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ヒートポンプによる再生可能エネルギー量の算定方法

第 2 章 ヒートポンプが供給する再生可能エネルギー熱の定量評価手法の検討と大気熱利

2.2 ヒートポンプによる再生可能エネルギー量の算定方法

2.2.1 EUにおける算定方法

(1) 算定対象の再生可能エネルギー源

EU の「再生可能エネルギー推進指令」2-1)では、再生可能エネルギーが電気、熱、運輸に分類さ れた。その内、再生可能エネルギーの「熱」の対象は、「バイオマス、バイオガス、地熱、ヒートポ ンプによるエアロサーマル・ハイドロサーマル・ジオサーマル、太陽熱」と規定された。すなわち ヒートポンプの採熱源としは、大気熱、地中熱、河川や海等の水の熱が再生可能エネルギーの対象 となった。

(2) 再生可能エネルギー量の算定方法

2009年の「再生可能エネルギー推進指令」2-1)の発効により、ヒートポンプによる再生可能エネル ギー量は、EUの再生可能エネルギーの数値目標の対象となった。その後2013年に、加盟国共通の 算定方法となる「ヒートポンプからの再生可能エネルギーの計算に関するガイドライン」2-2)が欧州 委員会によって採択された。

このガイドラインにおいて、ヒートポンプにより供給される再生可能エネルギー量(ERES)は、

式(1)の通り定義された。ERESはヒートポンプにより供給される推定合計熱量(Qusable)から、Qusable

/ SPFを差し引いて表される。そして、Qusableは全負荷相当運転時間 (HHP)にヒートポンプの暖房

定格能力(Prated)を乗じて求めると定められた。

ここで、式(2)のSPF、 HHPはEU共通のデフォルト値が定められている(表2.2.1参照)。これに より加盟国は自国に導入されたヒートポンプの暖房定格能力(Prated)の総量を把握すれば、式(1)、 (2)より再生可能エネルギー量を算出することができる。

なお加盟国が独自の算定方法により精度向上を図ることも許容されている。また対象となるヒー トポンプの性能をSPF>1.15×1/ηと定めている(η:低位発熱量基準の電力受電端効率、45.5%)。

ERES = Qusable × (1-1 / SPF) ・・・(1)

Qusable = HHP × Prated ・・・(2)

ERES :ヒートポンプによって供給される再生可能エネルギー量 [kWh]

Qusable:ヒートポンプによって供給される推定合計熱量 [kWh]

SPF :推定平均季節性能係数 [―]

HHP :全負荷相当運転時間 [h]

Prated :ヒートポンプの暖房定格能力 [kW]

(すべて温熱製造時)

これらの算定式、デフォルト値を用いると簡便に再生可能エネルギー量を算定することができる。

例えば、EUの平均的気候の地域にて28 [kW]の冷暖兼用の空気熱源ヒートポンプにより温水製造し た場合、再生可能エネルギー量は式(3)、(4)のように11.372 [kWh]と求められる(参照)。

第2章 この算定方法により、すべての EU 加盟国は、エアロサーマル・ジオサーマル・ハイドロサーマ ルといった採熱源毎にヒートポンプにより供給される再生可能エネルギー量の数値目標を設定し、

毎年、導入実績の把握を行っている。

表2.2.1 EUのHHP、SPFのデフォルト値一覧2-2)

なお、表2.2.1中の採熱源の「排気」は、原文ではexhaust airと表記されている。欧州では排気ダ クト内に直膨の熱交換器(蒸発器)を設置し、排熱を回収するシステムが複数のメーカーより商品 化されている。「再生可能エネルギー推進指令」2-1)ではエアロサーマルを対象にしており、排熱は 対象としていないため、ガイドラインでは排気の内の排熱を除いたエアロサーマルのみを対象とし て算出するようHHPの係数を調整(低減)している。

(3) 算定方法の考え方

式(1)を式(5)に変形すると、Qusable / SPFは、温熱製造時のヒートポンプの投入エネルギー(電気 等)を示している。これをWinとすると、式(6)と表すことが出来る。そのため、具体的な建物にお いてより精度高く算出するには、ヒートポンプによって供給される熱量である温熱製造熱量と投入 エネルギー(電気等)の実測値を用い、これらの差分により算定することが可能であると考えられ る。

さらに式(7)に変形する。また温熱製造時のヒートポンプの基本的なエネルギーフローを式(8)に示

す。式(7)、(8)のQusable = QH、ERES=QLと捉えると。式(1)はヒートポンプの基本的なエネルギーフ

ローを意味していると解釈できる。その解釈をヒートポンプのエネルギーフローの概念図に示した ものを図2.2.1に示す。図中の Aerothermal、Hydrothermal、GiothermalがQL = ERESとなることを表 している。

2013 3 2009

HHP SPF HHP SPF HHP SPF [h] [-] [h] [-] [h] [-]

エアロサーマル 空気-空気 1,200 2.7 1,770 2.6 1,970 2.5 空気-水 1,170 2.7 1,640 2.6 1,710 2.5 空気-空気(冷暖兼用) 480 2.7 710 2.6 1,970 2.5 空気-水(冷暖兼用) 470 2.7 660 2.6 1,710 2.5

排気-空気 760 2.7 660 2.6 600 2.5

排気-水 760 2.7 660 2.6 600 2.5

ジオサーマル 地中-空気 1,340 3.2 2,070 3.2 2,470 3.2 地中-水 1,340 3.5 2,070 3.5 2,470 3.5 ハイドロサーマル 水-空気 1,340 3.2 2,070 3.2 2,470 3.2

水-水 1,340 3.5 2,070 3.5 2,470 3.5

温暖気候 平均的気候 寒冷気候

気候条件

熱源 採熱源-熱媒体

第2章

ERES = Qusable × (1-1 / SPF)

= Qusable - Qusable / SPF ・・・(5)

= Qusable - Win ・・・(6)

Qusable = ERES + Win ・・・(7)

QH = QL + Win ・・・(8)

Win:ヒートポンプの温熱製造時の投入エネルギー [kWh]

QH:ヒートポンプにより供給される熱量 [kWh]

QL:ヒートポンプの温熱製造時の採熱量 [kWh]

(すべて温熱製造時)

図2.2.1 ヒートポンプのエネルギーフローの概念図(温熱製造時)

Heating Hot

Water

E

RES

Heat Pump

Aerothermal Hydrothermal Geothermal

Q

usable

Q

usable

SPF

Building

E

RES

Q

usable

SPF

第2章 (4) EUにおける導入実績

EUにおける再生可能エネルギーの2014年の実績値2-3)は、177Mtoeとなり、最終エネルギー総量 に占める割合は15.3%となっている。その内訳は、電気41%、熱50%となり、EUに導入されてい る再エネ量の約半分を熱が占めている(図2.2.2参照)。なおEUの最終エネルギー総量の算出には、

電気は二次エネルギー換算値、燃料は低位発熱量基準による熱量を合算し、さらにヒートポンプに よる再エネルギー量を加えて、最終エネルギー総量としている(日本の「総合エネルギー統計(資 源エネルギー庁)」の最終エネルギー消費量は燃料には高位発熱量基準を用い、ヒートポンプによる 再エネルギー量は合算していない)。

2014 年の方式別の再エネ導入実績について、全再エネルギー導入量に占める方式別の比率を図 2.2.3示す。ヒートポンプは4%を占め、太陽光発電(3%)を上回る導入量となっている。

図2.2.2 EUの再エネ導入量の実績と目標(分野別)

72.5 103.8

87.6

108.8 16.6

29.5

0 50 100 150 200 250 300

実績(2014年) 目標(2020年)

導入量[Mtoe

41 43

50 45

9 12

0 20 40 60 80 100

実績(2014年) 目標(2020年)

導入比率[%

6 2

0.4

11 2

3 1

13 5

0.2 2 1

4 3

12

0 5 10 15

バイオマス バイオガス 地熱 大規模水力 小規模水力 太陽光 集光型太陽熱 陸上風力 洋上風力 波力・潮力・海洋エネ バイオマス バイオガス 地熱 ヒートポンプ 太陽熱 運輸(バイオ燃料)

S

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第2章

2.2.2 本研究における概算方法

(1) 概算対象の再生可能エネルギー源

日本では「エネルギー供給構造高度化法」において、再生可能エネルギー源は「非化石エネルギ ー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することのできるもの」と定義され、その対象は政 令により「太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱その他自然界に存する熱」と定められ た。本研究では上記の内、近年、普及の進む大気熱の温熱製造時の採熱量を対象に2013年度(パリ 協定の日本の中期目標基準年)水準の概算を行った。

なおEUの「再生可能エネルギー推進指令」2-1)では、温熱製造時、すなわちエアロサーマル等を ヒートポンプのヒートソースとして利用する場合のみを対象とし、ヒートシンクとして利用する冷 房利用時は対象外としている。日本の「エネルギー供給構造高度化法」では「非化石エネルギー源」

「永続的に利用」と定義され、ヒートシンク利用を対象と解釈する可能性がある。しかし、本研究 ではEUの定義を参考に、暖房時のヒートシンク利用のみを対象として算出した。

(2) 再生可能エネルギー量の概算

式(1)は、温熱製造時のヒートポンプの基本的なエネルギーフローを表しており、これはEUと日 本で不変な原理と考えられるため、本研究では式(1)に基づき概算を行う。概算にはQusableとSPFが 必要となる。その検討の考え方を以下に説明する。

(3) SPFの考え方

式(1)のSPFについては、EUでは表2.2.1の通り、デフォルト値が用意されている。しかし国内で は、暖房や給湯のSPFの算定基準が規定さていない熱源機種がある。例えば民生部門の非住宅建築、

産業部門の暖房用途、農業部門の加温用途に用いられる空気熱源ヒートポンプ(中央空調用熱源)

はIPLVc(冷却期間成績係数)が用いられている。このIPLVcは冷房の期間成績係数のみが示され、

暖房の期間成績係数は示されていない。そのため、これらの部門の暖房と加温については、加熱の 定格COPを用いて概算を行った。また民生部門の非住宅建築の業務用ヒートポンプ給湯機も期間エ ネルギー効率の基準が規定されていないため定格COPを用いた。民生部門の住宅の暖房用途のルー ムエアコンは暖房の期間エネルギー効率(HSPF)が、給湯用途の家庭用ヒートポンプ給湯機は給湯 のAPFが規定されていることより、住宅についてはこれらを用いて算定した。

またSPFの下限値をEUでは1.15×1/ηと定めているが、式中の1.15は低位発熱基準を高位発熱 基準に換算する係数と解釈し、日本ではηは高位発熱量基準であるため、COP>1/ηとした。そし て 「 省 エ ネ ル ギ ー 法 」 の 電 気 の 一 次 エ ネ ル ギ ー 換 算 係 数 (9,760kJ/kWh) よ り 、 η =0.369

(3,600kJ/9,760kJ)を用いた。

(4) Qusableの考え方

EU では、式(2)の HHPは表 2.2.1 の通りデフォルト値を用意しており、Pratedは統計値を用いてい る。国内には同様のデフォルト値や統計値が無いため、部門毎に、政府や学協会等の統計データや 熱負荷原単位等を用いてQusableを算定した(詳細は各部門の概算方法にて説明する)。

第2章