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長距離トラックの走行データ解析

ドキュメント内 人の移動に関わる情報科学的支援の研究 (ページ 95-98)

第 7 章 膝スクリューホームムーブメント計測システムの開発 48

11.4 ソフトウェア構成

12.1.1 長距離トラックの走行データ解析

旅行時間と不安全割合の関係を明らかにするために,T 輸送会社の大型トラックに

ASSIST車載システムを搭載し,運転行動の記録および解析を行った.この車両は,主に福

岡と中部地方を行き来しており,福岡を夜に出発し,翌日の早朝に中部地方に到着,さらに,

当日の深夜に出発して3日目の朝に福岡へ帰還する乗務を1乗務としている(図12.2).ま

た,ASSISTを搭載した車両は,主に高速道路を走行しており,90km/h制限のリミッター が作動している.

図12.2 T運送会社の1乗務

(1) 解析概要

ASSISTによって記録した2008年7月24日から2009年10月04日までの運転行動デー タについて,集計および解析を行った(全83乗務分).また,1乗務中の60km/h以下の速 度で走行した場所を一般道路,60km/hを超えた速度で走行した場所を高速道路と見なし,

一般道路と高速道路に分けて集計および解析を行った.解析内容は,1乗務についての旅行 時間,平均速度,不安全継続時間(CPI>1の最長継続時間),最大CPI(CPIの最大値)およ び不安全割合である.

(2) 1乗務集計(高速道路)

各解析項目間の相関係数を表12.1に示す.高速道路走行での運転行動データ集計および 解析結果においては,旅行速度と平均速度との間に強い正の相関関係が認められた(r=0.96). また,不安全割合と不安全継続時間についても正の相関関係が見られた(r=0.62).このこ とから,高速道路走行時では,平均速度が高ければ旅行速度も高くなる(旅行速度が高けれ ば平均速度も高くなる),不安全割合が高ければ不安全継続時間も長くなる関係があるとい える.不安全割合と旅行速度,平均速度について相関関係は認められなかった.最大CPI と旅行速度,平均速度の間には相関関係は認められなかった.

表12.1 1乗務における相関係数

不安全割合 不安全継続時間 最大CPI 平均速度 旅行速度

不安全割合 1.00        

不安全継続時間 0.62 1.00      

最大CPI -0.06 0.00 1.00    

平均速度 -0.04 -0.08 -0.02 1.00  

旅行速度 -0.10 -0.18 0.04 0.96 1.00

(3) 1乗務集計(一般道路)

一般道路での旅行速度,平均速度および不安全割合との間の相関係数を表12.2に示す.

一般道路走行の運転行動データにおいても,旅行速度と平均速度との間に強い正の相関関係 が認められた(r=0.96).また,不安全割合と不安全継続時間についても正の相関関係が見 られたが,高速道路走行の場合よりも弱い相関関係となった(r=0.49).その他の項目同士 の関係については,高速道路走行の場合と同様の結果となった.

表12.2 1乗務(一般道路)における各相関係数

不安全割合 不安全継続時間 最大CPI 平均速度 旅行速度 不安全割合 1.00

不安全継続時間 0.49 1.00

最大CPI 0.20 0.12 1.00

平均速度 0.38 0.06 -0.07 1.00

旅行速度 0.29 -0.01 -0.09 0.96 1.00

(4) 一般道路と高速道路での走行の比較

一般道路,高速道路での不安全割合の平均はそれぞれ17.0%,21.8%であり,高速道路で の不安全割合の方が4.8ポイント高い結果となった.高速道路では走行速度が高くなるため に,必要な進行方向空間距離は一般道路に比べ長くなる.人間は距離を正確に把握すること が困難であり,長距離になれば更にその傾向は顕著になることから高速道路では進行方向空 間距離が一般道路に比べて短いと考えられる.

(5) 速度ごとの不安全割合

速度ごとの不安全割合を5km/h区分で表した(図12.3).リミッターがあるにもかかわら

ず90km/h以上の速度での走行が発生しているのは下り坂による加速によるものであった.

速度が高くなるに従って,速度と不安全割合との間に強い相関関係が認められた(r=0.80, p<0.01).不安全割合が最も高くなるのは,70km/hから75km/hの間である.65km/hか

ら75km/hは高速道路走行中では,やや低めの速度であることから,車両密度が高い状態で

走行している状態であると考えられる.80km/hから85km/hで大きく減少しているのは,

トラックにはリミッターがあり,前方車両を追従することが不可能な状態であり,そのため に,進行方向空間距離が大きくなるからであると推測される.

図12.3 速度ごとの不安全割合

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