第 4 章 WBAN チャネルモデル構築
4.3 パスロス変動特性
人体の部位と環境による反射、遮蔽、回折などの影響によりパスロスの変動が起こる。それ をパラメータの一つとして導出することにした。
反射、遮蔽、回折などによる変動を一般的にシャドーイング特性と呼ぶ。これは直接アン テナ間が見通しでない通信路(NLOS; Non Line of Sight)環境において適用され、累積密 度分布で表現される。WBANではアンテナ間が必ずしもNLOS環境という状況でないことか ら、シャドーイング特性という表現はしなかった。しかし、体の凹凸によって様々な通信路 があり、反射や回折によって変動が起こるとことから、WBANで測定した結果の変動成分を シャドーイング特性と同じ表現である正規分布の累積密度分布で示すことを考えた。
4.3.1 パスロス変動成分の表現方法
4.2では実測値と実測値より導出した近似直線を示した。実測値は全て近似線上にあるもの ではなく、ほとんどの値が近似直線から離れている。このように分散した実測値の近似直線か らの差をパスロスの変動成分とした。
遮蔽、反射、回析などによる変動成分を一般的に正規分布の累積密度分布[20]で表現するこ とから、同様の方法で表現し評価することにした。
パスロス変動成分の累積密度分布式を下記に示す。
F:変動値(近似値と実測値の差)
μ:平均値 σ:標準偏差 erf:誤差関数
※誤差関数は下記のように定義される。
𝑁𝑜𝑟𝑚𝑎𝑙 𝐶𝐷𝐹 =1
2 1 + 𝑒𝑟𝑓𝐹 − 𝜇 𝜎 2
(式4-8)
(式4-7)
𝑒𝑟𝑓 𝑥 = 2
𝜋 𝑒−𝑡2
𝑥 0
𝑑𝑡
49
4.3.2 パスロス変動特性の評価
累積密度分布で示めされたパスロスの変動特性が、実測値とどの程度合っているか相関係数 を用いて評価することにした。
実測値と最小二乗法で求めた近似曲線の評価では、一般的に相関係数が用いられることから、
下記の式を用いて実測値と近似曲線との妥当性を確認することにした。
xi:実測値 yi:近似値 :xiの平均値 :yiの平均値
4.3.3 電波暗室におけるパスロス変動特性
図4.31から図4.34に電波暗室における各周波数帯域のパスロス変動特性の解析結果を示す。
横軸にパスロスの変動量、縦軸に累積率で表現したグラフで示す。併せて分散を示す標準偏 差σと実測値の曲線と近似曲線との相関を示す相関係数Cを示す。
-30 0 -20 -10 0 10 20 30
0.2 0.4 0.6 0.8 1
累積率
パスロス変動量 [dB]
図4.31 400MHz帯のパスロス変動特性(電波暗室)
𝐶 = 𝑛𝑖=1 𝑥𝑖− 𝑥 𝑖 𝑦𝑖− 𝑦 𝑖 𝑛𝑖=1 𝑥𝑖− 𝑥 𝑖 2 𝑛𝑖=1 𝑦𝑖 − 𝑦 𝑖 2
x y
σ=3.84 C=0.99929
(式4-9)
―:実測値
―:近似曲線
50
-30 0 -20 -10 0 10 20 30
0.2 0.4 0.6 0.8 1
-30 0 -20 -10 0 10 20 30
0.2 0.4 0.6 0.8 1
図4.33 900MHz帯のパスロス変動特性(電波暗室)
図4.32 600MHz帯のパスロス変動特性(電波暗室)
累積率累積率
パスロス変動量 [dB]
パスロス変動量 [dB]
σ=3.23 C=0.99967
σ=5.03 C=0.99860
―:実測値
―:近似曲線
―:実測値
―:近似曲線
51
4.3.4 電波暗室におけるパスロス変動特性の考察
電波暗室では変動を示す標準偏差σの値が2.89から5.03の値を示し、4つの周波数帯で大 きな差はなかった。実測値との相関を求めた結果では0.999以上の結果が得られ、全ての周波 数帯において非常に高い値を示した。このことによりWBANにおけるパスロスの変動成分を 累積密度分布で示すことは妥当であると考える。
-30 0 -20 -10 0 10 20 30
0.2 0.4 0.6 0.8 1
図4.34 2400MHz帯のパスロス変動特性(電波暗室)
累積率
パスロス変動量 [dB]
σ=2.89 C=0.99963
―:実測値
―:近似曲線
52
4.3.5 模擬病室におけるパスロス変動特性
図4.35から図4.38に模擬病室における各周波数帯域のパスロス変動特性の解析結果を示す。
横軸にパスロスの変動量、縦軸に累積率で表現したグラフで示す。併せて分散を示す標準偏 差σと実測値の曲線と近似曲線との相関を示す相関係数Cを示す。
-30 0 -20 -10 0 10 20 30
0.2 0.4 0.6 0.8 1
図4.35 400MHz帯のパスロス変動特性(模擬病室)
パスロス変動量 [dB]
累積率
σ=7.61 C=0.99336
―:実測値
―:近似曲線
53
-30 0 -20 -10 0 10 20 30
0.2 0.4 0.6 0.8 1
-30 0 -20 -10 0 10 20 30
0.2 0.4 0.6 0.8 1
図4.36 600MHz帯のパスロス変動特性(模擬病室)
累積率
パスロス変動量 [dB]
累積率
パスロス変動量 [dB]
図4.37 900MHz帯のパスロス変動特性(模擬病室)
σ=6.06 C=0.99812
σ=4.32 C=0.99765
―:実測値
―:近似曲線
―:実測値
―:近似曲線
54
4.3.6 模擬病室におけるパスロス変動特性の考察
模擬病室では変動を示す標準偏差σの値が電波暗室での結果よりも大きくなり、400MHz帯
では7.61、600MHzでは6.06となった。900MHz帯と2400MHz帯では電波暗室とほぼ同等の
結果を得られた。模擬病室におけるパスロスの変動は周波数が低いほど変動が大きかったこと を確認した。
実測値との相関を求めた結果では0.999以上の結果が得られ、電波暗室の評価と同様に全て の帯域において非常に高い値を示した。このことによりWBANにおけるパスの変動成分を累 積密度分布で示すことは妥当であると考える。
-30 0 -20 -10 0 10 20 30
0.2 0.4 0.6 0.8 1
累積率
パスロス変動量 [dB]
図4.38 2400MHz帯のパスロス変動特性(模擬病室)
σ=2.58 C=0.99717
―:実測値
―:近似曲線
55