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スポーツ概論

ドキュメント内 高等学校保健体育解説 (ページ 139-144)

第3章 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い

第1節 スポーツ概論

1 目 標

知識は,意欲,思考力・判断力,運動の技能などと相互に関連しながら,身に付いていくもので あり,動きの獲得の過程を通して一層知識の大切さを実感できるような指導が求められていること から,運動の実践と理論との一体化を図ることは極めて重要である。そのため,「スポーツ概論」

では,生涯を通してスポーツの振興発展にかかわることができる資質や能力の育成を図るため,ス ポーツを実践するだけにとどまらず,「みる」,「支える」という視点も含めて,広く文化,経済,

教育などの側面からとらえ,スポーツ科学の研究成果を踏まえた教養を身に付けることを目指して いる。

スポーツについての総合的な理解を通して,その知識を運動の主体的,合理的,計画的な実 践に活用できるようにするとともに,生涯を通してスポーツの振興発展にかかわることができ る資質や能力を育てる。

「スポーツについての総合的な理解」とは,スポーツの始まりや変遷,ルールや技術,用具の 進歩,特性や魅力,スポーツをする際に求められる合理的な技術などへの専門的知識や技術獲得 のための効果的な学習の仕方,ライフステージや個人のライフスタイルに応じたスポーツライフ の計画や実践の仕方,スポーツ指導者として求められる指導理論や健康や安全に関する事項,ス ポーツ大会やスポーツイベントの企画・運営の仕方,スポーツ施設やスポーツ団体の管理運営な どについて幅広い知見等を学ぶことを通して,様々な角度からスポーツに関する総合的な教養を 身に付けることである。

「その知識を運動の主体的,合理的,計画的な実践に活用できるようにする」とは,主体的,

合理的,計画的な実践が求められる各スポーツ場面において,習得した知識を適切に活用できる ようにすることである。

「生涯を通してスポーツの振興発展にかかわることができる資質や能力を育てる」とは,卒業 後においても,「する,みる,支える」などといった視点から,自己に適したスポーツとのかか わり方で継続的にかかわることのできる資質や能力を育てることである。

2 内 容

(1) スポーツの歴史・文化的特性と現代的特徴 (2) スポーツの効果的な学習の仕方

(3) 豊かなスポーツライフの設計 (4) スポーツの指導法と安全 (5) スポーツの運営及び管理

「スポーツ概論」の「内容」は,スポーツの科学的知見等をスポーツの主体的,合理的,計画 的な実践に活用できるようにすること及び生涯を通してスポーツの振興発展にかかわることので きる資質や能力を育成することとした科目の目標を達成するために,スポーツの歴史・文化的特 性と現代的特徴,スポーツの効果的な学習の仕方,豊かなスポーツライフの設計,スポーツの指 導法と安全,スポーツの運営及び管理の5項目で構成している。

(1) スポーツの歴史・文化的特性と現代的特徴

スポーツの振興発展にかかわるためには,文化的,社会的,経済的な背景などの幅広い視点

からスポーツを理解できるようにする必要がある。このため,本内容は,スポーツの歴史的発 展と変化,スポーツの技術,戦術,ルールの変化,オリンピックムーブメントとドーピング,

スポーツの経済的波及効果とスポーツ産業などで構成している。

ア スポーツは,人類の歴史とともに始まり,その理念が時代に応じて変化してきているこ と。また,我が国から世界に普及し,発展しているスポーツがあること。

イ スポーツの技術や戦術,ルールは,用具の改良やメディアの発達に伴い変わり続けてい ること。

ウ 現代のスポーツは,国際親善や世界平和に大きな役割を果たしており,その代表的なも のにオリンピックムーブメントがあること。また,ドーピングは,フェアプレイの精神に 反するなど,能力の限界に挑戦するスポーツの文化的価値を失わせること。

エ 現代のスポーツは,経済的な波及効果があり,スポーツ産業が経済の中で大きな影響を 及ぼしていること。

なお,指導に際しては,科目「体育」の「体育理論」で解説した内容に加え,アでは,選択 するスポーツ種目の成り立ち,その時代背景や普及過程,オリンピック競技大会の歴史,日本 発祥のスポーツなどを,イでは,選択するスポーツ種目の初期のルールやその後の変遷,ルー ル変更に影響を与えた要因,スポーツの商品化が及ぼす影響などを,ウでは,オリンピック憲 章の考え方に基づくIOCの役割,ドーピングと医薬品の服用,トップアスリートに求められ る倫理観などを,エでは,スポーツに関連した様々な職業のうち,生徒に関連する具体例など を,生徒の興味・関心の程度等に応じて適宜取り入れるようにする。

(2) スポーツの効果的な学習の仕方

スポーツを効果的に学習していくためには,技能の上達過程や練習の仕方,健康・安全の確 保などについて理解できるようにする必要がある。

このため,本内容は,スポーツにおける技術と技能,スポーツの技能の上達過程,スポーツ の技能と体力の関係,スポーツの活動時の健康・安全の確保の仕方などで構成している。

ア スポーツの技術は,学習を通して技能として発揮されるようになること。また,技術の 種類に応じた学習の仕方があること。

イ スポーツの技能の上達過程にはいくつかの段階があり,その学習の段階に応じた練習方 法や運動観察の方法,課題の設定方法などがあること。

ウ スポーツの技能と体力は,相互に関連していること。また,期待する成果に応じた技能 や体力の高め方があること。

エ スポーツを行う際は,気象条件の変化など様々な危険を予見し,回避することが求めら れること。

なお,指導に際しては,科目「体育」の「体育理論」で解説した内容に加え,アでは,選択 するスポーツの特性や魅力に応じた技術構造などを,イでは,プラトーやスランプの状態にお ける効果的な練習の仕方,試合時の緊張によるあがりとそのメカニズムなどを,ウでは,選択 するスポーツ種目の技能を安定して発揮するために必要な体力の構成要素を,エでは,選択す るスポーツ種目や青年期に多く見られる障害に対する予防法や対応法,食事のとり方,事故発 生の事例や危険予知トレーニングなどを生徒の興味・関心の程度等に応じて適宜取り入れるよ うにする。

(3) 豊かなスポーツライフの設計

豊かなスポーツライフを設計していくためには,各ライフステージ(生涯の各段階)やライフ スタイル(生き方や暮らし方)に応じたスポーツの設計の仕方を理解できるようにする必要があ る。

このため,本内容は,各ライフステージにおけるスポーツの多様な楽しみ方,ライフスタイ

ルに応じたスポーツとのかかわり方,スポーツ振興のための施策と諸条件,スポーツと環境な どで構成している。

ア スポーツは,各ライフステージにおける身体的,心理的,社会的特徴に応じた楽しみ 方があること。また,その楽しみ方は,個人のスポーツに対する欲求などによっても 変化すること。

イ 生涯にわたってスポーツを継続するためには,自己に適したスポーツの機会をもつこと,

施設などを活用して活動の場をもつこと,ライフスタイルに応じたスポーツとのかかわり 方を見付けることなどが必要であること。

ウ スポーツの振興は,様々な施策や組織,人々の支援や参画によって支えられていること。

エ スポーツを行う際は,スポーツが環境にもたらす影響を考慮し,持続可能な社会の実現 に寄与する責任ある行動が求められること。

なお,指導に際しては,科目「体育」の「体育理論」で解説した内容に加え,アでは,選択 するスポーツ種目の各ライフステージの段階ごとの活動の実際や将来設計などを,イでは,ラ イフスタイルの変化に伴うスポーツとのかかわり方や,現在の自己のスポーツ実践に対する評 価の仕方と活動計画の立て方などを,ウでは,地域のスポーツ振興施策,総合型地域スポーツ クラブ,地域のスポーツボランティアの状況や課題,NPOを立ち上げる際の申請条件などを,

エでは,選択するスポーツ種目の環境への影響や対策の実際などを生徒の興味・関心の程度等 に応じて適宜取り入れるようにする。

(4) スポーツの指導法と安全

スポーツを指導するためには,スポーツの指導法や参加者の健康・安全の確保の仕方を理解 できるようにする必要がある。

このため,本内容は,スポーツの一般的な指導法,スポーツへの参加動機に応じた指導法,

参加者の健康の確保の仕方,参加者の安全の管理の仕方などで構成している。

ア 一般的なスポーツの指導法には,指導の目的に応じたグループ編成の仕方や適切な練習 法の選択などがあること。

イ スポーツの参加動機は,発達の段階やライフステージによって多様であること。参加動 機に応じて指導法を工夫することが求められること。

ウ 参加者の健康の確保の仕方には,参加者の健康状態や体力の状況に応じた適切な指導が 求められること。また,スポーツ外傷や障害,疾病等の予防及び発生時における適切な対 応が求められること。

エ 参加者の安全の確保の仕方には,事故の原因や発生しやすい状況を理解し,事前に危険 を予見し回避行動をとることで防止しやすくなること。また,安全の確保は,事故発生前,

事故発生直後,事故発生後に分けて対策を立てておく必要があること。

なお,指導に際しては,生徒の興味・関心の程度等に応じて,以下に示す具体的な指導内容 の例示を参考として,指導の充実を図るようにする。

<スポーツの一般的な指導法の例示>

スポーツを指導する際には,スポーツの特性や魅力,参加者の関心や意欲,体力・技 能の程度等を踏まえて,適切な指導法を選択する必要があること。指導法には,分習法 や全習法,一斉指導やグループ別指導,個別指導などがあること。また,発達の段階に ある児童生徒に対しては,競技者に適用されている指導法をそのまま適用するのではな く,児童生徒期に適した様々な動きの要素を取り入れたり,体を動かす楽しさを味わわ せたりするなど発達の段階に適したスポーツの欲求を大切にした指導法を用いる必要が あること。

ドキュメント内 高等学校保健体育解説 (ページ 139-144)

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