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コーティング膜の表面状態と成膜速度

3.5 前駆体供給量の影響

3.5.2 結果および考察

3.5.2.1 コーティング膜の表面状態と成膜速度

本実験においてすべての条件において、基材上に薄膜が得られた。得られたコーティング膜表 面をステンレスナイフで引掻き、引掻き傷部位をCLSMで観察した。Figure 3-5-1およびFig. 3-5-2 にCLSM観察像および3D凹凸像を示す。得られたコーティング膜表面は全体的に不均一で微粒子 や細孔で構成されている様子が確認できた。しかしながら、アセチレン流量の違いにより表面状 態に差が見られた。特にアセチレン流量が最も少ない条件(0.05 L/min)で得られたコーティング 膜は表面の凹凸が最も大きいことがCLSM像から伺える。

Figure 3-5-3にCLSMを用いて測定した表面粗さ(算術平均粗さRa)とアセチレン流量の関係を

示す。実際にアセチレン流量 0.05 L/minの条件で得られたコーティング膜は他の条件で得られた ものと比較して特異的に大きな表面粗さを示している。アセチレン流量 0.05 L/minの条件を除く と、アセチレン流量の増大に伴い表面粗さが大きくなる傾向が見られる。このことから、アセチ

レン流量 0.05 L/minの条件は他の流量条件と何らかの異なる状況が生じていると推測される。実

際にアセチレン流量 0.05 L/minの場合のみプラズマが激しいフィラメント状放電を示した。フィ ラメント状放電が生じると高密度かつ不均一なプラズマ空間となるため、その状態を反映した表 面の粗いコーティング膜が成膜されると考えられる。アセチレン流量を 0.15 L/minまで増やすと プラズマは安定で均一なグロー状放電となり、より滑らかで均一なコーティング膜表面が得られ る。さらにアセチレン流量を増やすとアセチレン自身のクエンチ効果によりグロー状アルゴンプ ラズマは弱まっていく。それと同時にアセチレンから生じた炭素活性種の密度は増加するため、

基材に届くまでに活性種同士の反応が進行し大きな粒子状反応物を形成し、これが基材に降り注 ぎ表面の粗いコーティング膜を形成すると考えられる。そのためアセチレン流量の増加により再 び表面粗さが大きくなると考えられる。

15µm 15µm

15µm 15µm

(a) C2H2: 0.05L/min (b) C2H2: 0.15L/min

(d) C2H2: 0.5L/min (c) C2H2: 0.3L/min

Fig. 3-5-1 CLSM 2D images of scratched coatings.

128µm

96µm

128µm

96µm

128µm

96µm

128µm

96µm

(a) C

2

H

2

: 0.05L/min

(b) C

2

H

2

: 0.15L/min

(d) C

2

H

2

: 0.5L/min (c) C

2

H

2

: 0.3L/min

Fig. 3-5-2 CLSM 3D images of scratched coatings.

膜厚:0.84µm 成膜時間:2min

膜厚:0.78µm 成膜時間:2min

膜厚:0.98µm 成膜時間:2min

膜厚:1.36µm 成膜時間:2min

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 0.18 0.2

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

Flow rate of acetylene (L/min) S ur fa ce r ou g hn e ss R a (µ m ) Homogeneous Filamentary

Fig. 3-5-3 Relation between flow rate of acetylene and surface roughness.

Figure 3-5-2で示した引掻き傷の段差から、膜厚を求めた。また得られた膜厚と実際に要した成

膜時間から成膜速度を求めた。得られた膜厚および成膜速度とアセチレン流量の関係をFig. 3-5-4 に示す。アセチレン流量の増大に伴い成膜速度も増加し、アセチレン流量0.5 L/minの条件でおよ

そ1.4 µm/minの成膜速度が得られた。原料供給量の増加により成膜速度が上昇することは容易に

理解できる結果である。従来の真空プロセスによるアモルファスカーボン成膜では数十~数百 nm/min程度が一般的な成膜速度であることから、本手法により従来の真空プロセスの数十~百倍 の成膜速度向上が達成できると言える。

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 Flow rate of acetylene (L/min)

D e po s it io n ra te ( µm /m in )

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6

F ilm t hi ck n es s ( µm )

Fig. 3-5-4 Relation between flow rate of acetylene and deposition rate.