理由から,SET発生確率の測 定では,Fluxを3.5×104 particles/cm2·s程度とし,1000秒程度の照射を行った.ビー ム量の調整にはパルス型チョッパーを用いた.SETパルス幅分布のLET 依存性測定で は,試験効率を優先し,Si-SSDによって3.5×104 particles/cm2·sのFluxを測定した 後に,101 のアッテネータを抜き,ビームをサンプルに照射することでビームFlux 10 倍程度(3.5×105 particles/cm2·s)の試験を行った.しかし,アッテネータの精度があま りよくないために,SETパルス幅分布のLET 依存性測定での照射Fluenceは参考値と

4例えば,KrFlux 107particles/cm2·sで照射した場合,約50 pAしか電流が流れない.

なる.

ここで,図3.6に照射試験に用いたSi-SSDの測定回路を示しておく.Si-SSDは有感層 100 µm厚,有感面積25 mm2で,Si-SSDからの信号は電荷型前置増幅器(PA, ORTEC

社製 142B)によって積分される.その後,エネルギー出力信号を増幅器(AMP, ORTEC

社製 572)によって波形整形し,ADCで波高値をデジタル変換しエネルギーとカウント 数の関数でプロットした.プロットデータを積分することによって測定時間中のFluence を求め,測定時間で除することによってFluxを得た.

SSD

 (100 µm) PA

AMP

HV E

ADC ATT

PC

+30 V

Ether

3.6 照射試験に用いたSi-SSDの測定回路図.