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スポーツⅤ(野外活動)

ドキュメント内 高等学校保健体育解説 (ページ 153-156)

第3章 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い

第6節 スポーツⅤ(野外活動)

1 目 標

「スポーツⅤ」で取り上げる野外活動は,主として校外学習として自然環境の中で行われる体験 的活動である。野外活動は,日常生活の場から離れた大自然の中で,環境に配慮した組織的な集団

活動などを通して,自然の障害や困難に対して相互に協力して対処しながら,冒険的な活動をした り,競技を行ったりする特性がある。

自然とのかかわりの深い野外の運動の専門的な理解と高度な技能の習得を目指した主体的,

合理的,計画的な実践を通して,自己の課題を解決できるようにするとともに,生涯を通して スポーツの振興発展にかかわることができる資質や能力を育てる。

「野外の活動の専門的な理解」とは,選択する野外の活動についての特性,成り立ちや競技の 変遷などの歴史や現在のルール,技術の構造及び技能の高め方,初心者への指導法,活動プログ ラムの企画・運営の仕方,競技の審判法などについて科学的,社会的,文化的な側面から教養を 身に付けることである。

「高度な技能の習得を目指し」とは,野外での活動の楽しさや喜びを深く味わうとともに,「ス ポーツⅤ」の中から自己の能力・適性等に応じて活動を選び,個人や集団の能力を最大限に発揮 し自然体験活動や競技に必要な専門的な技能の習得を目指すことである。

「自己の課題を解決できるようにする」とは,個人や集団に適した目標や課題を適切に設定し て練習に取り組み,その課題を解決できるようにすることである。

「生涯を通してスポーツの振興発展にかかわることができる資質や能力を育てる」とは,卒業 後においても,「する,みる,支える」といった視点で自己に適した「スポーツⅤ」とのかかわ りを継続することである。

そのため,指導に際しては,専門的な知識及び目的に応じた技能,これらを活用して課題を解 決するための思考力・判断力及び主体的に学習に取り組む態度をバランスよくはぐくむことが重 要である。

2 内 容

(1) 自然体験型野外活動の理解と実践 (2) 競技型野外活動の理解と実践

本科目の内容は,「(1)自然体験型野外活動の理解と実践」,「(2)競技型野外活動の理解と実践」

で構成している。また,(1)については,キャンプ,登山,遠泳等の水辺活動の中から,(2)につ いては,スキー,スケートの中から適宜取り上げることとしている。自然とのかかわりの深い野 外の運動には,各種の活動が考えられるが,これらを取り扱うこととしたのは,いずれも自然環 境の中で相互に協力しながら組織的に活動するという特性をもち,自然の中での行動の仕方,自 然に親しむ資質や能力の育成に効果があり,「体育に関する学科」を置く学校で実施しやすいか らである。

以下には,ここでいう「理解と実践」に求められる各型の資質や能力を,①各活動及びそれら の技能,②態度,③知識,思考・判断に整理して示すこととする。

① 各型の活動及びそれらの技能については,それぞれ,次の点に配慮して取り扱うこととする。

ア 自然体験型野外活動の理解と実践

自然体験型野外活動では,キャンプ,登山,遠泳等の水辺活動を取り上げ,それぞれの特 性に応じて活動することができるようにする。

キャンプでは,自然環境の中での共同生活や様々な自然に親しむ活動を通して,好ましい 人間関係や自然を愛する心をはぐくむといった特性を踏まえ,実施計画の作成,テントの設 営や生活の仕方,野外料理,キャンプクラフト,キャンプファイヤー,自然観察,野外レク リエーション,実施後の反省と評価などを取り扱うようにする。実施計画に際しては,キャ ンプ地の選定,プログラムの作成,食糧や装備の計画と準備,組織の編成と役割分担,健康

チェック,自然環境の変化への対応の仕方などを取り入れ,実践することができるようにす る。

登山では,様々な高さの山々を個人やグループの技量に応じて登山コースを計画し,挑戦 する活動を通して,自然に親しむとともに,その過程で多くの努力を必要とするので,身体 的,精神的,社会的な効果が期待できるといった特性を踏まえ,山の気象や地形を把握する ための内容,登山用具や装備などの内容,能力に応じた山やコースの実施計画や許可,食糧 や装備の計画と準備,組織の編成と役割分担,健康チェック,自然環境の変化への対応の仕 方などを取り入れ,実践することができるようにする。

遠泳等の水辺活動では,長い距離を集団で泳ぐ活動や河川,湖沼,海などの自然を利用し て行うマリンスポーツなどを通して,主に水辺の自然環境に親しむといった特性を踏まえ,

遠泳では,各種泳法,水泳の場所やコース設定の仕方,長距離の遊泳,心肺蘇生法,救急法 などを取り扱うようにする。水辺活動は,河川や湖沼で行うカヌー,ボートなど,海浜で行 うスキューバーダイビング,サーフィン,ウィンドサーフィンなどが挙げられるが,キャン プや遠泳のレクリエーションとして取り扱うこともできる。水辺活動の実施に当たっては,

実施する場所の地理的条件や天候及び施設・設備等に関する基本的な調査を含め,学習計画 の段階で十分な安全に関する調査を行うようにする。また,変わりやすい自然条件の中で,

臨機応変な行動がとれるよう校内での事前学習等に配慮する。

なお,カヌー及びボートについては,実施の条件が整っている場合には,「スポーツⅠ」

の特性に応じた指導についても考慮することができる。

指導に際しては,組織的,規則的な集団活動を一定期間行うことから,実習の事前活動で,

集団の交流を図り好ましい人間関係を高めたり,グループの課題解決力を高めたりすること をねらいとした活動を取り入れたり,実習の事後活動では,活動後の振り返りなどを適宜取 り入れるようにするなど,自然体験型野外活動の特性を十分に生かせるよう系統的,計画的 に活動ができるよう配慮する。

イ 競技型野外活動の理解と実践

競技型野外活動では,スキー,スケートを取り上げ,それぞれの特性に応じて技能を高め たり,競争したりすることができるようにする。

スキーでは,スキー場などで目的に応じた用具を用いて雪の上を滑走,滑降することを通 して,冬季の雪上活動に親しむといった特性を踏まえ,設定されたコースで雪の平地や登り 降りを滑走しタイムを競うクロスカントリースキー,設定されたポールを通過し雪の斜面を 滑り降りるアルペンスキーなどで,滑降,ターン,停止などの技能を用いて,斜面や雪の状 態に適応して滑ったり,タイムを競ったりすることができるようにする。カービングスキー などを取り扱う場合は,滑走特性に応じて指導内容を工夫するようにする。また,スノーボ ードについては,実施の条件が整っている場合には「スポーツⅤ」の特性に応じた指導につ いても考慮することができる。

スケートでは,スケートリンクで,用具を用いて氷上を滑走することを通して冬季の氷上 活動に親しむといった特性を踏まえ,一定の距離でタイムを競うスピードスケート及び様々 な滑走技術を競うフィギュアスケートなどを,基本姿勢,スケーティング,ステップ,停止 などの技能を用いて,タイムや技能を競うことができるようにする。

なお,競技型野外活動については,実施の条件が整っている場合には,「スポーツⅠ」の 特性に応じた指導についても考慮することができる。

② 態度については,次の点に配慮して取り扱うこととする。

野外の運動の学習に主体的に取り組むとともに,勝敗などを冷静に受け止め,競技のルー ルや審判の判定を遵守しようとすること,互いの技術の上達に向けて助け合い高め合おうと すること,グループの役割を積極的に引き受け自己の責任を果たそうとすること,自分の意 見や仲間の意見を調整して合意形成に貢献しようとすることなどができるようにする。また,

活動の種類や天候の変化に応じて計画を調整したり危険を予見して回避行動をとったりする

などによって,健康・安全を確保し事故防止を図ることができるようにする。

なお,指導に際しては,野外の運動は,学校を離れ,天候の変わりやすい自然環境下で活 動が行われることから,活動によって予想される事故の状況,健康・安全に影響を及ぼす生 物や植物についての情報と対策,活動地域特有の環境を十分把握し,健康・安全が確保され るよう留意する。

③ 知識,思考・判断については,それぞれ,次の点に配慮して取り扱うこととする。

知識では,選択する活動の名称や用語,技術とその高め方,体力の高め方,課題解決の方 法,活動プログラムの企画・運営の仕方,初歩的な指導法,動作分析の仕方などを理解する ことができるようにする。

また,思考・判断では,自己の課題を解決するとともに生涯を通して「スポーツⅤ」の振 興発展にかかわることができるよう,これらの知識を活用して,課題の設定や情報の分析及 び適切な選択,活動の評価,目標の修正や練習計画の組み立てなどができるようにする。

3 内容の取扱い

(1) 内容の(1)又は(2)のいずれかを選択して扱うことができる。

(2) 内容の(1)については,キャンプ,登山,遠泳等の水辺活動の中から,(2)については,ス キー,スケートの中から適宜取り上げるものとし,その他の運動についても,機械等の動力 を用いない活動を中心に,地域や学校の実態に応じて扱うことができる。

(3) 特定の期間に集中的に校外で授業を行う場合は,安全対策に十分配慮するものとする。

「スポーツⅤ」に示す事項については,内容の(1)又は(2)のいずれかを,生徒が能力・適性等 に応じて一つ以上を選択して履修できるようにすることとしている。

また,地域や学校の実態に応じて,その他の運動についても,主に,自然環境に配慮したサイ クリング,ハイキング等の機械等の動力を用いない活動を中心に履修させることができるとして いるが,原則として,その他の運動は,示された各運動に加えて履修させることとし,地域や学 校の特別の事情がある場合には,替えて履修させることもできることとする。また,競技型野外 活動であっても,生徒の技能や経験の程度に応じて,自然体験型野外活動として取り扱うことも できようにする。

なお,「野外活動」は,校外学習を中心として特定の期間に集中的に授業を行う場合が多いと 考えられるので,事前の準備や事後の反省,評価等を含めて計画することが必要である。

ドキュメント内 高等学校保健体育解説 (ページ 153-156)

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