3.5 前駆体供給量の影響
3.5.2 結果および考察
3.5.2.2 コーティング膜の組成
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 Flow rate of acetylene (L/min)
D e po s it io n ra te ( µm /m in )
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6
F ilm t hi ck n es s ( µm )
Fig. 3-5-4 Relation between flow rate of acetylene and deposition rate.
1000 2000
3000
Wavenumber (cm
-1)
A b so rb a nc e ( a .u .)
(b) 0.15L/min (a) 0.05L/min (c) 0.3L/min (d) 0.5L/min
Fig. 3-5-5 FTIR spectra of coatings obtained with different flow rate of acetylene.
Figure 3-5-6に異なるアセチレン流量で得られたラマンスペクトルを示す。すべての条件におい
て、sp2炭素同士の結合における伸縮振動に起因するGバンドが 1600 cm-1付近にわずかに見られ た。また、ベースライン強度はアセチレン流量によって大きく異なっている。3.3.3.2 で述べたよ
うに、Gバンドピーク位置におけるベースライン強度N、ベースラインからのGバンドピーク高さS
とし、N/(N+S)と水素含有量に相関がある [13]。そこで、本実験で得られたラマンスペクトルから
N/(N+S)値を求めた。Figure 3-5-7にN/(N+S)値とアセチレン添加量の関係を示す。これを見ると、
アセチレン流量0.05 L/minの条件においてN/(N+S)値が特異的に大きいが、全体的にはアセチレン 添加量の増加に伴いN/(N+S)が大きくなる傾向が確認できる。この結果は、コーティング膜中の 炭素と結合した水素量がアセチレン流量によって変化することを示唆している。つまりアセチレ ン流量が多いほど得られるコーティング膜中の炭素と結合した水素が多いとが推測される。
0 200 400 600 800 1000 1200 1400
1000 1200
1400 1600
1800 2000
Raman shift (cm
-1)
In te n si ty
(a)0.05L/min
(b)0.15L/min (c)0.3L/min (d)0.5L/min
Fig. 3-5-6 Raman spectra of coatings obtained with different flow rate of acetylene.
0.8 0.85 0.9 0.95 1
0 0.2 0.4 0.6
Flow rate of C
2H
2(L/min)
N / ( N + S )
Filamentary Homogeneous
Fig. 3-5-7 Relation between flow rate of acetylene and N/(N+S) calculated from Raman spectra.
Figure 3-5-8に異なるアセチレン流量で得られたコーティング膜のXPSスペクトルを示す。アセ チレン流量に関わらず、すべてのコーティング膜において炭素と酸素のみが確認された。XPSで は水素を検出することが出来ないことを考慮すると、炭素、水素、酸素から成るというFTIRスペ クトルからの考察と一致すると言える。XPSにより求めた炭素および酸素の元素組成とアセチレ ン流量の関係をFig. 3-5-9に示す。酸素含有率は10 atm%前後の値を示しているが、アセチレン流 量の増加に伴い酸素含有量も微増する傾向が見られる。酸素の発生源については明らかではない が、本実験では溶解アセチレンを用いたため、溶媒であるアセトンからの酸素であると考えられ る。FTIR、ラマン分析、XPSの結果からコーティング膜は主に炭素と水素で構成されていること が明らかであり、このことから本実験で得られたコーティング膜はすべてa-C:H膜であると言える。
0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000
0 200
400 600
800 1000
Binding energy (eV)
In te ns it y ( a .u .)
(a)0.05L/min (b)0.15L/min (c)0.3L/min (d)0.5L/min
C 1s O 1s
Fig. 3-5-8 XPS spectra of coatings obtained with different flow rate of acetylene.
0 5 10 15
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 Flow rate of acetylene (L/min)
C o nc e nt ra ti o n o f O ( a tm % )
80 85 90 95 100
C o nc e nt ra ti o n o f C ( a tm % )
O 1s C 1s
Fig. 3-5-9 Variation of atomic concentration with flow rate of acetylene.
コーティング膜の機械特性を把握することは、実用化を検討するうえで重要である。機械特性 として最も重要な項目の一つとして表面硬さが挙げられる。Figure 3-5-10 にアセチレン流量と表 面硬さの関係を示す。表面硬さはアセチレン流量 0.15 L/minの条件で最大となり、その硬さは約
1.6 GPaであった。さらにアセチレン流量を増やすと表面硬さは徐々に低下し、アセチレン流量0.5
L/minの条件では約1.1 GPaとなった。なお、表面硬さにおいてもアセチレン流量0.05 L/minの条件
は全体の傾向から外れており、最も低い 1 GPaという表面硬さであった。表面硬さとアセチレン 流量の関係も前述の表面粗さやラマンスペクトルのベースライン強度と同様の傾向を示している。
これらについて、表面硬さと表面粗さおよびラマンベースライン強度の関係として、Fig. 3-5-11 とFig. 3-5-12 にそれぞれ示す。これらの関係を見ると、表面粗さおよびラマンスペクトルベース ライン強度と表面硬さの間に相関があることが分かる。表面粗さが大きいコーティング膜は大き な粒子で構成されているため、密度が低いと考えられ、そのため表面粗さが大きいコーティング 膜は表面硬さが低くなると考えられる。また、一般にアモルファスカーボンは水素含有量が多い ほど硬さが小さくなることが知られており、本実験のコーティング膜についても水素量が表面硬 さに影響していると考えられる。
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
0.05 0.15 0.3 0.5
S u rf ac e h ar dn e ss ( G P a)
Flow rate of acetylene (L/min)
Fig. 3-5-10 Comparison of surface hardness in different flow rate of acetylene.
0 0.5 1 1.5 2
0 0.05 0.1 0.15
Surface roughness R a (µm)
S ur fa ce h a rd n es s (G P a )
Fig. 3-5-11 Relation between surface roughness and hardness.
0 0.5 1 1.5 2
0 500 1000 1500
Raman intensity of baseline
S ur fa ce h a rd n es s (G P a )
Fig. 3-5-12 Relation between Raman intensity of base line and surface hardness.